ジャンル:ILLUST&DESIGN

坪井健

【坪井健プロフィール】
車やポスト、食器に野球少年など、日常でよく見かけるものをモチーフにイラストを描いています。平面だけでなく「ゾートロープ」や「ソーマトロープ」といった、絵が描かれた紙をくるくる回してコマ送りに見える、古くから伝わる視覚玩具を巧みに使い、自身のグラフィックを動かして遊べる立体のアニメーション作品を製作。手紙社主催の東京蚤の市では実際に視覚玩具を使ったショーを開催し、子供たちが夢中になって遊べる楽しい時間を作り出しています。僕(担当:上野)の好きな玩具は「ソーマトロープ」。竹とんぼを飛ばす要領で簡単に楽しめるので、気づけば回して遊んでしまう魔力のある玩具です。
http://www.hilameki.com

「塗り絵驚き盤」8コマのアニメーションおもちゃが作れるキット

「ソーマトロープ」2コマのアニメーションおもちゃが作れるキット

「塗り絵驚き盤」8コマのアニメーションおもちゃが作れるキット

「折り紙」

「A5カード」メッセージカードなどに

「A4ペーパー」ラッピングなどに

【スペシャルインタビュー「夢を与える、視覚玩具ともみじ市」】
日常から面白そうな物事を集め、それを視覚玩具にして披露している、イラストレーター・アニメーション作家の坪井健さん。数々の視覚玩具を見せてもらいながら担当:上野樹がお話を伺いました。

アニメーションとの出会い

ーーー大学ではどのような事を学んでいたのですか。
坪井:大阪芸術大学で情報デザインという当時では尖ったことをやっていました。ちょっと変わったことをしようという風潮の中グラフィックの勉強をし、パソコン上で出来るデザインを色々試していました。

ーーーアニメーションを作るようになったきっかけを教えて下さい。
坪井:20年位前にflashやweb上で、静止したイラストが動くという手法が持て囃された時があったんです。今では有名になりましたがGROOVISIONSのアニメーションやドローイングアンドマニュアル社が当時行っていた「モーショングラフィックス展」という映像の表現に魅せられ、これは面白いぞと思ったのがきっかけでアニメーションの世界に進むことにしました。

ーーーそれからはずっとアニメーションの制作を?
坪井:当時はコンピューター上で描いたグラフィックが動くというのが新鮮であり、まだ未知の部分でもあったんです。仕事としても確立された分野ではなく、周りからはこの分野に行く事を不思議がられたりもしました。 それでも、“描いたものが動く”という原始的な所に魅力を感じて、これを突き詰めていこうと思うようになりました。それからは在学中にグラフィックの仕事も少しずつ始め、卒業後はアニメーターとしても活動したこともありました。作家活動と仕事を両立させて、関東での仕事が増えてきたのをきっかけに拠点を東京に移しました。

平面から立体へ

ーーー視覚玩具というジャンルに行き着いたのはどういった経緯なのでしょうか
坪井:最初から視覚玩具を作ろうと考えていたわけではなくて、アニメーションを作っていこうと考えた末に辿り着いたものがそれでした。物を作っていく時に、最初に紙を使って何か出来ないかと考えていました。紙には2.5次元的な所があると思っていて、ただの平面でも折り曲げれば立体にもなるし、折り紙のように自由自在に扱うことが出来るじゃないですか。自分はあくまでもイラストレーターであり平面の上での表現をしようと考えているので、この素材が自分に一番合っていると思い、紙を使ったアニメーションを作り始め、今のスタイルに辿り着きました。

ーーーあくまでもイラストレーター、ということですが視覚玩具という「立体」をつくるクラフトの要素も持ち合わせていますよね。
坪井:決して立体作品を作ろうとしているわけでなく、自分の中ではグラフィックデザインの延長線にあるものを作るイメージなんです。平面に描いたイラストがより効果的に見えるにはどうしたらいいか。それがアニメーションという手法になり、更に紙を使った立体としてどう見せたら良いか、それをいつも考えていますね。なので立体にした時に使えそうな物は、なんでも拾ってしまったりするんです。

オリジナルの視覚玩具の数々

ーーー拾う…そういえば蓄音機などを組み合わせたものがありましたが、それもその一つですか?
坪井:さすがに蓄音機は購入したものですが、普段から身の回りのもので、どんなものが自分の作品に使えるか意識しながら生活するようにしているんです。あまりにもたくさん拾って来てしまうから控えた方が良いのではと思うほどなんですが…。だけど捨てられているとついつい拾っては何に使えるかなと形を想像し、妄想を膨らませています。特に回るものはたくさん持っていて、もうアニメーションのためだけに収集していると言ってもいいほどです。電池で動くロクロや先程言った蓄音機もそう。蓄音機を見た時は、これはぐるぐる回って使えるなとピンと来て、コマ送りのアニメーションの装置として活躍しています。貰ったものだと古い照明の傘を持っていて、骨組みだけにしてしまい内側に連続した絵を描いて紙を貼り付ける、そうするとぐるりと一周するアニメーションのセットになるんです。そこに蓄音機と合わせ、「プラクシノスコープ」というアニメーションの視覚玩具を作りました。既にあったもの、身の回りにあるものを再利用して如何に自分の作りたいものに組み込めるか、これは常に考えています。

新しい事への挑戦

ーーーもみじ市へ参加することになったきっかけを教えてください。
坪井:
まさか自分がもみじ市に出る事になるとは思ってもみなかったです。むしろこれだけの規模のイベントを運営するのは大変だろうなと思いながら、お客さんとして覗いている側だったので。声を掛けてもらった時、正直驚きと戸惑いもありました。当時はシルエットを活かした影絵の作品の展示活動がメインだったので、それを野外のイベントで表現することにイメージがわかなかったんです。
それでも初めて声を掛けて頂いた時に、あの多摩川の河川敷で自分の作品が並んでいる姿を見てみたいと。当時の担当の方の熱意がすごく伝わってきて、その気持ちに推され参加を決意しました。

ーーー今では東京蚤の市で視覚玩具を使ったショーをやるまでになりましたね。
坪井:これも、まさか自分がショーという形で作品を披露することになるとは想定もしていなかったんですよ。去年のもみじ市の打ち上げをしている時に、蚤の市の担当だった小池さんからアナログな物を集めたイベントを作りたいとお話を頂き、それに因んでやってみませんかと声を掛けて頂いたことがきっかけでした。その後改めて話を聞くと、ワークショップでの参加かと思っていたらまさかのショーという形で出て欲しいと言われまして、驚きもありつつ、また面白いこと言うなぁ! とまたしても熱いオファーに推され、やってみようとなりました。

ーーー既に工作のお兄さんの様な風格だったので、ここ最近始めた事だと知り驚きです。
坪井:自分でも本当に驚きです。そういったショーとか教えるという事を考えると、もみじ市に参加している丸林佐和子さん、あの方は本当にすごいと思います。ショーもやりつつワークショップで教えもしている。あの姿を見ていると良い刺激にもなり、ショーのスタイルももっとブラッシュアップしていければと思っています。それに、もみじ市や東京蚤の市に参加するまでは自分の作品を展示して終わり、だったものが、視覚玩具をキットにしたりショーをすることで“体験を売る”ということが出来るようになりました。前までは物があって、それを売買するのが当たり前でしたが、今ではそういった“物”ではなく“事”を受け入れられやすい時代になってきたので、こうして新しい挑戦をさせてもらう良い機会を頂けました。

新作の視覚玩具を製作中です。

ーーーこれまでとは違ったやり方で作ったものを感じてもらう場面が増え、得たものとはなんでしょうか。
坪井:こうやってたくさんの人の前で、動くアニメーションを披露させてもらうようになり、ワークショップなどでも話しながら教えていくと、“伝える”ということが必ず付いて回ります。ただ作ればいいわけではなく、作り方に始まり視覚玩具のどこに魅力があるのか、どうしたら面白く作ってもらえるか考えてそれをどう伝えていくか、実際に作品作りではわからなかったことが見えてきます。こういったやり方も大切だと思えるようになりました。特に子供の反応は素直で、単純なものほど面白さが伝わりやすい。それを意識して描くモチーフをチョイスするようになり、どんどん自分の描くイラストを変えていけるようになりました。

夢の叶う場所

ーーーもみじ市での坪井さんのテーマをお聞かせ下さい。
坪井:毎年思っていることが、寄って見て楽しい見世物小屋の雰囲気です。イメージは移動型のサーカスやデパートの屋上にあった小さな遊園地。なんとも言えない不思議な空間で、そこだけが別空間のように感じる場所をいつも想像しながらもみじ市に挑んでいます。

ーーーワイワイと楽しいブースになりそうですね。
坪井:拾ってきた物もこれを機に少しずつ視覚玩具として新しく作っていきたいと思っています。去年は長年とっておいた、捨ててあった木の足場を活かして、看板兼手回しアニメーションの装置の台として使いました。たまたま捨ててあった物を再利用したもので、その時までは何に使おうか考えていなかったのですが、もみじ市をきっかけに製作しました。他にはアトリエに大きなパラソルなどがあって、アトリエの中で広げて考えているのですが、いつかスクリーンにして視覚玩具のシルエットを映した天体観測のような見せ方が出来ないかと企んだりしています。

ーーーブース自体が大きな視覚玩具になっているようなイメージですね。
坪井:影絵の仕組みを活かして、動いている資格玩具のシルエットや像が壁や天井に常に何か動いて映っているようなブースにしたいと思っています。感覚的に視覚玩具という物を知ってもらいながら、自分の作品を手に取ってもらえるよう今年はやろうと思います。

ーーーブース作りのイメージ、とても大きなプロジェクトになりそうですね。
全然そんなことはないですよ! 他の出店者さんのブースを見ていると自分の考えていることはちっぽけだったなとつくづく思います。槇塚登さんのブースなんかは自身の鉄塔の作品がそのままブースになっているし、先ほども言った丸林さんもワクワクして楽しいブースで、みなさん想像を超えてくる方ばかりです。どうやって運んだんだろうとか常識で考えていては始まらない事を平気でやってのける。言ってしまえばもみじ市って思い描いてきた夢が叶う場所だと思います。

ーーー夢の叶う場所、もみじ市。坪井さんの思い描く寄ってみて楽しい雰囲気を一緒に実現させましょう! 坪井健さん、ありがとうございました。

〜取材を終えて〜
これまで東京蚤の市でのたくさんの子供たちの前でショーをする坪井さんしか見てこなかったので、こうやって自身の作品づくりにおける考えや夢などをお聞きし、新しい側面を知る事が出来ました。人前で話しながら作品を見せる事に最初は戸惑いもあったけれども、そうやって物自体を売るのではなく体験を売るようになって来たというお話が印象的でした。常に視覚玩具になりそうな仕組みのものを探していて、このインタビューの後、一緒にホームセンターに行って早速もみじ市に向けた新商品に使えそうなパーツを選びました。あれこれ迷っているけれども楽しそうに吟味している姿は工作に没頭する少年のようでした。こういう本気で自身の作る物と向き合っている人だからこそ、面白い物が生まれてくるのだと改めて感じる事が出来ました。毎年あっと驚く視覚玩具を作る坪井さんのブースをどうぞお楽しみに!(手紙社 上野樹)

【もみじ市当日の、坪井健さんのブースイメージはこちら!】


視覚玩具に囲まれた世界にワクワクすること間違い無し!