1976年 兵庫県生まれ
1999年 東京ガラス工芸研究所学校部卒業
2002年 (有)能登島ガラス工房 入社
2004年 同工房退社
2006年 出産・育児
2009年9月 ようやく作家として頑張ろうと制作に本腰を入れる
【特別編】
竹中悠記さん「幻の技法『パート・ド・ヴェール』で生み出すもの」
文●渡辺洋子
『パート・ド・ヴェール』という言葉を聞いたことがありますか? これは、『吹きガラス』や『カットグラス(切子)』と並ぶ、ガラスを成形する技法のひとつです。
今回初めてもみじ市に参加するガラス作家・竹中悠記さんは、この技法を使って器を作っています。ガラスは透明でクリアなもの、単一の色をもつもの。そんな常識をガラリと覆す、カラフルで細やかな模様をまとった美しい器です。なぜ、ガラスにこのような表現ができるのか、その器がどのようにして生まれるのかを知りたくて、鳥取にある竹中さんのご自宅兼工房を訪ねました。
その家は、鳥取県の山に囲まれた集落にありました。同じくガラスでアクセサリーを作るご主人と同じ工房の中、それぞれの作品づくりに励んでいらっしゃいます。
ガラスづくりは、まず、型作りから入ります。あらかじめ石こう型を作るための原型がシリコンで作られており、それがデザインの元となります。そこに、石膏を流して型取りし、いくつもの石膏型を作ります。
石膏型に色ガラスの粉を詰めて行きます。色ガラスの粉は何色もあり、完成をイメージしながら、まるで絵付けをするように、小さな凹凸に合わせて色ガラスの粉をのせていきます。同じ石膏型でも、色の配置を変えることで、違う輝きをもった器が生まれるのです。
型にすべて色をのせたら、電気炉に入れて焼きます。ただし、温度管理が非常に難しく、竹中さんは3段ある電気炉の中段しか使っていないそうです。急激に冷ますと割れてしまうため、焼き上がったのちも炉のなかでじょじょに冷まします。
焼き上がった『パート・ド・ヴェール』のガラス。この、白に透けた石膏を壊します。水につけるとホロホロと溶けていくため、ブラシで磨きながら、きれいに落としていきます。
最後に、縁などを研磨してなめらかに仕上げ、器が完成します。
ガラスを焼いた時に深さがあると、溶けたガラスが中心に向かって流れ落ちてしまうため、作ることができる器の大きさや角度には限りがあるといいます。それを少しずつ調整することで、大きな器へと進んでいけるようになったそうです。また、色ガラスの粒は色によって、またその細やかさによって溶け方や透明度が異なるため、それを試行錯誤しながら、あらたな表現を生み出しているのだそうです。
はるかメソポタミア時代から伝わるこの技法。一度途絶えてしまったことから「幻の技法」とも言われています。工程が多く、1つずつしか生み出すことができないため、本来なら美術品を作る技法として受け継がれてきました。その技法で竹中さんは「飾るものより、使うものを作りたかった」と、器を作り出したのだそうです。
光を当てると、宝石のように美しい光を反射させ、そのものが芸術品のように輝く器。そんな器が暮らしのそばにあったなら―――。この器を実際に目にしたとき、その美しさは心にぐっと響くに違いありません。
Q1. 今回のテーマに込めた思いを教えてください。
白組:出店テーマ「五メートル先を見ながらの一歩」
整体の先生に歩き方を教わりました。 上体の位置、足の運び方、手の振り方そして視線。 教えていただく前も意識していたけれどさらに意識し、歩くことをより楽しめるようになりました。 今制作を行うということにおいて、足元ばかりを見ているなと思います。 以前は自分の進みたい先を見ては焦り、意識的に自分の足元を見るようにしました。 そうすると、ようやく最近、歩み方を変えても一歩ずつしか前へは進めないことに気付け、ならば楽しまなければという当たり前の想いに戻ってきました。 さぁ、はじめまして!の「もみじ市」です。 楽しむ気持ちで前へ進みます。