ジャンル:BREAD

七穀ベーカリー

【PROFILE】
別名「飛び出すパン屋」。自家製酵母パンやココナッツオイルで揚げたてのドーナツを引っさげ、日本全国の素敵な場所へと飛び出していくスタイルが人気です。店主の山本洋代さんは、毎回テーマに沿った楽しいメニューを考えてくれるほか、時にはお目当ての出店者に会いに行くほどのもみじ市好き。ひたむきな彼女の姿勢に感動して、食材を提供したり、商品をコラボするもみじ市メンバーも多いんです。
http://759bakery.jp

【商品カタログ予習張】ウインナードーナツパン。成城城田工房さん特製あらびきウィンナーに、甘酒ザワークラウト、七穀ソース 赤いトマト添え。(左)お花のハーブティ ウスベニアオイ。添えてあり完熟パイナップルのジャムを注ぐと、みるみる色が変わります!(右)パイナップルグリーンティ。左から、七穀ソース 赤いトマト、ピーナッツバター、かけるジャム 完熟パイナップル、メープルナッツ。七穀グラノーラ50g <定番>と<大人珈琲>。その名の通り7種類の穀物やナッツでできています。冬のレモンケーキ。口溶けの良いチョコレートとレモンの風味が絶妙です。豆乳ドーナツ。ココナッツオイルで揚げたてのおいしさを召し上がれ!パンとおいしいお茶。美しい紫色のハーブティー。自家製天然酵母のパンいろいろ。噛みしめるほどにしみじみおいしいパンが並びます。

【スペシャルインタビュー「もみじ市に恋い焦がれて。七穀ベーカリーのひたむきな夢」】

大阪府寝屋川市・香里園のパン&ベーカリーカフェ・七穀ベーカリー。「飛び出すパン屋」として全国各地のイベントを飛び回る店主・山本洋代さんの情熱を支えていたのは、もみじ市へのまっすぐな恋心でした。

終わらない片思いと、自分を照らしてくれる存在

——はじめてもみじ市に出店されたのが、2013年。七穀ベーカリーさんにとって、今年で5回目のもみじ市となりますが、この5年を振り返っていかがですか?

山本:もみじ市は私にとって、ずっとずっと好きな人に片思いしているような存在なんです。まだ会社員をしながらパンを作っていたころ、たまたま手に取った雑誌でもみじ市の記事を見つけたときに、すごくワクワクして。「大人がこんなに一生懸命になって作り上げるイベントがあるんや」って。もみじ市に出たい一心で、手紙社さんのつつじヶ丘のお店に行って、お会いできた渡辺洋子さんに「もみじ市に出たいんです!」と思いを伝えて…。今思えば告白みたいな感じでしたね。その年はもみじ市が開催されない年で、でもその翌年、声をかけていただいて。それからは毎年、この季節になるともみじ市のことで頭がいっぱいです。始まる前も、終わった後も、ずっともみじ市のことを考えている。ほんまに片思いみたいなんです。

香里園の店舗には、たくさんのパンが並ぶほか、イートインやワークショップのスペースもあります。

——山本さんのその一途な思いに感動して「次の年も」とお声をかけさせていただいているので、両思いだと思いますよ。

山本:ありがとうございます。でも、回を重ねるごとに、自分の未熟さをひしひしと感じて…。毎回、今自分ができることのひとつ上を目指してやっていて、終わった後は「やりきった!」って思うんですけど、翌日になると「もっとできたんじゃないか、こうしたらもっと喜んでもらえたかも」って反省が押し寄せてきて。また片思いが始まるんです。

——毎回「今自分にできることのひとつ上」にチャレンジされるというのは、ものすごい情熱だと思います。

山本:初めて出店させてもらえることになって、しかも2日間ある。遠方からの参加なのでパンの追加はできないし、七穀ベーカリーを知らないお客さんたちに、どう自己紹介できるかということを考えていました。そうして生まれたのが、自家製酵母の生地をココナッツオイルでその場で揚げる「豆乳ドーナツ」。今ではうちの看板商品ですが、もみじ市があったからこそ誕生したメニューです。毎回、このドーナツをどうやってもっとおいしく食べていただこうかと考えて、もみじ市とともに七穀のパンも豆乳ドーナツも成長してきました。

こちらが、もみじ市をきっかけに看板商品として定着した豆乳ドーナツ。ぷくぷくとおいしそう!

——5年間を振り返って、特に心に残っている年はありますか?

山本:2年前、ちょうど父が亡くなった年のもみじ市で、片付けが終わって京王閣の2階から空を見上げたら、真正面に大きなお月さんが見えたんです。そのときに、「父が見ててくれている」という思いが、込み上げてきて…。やっと少し、自分を褒めてあげられるような気がしたんです。もみじ市は、手が届かない月のような存在で、それでも、いつだって頭上で私を照らし続けてくれている。そんなふうに思いました。

パンをかこむ、幸せな食卓を作りたい

——会社員をしながらパン作りをされていた、とのことですが、こうして「飛び出すパン屋」として全国のイベントを飛び回ったり、実店舗をオープンされたりすることを、当時から夢見ていたんですか?

山本:好きでパンを作って手作り市で販売したりしていたんですが、最初はパン屋さんになろうなんて思っていなかったんですよ。でも手紙社の北島さんが以前編集長をされていた『自休自足』の「小さなパン屋さんのつくり方」という特集を見て、目からウロコだったというか! 立派な設備やたくさんのスタッフを揃えられなくても、小さくても自分らしい店を持てばいいんだって。それからは夢中で、色んな教室に通って自分のパンの味を探していきました。

——パン作りにおいて大切にしていることは何ですか?

山本:食べるって体を作ることやから、すごい責任重大で。おいしいっていうのは大前提なんですけど、安全安心な素材を使いたいと思っています。丁寧に作られた素材を、できるだけ最小限のバランスで使って作りたい。七穀のパンは、ひと口めからしっかり味がするというよりも、1個全部食べ終わったときに「おいしかったね」と言ってもらえるようなパンでありたいんです。その人の食卓の上で、何か付けたり料理と組み合わせたりして、よりおいしく食べてもらえたらなって。

店主の山本洋代さん。明るく前向きな人柄に惹かれて、自然と作り手仲間が集まります。

——最近は、ピーナツバターやジャムなど、パンに合わせるさまざまなアイテムも作られていますよね。

山本:パンに付けるものをつくり始めたきっかけは、ピーナツバターでした。私、亡くなった父とすごく仲が良くて…。父は不動産屋を営んでいたんですが、パンとコーヒーが好きで、自分で豆を取り寄せてブレンドしては、お客さんに出すような人だったんです。不動産屋なのに(笑)。喫茶店をやることが夢だったそうで、私が店を持つことを誰より応援してくれて、一緒に店づくりを楽しんでくれました。その父と、生前よく食べていたのがピーナツバターのトーストだったんです。不動産屋の小さなテーブルで、向かい合って、コーヒーとピーナツバタートーストを食べていたのが幸せだったなぁって。そう考えると、パンだけでなく、誰かと囲む食卓を楽しくするものをいろいろ作りたくなったんです。

——今回のテーマが「ROUND」だと発表された際、しばらくして「パンをとりまく調味料やペーストを持っていきたい!」と仰ってくれましたね。

山本:これまで、夢中になってドーナツをおいしくしようと力を注いできて、まさに“一周回って”原点に返ったような気がします。私が父親と囲んでいたような、パンのある幸せな食卓を作りたい。その食卓に、七穀のパンや瓶詰めをのせてもらいたいんです。

——パンをとりまくおいしいものたちが並ぶ食卓…。素敵です! お父様が見られたら、きっと感激すると思います。例えばどんなメニューが並びますか?

山本:その場でお召し上がりいただくものは、成城城田工房さんのウィンナーを甘酒ザワークラウトと一緒にはさんだ「ウィンナードーナツパン」。もちろん定番のシュガーをまぶす豆乳ドーナツもあります。また「パンとおいしいもの」と題して、アルフェテ工作室さんにデザインいただいたパッケージの調味料などが並びます。ピーナツバターにジャム、七穀グラノラ、トマトソースやハーブティーも。人気のレモンケーキもありますよ。

店内にはもみじ市で出会った作家さんの作品があちこちに。誰よりもみじ市を愛していることが伝わってきます。

——本当に盛りだくさんですね。お話にも出たように、七穀ベーカリーさんはアルフェテさんや成城城田さんなど、もみじ市や手紙社で出会った作り手さんと一緒に何か作ることもとても楽しんでいますよね。店にももみじ市の作家さんの作品があちこちに!

山本:最初のころのように、自分自身が会場を見て回ることはなかなかできなくなりましたが、もみじ市の作家さんにはいつも勇気をもらっています。せっかく自分が大好きな、楽しい場所に出かけて行っているんだから、そこで出会った素敵なものを何かの形で紹介したいって思うんです。そのワクワクを知ってもらえたら、私が店を不定休にしても「飛び出すパン屋」をやっている理由が伝わるような気がして…。

——そのひたむきさと行動力、憧れを胸に抱き続ける気持ち、もみじ市の神様にもお客様にもきっと、伝わっていると思います。5年目のもみじ市での七穀ベーカリーを楽しみにしています!

〜取材を終えて〜
恋する少女のように瞳をキラキラさせながら、時には涙ぐみながら、もみじ市と七穀ベーカリーのこれまでを語ってくれた山本さん。どしゃぶりの雨の中ドーナツを揚げ続けてくれたこと、昨年深夜に車がバーストし「もみじ市に行けないかもしれない」と泣いたことなど、これまで大変なことはたくさんあったはずなのに、全く色あせない山本さんのもみじ市への情熱と憧れに、胸がいっぱいになる取材でした。神様、今年はどうか車がバーストしませんように!(大橋知沙)。

【もみじ市当日の、七穀ベーカリーさんのブースイメージはこちら!】

テーマ「ROUND」に合わせて考案した「パンとおいしいもの=BREAD&DELICIOUS FOOD」を、活版印刷で制作したというポスターが目印! パンにまつわるあれこれを、どうぞ探してみてくださいね。