ジャンル:ILLUST&DESIGN

makomo

【PROFILE】
じわじわ笑える脱力系キャラクターを描かせたら、この人の右に出る方はいないのでは? 大阪を拠点に雑誌や書籍、紙もの雑貨など多方面で活躍するイラストレーター。個展と称して(!?)くだらないものを大きく描いた作品を発表することもあるとか。昔話をmakomo流に解釈した絵本をはじめて読んだときは、「とんでもないものを読んでしまった」と笑いが込み上げてきたなぁ…。
http://www.makomo.jp

【商品カタログ予習帳】NEKOZE Tシャツ。猫背の人はぜひ。NEKOZE Tシャツ。こちらは後ろ姿。makomo×BAG’n’NOUN スペシャルコラボバッグ。こちらは柄違い。makomoさんの『おもしろ絵本』シリーズの主人公などが手をつないでいます。柄のアップ。しっかりとした生地感や絶妙な色合いがかわいいです。一寸法師の小ささ…!(左)『ハムをもらった』(右)『ンーパ』。makomoワールドの扉を開けるZINEが各種揃います。

【スペシャルインタビュー「一度ハマると抜けられないmakomoワールドの魅力」】

ぬーんとした存在感と、まろやかな色、そしてじわじわおかしさのこみ上げるシチュエーションで独自のワールドを築くmakomoさん。脱力系イラストレーターの代名詞的作家でありながら、もみじ市にかける思いは全力でした。

ゆるくておかしいのに、インパクト大

私がはじめてmakomoさんの作品を見たのは、美容室でのこと。待ち時間に美容師さんが「おもしろい本があるんですよ」と手渡してくれたZINEが出会いでした。まろーんとした輪郭に、これまたなんとも言えないまろやかカラーで色付けされたイラストで描かれていたのは「うらしまたろう」。誰もが知っている、あの昔話です。1ページ1コマの絶妙なテンポで展開されていくお話は、淡々と進行しながらも「えっ?」「いやいや…」「(クスッ)」と、心をコショコショとくすぐる要素が満載。そのゆるーく静かなインパクトは私の記憶の中に刻み込まれ、その後、イベントなどでイラストレーター・makomoさんの作品たちに再会したとき「あの(変な絵本の)ときの!!」と膝を打ったのでした。

「おにぎりとオニ」。おにぎりの足、口?海苔?な口元など、いろいろ気になります。

聞けば、makomoさんのイラストレーターとしての作風を決定付けたのは、その絵本がきっかけの一つだったとか。

「ほぼ勢いでつくった『おもしろ絵本』が、思いがけず多くの人に作品を見ていただけるきっかけになって、他の読みものやグッズのテイストにも広がっていきました。もみじ市では新作として『北風と太陽と王様』を持っていくのですが、それでシリーズ12作目になります」

「SAVVY」2017年2月号『関西の神社105』に掲載の「すさのおのみこと」。ヤマタノオロチがカジュアルに首を切られています。

誰もが知っている物語だからこそ、ページをめくるごとに予定調和が崩される小気味良さ。「ももたろう」「うさぎとかめ」「シンデレラ」など、タイトルを聞けば浮かんでくる定番の絵柄を、大きく裏切る主人公の風貌にも「ちょっと待って!」とツッコミたくなります。ぬっとした手足や、やけにリアルな肌色、なんかちょっと見られているような目…。“makomoタッチ”とも言うべき画風のmakomoさんの作家への第一歩は、どのようなものだったのでしょうか?

うつぶせのイメージ。

「フラフラしていたときに友だちとフリーペーパーをつくることになって、そこにイラストを載せていました。そのフリーペーパーの内容が、毎号一人のアーティストを特集するというものだったので、ひょんなことから僕もギャラリーで展示をすることになりました。その空間があまりに広くて、これは誌面で描いているような小さい絵では場がもたないなということで、大きい絵を描いて展示したところ、とある編集者さんから仕事の依頼をもらって…。そう考えると、思ってもみないところからイラストレーターになった感じです」

箱につまっている人。

私も、現在『makomo shop』なるアンテナショップを運営しているギャラリー兼雑貨店・オソブランコで、makomoさんの展示を見たことがありますが、あの「ぬーん」としたイラストが大きな作品になった凄みは、思わずのけぞってしまうほど。古材などの異素材を用いた作品や、原画ならではのまったりとした色合いに、アーティストとしての側面も垣間みた展示でした。ひと目見て仕事を依頼した、その編集者の気持ちがわかる気がします。

もみじ市が“あたらしくておもしろい”ものを作るチャンス

「おもしろいものをつくりたいといつも思っていて。特に“あたらしくておもしろいもの”ができたときが一番うれしいんです。でも、生来のなまけものなので新しいものをつくるには外からの〆切が必要で(笑)、もみじ市の『それまでに新しいものをつくらなければ』というプレッシャーは苦しいですが、ありがたいチャンスだと思って取り組んでいます」

パルテノン多摩『恋するマルシェ』イメージイラスト。めでられている鳥の瞳に何かを感じます。

makomoさんがもみじ市に出店するのは今年で5回目。脱力系イラストレーターとして今やすっかり人気者のmakomoさんですが、もみじ市への思いを尋ねると意外にも(?)力の入ったコメントが。

『残念ながら、その文章では伝わりません』山口拓朗・著(だいわ文庫)の挿画の一つ。

「初めて参加したときは、そんな大層なイベントとは知らずに(スミマセン)参加して、回を重ねるごとにもみじ市のすごさを実感しています。他の作家さんたちと作品を一緒につくるわけではなくても、みんなで苦しみながらもみじ市をつくっているという連帯感もありますし、ちょっとした勝負のような思いもあって。年々楽しさが増しています。当日まではバタバタなんですが、いざ始まると開放感に包まれて…。河川敷を流れる空気が心地いいんですよね」

ダブルカッパ。

その言葉に込められていたのは、ゆるーくぬるーいmakomoさんのイラストに潜んだ、「おもしろいものをつくってやろう」という強い意志。今年のもみじ市では、どんなmakomoワールドに引き込んでくれるのでしょうか?

イカとタコ。足の数にもご注目ください。

「今年は『かっこいい顔Tシャツ』『裏返して着ることを提案するTシャツ』『誰が買うんだ大柄ハンカチ』『BAG’n’NOUN×makomoのコラボバッグ』で勝負です。『2018年カレンダー』もなんとかできました。あと、デザイナーの永井ミキジさん(mikiji.tv)に協力してもらっておもしろい古物を持ってきてもらいます。makomoと古物のマリアージュを楽しんでもらえたらと。今年はテーマが“ROUND”ということで、見かけると目と鼻の穴が丸くなるものを持って行きます。何か引っかかって、会場を一周してやっぱりほしくなる、そんな気持ちになってもらえたらと思います!」

『shy 2018』2018カレンダー用イラスト。「shy」をテーマにゆるおもしろい12ヶ月が待っています。

〜取材を終えて〜
じわじわくるおかしさが魅力のmakomoさんの作品たち。ご本人もその“じわる”おかしさ漂う雰囲気なのですが、もみじ市への思いからうかがえたのは、そのゆるさからは想像もつかない、アーティストとしての強い意志や熱意でした。makomoと古物のマリアージュ…。想像もできないので、実物をどうぞお楽しみに!(大橋知沙)

【もみじ市当日の、makomoさんのブースイメージはこちら!】

目と鼻の穴が丸くなる、makomoワールドをお楽しみに!