ジャンル:CRAFT

Rap!Rap! 山田憲栄

【Rap!Rap!山田憲栄プロフィール】
会社員から一変、ものづくりの道を志し京都伝統工芸専門学校へ。金工の基礎を学んだのち、2010年、「Rap!Rap!」として活動開始。代表作のブローチは実に80種類以上の絵柄があり、着色せず、金属本来の色や化学変化によって起こる変色を巧みに利用しています。アトリエを訪問した際に実演してくれた、バーナーの火でみるみる変化していく色彩はまるで魔法のよう!
http://raprap-n.blogspot.jp


【商品カタログ予習帳】
鯛ブローチ。こっくりと深い赤と錆びたような質感が人気の定番ブローチ。

燕ブローチ。すらりとしたフォルムと鈍色の色彩が美しいブローチ。

裁ち鋏ブローチ。使い込まれたアンティークのような佇まい。

(右)円ピアス(左)円ピアス波型。シンプルなようで輪郭にひとクセあるディテールが素敵。

小花ピアス。チェーンの先でゆらゆらと揺れる花が愛らしいピアス。

バレッタ。細かな格子模様がシンプルながらも大人っぽいヘアアクセサリー。

金銀、大小さまざまなボタン。洋服のポイントにしたり、ヘアゴムなどにアレンジしても。

スッカラ(楕円・円)大・小サイズ。平たい匙がカトラリーとしてもサーバーとしても優秀。

楕円皿。オーバル型は、コースター兼プレートとして、ちょっとしたおやつを添えても様になります。

8.5cm丸皿。薄氷のような槌目が美しいプレート。

20cmトレイ皿。トレイとしても使える大きめのプレート。

【スペシャルインタビュー「時を経たような金属の色を表現する、Rap!Rap! 山田憲栄さんのものづくり」】

真鍮やアルミなどを使ってブローチや生活道具などを作る金工作家・Rap!Rap! 山田憲栄さんに、大橋 知沙(手紙社)がお話を伺いました。

着色ではなく、金属本来の色を引き出す魔法

はじめて見たとき、なにで色付けしているのだろう? と不思議に思いました。ちょっとくすんだ赤、鈍い光を宿す黄金色、枯葉のようなダークブラウン……。その色彩の中に、さらに複雑な色のグラデーションを見つけたとき、それが塗料ではなく金属本来の色なのだと気がつきました。Rap!Rap! 山田憲栄(やまだのりはる)さんのブローチの色は、金属に化学変化という魔法をかけて生み出されています。

深い赤や錆色、青銅色まで色彩豊かなプローチたち。

もみじ市には初出店となるRap!Rap! 山田憲栄さん。すでに布博の「ブローチ博」や関西・東京蚤の市の「豆皿市」などでは、金属の風合いを生かした作品で人気を集めています。山田さんの作品の特徴は、何といってもその “色”と“軽さ”。色づいた紅葉や錆び朽ちた金属片を思わせるグラデーションは、見つめるほどに引き込まれてしまう深い深い色彩です。ブローチは、身につけると驚くほど軽く、金属であることを忘れてしまうほど。美しい模様のプレートやシンプルなカトラリーも、スリムで軽やかな質感です。

実際に模様を打ち出しているところを見せていただいたプレート。この後、リムに加工を施して仕上げられます。

「ブローチなどの身につけるものは特に、金属の重さや硬さを感じさせないように意識しています。と言っても、金属にさらに色を塗ってしまうと、今度は金属そのものの質感が隠れてしまうのでもったいない。色を塗った方が表現の幅は広がるけれど、金属という素材本来の性質を引き出したかったんです」

工房の様子。さまざまな道具や材料がずらりと並びます。

そう語る山田さんは、「作っているところを見てもらう方がわかりやすいかな」と、目の前でブローチを作って見せてくれました。これまで作ってきたものも含めると100種類以上はあるというデザインの中から、ロングセラーのモチーフである「鯛」を作ります。鯛の形に切り出した銅板に、ウロコやヒレなどの模様を刻みつけます。しっぽや腹の部分には金属箔を置き、バーナーを点火すると……。

ブローチがどうなっているのかは、まだ炎の中……。

みるみるうちに、錆色のにじむ深い赤が姿を現しました! しっぽや腹の金属箔は溶け、赤との境目に朽ちたような質感を残しつつ、くすんだ白銀色に変化しています。目の部分に小さな鋲を打つと、鯛はまるで命を吹き込まれたかのように生き生きと存在感を放ちます。

色と瞳を与えられた鯛。このひと手間でぐっと存在感を増します。

金属の持つ性質と化学変化を巧みに利用しながらも、色の出方や錆びの雰囲気は一つひとつ違います。赤、茶、黒、鈍色や青銅色などの古びた色彩のほか、金属そのままの色も含めると、着色にも劣らない豊かな表現に驚かされます。

新しいものを生み出す力と、形にする力

「ものづくりの道に進もうと決めた時、最初から最後まで自分の手で作れること、作業と作業の間に待ちが少ないことなどの理由から、鍛金を選びました。金属という素材の可能性に惹かれたということもあったと思います。会社を辞めて、鍛金・彫金の専門学校に通ったのですが、そこで出会った師がおもしろい人で。『教えたら、それしかせんやろ』と言って、全然細かく教えてくれない。完成にいたるまでのプロセスは一つではなく、失敗しながら第二第三のプロセスを自分で生み出してみろというスタンスでした」

さまざまな模様を打ち付ける金槌も自作。出したい質感によって使い分けているそう。

その教えを軸に、卒業後も独自に道具や手法を試行錯誤しながら、Rap!Rap!として活動をスタート。2011年ごろ、イベントでブローチを販売したところ、女性客を中心に人気を集めます。日常の中でふと思いついたモチーフを次々と形にしながら、それに似合う金属や色合いを探すうちに、化学変化で金属の色を引き出すという手法が確立されていったそう。今では、ブローチはRap!Rap!のアイコン的存在になりました。

同じモチーフでも、色の出方は一つひとつ違います。

もみじ市では、これら人気のブローチたちのほか、初めて挑戦するというピアスやバングルなどのアクセサリーも登場します。

「何度か手紙社さんに『耳飾りも作ってください』と言っていただいたことがあって。男性の僕にとって、自分では身につけないアクセサリーという分野をどう創作するかは難しくて、手をつけられずにいたんですが、今回はチャレンジしてみようと思っています」

その心境の変化について、山田さんはこう話します。

「作家というのは、“好きなものを作っている”ところもありますが、選んでいるのはお客さんだったり、取引先のお店の方だったり、作家をとりまく周りの人々。僕の作るアクセサリーを『見てみたい』と言ってくれる人がいるなら、その言葉を自分なりに形にして、提案してみるのもおもしろいなと。そういう意味で、もみじ市が自分の周り(=ROUND)の声を形にする、発表の場になればいいなと思っています」

取材時、試作中だったアクセサリーのパーツたち。どんな仕上がりになるか楽しみ!

そう言って見せてくれた試作段階のアクセサリーたちは、どれも山田さんらしく軽やかな質感で、シンプルながらも造形にひとひねりあるものばかり。もみじ市が、Rap!Rap! 山田憲栄さんのものづくりとどんな化学反応を見せてくれるのか、今から楽しみでなりません。

〜取材を終えて〜
取材時、プレートやブローチを実際に目の前で作ってみせてくれた山田さん。その作業は流れるようにスムースで素早く、しかしディテールの要所では丁寧に手間がかけられていて、一連の動作にじーっと見入ってしまうほどでした。職人としての効率も大切にしながら作家としての表現手法を磨く姿に、作り手の美学を感じた取材でした。(大橋知沙)

【もみじ市当日の、Rap!Rap! 山田憲栄さんのブースイメージはこちら!】

見ればみるほど迷ってしまう、種類豊富なブローチたち。アクセサリーやテーブルウェアもあり……ますますどれにしようか決められません!