ジャンル:CRAFT,出店者紹介

IRIIRI


【IRIIRI プロフィール】
テキスタイルデザイナーを経て、2000年より人形作家としての活動をスタート。各地での個展、グッズ制作のほか、ワークショップでは自身のデザインを参加者と一緒に形にする取り組みも行っています。絵を描くための画材や手法の選択肢として「布」を選んだIRIIRIさんの作る人形たちは、絵本から飛び出してきたかのような物語性と、手仕事の緻密さ、マテリアルのおもしろさが共存する存在。愛らしくも、どこかミステリアスなムードやユーモアが漂う人形たちは、ひと目見ただけで吸い込まれるような魔法を秘めています。
http://iriiri.petit.cc

【商品カタログ予習帳】

クレイモチーフのブローチ
ワイヤーオブジェ
ジャガードジャンプスーツの猫
赤い頭巾のマダム
ひとたちオーナメント


『月刊 IRIIRI』記事一覧

7月号 IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その1
8月号 IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その2
9月号 IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その3
10月号 IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その4


【月刊 IRIIRI 7月号】

特集:IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その1

5月。IRIIRIさんの個展「アトリエ・イリイリ〜いろどりさらまわし〜」が開かれている「夜長堂」の小部屋を訪れると、そこには小さな夢物語の世界がありました。くるくると皿を回しながら宙を舞うチュールをまとった道化師、伯爵のように気取った猫、とぼけた表情のうさぎ……。さまざまな人形たちのかたわらで、IRIIRIさんは小さなデスクいっぱいに布や糸や画材を広げ、本物のアトリエのようにちくちくと作業していました。

5月に大阪「夜長堂」で行われた個展「アトリエ・イリイリ〜いろどりさらまわし〜」の展示風景。

このときの個展のテーマは「アトリエ」。だから、個展の部屋そのものをアトリエに見立て、実際に作業しながらお客様を迎えていたのだそう。小さなドールハウスも展示され、そこはアトリエデスクや人形たち、個展のポスターが飾られた「もう一つのアトリエ」になっていました。

アトリエに見立てたドールハウス。2階には個展のポスターが飾られているという緻密さ!

全4回にわたってお送りする特集では、アトリエにお邪魔したような気分で、IRIIRIさんの人形たちとその世界を構成する要素を、一つひとつ発見していきます。デザインや布選び、人形の人格やバックボーンなど、作品という形になる前のさまざまな制作過程を目にすると、この人形たちの持つ不思議な生命力の秘密がわかるはず。

第1回は、布というマテリアルに落としこまれる前の、ラフスケッチをお届けします。

描きなおしたり、素材のメモを残したり、構想を練っている頭の中をのぞき見るようなスケッチの数々。

スケッチからイメージが次々と湧いてくることもあれば、布や色といった素材が先行してデザインが浮かぶこともあるとか。人形のいのちとも言える顔のパーツは、下記のようにイメージした素材が細かく描き込まれてます。

右どなりに描かれた、表情違いのパターンも興味深い。

また、ワークショップなどで参加者のみなさんに作っていただく作品のデザイン画がこちら。「ストライプパンツのうさぎ」「ぞうさんはペンケース」など愛らしいタイトルが付けられ、作るモチーフの衣装やポーズにも小さな物語が秘められています。

ワークショップ用のデザイン画。これを見て「作りたい!」と応募してくださるそう。

こんなふうに、最初は平面から生まれるIRIIRIさんのキャラクターたち。平面は立体となり、衣服をまとい、生き生きとした表情を与えられて、人形たちは物語を語り始めます。どんな姿を獲得していくのか、どうぞお楽しみに!

(編集・大橋 知沙)


【月刊 IRIIRI 8月号】

特集:IRIIRIが紡ぐ、物語のかけらその2

布という素材を使い、キーホルダーやバッグといった小物から、小さな友だちのような人形までさまざまな作品を生み出すIRIIRIさん。一人ひとりが物語を抱いたそれらの登場人物たちを、制作の裏側から発見する特集をお届けします。

8月は、「布に描かれたものたち」。IRIIRIさんの人形づくりは、絵を描く素材として「布」という素材がキャンバスになり、画材になり、立体になっていったということ。その原点とも思えるのが、平面の布に描かれた絵そのものです。

糸と布だけでえがかれた鳥。画材を選ぶように、素材を組み合わせているのがわかります。

刺繍とアップリケを巧みに組み合わせ、描かれた鳥の姿はなんともチャーミング。まるでズボンを履いているかのような脚や、複雑なステッチで描かれた尾が、どこかひょうきんな風貌です。

Tシャツに直接描かれた絵。線や色のゆらぎが感じられるのが魅力。

こちらは、Tシャツに描かれた絵。1枚目のステッチで描く描線とは全く印象が違いますね。にじんだような色彩やゆらゆらとゆらめく輪郭は、繊細で夢の中の世界のよう。こちらはTシャツとして平面で完成された作品ですが、IRIIRIさんの作品には、手描きの模様をほどこした素材から立体へと形づくられていくものもあります。

不思議な植物と鳥が描かれた、テキスタイルのような柄も。

布に描かれた絵として味わう、IRIIRIさんの世界。線と色、糸と布、その違いのおもしろさと美しさは、ぜひ実物を手にとって感じてみてください。

(編集・大橋 知沙)


【月刊IRIIRI 9月号】

特集:IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その3

イメージをラフに描き起こしたスケッチの線が、布というテクスチャーと色彩を持った面になり、人形というカタチを得ていく…。今月は、いよいよ立体へと変化していく人形の制作風景をお届けします。

生地の模様を自身で絵付けすることで、唯一無二の素材ができあがります

アトリエテーブルに並ぶのは、制作途中の人形と、さまざまな色の糸や色鉛筆。デスクの上のスケッチは、生地にほどこす模様の下絵でしょうか。IRIIRIさんの作品では、選りすぐりのファブリックはもちろん、自身で絵付けした生地を使って人形たちの洋服や小物が作られています。

手描きの模様がほどこされたオーガンジーは、どんな人形が纏うのでしょう?

布の質感もさまざま。ヘリンボーンやジャガードなどざっくりとした風合いのあるものから、透け感の美しいオーガンジーまで。こんなふうにオーガンジーにさまざまな色で模様を描くと、透明感や色の重なりをも表現することができます。紙に描く絵ではなかなか成し得ない、手触りや温度、向こう側の景色をも作り出せるのが、布という素材の面白さ。

独特の手のラインが、遊び心たっぷりのポーズのもと

配色の組み合わせも、楽しい作業。引き立てあう色、馴染みあう色、色と色の相性を見ながら、人形たちのパーツを作り上げていきます。

刺繍で描かれた瞳。モフモフ生地に、瞳の光がきらめきます

ツイードやフェルトなど、秋冬らしいファブリックは見ているだけでワクワク。人形に命を吹き込む瞳は、手刺繍で丁寧に。小さなまつげの重なりや、瞳の奥の光まで丁寧に刺すことで、IRIIRIさん独特の、愉快でちょっと妖しい表情が生まれていきます。

まだ顔を持たない人形たちがたくさん! どんな表情になるのでしょう

アトリエには完成を待つ人形たちがずらり! これだけの数があっても、使われている生地やサイズ感、微妙なシルエットなどが一つひとつ違います。IRIIRIさんの人形たちが、それぞれ違った性格や個性を持って「生きて」いるのが感じられます。

来月のもみじ市に向けて、着々と物語の登場人物たちが増えてきました。一人ひとり違う人形たちが、河川敷でどんな物語を繰り広げるのか。次号では、もみじ市にやってくる登場人物たちをご紹介します!

(編集・大橋 知沙)


【月刊IRIIRI 10月号】

特集:IRIIRIが紡ぐ、物語のかけら その4

スケッチから布へ、布から顔へ、手足へ、色とりどりのドレスや個性豊かな持ち物へ……。IRIIRIさんの人形ができるまでの物語を追いかけてきたこの連載も最終回。いよいよ、チャーミングながらどこか妖しいムードを秘めた人形たちが姿を現します。

こちらはオーナメント。人形よりも小ぶりで、吊り下げて飾ったり、バッグなどにつけたりして楽しめます。

にじみが美しい色彩で絵付けをしていた布たちは、こんなふうにオーナメントの動物たちになりました。手描きの模様は、一つとして同じものはない生きた「絵」。いつでもそばに置いておける小さな作品です。

ツイードの織り重なる生地感が素敵な「ジャガードジャンブスーツの猫」

さまざまな糸の織り込まれたジャガード生地ならではの猫。シックでリッチな生地感に、深いグリーンのブーツがよく似合っています。肩のポンポンや、細やかなまつげやおひげの表情に、 IRIIRIさんの物語の世界観が宿ります。

ブラウスのフリルや髪の毛の表情まで、じっくりと見入ってしまう「赤い頭巾のマダム」

赤い頭巾をかぶったこちらのマダムの装いの素敵なこと! クロッシェ編みの頭巾はIRIIRIさんの手編みです。ブラウスのフリルに青いネックレス、レトロな花柄のスカートに、頭巾とベルトを赤で揃えて。どんな性格なのでしょう? きっとお洒落なマダムですね。

穏やかな表情や服装のディテールから、手にした人がそれぞれに物語を想像する。インテリアに馴染み、子どもたちに遊ばれ、寂しい時の話し相手になって……。IRIIRIさんの作品に込められた物語は、新たな持ち主の元で育ち、続いていくのです。

さあ、もみじ市に、家族のような、友だちのような、恋人のようなその子を、迎えて行ってあげてください。

(編集・大橋 知沙)