ジャンル:ILLUST&DESIGN

岡崎直哉

【岡崎直哉プロフィール】
移り変わる季節、過ぎ去る時間の中で、変わらない美しさ、そして変わる美しさを鮮明に映し出す岡崎さんの写真。暗室にこもり、自らの手でプリントした写真と、それを素材にした紙もの雑貨の数々。今回のテーマ“ROUND”に合わせ、完成した新作は、今までとは一味も二味も違う作品に仕上がりました。私(担当:鈴木)が愛してやまない、“ちょこっと”シリーズも健在。河川敷に広がるノスタルジックな紙ものをどうぞご覧ください。
http://www.color-travel-guide.com/

【スペシャルインタビュー「写真家『岡崎直哉』の誕生と、もみじ市」】
グラフィックデザイナー、写真家として活躍する岡崎直哉さんに、鈴木麻葉(手紙社)がお話を伺いました。

最初は建築を学んでいました

ーーー現在、グラフィックデザイナー、そして写真家として活躍する岡崎さんですが、グラフィックデザイナーになったきっかけはなんですか?
岡崎:実は高校では建築を学んでいました。椅子のデザインとかをしたかったんです。

ーーーそうだったんですね! 初耳です。では、なぜグラフィックデザインの道へ?
岡崎:⾼校の卒業制作で作った図面をまとめる時に、名前とタイトルだけが⼊った表紙の⼈が多かったのですが、なぜか僕は表紙をグラフィックっぽくつくりました。その時、⾃分がやりたいことは“こっち”なのではないか? と思い、デザインの専⾨学校に⾏きました。

ーーーそれはかなり思い切りましたね。
岡崎:そうですね。ただ、1年時はグラフィックとインテリアの両方を学んでいました。結果、グラフィックに行きました。

ーーー元々グラフィックデザインに興味はあったのですか?
岡崎:元々レコードが好きで……。ジャケットの裏面をみたときにグラフィックデザイナーという仕事を知りました。レコードのジャケットを自分でデザインしてみたいとは思っていましたね。

ーーー専門を卒業後はデザイン会社に就職したのですか?
岡崎:音楽関係の会社でデザインの仕事に就きました。就職した頃にはCDが主流になっていたので、CDジャケットのデザインをしていました。その会社には4年ほど勤めました。

ーーーその後、転職したのですか?
岡崎:いえ、4年間働き、24か25歳の時に、自分の実力を試したいと思い立ちフリーになりました。ただ、自分からアクションを起こす事もしなかったので、無名なぼくなんかに声が掛かるはずもなく……。案の定仕事の依頼は来ず、1年後にまた違うデザイン会社に再就職しました。

ーーーそこではどのようなデザインを?
岡崎:映画ポスターのデザインを主にやっていました。

ーーー映画とCDジャケットのデザインでは違うものなのですか?
岡崎:違いますが、似ていますね。CD ジャケットは、⾳源を聴いて楽曲やアーティストのイメージでデザインを組みますが、映画も似ていて、映像をみたそのイメージでデザインを考えます。⾳楽と映像は共通している部分が多いので、どちらのデザインもやっているデザイナーさんは多いと思います。

ーーー今のように写真を撮影し始めたのはいつごろですか?
岡崎:デザインの仕事をしていると、カメラマンさんとやり取りすることが多いんです。今ではデジタルですが、当時写真はフィルムで、カメラマンさんの焼き⽴てほやほやの写真を受け取りに⾏っていました。その受け渡しの際に、実際に暗室で作業している姿や、暗室の独特な雰囲気を⾒ていたら、ぼくも写真をやってみたいと思うようになりました。それがきっかけです。元々デザインの仕事をしながらものづくりもしたいと思っていました。写真を始めたばかりの時は、今とは全く違いアート寄りなものを撮っていました。わざとブレさしたり、ファインダーを覗かず感覚だけで撮ってみたり、ムービーの8mmフィルムでコマ撮りし、フィルムをスキャンしてそのまま拡張してみたり…。思うままにやっていました。

ーーー現在のような写真を撮るようになったのはいつからですか?
岡崎:ブローニーのカメラを買ってからですね。PENTAX645を購⼊し、そこからテイストがガラッと変わりました。

もみじ市は、ぼくが今まで知らなかった世界

ーーー岡崎さんが初めてもみじ市に参加したのは2010年、今から7年前ですが、元々もみじ市はご存知でしたか?
岡崎:当時、北島さん(現・⼿紙社代表)が編集⻑をしていた雑誌で、ぼくの写真を掲載させて欲しいとお声がけいただき、そこで元もみじ市事務局スタッフのセソコさんと出会いました。しばらく経って、編集⻑とセソコさんが⼿紙社という名で活動していると聞き、「もみじ市というイベントをやっているから、ぜひ遊びに来てください!」とお誘いを受けました。その時、はじめて知りました。

ーーー実際にいってみての印象はどうでしたか?
岡崎:どちらかというとぼくが今まで知らなかった世界だなあ、と思いました。すでにもみじ市独特の空気感があって、そこにいる人みんなが幸せそうに見えました。ぼくは今まで、誰かのためにものづくりをしていたのではなく、自分が作りたいから作る、という、わりと個人的な動機だったのですが、もみじ市の作家さんは誰かに使ってもらうための作品を作っているように見えたんです。お客さんとして参加したもみじ市はとても楽しみましたが、作家としての自分に縁があるなんて、その時は思ってもみませんでした。

ーーーそうなんですね! その気持ちとは裏腹に翌年、もみじ市にご出店することとなったわけですが、声がかかったときどんな気持ちでしたか?
岡崎:最初は、僕が作っているカラートラベルガイドを⼿紙舎の店頭に置きたいというお話から、ぜひもみじ市でも並べてほしいとお誘いがきました。とても嬉しかったのですが、すごく悩みました。元々、カラートラベルガイドは売るためのものではなく、⾃分が最近やっていることを⾝近な⼈に知ってもらうために作っていたので……。それに自分がもみじ市の世界観に合っているのか、少し不安もありました。でも、何がきっかけか忘れましたが、やはり出てみようと思って2010年初めてもみじ市に出店しました。

ーーー初出店してみてどうでしたか?
岡崎:それまでイベントに出たことがなく、作品を売った経験もなかったので、どうやっていいか全くわかりませんでした。ディスプレイの仕⽅もわからず最初は酷いものでした。当時は作品数も少なく、カラートラベルガイドと、東京と富士山をモチーフにしたおみやげセットを持って行きました。

ーーーそうなんですね。いつからポストカードやレーターセットなどを作り出したのですか?
岡崎:ここ3-4年くらいです。最初の3-4年は⾃分が好きなものだけ作っていましたが、今は、なるべくたくさんの人に作品を手に取って頂けるよう、実用性のあるものを作るようになりました。

当日も並ぶ、岡崎さんの作品たち

ーーー岡崎さんにとってもみじ市出店者はどんな存在ですか?
岡崎:仲間だと思っています。ライバルだと思ったことはないですね。もみじ市はいろいろなジャンルのつくり手が集まるので、話していて楽しいです。

岡崎直哉の作品が出来上がるまで

ーーーもみじ市のきっかけとなったカラートラベルガイドや、岡崎さんのブースに並ぶ作品の制作過程を教えてください
岡崎:写真を撮ったあと、自ら暗室でプリントします。その後、写真の並び順を決め、デザイン作業に移ります。デザインを組んだら印刷し、断裁します。ある程度は、写真を焼く前に作品イメージを決めています。

ブックカバーを断裁する様子

ーーー手焼きした写真をどのようにデザインしているのですか?
岡崎:まずは、焼いたのもを並べ、順番やイメージを固めます。そのあと、写真をスキャニングしデータ化し、実際のデザインに落とし込みます。

ーーー手焼きのいいところはなんですか?
岡崎:やはり僕は柔らかい写真が好きなので粒子が丸いフィルムカメラを使います。その上で、自分で焼く時に引き伸ばし機のレンズと印画紙の距離が手焼きにしか出せない独特な空気を生み出すんです。

ーーーそれは、なんとなくわかります。私も学生時代、少し写真をやっていたのですが、この上なく真っ暗な暗室で写真を焼くというのは、他では体験できない時間ですよね。
岡崎:あとは、印画紙に写真が浮き上がってきたとき、終わったはずの旅の記憶も蘇るんです。まるで暗室の中で「小さな旅」をしているような。その時間がこの上なく楽しいです。

ーーー今まで撮影した中で、一番お気に入りの場所はどこですか?
岡崎:お気に入りとは違うかもしれませんが、自分が生まれ育った「足利」は思い入れがあります。カラートラベルガイドを作り出したきっかけは、身近だった古い商店街が大人になるにつれ閉じていくのが切なくて、その風景を残したいと思ったことがきっかけでした。なので、フィルムで写真を撮る時は街の空気感も撮影するようにしています。歩いていて「いいな」と思う場所を切り取っています。特別ではない、なるべく身近な風景です。観光地の途中にある路地とか。身近な風景にもたくさんいいところがあるというのを、自分が気付けるか気付けないかだと思います。

ーーー今年のもみじ市では、どんな“ROUND”を表現してくれますか?
岡崎:今回は新しい試みをしました。自分の作品を作る際、いつもテーマを持って作りますが、もみじ市のテーマは自分ではなかなか出てこないテーマが多いので、一瞬戸惑う事もありますが、今まで自分が作った事のない作品が生まれるのではと思い、毎回チャレンジする気持ちで望んでいます。ふだん風景写真の多いぼくですが、今回はテーマに合わせた、まるいフルーツを物撮りして作品を作りました。物撮りはほぼ初めてだったので、自分が思い描いていた写真にはまだまだですが……。新しい何かを見つけたような気がします。みなさんの反応が今から楽しみです。

今までとは一味も二味も違う新作にご注目ください!

ーーー岡崎さん、どうもありがとうございました。

〜取材を終えて〜
私は入社前より、岡崎さんの作品の大ファンでした。岡崎さんの担当になるのは、昨年のもみじ市、紙博に引き続き3回目。自分自身も大好きな作品を、たくさんの人にご紹介できるというのは、とても誇らしく、それでいてこれとない緊張感があります。そんな中、久々に(と言っても3カ月ぶりに)お会いした岡崎さんは、変わらず気さくにお話ししてくださり、改めて担当になれてよかった! と思いました。お会いするたびに、私が撮った写真を「見たい」とおっしゃってくださる岡崎さんに、いつかお見せできるように、写真の腕も鍛えます……。岡崎さん、楽しい時間をありがとうございました。(手紙社 鈴木麻葉)

【もみじ市当日の、岡崎直哉さんのブースイメージはこちら!】


美しく並ぶ紙ものにきっとあなたも目を奪われます。