ジャンル:TEXTILE

admi

【admiプロフィール】
インドの伝統的な手法「木版プリント」を用い、デザイナー・堀千春と現地の職人が二人三脚でつくりあげるテキスタイルブランド。一色ひといろ、版を重ね、描かれる絵柄は、すべて手作業だからこそ表現できる、線のゆらぎや色のずれが魅力的です。素朴ながらもしっかりと愛らしさを持ったアイテムは、飽きがこず毎日でも持ち歩きたくなるほど。私(担当:鈴木)は、ハンカチ「Dance」を愛用中。エスニックなデザインの花々が生地の上で踊るテキスタイルは、持っているだけで気分が上がります。
http://admi.jp/

【スペシャルインタビュー「admiの始まりと、もみじ市」】
「admi」の主宰であり、デザイナーである堀千春さんに、鈴木麻葉(手紙社)がお話を伺いました。

はじめてのもみじ市、家に帰ってから泣きました

ーーー今回のもみじ市は何回目の出店ですか?
堀:2014年の「100人の個展」というテーマの時の初めて出店しました。ずっともみじ市は知っていて、出てみたいと思っていました。でも、公募をしていないということは知っていたので、憧れの場だったんです。だから、声がかかったときは、本当に嬉しかったです! 断るという選択肢はありませんでした。

ーーー実際、はじめて出店してみてどうでしたか?
堀:はじめてのもみじ市は2日間とも晴天で、理想的な天候と場所でした。当時、担当だった手紙社の藤枝さんが、もみじ市のために特製のタープを縫ってくださり、その下でワークショップも開催しました。慣れない野外イベント、そしてワークショップを開催するというプレッシャーが大きく、終わった後、安心して家で泣いてしまいました。

ーーーそうなんですね、でもそれくらいもみじ市が大きな存在だったということですよね。堀さんにとって、一緒に軒を並べる作り手はどんな存在ですか?
堀:これほどさまざまなジャンルの出店者さんとご一緒する機会は他にないので、毎回沢山の刺激をいただいています。自分らしく、楽しく、日々励んでいらっしゃる方々がこんなにいるのだなあととても嬉しくなり、自分も頑張ろう! という気持ちになります。あえて言えば、憧れであり、自分の励みになる存在です。何回も出ていらっしゃる先輩方はやはり違うオーラを感じますね。

木版プリントとの出会いは予期せぬところから

ーーーもみじ市には、布博でもおなじみのテキスタイルの出店者さんも何組かでていらっしゃいますよね。同じジャンルでも染めの手法は様々ですが、堀さんが「admi」をはじめたきっかけは?
堀:もともと多摩美術大学でテキスタイルを学んでいました。しかし、木版プリントとは無縁でしたし、木版プリントという手法があることも知りませんでした。

インドの職人が木版を掘る様子

ーーーそうなんですね! どこで木版プリントと出会ったのですか?
堀:大学4年の時、卒業制作の際に訪れたお店で、「木版プリントツアー」というものがあることを知りました。大学卒業後、アルバイトをし、お金を貯め、その年の11月に10日間ほどの「木版プリントツアー」に参加しました。それまでは、インドには全く興味がなく、行きたい国候補にも上がらないような国でしたが、何かのきっかけになるかもと、参加を決意しました。

ーーーすごい行動力! インドではどんなことを学んだんですか?
堀:そこでは、インドの伝統的な型を使った木版プリントを体験したり、今まで学んできたものとは違う、新しい世界が広がっていました。ツアーの10日間が終わり、そのまま帰るものだと思いきや、その後も滞在できるようツアー主催者がホームステイ先を手配してくれていました。

ーーーそのままホームステイしたんですか?
堀:はい。そのお宅は、木版プリントを行った経験のあるお父さんとお母さん、自分と同い年(当時24歳)の息子さんの3人暮らしで、お父さんと息子さんで、木版プリントの会社を立ち上げたばかりでした。私が行った当時は、まだまだ仕事も少ない小さな会社で、私は作業場の片隅で、自由に版を押していました。言葉もあまり通じない、見知らぬ私に対しても、とても親切に接してくださり、本当にありがたかったです。

そんな日々を過ごす中で、せっかくなのでこの貴重な経験を生かしたい、この人たちになにか恩返しできることがないだろうかと考えるようになりました。そのことを相談すると「何枚でもいいからとりあえず自分でプリントしてみなよ」と温かい一言をもらって……。この一言から、“admi”が生まれました。

インドの工房で出来上がったばかりのテキスタイル

ーーーインドで新しく仕事を始めようというのは、かなり勇気がいることですよね。
堀:そうですね、でもその当時は商売というものをなにも知らなかったため、出来たのだと思います。今の年齢では踏み出せなかったと思います。

admiとは「人」という意味

ーーーブランド名“admi”(ヒンドゥー語で「人」という意味)はすぐ決まりましたか?
堀:ヒンドゥー語で初めて覚えたのが、“admi”という言葉でした。ブランド名はインドにいる時から決めていました。インドにいる間に感じた「人」とのつながり、人種が違えど想ってくれる「人」のあたたかさ、「人」の手で作ること、「人」があってのadmiという意味があります。ロゴは、漢字の「人」、そしてインドと日本とのつながりを表現しています。

ーーーーadmiの活動は最初から順風満帆でしたか?
堀:最初は、「インドにはこんな表現がある」ということを伝えるべく、お土産をもっていく気持ちで個展を開きました。そのため、全く利益を考えていませんでした。

ーーーー仕事として“これで生きていこう”と決めたのはいつですか?
堀:admiをスタートしたときは24歳で、やりたいことはあるものの、自活できる状態ではない自分に焦りを感じていました。孔子の論語に「三十にして立つ」という言葉があり、その言葉を知った時「30歳で立てばいいんだ」と救われました。20代はアルバイトをしてはインドへ行って作品を作り、個展を開き、またインドへ行って……。とadmiの活動を続けていましたが、30までにはadmiの活動だけで生きていけるようになろう、とひとつの目標にしていました。イベントに積極的に応募したり、置いていただけるお店を探したりして、なんとか30歳でアルバイトをやめて自活できるようになりました。

職人さんの“味”も大切に

ーーー作品が出来上がる工程を教えてください
堀:スケッチブックに描いた絵から、新柄に使うものをスキャンし、PCでデザインを組んでいきます。組んだデザインをインドに持って行き、木版やプリントした状態を自分の目で確かめます。新作を注文してから、完成した布が、日本に届くまでは半年ほど。昔は納期を指定していましたが、今はお任せしています。最初は納期に間に合わないなどでやきもきしていましたが、他の工場に変えようという気持ちや、この活動をやめようという気持ちはありませんでした。やはり、ホームステイしていたときにとてもよくしてもらっていたのが大きいと思います。

堀さんによって一枚一枚アイロンがけされます

ーーー堀さんはデザインをメインでされているのですね。
堀:昔は、自分で版を押してプリントしたものを販売していましたが、今は職人さんにお任せしています。私はデザイナーとして、柄のデザインや色味を決め、職人さんが一枚一枚プリントしてくださいます。

ーーー職人さんがプリントする動画を拝見したのですが、あれは熟練の技を感じました。
堀:そうですね。5mの布に一気に版を押していくのですが、普通なら曲がったりずれたりするところを、職人さんは小さな目安だけで曲がらずに、均等にプリントしていきます。あれは、何度みても圧巻です!

ーーー 一枚一枚、手仕事ということで、堀さんのイメージと違うものが上がってきたことはありますか?
堀:もちろんあります。特に色味の調整は難しく、指定した色と違うものが上がってくることはよくあります。最初の頃は、気にしていましたが、最近はこれも“味”だと思っています。それに元の色を知っているのは私だけですし、気にいってくださるお客様がいらっしゃるので、それは失敗ではないです。

ーーー普段、どのようにデザインを考えているのですか?
堀:普段からスケッチブックにイラストを描きだめています。それを描いている時は、デザインのことは全く考えず、スケッチブックに落書きをしていた、子どもの頃の純粋な気持ちで描いています。何年も描きだめたものの中から、新柄となるモチーフをピックしてデザインを行います。そこでピックするモチーフは、最近描いたものばかりではなく、3年前に描いたものの時もあります。そのモチーフを選んでいる時、そしてデザインを組んでいる時は「ひとりのデザイナー」として大人の顔で仕事として行っています。

ーーー今年のもみじ市では、どんな“ROUND”を表現してくれますか?
堀:はじめてインドへ行き、木版プリントと出会ってから10年になる今年。10年一回りということで、この10年を振り返る気持ちで。そしてadmiを取り巻く環境、支えてくれる、見守ってくれる人たちへの感謝の気持ちで。いままで作ってきた柄やデザインを自分なりに振り返りながら、新しいアイテムを用意したいと思っています。

ーーー堀さん、どうもありがとうございました。河川敷にadmiの花々が咲き誇るのを楽しみにしています!

〜取材を終えて〜
布博でもお世話になっているため、面識はありましたが、ここまでしっかりとお話したのは初めてでした。知っているからこそ、改まってインタビューすることが、くすぐったく照れくさかったです。でも、インタビューが始まると、堀さんの歩んできた10年間の記憶が、私のなかにどっと流れ込んできて、自分もその思い出のなかに入り込む気持ちでお話を伺っていました。気がつけば、あっという間に時間が経ち、インタビュー前よりも堀さん、そしてadmiと近づけた、そんな幸せな時間でした。堀さん、ありがとうございました。(手紙社 鈴木麻葉)

【もみじ市当日の、admiさんのブースイメージはこちら!】

テーブルいっぱいに並ぶ、色とりどりのハンカチが見えたら、そこはadmiのブース!