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きりん屋(14日)

【きりん屋プロフィール】
三重県松阪市。のどかな町の山の麓に、行列を呼ぶパン屋があります。ひょっこりと現れる小さなお店の名は「きりん屋」。その扉を開けると、たくさんの可憐なドライフラワーと、レコードから流れる陽気な音楽、そして鼻腔をくすぐる焼きたてのパンの香りに包み込んでくれます。自家製の天然酵母を使用し丁寧にこねられたパンは、もちもちとした食感で噛めば噛むほど風味が増してくるのです。きりんのように首を長くしてお待ちのみなさん、ぜひお見逃しなく。

【商品カタログ予習帳】
いちじくとクリームチーズぱん。コロっと小さくても、なかなかやります。

くり。くりと、くるみ。りすにも人気。

れもんぱん。さわやか。胸きゅんぱん。

ベーグル。きらめきベリー。ベリー。

ココアぱん。ビターでスイートな男前ぱん。

塩スティック。細身のロックぱん。

森の田舎ぱん。たくさんエネルギーがつまってます。

よもぎの食ぱん。地元のみどりのチカラ。べっぴんぱん。

【スペシャルインタビュー「“美味しい”のその先へ」】
地元三重県だけでなく県外からも多くの人を惹きつけ、虜にしてしまうパン屋・きりん屋。このお店を営む赤畠由梨枝さんと、その夫であり、鍛冶屋として今回のもみじ市に初参加する赤畠大徳さんのお二人に、担当の藤枝梢(手紙社)がお話を伺ってきました。

きりん屋の誕生

ー昔からパン屋さんになろうと思っていたんですか?
由梨枝:服が好きだったので、そっちの道かなと思っていました。だけど、長野に旅行に行った時に寄ったパン屋で、石窯の中で火が燃えている様子を見て、神秘的な中にも生命力を感じたんですよね。それに惹かれてパンの道に。
ーパンそのものではなく、火がきっかけと……。随分変わった入り方ですね!?
由梨枝:パンを食べることは元から好きだったんですけどね。
ーなぜ天然酵母のパンを作ることに?
由梨枝:なんか生きている感じがして(笑)
ー基本的にエネルギッシュなものが好きなんですね(笑)。パン作りはどこかで習ったんですか?
大徳:専門学校だったけ?
由梨枝:ううん、パン教室。みんなでワイワイするのがあんまり好きじゃなくて。名古屋にあったパン教室に、数カ月通っていました。

ーお店は最初からこの場所に?
由梨枝:前はもっと山の方でやっていて、配達がメインでした。夜とか獣が出てくるのが怖くて、山を降りることに。
大徳:居眠りしながら配達したりしてたんですよ。
由梨枝:そう(笑)。危ないですね。山の上でやっていた時は、1人もお客さんが来ないこともあったけど、口コミで徐々に近所の人に広まっていき、今に至ります。

ーなんできりん屋という名前にしたんですか?
由梨枝:別にきりんが好きっていうわけでもないんですよね(笑)
ーえ、違うんですか!
由梨枝:あるアーティストのライブに行った時、そのアーティストが登場したシルエットがきりんに似て見えたんです。ちょうど、屋号をどうしようかなと悩んでいた時期で。
ーそれをそのままお店の名前に! だいぶ思い切りましたね。
大徳:イラストとか結構書くんですけど、きりんの絵が一切ない。象とかばっかりなんです(笑)

ー内装もあんまりパン屋さんっぽくないですが……?
大徳:全然違うよね。パンが売り切れた後とか「ここは雑貨屋さんですか?」って感じ。
ーパンを置くお皿とかは、由梨枝さんが選んだものですか?
由梨枝:そうですね、好きで集めていて。
大徳:角度とか位置とかすごい厳しいんですよ(笑)。「もうちょい右やな、あーもうちょい!」とか。
ー大徳さんが作った什器もまたいい味を出していて素敵ですね! アンティークの小物やたくさんのドライフラワーとの相性もぴったりです。

きりん屋の店内

親友のような2人

大徳:この人ね、どこか行くとすぐにパン屋に入っていくんですよ。で、食パンばっかり買ってくる。
由梨枝:食パンが好きで(笑)
ーそれで味を研究しているとかではなく?
由梨枝:自分が作るパンの研究はしても、他のお店のはしないですね。ただ食べるだけ。
大徳:「匂いして来た!」って言って、本当にお店にたどり着く。すごい嗅覚。
ー食パン以外に好きなパンは?
由梨枝:クリームパン!
大徳:でも、クリームパンは作らないよね?
由梨枝:生地にあわないからね。作るのはドライフルーツとかが入った、ハード系のものばかり。

大徳:あとは、酵母中心に生活を考えている。1日1回、酵母にご飯をあげないといけないから。すごい生活リズムですよね。朝早いっていうか、もはや夜早い(笑)
由梨枝:東京とかだと、夕方から開くパン屋さんありますけどね。この辺じゃすぐ暗くなっちゃうし、誰も来てくれない。
ーお店の営業は由梨枝さんお一人で?
大徳:1人じゃないよ。結構やっとるで(笑)
由梨枝:接客から仕分けから、電話番もよくやってくれてます。今は子供が小さいから営業休止していますが、また落ち着いたら再開しようかなと。
大徳:前はすごかったな! ドアを開けた瞬間、お客さんがずらーっと並んでいるのが見えて。パンもみんな手づかみで取って、スーパーの袋に勝手に突っ込んでいったり(笑)
由梨枝:多分都会では考えられない現象だよね。

ーちなみにお二人の出会いとか、聞いてもいいですか……?
大徳:共通の友人がいて、その人から「パンを焼いている子がいるよ」ってずっと聞いていて。ある時、パン切り包丁を研いでってうちに来たんですよ。
由梨枝:自分で研ぐことができなかったから、紹介してもらって。
大徳:きりん屋に初めて来た時、この世界観にすごい圧倒されて。天然酵母とかも全然知らないけど、めちゃくちゃ美味しくって。確かトウモロコシのパンで、座布団の半分ぐらいの大きさだったけど一気に食べてしまった(笑)。今までコンビニパンしか食べたことがなかったから、「パンってこんな美味しいんや」って。
ー胃袋と心を掴まれたと……! お互いはどんな存在ですか?
大徳:全然職種は違うんだけど、すごい励みになる。
由梨枝:よく親友って言ってますね。
大徳:たぶん俺が女でも親友になっていたと思う(笑)。

強いパン

ー今回のもみじ市は夫婦そろっての参加になりますが?
大徳:不思議な感じだね、夫婦で呼んでもらえるって。
由梨枝:もみじ市は大体午前中で終わってしまう。二人とも音楽が好きだから、ライブとか聞きに行きたいんですけどね。終わると本当に気が抜けたようになってしまって。
大徳:運転と搬入・設営で疲れきってるからね。
由梨枝:でも新しいお店とか見に行きたいですね。当日、晴れたらいいな!
大徳:一回ずぶ濡れの時があって……。
由梨枝:机の上にプライスカードだけ並べて、それでお客さんに選んでもらうという。パンの実物は見れないから、渡してびっくりみたいな(笑)
大徳:晴れもめちゃくちゃ暑い日があったな……。
由梨枝:でもそっちの方がええわ。夕暮れが綺麗だったし。
ー河川敷ならではの光景ですね!

ー最後に、由梨枝さんがパンを作る上で目指していることはありますか?
由梨枝:私は心を動かすものを作りたい。食べ物だけじゃなくて音楽とかもそうだけど、口下手だから作るもので伝えていきたいなって。
大徳:パンの感想、なんて言われるのが一番嬉しい?
由梨枝:強いね(笑)。美味しいは当たり前。
ーその奥が大事ということですね。確かに由梨枝さんが作ったパンを食べると、力がみなぎってくるように感じます。

〜取材を終えて〜
本来ならインタビュー形式の予定だったのですが、大徳さんがあまりにもいいことを言っていて。そしてお二人の会話のテンポというか、空気感というか、これもきりん屋を形成する大事な要素の1つなんだなと感じ、それをお客さんにも見てほしくてこのような形になりました。口数は少ないけれど笑いながら相槌をうつ由梨枝さんと、その最高の理解者としてきりん屋の魅力を語ってくれる大徳さん。なんだかこちらが照れくさくなってしまうぐらい、幸せで温かい空気に包まれていました。家族4人で参戦するもみじ市、楽しみにしています!

【もみじ市当日の、きりん屋さんのブースイメージはこちら!】

おいしいパンの香りが漂ってきたら、そこはきりん屋のブース!