ジャンル:CRAFT

赤畠大徳(14日)


【赤畠大徳プロフィール】
「鍛冶屋」と聞くと、無骨で無口、職人気質な人の姿を想像してしまいますが、そんなイメージとは対照的に、人当たりがよく朗らかな性格の赤畠大徳さん。笑顔で会話しながらも、包丁の話となると途端に真剣な表情になり、親身に相談にのってくれます。その背景には、「血の通ったコミュニケーションを通して鉄を打つ」という信念が。揺るぎない想いが込められた作品には、確かな“熱さ”と“重み”を感じることでしょう。

【商品カタログ予習帳】
黒打三徳包丁180㎜(全長:約310㎜)
鉄と鋼の両刃の包丁で、利き手に関係なく、お料理全般にご使用いただけます。柄も手づくりです。

黒打パン切り包丁210㎜(全長:約350㎜)
鉄と鋼の両刃の包丁で、利き手に関係なくご使用いただけます。近所の「きりん屋」というぱん屋さんに作ったのがきっかけです。

ステンレス打ち出しフォーク(全長:約150㎜)
ステンレスの丸棒を火床で赤め、金鎚で叩き、形作ります。果物やケーキにどうぞ。

ステンレス打ち出しスプーン(全長:約150㎜)
ステンレスの丸棒を火床で赤め、金鎚で叩き、形作ります。アイスやヨーグルトにどうぞ。

デザートナイフ(全長:約210㎜)
ステンレスの丸棒を火床で赤め、金鎚で叩き形作り、柄をすげてあります。程良い太さで安定します。

デザートフォーク(全長:約190㎜)
ステンレスの丸棒を火床で赤め、金鎚で叩き形作り、柄をすげてあります。程良い太さで安定します。

こどもフォーク(全長:約150㎜)
柄は、小さい手でも持ちやすいように、少し太めです。子供の遠足のお弁当用に作ったのが、きっかけです。

こどもスプーン(全長:約150㎜)
柄は、小さい手でも持ちやすいように、少し太めです。子供の遠足のお弁当用に作ったのが、きっかけです。

ステンレス打ち出しバターナイフ(全長:約170㎜)
ステンレスの丸棒を火床で赤め、金鎚で叩き、形作ります。菜切り包丁の様にと作ったのがきっかけです。

【スペシャルインタビュー「たぎらせる熱き想い」】
もみじ市に初参加の鍛冶屋・赤畠大徳さん。三重県にある鍛冶場を、担当の藤枝梢(手紙社)が訪ねました。

「5代目」として

ーーー鍛冶屋「かじ安」の5代目ということですが、昔から跡を継ごうと思っていたんですか?
赤畠:いや、そんなつもりは全然なく。大阪体育大学出身なので、体育教師になろうと思っていたんですよ。でも卒業後は就職せず、楽器屋でアルバイトをして過ごしていました。

ここは、おじいちゃんの代を最後に一旦閉めていたんです。小さい時のはっきりとした記憶があるわけじゃないけど、置いてある道具を見ながら、ふと昔おじいちゃんがいた頃のことを思い出し懐かしく感じることもあって。26歳の時に一念発起、京都の鍛治師に弟子入りし6年間の修行を経たのち、かじ安を再開しました。

ーーー修行時代で印象に残っていることはありますか?
赤畠:この時の師匠がよく言っていたことで、「刃物がなくなったら何もできない」という言葉。身近な料理に使う包丁はもちろん、農作業用の道具だったり、文房具だったり。みんな当たり前すぎて気がついていないけど、実は刃物って誰もが1日に1回は使っているんですよ。

ーーー赤畠さんが包丁を作る上で、心がけていることは何でしょうか?
赤畠:今の世の中は鍛冶屋さんが減ってしまったけれど、一流の人って本当にすごい。そういう人たちが上にいるってことを忘れずに、調子にのらないようにしないと(笑)。こうやってイベントとかで世に出してもらうことで、自分が作ったものをよかったって言ってもらえる機会も増えました。もちろんその言葉を疑うわけではないけど、あぐらをかいてしまったらあかんなって。

最高の一本を

ーーー包丁が完成するまでの過程を教えてください。
赤畠:まずは、鉄と鋼を重ね合わせて熱し、板状になるように叩くことから。この作業を鍛接と言います。金属を接合するときに最も一般的な溶接は、端っこだけをつけるものなので研いだら外れちゃうんですよね。鍛接は日本古来の包丁の作り方で、叩いて全面をくっつけるから研いでも大丈夫なんです。

高温の炎がメラメラと燃えている火床

ーーー火床の中の炎はどれぐらいの熱さなんでしょうか?
赤畠:大体1000度ぐらい。冬とか近所のおじいちゃん、おばあちゃんがやってきて、ここで暖をとっていたりもする(笑)。炎が黄色くなってきたら1000度に近づいた合図、十分に熱してから機械の鎚で勢いよく叩いていきます。

すごいスピードで打っていきます

ーーーすごい音ですね! それに火花も!
赤畠:こうやって鍛えていくことで、強靭な刃ができていきます。ある程度形が整ったら、金鎚で打って包丁の柄となる部分を作る。それをさらに薄く伸ばしていき、この状態のものを、ある温度からゆっくり冷まし、様々な工程(冷間鍛造、焼入れなど)を経て、研いで仕上げていきます。一本の包丁が完成するまでに要す時間は、およそ一週間ぐらい。それだけ時間をかけたうえでも、自分が100%いいと判断したものしか外には出さないようにしています。ダメだったものはまた1から作り直し。そうじゃないとお客さんに失礼だと思うんですよね。

血が通ったコミュニケーション

ーーー赤畠さんといえば、ホームページだったりSNSだったり、インターネットでの宣伝などを全くやっていないですよね。
赤畠:単純に、難しくてよく分からんっていうのがある。メールでのやり取りじゃないと嫌だとかいう人は、自分とは合わなくて無理だと思うし、そこは自動的に選別されている感じです。本当にいいなと思ってくれた人は電話してきてくれるし。

ーーー新規のお客さんは、どこで知ってくるのでしょうか?
赤畠:口コミですね。本当に外の力が大きい。本当は自分でいかなければダメなんだろうけど、どうしてもそういうのが苦手で。自分のものを「すごいんですよ! 使ってください!」って勧めることができない。でも、自分発信よりも周りから言ってもらう方が説得力もあると思うから、このままネットはしないで生きていくんじゃないかな。相手を直接感じられる商売の方が、自分には適しているので。

ーーー今でこそ、手紙社のイベントに引っ張りだこの赤畠さんですが、出るようになったきっかけは何だったのでしょうか?
赤畠:前に手紙社のスタッフさんがきりん屋に来た時に、包丁を買って帰ってくれて。「ぜひ何かでご一緒に!」と言われていたんだけど、どうせ社交辞令かなと思っていたんです(笑)。そしたら、昨年6月の「オーダーメイドの日」の時に本当に声をかけてくれて。

ーーーでは、この1年ちょっとの間のことなんですね! 今年の8月末〜9月にかけては、手紙舎2nd STORYで個展もやっていただきましたが、どうでしたか?
赤畠:正直すごいしんどかった(笑)。今まで作ったことがないものに挑戦しようと思って。きりん屋で使用している什器を作ったことはあったけれど、販売用としての什器をあんなにたくさん用意したのは初めて。大きい什器の場合、鉄と木材をビスで固定するのが一般的なのですが、ビスの使用は極力避けました。鍛冶屋として、手軽に取り付けられるものに頼るよりも、あえて手間のかかる鍛造で作ろうと。

個展時に作成した什器たち。木材と鉄が混ざり合い、いい味を出しています

ーーーいつもは細々とした雑貨が並んでいる手紙舎が、まったく違うお店になったようでした! もみじ市ではどんなものをお持ちいただけますか?
赤畠:基本的には、包丁やカトラリーをメインに持っていきます。個展の時よりは量も多めに作っていく予定です。

ーーー本日はどうもありがとうございました! 赤畠さんの包丁やカトラリーは力強い美しさを秘めていて、もちろん使い心地だって抜群。ぜひ、一人でも多くの方に手に取っていただきたいです!

〜取材を終えて〜
1月の「オーダーメイドの日」、8月末に開催した個展「鎚跡」、そしてもみじ市と、色々なイベントで関わらせていただいている赤畠さん。今回やっと念願が叶い、鍛冶場にお邪魔してきました。いつもお話好きな赤畠さんの姿を見ていただけに、作業中の真剣な表情を見て、職人としての誇りを感じました。鍛冶場の後はきりん屋にも連れて行っていただき、ほぼ丸一日相手をしていただいて……。今度は炎の暖かさが感じられる冬にでも、遊びに行かせてください!(手紙社 藤枝梢)

【もみじ市当日の、赤畠大徳さんのブースイメージはこちら!】
たくさんのカトラリーが並びます!