日光珈琲「多摩川焙煎所」

「日光にはね、本当に、何かがあると思うんです」

日光をこんなに愛している人は、他にいるだろうか?
これが、日光珈琲の風間教司さんと初めて会った時の印象。風間さんに日光のことを語らせたら、きっと1週間くらい話し続ける。決して大げさに言っているわけではない。「いい場所があってね」「おもしろい人がいるんだよ」。日光に関係することなら、目をキラキラ輝かせて、いつまでも話している。日光の良さを伝えるべく歩き回り、見つけては発信し、私たちに届けてくれる。その行動力には本当に驚かされる。

日光市今市。かつては賑わったであろう繁華街から一本入った路地裏に、日光珈琲はある。風間さんが古民家を自らの手で改装したという店内は、入口からは想像ができないほど広く、そこに一歩足を踏み入れただけで穏やかな空気がまとわりつく。明治時代に建築され、一時は遊郭として使用されたこともあるという空間は、独特の妖しい魅力を放っていて、天井や欄間の意匠からは、かつての面影が忍ばれる。

日光珈琲には、飲み物はもちろん、食事のメニューもある。そこで使われる食材は、米や肉、野菜にいたるまで、栃木産のものを使用している。例えば、ドレッシング。ほんのりと甘酸っぱいいちごのドレッシングは、やみつきになる味。栃木の名産であるいちごは、通常、熟す少し前に摘み取られ、市場に出回る。収穫の時期を過ぎたいちごは、捨てられてしまう運命に(実は完熟のいちご)。そんないちごを集め、ドレッシングにする。言って見れば、風間さんはいちごを救っているのである。

氷のことも語らなければならない。アイス珈琲など冷たいドリンクに使われる氷は、地元日光の天然氷。20日間かけてじっくりと凍らせ、カッターで切り、積み合わせる伝統の技によって、手間暇かけて作られる天然の氷は、現在ではなかなかお目にかかれない(国内で作っているところは数軒しかない)。今年の夏、かき氷を特別メニューとして提供した。天然の氷で作られたかき氷は、驚くほどにふわふわで、口のなかでふわっと溶けて、何より氷そのものが甘い。きーんとする感じがまったくない。シロップも、果物をそのまま搾ったものや甘酒など特製のもの。風間さんのかき氷を求めてやってくる人が後を絶えなかったのも頷ける。

そして、珈琲。珈琲豆は、栃木県鹿沼市の「カフェ饗茶庵」の隣の「根古屋珈琲研究所」にて風間さん自身が毎日焙煎している農園指定のスペシャリティーコーヒーを使用している。そう、風間さんは日光珈琲のオーナーであると同時に、カフェ響茶庵のオーナーでもあるのだ。風間さんは毎日、語りかけるように、珈琲豆と向き合っている。「ほんの1分で味が変わってしまうから」と。

さて、初参加のもみじ市。風間さんは、多摩川に焙煎所をオープンする。はじめ、「珈琲豆の焙煎の実演と販売をします」と言っていたところを、私たちの強い要望で、ホット珈琲とアイス珈琲も振る舞っていただくことになった(やった!)。アイス珈琲は、自家焙煎珈琲をアイス専用にブレンドし、水で一滴、一滴、約8時間をかけて抽出した水出し珈琲。日光珈琲の入口で、その様子をみることができる。じっくりと時間をかけて珈琲が生み出されていく様子を見ていると、一滴、一滴がとても愛おしく感じられ、その姿がとても美しいのだ。低温でゆっくりと落とすことで、雑味が少なくなり、豆本来の味が楽しめるのだそう。コーヒーのひと口、ひと口がとても貴重なものに思えてくる。

珈琲を飲みながら、思わず風間さんに聞いた。「なんでこんなに、美味しいんですか?」。風間さんはひとこと。「愛だから」。あまりにも、さらりと言ったひとこと。直球。でもこれは本当だな。珈琲への愛、お客様への愛、そして日光への愛が、風間さんと話していると、これでもかというほどに伝わってくる。

風間さんは、日光を変える人だと思う。その挑戦は、これからも続くだろう。風間さんが日光のヒーローとなるその日まで、私は応援していきます。

さあ、みなさん。もみじ市にお越しになったら、風間さんの珈琲を飲んで下さい。風間さんと珈琲の話をして下さい。日光の話をして下さい。多摩川の河原、珈琲が焼ける匂いのする方へ。

*風間教司さんに聞きました

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加して いただけるのでしょう?
日光の素材を使ったコーヒーと焼き菓子を持って、焙煎職人が上京いたしますよ。

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
祝!初参加!!より多くの方々との出会いを楽しみに。個人的に今回の会場は学生時代バイトに通った河川敷なので、淡い青春の思い出に浸ってドリップしたいですね。

Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
年に1度のおまつりです。たくさんの出会いと思い出つくりましょう。

さて続いては、手紙舍&ヒバリを設計してくれたあの人が、もみじ市に登場します!

文●一島純子

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