ジャンル:CRAFT,出店者紹介

中村かりん

【中村かりんプロフィール】
益子を拠点に活動する陶芸家・中村かりんさん。彼女の手から生まれくる作品は、世の乙女たちのハートをつかんでやまない。少しずつ配合を変えた幾種類にも及ぶサンプルの中から、選び抜かれた釉薬の“淡くやわらかな色合い”。泥を使い少し盛り上がるように文様を描く、イッチンという技法で表現された“繊細で美しい絵付け”。この2つが見事なハーモニーを奏で、愛らしさ抜群の世界が誕生するのだ。初出店の今回のもみじ市では、彼女の代表作のひとつでもある「ふたもの」をお届け。ずらりと並ぶ可憐な作品たちに、あなたもきっと魅了されることだろう。
https://www.instagram.com/kkarinnnnn/?hl=ja

【商品カタログ予習帳】


『月刊 中村かりん』記事一覧

7月号「中村かりんの世界観ができるまで-Point.1 イッチン-」
8月号「中村かりんの世界観ができるまで-Point.2 釉薬-」
9月号「中村かりんの世界観ができるまで-Point.3 持ち手-」
10月号「歴代のふたもの作品をご紹介!」


【月刊 中村かりん 7月号】
特集「中村かりんの世界観ができるまで-Point.1 イッチン-」

Point.1 イッチン
中村さんの作品を語る上で絶対に欠かせないもの。それは、“イッチン描き”という技法。今回は、実際にイッチンで絵を描いていく様子を見せていただきました!


こちらは、泥を2回ふるいにかけたもの。スポイトで吸い取って、中に入れていきます。


イッチンの先金は真鍮製。磨り減っていくと、どんどん短くなってしまうそう。


真ん中のモチーフはあらかじめ鉛筆で下書きをしますが、周りの模様は細かく決めずに描いていきます。


「おおらかなものを作りたい」と語る中村さん。傍から見ると繊細な作業ですが、流れに身を任せてイッチンを走らせていく様子は、確かに悠然としています。


「実は、絵を専門的に勉強したことはないんです。だからなのか、『下手だけど線に迷いがない』と、よく知り合いに言われていました。思い切りよく描いていけるので、スピードが命のイッチンと相性がいいいんだと思います」

お会いする前は、「作品のように本人も繊細な方なのかな?」と思っていましたが、意外や意外。自然体で和やかな雰囲気に、すっかり虜になってしまいました。そんな中村さんの手から生まれた作品だからこそ、可愛らしさの中にも芯の強さのようなものを感じるのかもしれません。

(編集・藤枝梢)


【月刊 中村かりん 8月号】
特集「中村かりんの世界観ができるまで-Point.2 釉薬-」

Point.2 釉薬
パーツごとに細かく塗り分けられた、淡くやわらかな色。今回は、そんな中村さんの華やかな色の世界を支える、釉薬についてご紹介します!


一部だけ掘り、凹んだ部分と平らな部分の色の変化を表現したテストピース。「仕上がりは好きだったのですが、途中からイッチンがしたくなり、今はイッチンをしたテストピースに色を入れています」と話す中村さん。


こちらがイッチン風の細工をした石膏型でテストピースをつくり、素焼きをしたものです。


釉薬の配合をちょっとずつ変えたり、酸化・還元で焼き方を変えたり、赤土・白土と異なる種類の土を使ったりして、それぞれどのような色になるのか試していきます。表面がツヤっとしているものやマットな質感のものなど、その仕上がりは実に様々。


棚にずらっと並ぶのは、テストピースを貼り付けた板の山。定期的に色のテストを行ない溜まったストックの中から、その時制作している作品にあった色を選んでいくのだそう。


こちらは、タッパーに小分けにされた釉薬です。左下の赤い釉薬は、焼くと地味な黄土色になるのだとか……! 「色を塗るときは、ふんわりと全体を決めてから。隣同士に置くととんでしまったり、悪い影響を与えてしまう色の組み合わせもあるので、そのあたりも頭に入れながら塗り分けていきます」

普段はなかなか見る機会のないテストピース。試行錯誤を重ね織りなされた色たちが、彩り豊かな作品の礎となっているのです。

(編集・藤枝梢)


【月刊 中村かりん 9月号】
特集「中村かりんの世界観ができるまで-Point.3 持ち手-」

Point.3 持ち手
もみじ市では、今までやりたかったことの一つでもある、「ふたもの」だけの販売に挑戦してくれる中村さん。そんなふたものの持ち手部分となる、立体物を作っていく様子をお届けします!


今回はきのこを作っていく様子を見せていただきました。まずは粘土を大体の分量でちぎり、こねながら形を作っていきます。


お次は、鋭い針状の切っ先を押し付けて、ひだの部分の模様をつける作業です。


あっという間に、大・中・小3つのきのこの出来上がり! ある程度かわいたらボディとなるふたにつけ、さらにかわいたらイッチンをして素焼きします。右側にあるものが素焼きまで終えた状態。


色をつけて、本焼きしたら完成です。「持ち手部分を一つひとつ作っていると言うと、同業の友人に『型を作ればいいのに……!』と驚かれます。その方が同じものをつくれますが、ふたもの自体も時々によって違うものになるし、何よりも自分が飽きてしまうんですよね(笑)」

「ふたものを作っていて良かったと思うところは?」と聞くと、「一点ものゆえの自由さ」と答えてくれた中村さん。例えば、持ち手として作っていたナマケモノをお皿の絵として描くなど、立体〜平面相互への展開が柔軟にできるようになったそう。何にも囚われず生まれたふたものは、さらに新たな作品の種が芽吹くきっかけになっているのでしょう。

(編集・藤枝梢)


【月刊 中村かりん 10月号】
特集「歴代のふたもの作品をご紹介!」

ふたもの
もみじ市開催まで残りわずか。10月号では、今まで紹介してきた工程を経て完成した、歴代のふたものたちをお見せします!


あっという間に売り切れてしまうというゾウのふたもの。細かい造形なので、仕上げるのは少し骨が折れるそう。サーカスをイメージしたという柄と色合いが、カラフルで目を惹きます。


ラッコのふたものには、ワカメのイラストが。潮に流されないようにワカメにくるまって寝るというラッコの習性から、ワカメを描くことを思いついたのだとか。「ラッコって最高にかわいくないですか!?」と、はじける笑顔で語っていた中村さん。対象への愛の深さを、ひしひしと感じる1シーンでした。


こちらは、魚の持ち手がついたふたもの。海の中を表現したかのような淡い水色のふたと、底に描かれたヒトデの絵が見事にマッチしています。


ねこのふたものを彩るのは、宙を舞う蝶々たち。野原でたわむれている様子が思い浮かべられるような、のどかで心和む作品です。


背中に並んだ骨板が特徴的なステゴサウルスのふたもの。恐竜自体に興味があるというわけではなく、ステゴサウルスの姿形が好きで作り始めたという一作。さくらんぼとの関連性はまったくないけれど、なぜか中村さんの中ではしっくりきたのだとか。

きのこ以外の持ち手は、すべて動物をモチーフにしたもの。紹介した動物以外にも、馬やイルカ、うさぎにリスなど、その数は20種類以上にも及びます。器の外側に施された柄や、中のイラスト、そして持ち手の立体作品が連動し、独特の世界を作り出している中村さんのふたもの。「こういった一連のデザインを考えているのも楽しい時間」と中村さんは話します。もみじ市当日は、ふたものだけで出店をするという自身初の試みに挑戦! ぜひ、この愛らしい作品たちに会いにきてくださいね。

(編集・藤枝梢)