木下宝「硝子」

2年前、木下宝さんに初めて出会ってから、硝子の持つ魅力をひとつずつ教えてもらっているような気がする。1年に数回参加される企画展や、宝さんご自身の個展へ足を運ぶ度に、新鮮な発見と驚きがあって、毎回嬉しい気持ちでいっぱいになる。そして、その時感じた嬉しい気持ちを大切な人たちにも教えてあげたい、いつもそう思う。

もみじ市には、今年で3回目の参加になる木下宝さん。シンプルな硝子の器を作る作家さんだ。「凛」という言葉は、わたしが大好きな言葉なのだけれど、宝さんの作品にはその言葉が本当に似合うと思う。天に向かってすっと伸びているかのように気持ちよいグラスや、ぽてっとしたフォルムの花器など、あるようでない、独特な存在感を放つ作品が多い。そして、どれも透明感があって、とても美しいのだ。

今年の初夏に開かれた個展で、わたしはひとつの花器を手に入れた。それは、鮮やかな花を飾ってももちろんいいのだけれど、ささやかに一輪、一枝を飾るほうがわたしには心地よくて、そんな使い方をしている。宝さんの硝子は、日々の生活の中で気を張らずに、自分らしい使い方を受け止めてくれる、そんな器でもあると思う。

作品の種類は、個展の度に毎回どんどん増えている。今年お邪魔した夏の個展では、梅干し入れや麦茶入れが並んでいた。

「ふだんの生活からでしょうか。たとえば、ご飯をつくりながら、こんな器があるといいかもと思ったのがきっかけで生まれることもあります」

新しい作品を作る際に、どういったところからインスピレーションを受けるのですか? との問いに、宝さんはこう答えてくれた。ご本人は「すごく楽観的でしょう?」と言っていたけれど、普通の、当たり前の生活を大事にしている宝さんの姿が目に浮かんで、微笑ましい気持ちになった。そして、すとんとすべてが納得できたような気がした。宝さんの器は美しいけれど、ただ飾っておくだけじゃもったいない。生活のあらゆる場面で使ってこそ、輝きが増すのだと思った。飲み物を注いだ時の表情、食べ物を盛った時の表情、花を飾った時の表情…。あらゆる表情が、宝さんの硝子だとぐっと豊かになる気がしたのは、作っているご本人の生活がそのまま表れているから。そのせいだったんだ、そう思った。

「いくつも硝子を吹いていると、自分の意識を超えて、すっと気持ちよく伸びることがあるんです。まるで誰かがそのように吹かせてくれたかのように」

いつだったか、宝さんはこんなことを言っていた。きっと今日も遠く富山の工房で、宝さんは熱心に硝子を吹いているのだろう。もみじ市に来られるみなさんとの楽しい時間を思い浮かべながら。もみじ市当日は、気持ちよく伸びた、美しい硝子をひとつひとつ手に取って、是非、宝さんとゆっくりお話してみてくださいね。

*木下宝さんに聞きました

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加していただけるのでしょう?     
青空パレードのもと、ビールが美味しくなるグラスたちをいっぱい持ってゆきます!

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
みなさんとともに青空もみじの空気をたっぷりとわかちあいたいです。

Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
今年さらにパワーアップのもみじ市!ゆったりとした時間をお過ごしください。

さて続いては、鹿沼と日光の親分がもみじ市に初見参!

文●早川絵梨

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