ニ象舎「オートマタ」

いまから50年近く前のこと、我が家には古い鳩時計がありました。木彫りの装飾がつけられた巣箱のような本体からは細い鎖が何本か下がっていて、その先には松ぼっくりのような形をした分銅がつけられていました。定時になると文字盤の上の小窓が開き、そこから小さな鳩が顔をのぞかせます。ポッポ、ポッポ、ポッポ。幼稚園児だった僕はその瞬間が見たくて、壁に取り付けられた時計の下で何時間も座り込んでいました。

オートマタ作家・原田和明さんの作品を初めて見たとき、まず頭に浮かんだのはその鳩時計でした。小さな箱に取り付けられたハンドルを回すと、中の歯車や軸が動き出し、箱の上で人形たちが音楽を奏でたり、愛を語りあったり、悪ふざけをしたり…。その仕掛けが面白くて、僕は子供のように何度も何度もハンドルを回してしまいました。

「オートマタ」というと、18~19世紀にかけてヨーロッパでつくられたアンティックの機械人形を連想するかもしれません。でも、原田さんがつくるタイプのオートマタは30年ほど前イギリスで生まれたものだそうです。外から中の仕組みを見ることができて、そのアイデアや発想を楽しむのだとか。原田さんにオートマタとの出会いを聞きました。

「会社勤めをしていた28歳のころ、仕事以外に何か趣味を持ちたいなと思っていたんです。そんなとき、たまたま出合ったのがオートマタの作り方を解説した本でした」

その本を片手に、見よう見まねで作り始めたオートマタ。原田さんはその世界にどんどんのめりこんでいきます。そしてついにイギリスに渡り、世界的なオートマタ作家マット・スミス氏のもとで1年余り修行を積みます。

「日本から弟子にしてほしいというメールを送ったら、『オートマタ作家になることはオススメしない』と、やんわり断られたんです。『食べていけないから』って(笑)。でも、マットさんの住んでいる町にある大学院に留学した際、自宅に押しかけて、そのまま弟子入りさせてもらいました」

そして帰国後、奥さまのメグさんと二人で、山口県山口市にて「ニ象舎」を立ち上げました。

「祖父の名前が『二三』と書いて『にぞう』なんです。手先が器用な人で、子供のころ夏休みの工作とかよく手伝ってもらいました。僕の作品もすごく気にいってくれて、『自分がもう少し若ければ、一緒にやるのになぁ』と言ってました。ですから『いまでもじいちゃんと一緒にやってるよ』という思いをこめて『二象舎・にぞうしゃ』」

ちょっといい話。でも作家・原田さんは「涙」より「笑」が似合う人です。それも、ちょっとシニカルだったり、シュールだったり…。どうやら一筋縄ではいかないユーモアの持ち主のようです。

「オートマタを作り始めたころは、絵本の一場面みたいなものが作れたらいいなと思っていたんです。絵本を動かしてみたい、と。その後だんだん作風も変わってきて、今年になってからは、ストーリーで笑わせるのではなく、機械の動いているさまをそのまま見てもらって、その美しさ、おかしさを味わってもらおうという作品も作っています。ただ、これは売れそうにない(笑)」

それが最近の「匙を投げる」「空気の彫刻」(下の写真)「愛のからくり」の3部作。今回のもみじ市には、この新作を持ってきてくれるそうです。乞うご期待。

ハンドルを回せばわかる「二象舎ワールド」。原田さんの頭の中にも、大小さまざまな歯車が詰め込まれていて、カタカタカタと回り続けているにちがいありません。きっと身体のどこかにハンドルがついているはずですから、会場で原田さん本人をつかまえて、ぜひ確かめてみてください。

*原田和明さんに聞きました

Q1. 今回はどんな“いでたち”で、もみじ市のパレードに参加していただけるのでしょう? 
もみじ組の外様大名が明るく元気に参勤交代!

Q2. もみじ市をどんなふうに楽しみたいですか?
大人の余裕を持って楽しみたいです。 

Q3. もみじ市の宣伝部長になったつもりで、来場されるお客さまにメッセージをお願いします!
ねぇ、パレードにおいでよ。

さて続いては、那須から絶品のアジア食堂がやってきます!

文●秋月康

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