ジャンル:ILLUST&DESIGN

網代幸介

【網代幸介プロフィール】
平面、立体、アニメーションなど、幅広い表現方法で独自の世界を描き出す画家・網代幸介さん。どこにもない、けれどどこかにあるかもしれない、遠い異国の風景。そこには、他のどんなところでも味わうことのできない、網代さんだけが作り出せる世界があります。奇妙で、物悲しくもどこか愛らしいキャラクターたちの紡ぐ物語。一度足を踏み入れてみたら、網代ワールドの虜になってしまうこと、間違いありません。
https://kosukeajiro.tumblr.com/


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小さな絵


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【スペシャルインタビュー「頭の中にある世界をかたちにする」】
幅広い分野で、自分の中から生まれる物語を表現し続ける画家・網代幸介さん。その作品はどうやって生まれてくるのか、手紙社の本間火詩がお話を伺いました。

「やっぱり、絵を描きたい」と思った

ーーー作り手になったきっかけを教えてください。
網代:小さい頃から絵を描いたり、工作をするのが好きでした。専門学校ではグラフィックデザインを専攻していたので、卒業後はグラフィックデザイナーとして12年ほど仕事をしていました。仕事は好きだったんですけど、その間にやっぱり自分は絵を描きたいな、って思ったんです。なにかきっかけが欲しいなと思ったので、個展を開こうと決めました。それが今から7年くらい前のことになりますが、それからは年に1回以上個展をやりながら、自分の中の妄想世界を描き続けています。

ーーー毎年個展を開催し続けるには、エネルギーが必要ですよね。
網代:絵描きになりたい、という強い気持ちがありました。自分の中の物語を作品にして、お客さんに見てもらいたいと思ったんですね。そのためには個展を開こう、と思ったので欠かすことなく続けています。

ーーー頭の中から生まれてくる、物語のある世界を描きだす網代さんのスタイルは、作家活動をされる前からずっと変わらないのでしょうか?
網代:そうですね。小さい頃から人形遊びみたいなことが好きで、空想でお話を作ったり、舞台劇のようなことをして遊んでいました。物語を想像して作るのが好きだったんですね。なので昔から自分の空想を描いているところは変わっていません。

ーーーそうなんですね。小さい頃からずっと絵を描かれていたということですが、何か教室などで絵を学ばれたりはしたんですか?
網代:絵はほどんど独学です。小学校から高校くらいは、机の端に落書きをするような感じで、絵を極めたい、とは思っていませんでした。デザインの専門学校ではデッサンはやりましたが、それくらいでしょうか。

ーーーでは、網代さんの作風は独自に生まれたスタイルなんですね。7年の間で、何か変化を感じていますか?
網代:昔は今よりももっとダークな絵を描いていました。それからもうちょっと絵本のような、物語のある絵を描きたいな、と思って。だんだんと明るくなってきましたね。最近はちょっとよくわからなくなってきました(笑)。 自分でもよくわからないことをしたいな、と思ってるんです。デザイナーをやっていたこともあって、構図とかレイアウトとか、ついデザインの影響を受けてバランスを取りたがるところがあるんですが、そういうものから自由になって、のびのびと描きたいなと思っています。もっと自分の世界を広げていきたい、という気持ちが強いですね。

ーーーそれでは、これからまた網代さんの新しい側面を拝見できるかもしれませんね。楽しみです! 作品が生まれるまでの、工程を教えていただけますか?
網代:妄想に耽っている時間が圧倒的に多いですね。頭の中にある自分の物語世界を膨らましていって、なんとなく形になったところから作り始めます。そこから仕上げまでは早いですよ。平面か、立体が、その時に頭の中の物語を表現するのに合っていると思った方で作ります。頭の中にイメージが出来上がっているので、色や形で迷うことはあまりないですね。頭の中の風景が消えないうちに、寝ずに一気に仕上げるので、最近は少ししんどいです(笑)。

ーーー網代さんの制作では、頭の中での時間が大切なんですね。物語世界を膨らませるのは、何かをしながらだったり、決まった場所があったりするんですか?
網代:特にないですね。家でも、電車の中でも、お店の中でも、どこでも。その世界に没頭してしまうので、電車の中だと乗り過ごしてしまうこともあります(笑) 没頭している間は側から見ると何もしていないように見えるんですが、頭の中は絶えず動いています。なので実制作時間を聞かれると少し困ってしまうんです。頭の中の時間が制作だと思っているので。

明るさと、物悲しさの共存する世界

ーーー制作をされる中で、生活スタイルのようなものは決められているのでしょうか。
網代:特に決めていません。1日中ぼーっとして(物語世界を膨らませて)いる時もよくあります。追い込まれてやるタイプなので、展示の前とかになると休みなく制作をしていますね。展示前なんかは気が立ってしまって、夜もあまり眠れないんです。頭の中を考えがぐるぐる回るので。そろそろ身体に良くないなとは思うんですが……。

ーーーそうなんですね。画材や道具については、愛用されているものはありますか?
網代:アクリルという絵の具を主に使っているんですが、乾くのが早くて、スピード感のある描き方に丁度良いんです。せっかちなので、僕に合ってるんですね。メーカーには特にこだわりはないですね。自分の好きな色があればどこのものでもいいなと思っています。道具は、実は100円ショップの4本入りくらいのナイロンの筆を使っています。高いのも色々試したんですけど、結局これが一番使いやすくて。物持ちもいいので、長く愛用しています。

網代さんが愛用している筆。左側は、これからできあがる網代さん手作りの額縁です

ーーーお好きな色やよく使われる色は意識されているんですか?
網代:なぜか昔からピンクが好きですね。やわらかいピンクをよく使います。あとは金が好きです。金閣寺とか、タイのお寺とかはみんな金ぴかなのでテンションが上がりますね。

ーーーそうなんですね! 金ぴかのお寺、少し意外です。そういったものからも作品へのインスピレーションを受けているのでしょうか。
網代:そうですね。僕の作品はどちらかというと、そういう華やかな世界が滅びた後、栄えた王朝の荒廃後とか、そういうイメージなんですけど。煌びやかなものと、朽ち果てたもの、両方からインスピレーションをもらっています。作品の中でも、明るい感じと物悲しい感じ、その両方がごっちゃになって共存しているものを思い浮かべたりしていますね。

ーーー何か他に作品へのインスピレーションを受けているものはありますか?
網代:音楽や映画が大きいと思います。90年代の洋楽とか、J-POPなんかをよく聴いていますね。映画も90年代が多いです。一番アツかった時代が90年代なので、昔好きだったものを今も繰り返し聴いています。あとは昔からアメリカが好きで。何度か旅行にも行ったんですが、丁度最初の個展を開く前にも、NYのギャラリー巡りに行ったりしていました。はじめて好きになった画家もアメリカの方でしたね。モーゼスおばあさん、っていうすごく可愛らしい絵を描く方なんですが、その方の画集を見て絵描きになりたい、って思ったんです。

ーーー今年のもみじ市のテーマ「ROUND」と聞いて最初に思い浮かんだものは何でしたか?
網代:1年、365日ですね。1年は丸いイメージがあります。カレンダーはあまり意識しないんですが、制作の中で季節をイメージしているところがあって。季節って巡るじゃないですか。だからROUNDだなあと思っていました。僕の作品はだいたい冬を思い浮かべています。夏が一番遠いですね。僕は逆に夏が好きなんですけれど。犬が好きなのに猫ばかり描いていたり、自分にないものを描きたがるのかもしれません。

ーーーありがとうございます。今年のもみじ市は、どんなものを持ってきてくださるご予定ですか?
網代:額付きの小さな絵や、立体の人形なんかも持って行きたいなと思っています。額は一から手で作っています。自分の作品に合うものがみつからなくて作り始めたのがきっかけだったんですが、額を何個か作って、そこに合う絵を描いていく、というイメージです。せっかくだから丸い額も用意したいですね。去年はあまりディスプレイにこだわれなかったので、今年できるかわかりませんが、いつかブース自体を大きな舞台劇のような、ブース全体が作品のようなブースを作れたらいいなと思っています。

ーーー全体が網代さんの世界観に包まれたブース、ぜひ拝見してみたいです! 網代さん、ありがとうございました。

額と絵、ふたつがぴったりとマッチした、小さな絵も並びます。

〜取材を終えて〜
7月に東京で個展を開催された網代さん。初めてお会いしたのは、その展示会場でのことでした。そこには、今までの重厚な塗りから転じて、軽やかにどこまでも広がっていくように描かれた作品の数々が並んでいました。今回作品についてのお話を伺い、止まることなく溢れ出るその作品世界の源を垣間見ることができて、これからどんな表現でそれらを見せてくださるのかとても楽しみになりました。網代さん、ありがとうございました。

(手紙社 本間火詩)

【もみじ市当日の、網代幸介さんのブースイメージはこちら!】

置物、ブローチ、小さな絵……もみじ市の会場には、立体作品も並べてくださるそう。来年のカレンダーもお楽しみに!