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パンと器 yukkaya

【パンと器 yukkaya プロフィール】
粕谷修朗さん・奈津子さんご夫妻が営む「パンと器 yukkaya」。府中市分倍河原にある店舗に並ぶのは、奈津子さんが丹精込めて焼き上げたパンと、陶芸家の修朗さんが作る器たち。店内には、小さなイートインスペースもあります。穏やかな雰囲気のご夫婦の会話は、いつでもごはんの話題が中心なんだそう。季節の果物や野菜の味わいを感じる天然酵母のパンに、食材の彩りが映えるシンプルで美しい器。美味しいものが大好きな二人だからこそ作り上げられる、暮らしに寄り添う逸品がそこにはあります。
http://yukka-ya.jugem.jp

【商品カタログ予習帳】


飴釉かけわけマカイ(鎬入り)。マカイは沖縄の碗のこと。


粉引マカイ(鎬入り)


粉引マグカップ(鎬入り)


飴釉かけわけマグカップ。模様はひとつひとつ違います。たのしく選んでください!


粉引鎬皿。こちらもサイズいろいろ。


グレー鎬皿。サイズはいろいろあります。


小さめ急須。一人分にもちょうどいいサイズ。中国茶など小さな湯呑2杯分にもぴったり。通常サイズの急須もあります。


梨とクリームチーズ。梨の自家製コンポートと北海道産クリームチーズを全粒粉パンで包んでいます。


有機レーズンとくるみのパン。ライ麦入りのパンドカンパーニュの生地です。


もみじ市限定でつくります!「ブルーベリーとチョコ」夏に農園で収穫させて頂いたブルーベリーです。

【スペシャルインタビュー「自分たちらしさを見つめて作る、パンと器」】
府中市でお店を営む、陶芸家の粕谷修朗さん・パン職人の奈津子さんご夫婦にお話を伺いました。

自然の流れにのって、今がある

ーーーお二人の活動の始まりを教えてください。
奈津子 私たちは旅好きで、お互い沖縄に一人旅をしていたときに、宿で一緒になったんです。ふたりとも東京出身だったので、その後もたまに会ったりして。それがきっかけで結婚して、二人で半年間世界を旅しました。
修朗 いろいろ回ったなかで、沖縄ほどいいところはないねっていう話になって引っ越したんです。そのときに、ぼんやり陶芸も面白そうだなって思って。
奈津子 沖縄の伝統工芸“やちむん”で有名な「やちむんの里」に行ってみたら、たまたまいいなって思う陶芸作家さんの工房が募集をしていて。しかも男子の! ラッキーだったね。
修朗 そこで6年間修行して、どこで独立するかってなったときに、やっぱり生まれ育った場所が忘れられなくて、東京に帰ってきました。独立してからは今年で10年になります。

ーーーパンはいつから始められたんですか?
奈津子 私は元々雑誌の編集の仕事をしていました。特別なきっかけがあったわけじゃないんですけど、パンを作ったりするのが好きで、こういう仕事もいいなってずっと思っていて。しばらくパン屋さんで働いて、沖縄に移住したタイミングで小さなお店をはじめたんです。東京に戻ってからは農家のパン屋さんで働いた後に自宅でお店をはじめたんですが、手狭になって今の場所に移転しました。自然と流れに乗ってここに来ている感じがします。本当はもっと考えて計画的にやった方が利口だろうなって思うことはいっぱいあるんだけど、私たちはそういう風にはできないんですよね。

店内の様子。入り口を入って左手が器のコーナー、正面がパン、右側が小さなイートインスペースになっています

ーーーパンと器、それぞれの特徴を教えてください。
奈津子 粉は国産のもの、酵母は自分で起こした自家製酵母を使っています。あとは農家のパン屋さんで働いていた時の経験から、季節のものを何種類かは出したいなといつも思っていて。季節季節で美味しい野菜や果物を考えています。

ーーー器はいかがでしょうか。
修朗 沖縄にいた6年間ってすごく濃くて、体に沖縄の作りが染み付いていると感じています。色の使い方は全然違いますが、形や重さなど、沖縄の器がベースにあるなと思います。

丹精込めて焼き上げられるパン
手にしっくりとおさまるマカイという碗。

ーーー製作をするうえで、大事にしていることはなんですか?
奈津子 パンは、やっぱり作るところを綺麗に、清潔にするようにしています。朝出勤してきたときの気持ちが違うんですよね。
修朗 僕は、自分の器を気に入ってリピートしてくれる人がいてくれたら幸せだなと思いながら作ってます。
奈津子 たまにすごく素敵だから使えなくて大事にしてるという人がいるんだけれど、そういう時は使ってくださいって言います。
修朗 使ってこそですよね。実際使ってもらうのが一番嬉しいです。やっぱり食べることが好きだから、美味しそうに見える器がいいと思っています。あとは丈夫であるというのも大事にしていて。土の改良を重ねて、壊れない・汚れないものを作るように心がけています。

ーーーお互いに影響を受けることはありますか?
修朗 やっぱり一緒にやっていると色々影響を受けますね。
奈津子 お互い「こんなのはどうかな」って。例えば、八百屋で梅が出回ってるよ! 梅のパンどう? なんて話したり(笑)。器もそうだよね。
修朗 なんでもそうだね。
奈津子 私が台湾の烏龍茶にはまって、専用の急須を作ってくれって頼んだり。それで、できたものが気に入らないと「もっとこうだ!」って意見したりね。
修朗 厳しく意見言ってくれるからいいんだよね。
奈津子 他人はなかなか言いづらいからねえ。

おいしいものが大好きな二人

ーーーご夫婦ではいつもどんな会話をするんですか?
奈津子 食べ物の話をよくします。朝ごはん食べながら「今日の夜何食べる?」って(笑)。
修朗 そんなことばっかりだね(笑)。
奈津子 食べるのが好きなんだよね。美味しいものが食べたい。
修朗 そうだね。クタクタでも結構ちゃんと作ってますね。

ーーーお料理は二人で一緒に作るですね!
奈津子 二人でいっぺんにやります。忙しいからねえ。
修朗 そうするとすっごい早いんです。10分15分くらいで、なんか豪華なものができて。
奈津子 そうそう(笑)。いろんなものできたねって。

ーーー美味しいものが好きなお二人だからこそ作れる器とパンがあるのかもしれませんね。
奈津子 そうですね、それはあるかもしれません。

作業は太陽が昇る前から

ーーーお二人の1日の流れを教えてください。
奈津子 私は夜中に起きて、仕事をしています。ひたすらパンを焼いたあと、次の日の仕込みをして。サンドイッチを作ったり、スタッフの賄いを用意したりもしながら、18時くらいまでノンストップです。帰ってご飯を食べてお風呂に入ってすぐ寝ないと次の日が早いので……。っていうのが一年中。休みもほとんどないです。
修朗 僕は朝5時くらいには起きています。自宅に作業場があるので、夕方までずっとそこで作業。座ってる時間が長いから、ろくろ引いてると身体と壁の間に蜘蛛の巣ができてるんですよ(笑)。

ーーーええ~~!
修朗 このごろ座りすぎは体に良くないと思って立ち上がってみたりしてるから、最近はないかな。作業場には蜘蛛とかムカデとかいろんなものが入ってきます。

ーーー毎日どんな作業をするんですか?
修朗 朝から土をこねて、3~40個ろくろを挽きます。それを乾燥させ、次の日それにビニールをかけて器の水分を均一にし、形を整えるために削って細かい細工をして、化粧と言って表面に白い土をかける作業をして乾かしてから素焼き。さらに、ガラス質の釉薬(ゆうやく)をかけて本焼き。窯出しした器の高台にやすりをかけます。

ずらりと並べられた、美しいしのぎのお皿

自然を感じる時間を大切に

ーーーお仕事以外ではどんなことをするんですか?
奈津子 散歩! 散歩します。帰りに私が駅に着いたタイミングでこの人(修朗さん)が家を出て、そうするとちょうど家と駅の真ん中で出会うでしょ。そこからふたりで歩いて家まで行くと、二人とも同じ距離歩くじゃないですか。それで30分散歩。
修朗 二人とも朝早くて夜も早いから運動する時間が全然ないので、健康のためにね。
奈津子 うちの周りは田んぼとか山とかが多くて、気持ちのいいコースなんです。

ーーー散歩道はやっぱりご飯の話ですか?
奈津子 ご飯の話ですね(笑)あっ! あとはカブトムシポイントがあって! よくカブトムシがいる木。来る途中でチェックしてるから、今日はいたよとか報告しあって、二人で写真撮ったりしてます。

ーーーそのような時間が、お仕事にもインスピレーションを与えるのかもしれませんね。
奈津子 そういうのがないと、楽しくないですからね。
修朗 葉っぱ一枚みても、色みたり匂い嗅いだり色々して発見がたくさんあるんですよね。周りに自然があるところじゃないと良いものは作れないなと思っています。

ーーーお二人が普段愛用しているアイテムを教えてください。
奈津子 ラジオ! とられたと思ったでしょ(笑)。
修朗 思った! 毎日二人とも同じラジオ聞いてるからね……(笑)。
奈津子 それでお互いラジオのネタを夜話すっていうね。
修朗 僕は中一の時に親から買ってもらったラジカセを使っています。丈夫なんですよね、音も綺麗だし。あとはなんだろう……仕事の道具を結構自分で作ります。コテなんかも硬い木を買ってきて、それぞれの器のカーブに合わせて木を削って使ってます。

ーーー器用なんですね〜!
修朗 作りたいって欲が強いのかもしれない。たまに買ったほうが早いものも作っちゃいます。「買ったほうが早いし、簡単に手に入るな」とか思いつつ(笑)。

二人の生活に欠かせないラジオ
器のカーブに合わせて削られた木のコテ

何を作るか悩んだ3年間

ーーー東京に戻ってから10年ということですが、これまでの道のりはどんなものだったんですか?
奈津子 あっというまだったね。
修朗 苦しかったことはやっぱり最初……寒くて、冬とか。
奈津子 そういうこと?(笑)
修朗 沖縄は暖かかったから(笑)。土って冷たくて重いんですよ。冬にそれをやるのがかなりしんどくて。氷水見たいなものに手を突っ込んで作業するから、冬場は「よし!」ってほっぺた叩いたりしながらやってます。

ーーー重労働ですね。
あとは、やっぱり何を作ろうかって悩んでた頃、東京に帰ってきて最初の3年くらいは苦しかったです。自分らしいものってなんだろう、何を作ったらいいんだろう、と悩んで。でも手を動かさないと仕方がないからとにかく作り続けて……。手を動かすことでどんどん答えが見えてきた気がします。

ーーー活動をする中で、どんなときに幸せを感じますか?
修朗 使っている人から褒められたりするのが一番嬉しいですね。ただものを作っているだけで終わってしまうのは面白くない なと思います。
奈津子 パンも、美味しいって言ってもらうのが、やっぱり嬉しいですね。あとは、何にも言わないけど毎週欠かさず来てくれる人がいたりして……。言葉はなくても、来てくれるということは美味しいと感じてくれているということだと思うので、とても嬉しいです。週に一回必ずってすごいですよね。自分で考えたら、週に一回行くお店なんてスーパー以外ないから。

今と変わらず続けたい

ーーーこれから、大事にしていきたいことはありますか?
奈津子 自分がやりたい形って、流行や人の言葉に流されていくと思わぬ方向に変わっていってしまうなと考えています。お客さんが好むものばっかり作っているといつのまにか、“自分たちらしさ”から離れたお店になってしまうと思うし。自分の好きなものってなんだろうっていつも思いながらじゃないと、ダメなんだと思います。
修朗 今と変わらず続けられたらいいね。そういえばこの間ラジオで、仕事が楽しければ趣味なんかいらないって言っていて、なるほど! と思いました。だからとにかく続けられたらいいなって。そのためにも健康で長生きして、死ぬ寸前まで器を作っていけたらと思います。
奈津子 パンも、体力が続くかぎりやれたらいいなと思います。

もみじ市は、新しいものを作るタイミング

ーーーお二人にとってのもみじ市の存在はどのようなものですか?
修朗 イベント当日の何ヶ月も前から意識しています。
奈津子 二人でどんなものを作ろうかって話し合って……。もみじ市は、新しいものを作るタイミングになっていますね。
修朗 存在感がすごく大きいですね、もみじ市は。
奈津子 やっぱり楽しいからかな。お客さんもすごく楽しそう。

ーーー新しいもの、ということですが今回はどんなものが登場するのでしょうか。
修朗 器では、蓋物の新作です。ちょっと丸っこい形の。今も試作しながら進めています。
奈津子 パンはやっぱり秋の果物とかお野菜とか使った季節のものを出したいと思っています。

ーーー最後に、もみじ市にいらっしゃるお客さんにメッセージをお願いいたします!
奈津子 まずパンを買って、食べるものをキープしてから器を見る! この順番、大事です!
修朗 みんなそれを知ってるから、オープンと同時に走ってくるんだよね。
奈津子 器に関しては「他を回ってから決めよう」って違うところを見て戻って来ても、売れちゃっていたり。
修朗 結構ありますねそういうこと。なので、この順番を忘れずに!

“yukkaya”でしか出会えない美しい器に、美味しいパンが、そこにはあります。

〜取材を終えて〜
府中市分倍河原駅から歩いて数分の場所にある「パンと器 yukkaya」。そこには緩やかで温かな空気が流れ、その場にいるだけでほっとするような空間が広がっていました。私[担当:富永]はこのインタビュー以降も何度か足を運び、店内の小さなカフェスペースでパンをいただきましたが、修朗さんの器に乗せて出された奈津子さんのパンが本当に美味しそうで、一口一口噛みしめて味わったことを覚えています。自分たちらしさとは何か、自分の好きなものは何か、そう問い続ける二人にしか作れないものがそこにはあります。ぜひたくさんの人に、その世界を感じてもらいたい! ということで、改めて、もみじ市の当日は「まずパンを買って、器を見る!」。この順番を声を大にしてお伝えしたいと思います!
(手紙社 富永琴美)

【もみじ市当日の、パンと器 yukkayaさんのブースイメージはこちら!】
 “ROUND”の形をしたパンと器が仲良く並ぶブースで、お気に入りの一つを見つけてみてくださいね!