キノ・イグルー「謎のえいがかん」

「こんな所でも、映画を楽しめるんだ」
彼らの活動を見ていると、いつもそう思う。映画は映画館で見るものという考え方しか持っていなかったわたしにとって、彼らとの出会いは、とても新鮮なものだった。

ある夏の日、東京の、とあるカフェで開かれた「キノ・イグルー」の上映会は、ソファに座っている人もいれば、床にしゃがんでいる人もいて、みんな自由なスタイル。壁に映し出された映画は昔のモノクロ映画だったのだけれど、ちっとも古さを感じない。蚊取り線香の匂いに包まれながら観たその映画は、今でもわたしの頭の中に鮮明に残っている。そして、映画のあとにカフェの方が出してくれた「夏」がテーマのごはんがとてもおいしくて、上映会の記憶をさらに色濃いものにしてくれたのだった。その、わずか数時間の出来事で、わたしは彼らから映画を自由に観ることの楽しさを教えてもらった。

彼らとは、「キノ・イグルー」の有坂塁さんと渡辺順也さんのおふたり。おふたりは、日本全国で映画を「観る」面白さを伝えている、移動映画館の館主だ。彼らは、カフェやギャラリー、美術館、雑貨屋さん、はたまたホテルの屋上などなど、あらゆる場所で映画を上映している。これまでに、ジャック・タチの映画など、100本以上上映をし、映画の面白さを伝えてきた。

そんなキノ・イグルーの上映会は、毎回とてもユニークだ。映画を観る時間や空間すべてを楽しんでもらおうという思いから、映画のイメージに合わせたコース料理やパン、お菓子、デザートを提供したり、ミュージシャンのライブや、イラスト展などを同時に開催したり。次は、どんな場所で、どんなジャンルの人と一緒に上映会をやるのか、そして、どんな映画をわたしたちに見せてくれるのか、大きな期待でいっぱいになる。

有坂さんは現在、雑誌『雑貨カタログ』で連載をしている。毎回、対談相手の好みなどを聞いた上で、その人にぴったりの映画をおすすめするというもの。本を開く度に、わたしの知らない映画のタイトルが書かれているから、その足でレンタル屋さんに向かうこともある。有坂さんは洋画邦画問わず、月に何十本もの映画を観るのだそう。それをもう何年も続けているというのだから、映画の知識はそれはそれは深いのだろう。わたしも、初めて有坂さんにお会いした時に、おすすめの映画を紹介してもらった。初対面なのに、少しお話しただけで、どうして好みの映画が分かってしまうんだろう、と不思議に思ったものだ。けれど、紹介してもらった映画はわたしの心にぐっとくる、素敵なものだった。

もともと、有坂さんと渡辺さんは中学の同級生だったそうだ。キノ・イグルーとしての活動を一緒に始めたのは今から7年前。ちなみに、今のおふたりにとって、それぞれがどんな存在なのかを、こっそり聞いてみた。
「月並みですが『波長があう』としか言いようがない」(有坂)
「盟友とでもいいますか『こんなのあったらいいのに』に向けて根本的な方向性が同じでやっていける人。あと、気をつかわないかな(笑)」(渡辺)
とのこと。なんだか、微笑ましい。

有坂さんも渡辺さんも、見た目は穏やかそうに見える。けれども、お話をしてみると、自分たちの活動に対する熱い思いや、活動を通して出会うたくさんの人たちとのつながりをとても大事にしているのを、強く強く感じる。毎年お会いする度に、日本全国様々な場所に活動を広げていて、わたしはそれを聞く度にすごく嬉しくなるのだ。わたしが教えてもらったように、映画を自由に楽しむことの心地よさを、また多くの人が教えてもらったんだなと。

もみじ市では、去年と一昨年、「テントえいがかん」と名付けた上映会をしてくれた。特に子供たちに大人気で、何度も何度もテントの中に来てくれた子がいたそうだ。毎回、当日まで内容は一切秘密にされているキノ・イグルーのもみじ市映画館。今年はどんな映画をわたしたちに見せてくれるのだろう。みなさん、どうぞお楽しみに。

*キノ・イグルーさんに聞きました

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加していただけるのでしょう?     
今年は「謎」につつまれた映画館をやります。建て物も上映作品も「謎」。毎回 “きまぐれ館主(キノ・イグルー)” が、その時の気分で上映作品を選ぶため、何が観られるかは始まるまで「謎」なんです。1回10分程度のショートプログラムなので、ぜひ買い物気分で遊びに来てくださいね。

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?  
いつもどおり、のんびりと。

Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
もみじ市には、映画館もあるんですよ~。

さて、続いては、映画館に行ったら、映画を撮りたくなりませんか? もみじ市CMの監督が登場!

文●早川絵梨

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