麦小舎「森のクラシックバーガー屋」(23日)

僕たちは日常を生きている。望むとも望まずとも日常を生きなければいけない運命にある。朝を迎えるためには夜が必要なように、月が輝くためには太陽が必要なように、「日常」を生きるために必要なものがある。それは「物語」にほかならない。物語を求めて僕たちは、本を読む。旅に出る。そして、カフェへと向かう。

「ここに来ること自体が物語なんだよね」

ある人はこう言う。都会の喧騒を離れ、軽井沢というきわめて物語性の高い場所を抜けて、国道146号線を北へと走る。国道を上るに連れ、人気が少なくなる。木々が車を覆い出す。空気が澄んでゆく。やがて車は国道を離れ、森の中に”迷い込む”。何度か訪れたことがある人でも、その場所にたどり着くのは容易ではない。森のラビリンスをさまよいながらコーヒーの香りがする方へと向かえば、「よく見つけたね」とばかりに、目の前に一軒の小舎が現れる。ようやくそこで、物語が僕たちを招き入れてくれたことを知るのだ。

ここは、藤野由貴男さん・麻子さん夫妻が営むカフェ「麦小舎」。北軽井沢の静かな森の中に佇む建物は、もともと、麻子さんの両親が別荘として使用していたもの。東京で暮らしていたふたりは、この場所を訪れる度に惹かれ、「いつかここで人が集まれる場所を作れたらいいね」と願うようになる。その願いがかなったのは、2006年の夏のこと。

ふたりには、2006年のオープンの時から今に至るまで、決めていることがある。それは、週末しかお店をオープンしないこと。このあたりは日本でも有数な観光地。週末に比べると平日はお客さんが少ないから、という理由もないことはない。でも本当の理由は違う。そこには、自分たちのお店に対する、ふたりの確かなる意思が現れている。

「お客さまには、なるべくゆっくり過ごして欲しい。コーヒーを飲みながら本を読んでもらってもいいし、庭のハンモックで休んでもらってもいい。半日でも、一日でもいいから、のんびり過ごして欲しいんです」

毎日お店を開けたなら、こうも言っていられなくなる。”商売”として考えたら、お客様の数を確保しなければいけない。回転率みたいなものも考える必要がある。そうなったら、余裕がなくなってキリキリしてくるかもしれない。「のんびり過ごして欲しい」と願っている自分たち自身が、そうなっては意味がない。そういうことをやりたいために店をやっているわけではない。

これがふたりの意思だ。この意思を全うするためにふたりは、平日はそれぞれ別の仕事をしている。そうすることによって、週末だけ開く麦小舎の、あの奇跡のような空気感が保たれると、ふたりは信じている。そして、そのおかげで麦小舎を訪れる僕たちは、心置きなく物語の世界に浸ることができるのだ。

ちょうど2年前、tico moonのライブが麦小舎で行われた。あまりにも美しいハープとギターの旋律が、あまりにも澄んだ北軽井沢の森の空気に溶け込んでいったときの、心地良さを忘れることはできない。

いつか、麻子さんが言っていたことがある。
「麦小舎ほど、tico moonの音楽が似合う空間はないと思うんですよ。おこがましいですけど(笑)」

ちょっと待った、麻子さん。tico moonの音楽が似合うということなら、もみじ市も負けているつもりはないですよ。ん? 待てよ。麦小舎にtico moonの音楽が合って、tico moonの音楽がもみじ市に合うのだとすれば、それはつまり、麦小舎ともみじ市は合うということではないですか? ならば麦小舎のおふたり、ぜひ、もみじ市へ! 僕たちと一緒に、tico moonと一緒に、みんなで一緒に、多摩川で素敵な物語を紡ごうではありませんか。

*藤野麻子さんに聞きました

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加していただけるのでしょう?
10月も後半となれば、麦小舎のあるお山のふもとの森では、もうそろそろ冬じたく。リスやクマなど森の動物たちがせっせと木の実をたくわえて暖かなねぐらに篭る頃。私たちも冬眠前の思い出づくり(!)に、カフェの定番、ハンバーガーにアレンジを加えたものと、あったかスープを携えて、賑やかなパレードの列の後ろにこっそり忍び込もうと思います。

ハンバーガーは、牛100%のパティを炭火で焼き上げ、北軽井沢産の自分たちで収穫したレタスをはさみます。お肉の旨味をシンプルに味わってもらうよう、味付けもひときわシンプルに(隠し味は加えます)。

そして、なぜかなぜか、の「型抜きコーナー」が登場します! 見事成功した方には、オリジナルキーホルダー(すべて手づくり)などをプレゼント。外れの方にも参加賞があります。順番待ちをされている時とか、お子さんの退屈しのぎにお薦めです。

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
初めての参加で、きっとふわふわと夢のなかの出来事のように過ぎてしまいそう。
なるべくたくさんのお客様や出店者の方々と直接お話ができたらいいなと思います。
             
Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
この市の素晴らしいところは、出店側だけでなく、お客様ひとりひとりが「参加者」になれることだと思います。ぜひみなさんのたくさんの笑顔で、パレードに花を咲かせましょう!当日お会いできることを楽しみにしています。

さて続いては、美しい馬頭琴の音色が、多摩川の草原に響き渡ります!

文●北島勲

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