【イイダ傘店プロフィール】
東京の吉祥寺にアトリエを構え、オーダー販売のみで傘を作り続けるイイダ傘店。デザイナー・イイダヨシヒサの手にかかれば、なんてことのない日常風景も、心ときめくテキスタイルに。雨の日も晴れの日もいつでも持ち歩きたくなるような、唯一無二の傘を提案します。新作では、私(担当:鈴木)の一番好きな食べ物である“寿司”柄が登場! 日本のソウルフード・寿司が、どのように傘に落とし込まれるのかもご期待くださいね。昨年に引き続き、今年も「青空オーダー会」してくださいますよ。こちらもお見逃しなく!
http://www002.upp.so-net.ne.jp/iidakasaten/
【商品カタログ予習帳】
ミニタオル(めんたいこ)
大判ハンカチ(バゲット)
紙コースター(トウモロコシ)
紙コースター(ニチニチ)
紙コースター(山鳥)
ポストカード(あじさい)
ポストカード(アンブレラ)
コマバック(ポピー)
コマバック(クッキー)
【スペシャルインタビュー「一本の傘に宿る、イイダ傘店の心遣い」】
女の子ならば誰しもがときめく柄から、ユーモアが光る柄まで、様々な傘を発表してきたイイダ傘店。今回は活動初期からデザイナー・イイダヨシヒサさんを支える右腕・高山真衣さんに鈴木麻葉(手紙社)がお話を伺いました。
卒業制作から始まった傘職人への道
ーーーイイダさんはもともと、傘作りに興味があったのですか?
高山:いえ、実家が傘屋だったわけでもなく、特別に興味があるわけではなかったと思います。
ーーーでは、なぜ傘を作り始めたのですか?
高山:卒業制作がきっかけです。大学でテキスタイルを専攻しており、同級生が洋服やタペストリーを作るなか、生地を活かした物作り、と思いついたのが傘だったようです。
ーーーそうだったのですね。傘作りはどのように勉強されたのですか?
高山:大学でも学外でもそれまで傘など作ったことがなかったので、市販の傘を分解して見よう見まねで作業を始めたそうです。三鷹にお師匠さんがいるのですが、お弟子さんを取ってらっしゃらない方だったので、自分で作った傘を持っては訪ね、作業を見せて頂いては作り直し、それをまた持っていき、の繰り返しだったそうです。
ーーー学んでからは、すぐイイダ傘店として活動をはじめたのですか?
高山:いえ、最初は母や友人のために傘を作り、そのうちそのまた友人に頼まれ……。と、どんどん活動が大きくなっていき、受注会を開催してみようとなったようです。
ーーー活動は最初から順風満帆だったのですか?
高山:おそらく、そんなことはないと思います。当時はイイダひとりで活動していたため、手が足りなくなることもあれば、どのようにやっていくか試行錯誤の日々だった聞いたことがあります。そんな時、まだあまり知られていなかったイイダ傘店で働きたいとひとりの女性から連絡があり2人になり、その後私が入り3人になりました。
ーーーたぶん、その方についてイイダさんが書いているブログを読みました。
高山:そうですね、そのスタッフのことです。元々、イイダ傘店のお客さんだったようですが、まだまだ今のような体制の整っていない傘店に入るために、関西からやってきて、最近まで働いていました。
そのブログはこちら:http://iidakasaten.blog.so-net.ne.jp/2016-04-11
ーーー高山さんはなぜイイダ傘店へ?
高山:大学時代、校内に貼ってあったチラシを見たのがきっかけです。傘屋さんが特別講義で来ると目にし、自分が受講できる授業では無かったのですが、潜り込んでしまおうと企んでいたことを覚えています(笑)。結局、私はゼミ合宿と被ってしまい、受講することは出来なかったのですが、そこからイイダ傘店を調べ、展示会をおこなっていることなど知りました。
ーーーでは、新卒で入社したのですか?
高山:在学時に連絡したのですが、その時は断られてしまったんです。ですが、断られ方が何だか丁寧で率直で、清々しく思え、断られても展示会にはまた行きたいなと思ったのを覚えています。なのですが、その後連絡をもらえることになり、結果的に卒業した年の4月から働きだしました。
たくさんの職人の力があってこそ出来る一本
ーーー現在、社員さんは何名くらいいるのですか?
高山:現在は7名です。3、4年前はこんな人数でやっているとは思っていなかったです。
ーーーそれぞれの役割分担はあるのですか?
高山:制作担当、グラフィック担当、広報担当など大まかにはありますが、みんながオールマイティーに出来るようにしています。なので、傘を作る作業はみんなでやります。工程を知らないと展示会でお客様に質問された時に答えられない部分が出てくることもあるので、全員が全ての工程を理解出来るようにしています。
ーーー確かにオーダーメイドだと、お客さんそれぞれの要望も多そうですし。
高山:そうですね。「ハリを緩めにしてほしい」、「リングを引っ張りやすくしてほしい」などのご要望を持ったお客様もいらっしゃいます。実際に自分で手を動かしているからこそ、相談に乗れるのだと思います。
ーーー傘を作るのには専門的な知識が必要そうですが、イイダ傘店のみなさんは傘作りの経験者なんですか?
高山:いいえ、全く。今のスタッフはたまたま全員美大出身ですが、大学で傘作りを学んだという人はいません。みんな入ってから勉強しています。なので、入ろうと思えば鈴木さんも入れますよ(笑)。確かに、傘作りって聞くと、専門的に見えるのかもしれないですね。
ーーー私は不器用なので作れる気がしません(笑)。デザインは全てイイダさんが?
高山:はい。基本的に生地作りやイラストはイイダが行っています。色で迷った時などは、みんなで決めることもありますよ。女子の意見を参考にということも。
ーーー傘の制作工程はどのような流れでおこなっているのですか?
高山:まずは注文の傘の大きさに合わせて布をコース状(帯状)に断裁します。何十種類もある生地は、ものによってそれぞれ工場が違うんですよ。断裁した布の端の部分を三つ巻に縫い付けたあと、傘の寸法に合わせ、木型と包丁で1コマづつ三角形に切っていきます。この時ロスが出ないように、互い違いに生地をとっていきます。この工程をコマ断ちと言います。
そのコマを8枚、傘用のミシンで縫い合わせていきます。傘は伸縮性が必要なため、この傘用のミシンは上糸だけで縫えるようになっています。
その作業をおこなっている傍ら、また別の人は骨にロクロ付け、ダボ付けという生地を縫い付けていく作業をおこないます。これにはコマ断ちで出た端切れを使います。その後、傘形になった布にツユサキを縫い付け、傘のてっぺんとなる部分を閉じ、骨に被せていきます。ボタンやリングなどを付け、傘生地と骨を縫い止めて、陣笠を打ちます。陣笠というのは、傘のてっぺんにある金具のことです。ここまでのパーツを付け終わったら、蒸気で傘のシワを伸ばします。最後に手元を付ければ完成です。
ーーーすごくたくさんの工程があるんですね。どれも難しそうです…。
高山:途中で何度も検品作業が入るので、完成間近で振り出しに戻ることも何度もあります。全て手作業ですし、チェックもアナログです。傘が完成するまでには、骨屋さんや生地屋さん、手元屋さんに名入れ屋さんなどたくさんの職人さんに携わってもらって1本の傘が出来ています。
ーーー部品ごとに職人さんがいると思うとすごいですね。
高山:「傘」という漢字は、カサの下に、「人」の字が4つありますよね。諸説あるようですが、一本の傘をたくさんの人が携わって作られてるという意味があるとも言われているようです。受注会やイベントの時も、これだけの職人さんの力によって、傘が出来上がっているということをお客さんに伝えられたらと思っています。
ーーー工場に出向くこともあるのですか?
高山:はい、行きます。先日、名入れの工場の視察に行きました。一つひとつ職人さんが手で文字を打ち込んでいて……。急ぎで作ってくださいとか無理なお願いをすることもあったのですが、これは早く出来ないなと思いました。実際見てみないとわからないことも多いので、出来るだけ工場には出向くようにしています。
ーーーおでんや、のり弁、とうもろこしなど、他では見ることのできないような模様がたくさんありますが、何からインスピレーションを受けているんですか?
高山:イイダはいつもスケッチブックを持ち歩いており、普段の生活や旅先の風景をスケッチしています。だから、身近なものがモチーフに多いのではないかと思います。あとは、こういうテクスチャーで作りたいと思うことや、新しい技法を使いたいというのが先にあって、それを活かした柄を考えることもあると言っていました。
ーーーグッズのアイディアもイイダさんが出しているんですか?
高山:もちろん、イイダ考案のものもありますが、グッズは他のスタッフが考えることも多いです。私もリュックやポンチョ、ご祝儀袋、ノベルティなど作っていました。
ーーーあの商品は高山さんの案だったのですね!
高山:当時、フェスや山登りに行くときに可愛いリュック、レイングッズがほしいなーと(笑)。ご祝儀袋も、周りに結婚する人が増えて、「可愛いご祝儀袋があればな…あ、作っちゃえばいいんだ!」と思ったのがきっかけです(笑)。
ーーー日常の中でふと出てくるアイディアが元なんですね。
不揃いなものが集まって“ROUND”に
ーーーもみじ市に初めて出展されたのはいつですか?
高山:2014年です。傘生地で作ったタープを張って出展したのを覚えています。その年は快晴で、でも他の出店者さんが「晴れろ!」という旗を持っていて……。なんでだろうと思っていたんです。翌年、その意味がわかりました(笑)。
ーーーもみじ市の存在はご存知でしたか?
高山:それより以前に声をかけて頂いたりしていたこともあって知っていました。ただ、自分たちの作業で手一杯で、なかなかイベントに参加出来ずにいたのですが、飯田は奥さんと2人で北島さんに会いに伺ったり、イベントを拝見しに行っていたようです。受注会ばかりだった傘店に“新しい風を”と思い、出店したのがその2014年でした。
販売云々よりイイダ傘店を知ってもらって、楽しんでもらう良い機会になればなという気持ちで出ました。
ーーー出店してみていかがでしたか?
高山:本当にお祭りみたいだなと思いました。お客さんも出展者も和気あいあい! みんなで作り上げてる感じをすごく受けました。ただ野外でのイベントは初めてだったので、風にハンカチが飛ばされ、袋が飛ばされ、それを取りに走るわ、他のところから飛んできたものを拾うわ……。色んな意味で面白かったです(笑)
ーーー“ROUND”というテーマを元に、どんなROUNDを表現してくださいますか?
高山:傘は、三角形のコマが集まってROUNDになります。傘のように一つひとつは形は違うけれど、集まったら“ROUND”になるような表現ができれば良いなと思っています。
ーーー高山さん、本日はありがとうございました。色とりどりの傘が河川敷を彩るのを楽しみにしています!
〜取材を終えて〜
今回、取材のために吉祥寺にあるイイダ傘店さんのアトリエにお邪魔しました。インタビュー中も、隣では黙々とスタッフのみなさんが作業を続けており、集中力と手際の良さに驚きました。お話を聞くなかで、イイダ傘店さんの傘作りへの信念のようなものに触れることができ、とても勉強になりました。高山さん、イイダ傘店のみなさん、ありがとうございました。(手紙社 鈴木麻葉)
【もみじ市当日の、イイダ傘店のブースイメージはこちら!】
ポピー、めん棒、寿司……個性豊かなカラフルな傘が見えてきたら、そこはイイダ傘店のブース! 傘のテキスタイルを使ったアイテムも並びます。
【イイダ傘店から最新情報が届きました!】
お馴染みガチャガチャ・イイダカサポンの『おでんブローチ』と
初登場!『イイダ傘店のピクニックシート』
のご紹介です。