チームDOM.F..「会場装飾」

もみじ市まであと2日。緊張感とわくわく感が混じり合った、その複雑な気持ちが盛り上がって来た頃、この人がむくむくと動き出す。ずっとあたまの中でぐるぐると描いてきたことを、急ピッチで形にしていく。その頭の中は、本人しかわからないけれど、この人に頼めば何も心配はいらない。きっと私たちが期待していた以上に、なにか「すごいこと」を考えてくれていると確信しているから。

その人とは、世田谷区喜多見にある花屋さん、DOM.F..の迫田憲祐さん。駅前の商店街にある小さなそのお店は、私たちが住む街の自慢の花屋さんであり、私は彼をアーティストだと思っている。

そのお店の佇まいは、けして「かわいいお花屋さん」とはいえない独特の雰囲気を醸している。店内はドライフラワーやツルを使って装飾され、店にならぶ花は、バラやガーベラでも、色が個性的だったり、花びらが多かったりと、「ありきたり」ではないものばかりが並んでいる。

私自身、花を飾ることが好きだし、花を贈られるときの嬉しさもわかっているから、誰かに贈るときは、「その人のために選ばれ、束ねられた花」を贈りたいと思う。だから私は、彼にお願いする。「私にとって、こんな人に贈りたいんだ」と話すと、彼は、色の組み合わせ、形のおもしろさなど、ひとつひとつの植物が持つ個性を引き出しながら、私が想像もつかなかったような個性的、かつ、その意図を汲んだなものに仕上げてくれてる。元気な男性にはユニークに、女性友だちには、熟した色合いを重ねながら。それを贈られた人の喜ぶ顔を想像すると、こちらまで嬉しくなる。だからまた、この花屋さんに足を運ぶ。

迫田さんは、第一回目のもみじ市から参加し、会場を花と植物で彩ってくれる。何もない殺風景な会場を、ひとつにまとめる重要な任務だ。迫田さんが作る大きなオブジェや飾りは、来る人たちを、いっそうわくわくさせ、写真スポットにもなっている。

彼とは、もみじ市が少しずつ大きくなる道筋を、ずっと一緒に歩んで来た。だから、まだもみじ市が小さかったときのあったかさも知っているし、規模が大きくなって、たくさんのお客様の笑顔に讃えられた後の充実感も知っている。困ったときの愚痴も笑って聞いてくれるし、どうしたらいいかわからないときは、ポンと投げてみれば「うん、わかった」といってそのまま受け止めて、思いもよらないすばらしいものを完成させ、もみじ市を彩り、盛り上げてくれた。いつもお願いする花束と同じように、「表向きには」ひょうひょうと。

でも、私は知っている。もみじ市の直前に何度か迫田さんの元へと足を運ぶ中で、ある日から少しずつ顔つきが変わって行くことを。

「今年はどんなの作ってくれるの?」「う~ん、まだわかんない」
こんな会話がかわされたのは、開催の1ヵ月前。

「そろそろ決まった?」「う~ん。まだね、会場に行ってちょっと考えてくるわ」
こんな会話は20日前くらい。

「会場はどうだった? どんな感じになりそう?」「今年は広いね~。どーしよっかな~」
もう2週間前ですよ。迫田さん。

その間、配置図ができては会いに行き、DMができてはお店に届け、会場マップができては、再び打ち合わせに行く。その答えは淡々としているけれど、迫田さんの中では何かが動いていることは、その顔を見ていればわかる。頭の中でぐるぐると会場のイメージが描かれていて、「よし、今年も、やっちゃうよ!」という、心の深いところでの意気込みを。

そして一週間前。
「イメージはできた。あとは仕入れ次第だね」

生ものである植物を、市場から大量に仕入れる。それも極力予算を抑えたいというこちらの要望があるから、市場に出たもの勝負という部分が大きい。だから、直前にならないと、実際に制作に動くのが難しいのだ。そう言いながらも、庭仕事をしながら集めたという剪定枝が、店頭に山のように並んでいた。もう、準備は始まっていたのだ。

「お金をかければ、どんな装飾だって、何だってできるよ。でも、もみじ市ってさ、そういうことじゃないよね。何にもない河原におおきな装飾をするのは、土台から作らなくちゃいけないから結構たいへんでさ。これまでも、頭の中ではイメージできてるんだけど、チャレンジしては、やっぱりできなくて壊すことの繰り返しだった。でも、今年はできるかもね。安くあげる工夫も、俺、うまいよ!」

あの大きな会場を彩ってみなさんを迎えるために、みなさんを「あっ!」と驚かせるために、迫田さんは今年も「すごいもの」を作ってくれそうだ。

別れ際、いつものようにひょうひょうと、こんな一言を言ってくれた。「うまくできるよ! どんなものができるかは、いまは言えないけどね」

出た。開催直前の私たちの不安な心をすべてぬぐい去ってくれる、この温かくも、自信に満ちたひと言が。あとは任せましたよ、迫田さん。

みなさんを出迎える入場口、もみじ市のシンボルとなる「手紙の木」、ライブが行われるステージに、華やかな個性溢れる植物たちの装飾があったら、これが迫田さん率いるチームDOM.F..の仕事です。それはきっと、「もみじ市」という、多摩川の河原に2日間だけ現れる街に作られる、公園のような憩いの場になることでしょう。

もみじ市まであと2日。もうすぐ、その日がやってくる。

*DOM.F..の迫田憲祐さんに聞きました。

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加して いただけるのでしょう?
(仕入れが終わった)木曜日には答えられるけどね。今は難しい質問だね。ひと言で言えば「ラフレシア」って感じかな。でも、この花のようなものをつくるわけじゃないよ。「ラフレシア」っていう言葉のイメージね。

*ラフレシアとは、東南アジアなどに生殖する多肉性の植物。花は直径90cm程にも達するものもあり、「世界最大の花」とも言われている。

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
ふつうに楽しみたいです。

Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
ラフレシア!

残すところ、あと4組。さて続いては、荻窪からあの「たべごとや」がもみじ市にやってくる。予約なしでは入れない、あの店が出てくれるなんて…奇跡。

文●わたなべようこ

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