ジャンル:BREAD

CICOUTE BAKERY(15日)

【CICOUTE BAKERYプロフィール】
京王線南大沢駅から遊歩道を歩くこと10分。閑静な団地内に小麦の香ばしい匂いが漂ってきたら、そこはCICOUTE BAKERYです。4種の天然酵母を使いつくられる硬めのパンは、家に持ち帰ってからも香り続け、ひとたび口に入れると、小麦の香りがふわりと鼻を抜けます。私(担当:鈴木)は、CICOUTE BAKERYさんでパンを買うたび、おいしそうな匂いにやられ、持ち帰る途中で我慢できず、頬張りながら帰るというのが、毎回のルーティンになっています。
http://cicoute-bakery.com/

 

【商品カタログ予習帳】

C:baguette/チーズ


petit pruneaux


bagel/plain


espresso scone


pain de campagne


季節野菜のタルトフランベ


フレッシュトマトとコンテチーズ、エジプト塩のsand


バインミー


ローストキノコと豆腐ディップ、クレソンのタルティーヌ

 

【スペシャルインタビュー「CICOUTE BAKERY誕生から、現在まで」】

CICOUTE BAKERYの代表である北村千里さんに、鈴木麻葉(手紙社)がお話を伺いました。

すべてのきっかけは22歳の決意から

ーーーチクテベーカリーをはじめたきっかけを教えてください
北村:22歳のときに、絵の予備校学校時代の友人と交わした約束がきっかけになっています。

ーーーそれはどんな約束ですか?
北村:予備校時代から、なにか一緒にやりたいと話していました。その時は、なにをやりたいかも決まっておらず、漠然と“なにか”を一緒にできればと思っていました。その後、22歳のときにそれぞれががんばっていたこと。自分はパンを、友達は接客を、お店を始めようと決めました。

ーーー学生時代はパン作りを学んでいたのですか?
北村:大学では陶芸を専攻しており、特にパン作りは学んではいませんでした。

ーーーでは、なぜパン作りを?
北村:大学を卒業した時、就職氷河期でフリーターの人がたくさんいたんです。私もその一人でした。学生時代は、陶芸を専攻していたため、就職口も限られていました。陶芸にはあまり向いていないと感じていたので、違う道に進もうと。もともと映画が好きだったため、卒業後は自主制作で8mm映画を作っていました。ただ、映画をつくるのにはお金がかかるため、なにかアルバイトをしたくて。そのとき、パン屋でアルバイトを始めたんです。

ーーーそこから現在に至るまでの経緯を教えてください
北村:パン屋でアルバイトを始め、たまたまそのお店ではすぐに生地をさわったり、発酵させたりと実践的な工程をやらせてもらえたので、その工程を踏むうちに気がついたらパン作りにハマっていました。その後酵母のパンに出会い自分も作ってみたいと思うようになりました。

22歳の決意、28歳の実現まで

ーーーお店をやろうと決意した際に、いつオープンするというのは決めていたんですか?
北村:はい。28歳でオープンすると決めました。

ーーー実際はいかがでしたか?
北村:29歳になる1ヶ月前に滑り込みでオープンしました。友達も同時期に、下北沢で「チクテカフェ」をオープンしました。最初は実家の下にパン工房を作って、パンの卸と個人発送をしており、対面で販売はしていませんでした。

ーーーお店は最初から順風満帆でしたか?
北村:お店をオープンするより前に、鎌倉でパン作りを学んでおり、その頃からパンの個人発送を行っていました。初めの頃は、当時の顧客さまと、その時に紹介していただいた卸先に卸していました。

ーーー本当に目標を叶えたんですね!
北村:叶えたというか、決めたからやらなければという気持ちでオープンしました。お店を始めてから色々勉強しました。年齢が若いうちに始めて失敗したら、またやり直せばいいという気持ちでした。

CICOUTE BAKERYオープンから、現在の形になるまで

私(担当:鈴木)も大好きなCICOUTEさんのベーグル

ーーー店舗としてはいつから販売するようになったんですか?
北村:チクテベーカリーを始めて、1年半くらいたってからですね。最初は、発送のために焼いたパンの余りを販売することから始めました。対面販売を始めるという告知もしていなかったので、最初はぜんぜんお客様もこなかったです。そのうち、チクテカフェが取り上げられるようになり、ベーカリーにも少しずつですがお客様がいらっしゃるようになりました。

ーーー今のお店に移転を決めたのはなぜですか?
北村:以前の多摩境にあるお店は4人入れば満員になるような小さいお店でした。そのため、お客様には買ったらすぐ帰っていただかなければいけないし、雨の日でも並んでいただかなければいけなく、申し訳ない気持ちでした。その上、当時の窯はケーキを焼くための平釜をパン用に蒸気が出るようにした中古の再生品でしたので、パンのクオリティーがこれ以上上がることはないのと量産も難しいのとで、この場所で続けることに限界を感じていました。そんなことを悩んでいた時期に、東日本大震災が発生。配送業者も一時制限がかかり配送もままならず、車でご来店されるお客様が多かったためガソリンの高騰でご来店のお客様も激減しました。

そんなとき、発送メインではなく、お客様が普通に入れるパン屋を開きたいと思いました。お店で焼いて、美味しい
タイミングでお客様に手渡せるお店をやりたいと決心したのがきっかけです。

ーーーそうだったんですね。なぜこの南大沢の団地を選んだのですか?
北村:お店が小さい頃から通っていただいていたお客様に、今後も通っていただけるお店にしたいというのが一番にありました。探している範囲内でここが家賃的にも広さ的にもしっくりきたんです。以前のお店は、駅から徒歩20分ほど歩かなければいけない住宅地にありましたが、現在の場所は駅から10分ほどで来られること、そして近くに車が止められることも魅力の一つでした。そしてちょうど物件の下見にきた日の前日、商店街の目の前にあるスーパーが撤退し、商店街自体が殺風景になっていたんです。団地には年配の方が多く暮らしており、スーパーがなくなったことにより、買い物をする場所がなくなってしまったんです。そのみなさんの日常の場になればいいと思いました。

地域に根付くパン屋「CICOUTE BAKERY」へ

ーーーこんな店にしたい、というイメージはありましたか?
北村:以前は駅からも歩き、店内もすごく狭く、勇気を出さないと入りづらいお店でした。なので、パン1つでも買える、気軽に入れるお店にしたいと思っていました。

ーーー統一感のある店内ですよね。
北村:大きいテーブルとベンチを置くということだけは決めていました。また、中からも外からも程よく見えて、ゆっくり過ごせるお店にしたいというのがあったので、ガラス張りではなく半透明の波板にしました。西日が強いため、この波板が日を和らげてくれます。パンやドリンクを頼まなければ座れないというより、気兼ねなく座れる、居心地のいいスペースにしたかったのであまり造りこまず、シンプルな内装となっています。

コンクリートと木材をメインに使った工場っぽいイメージですかね……。実は、この木材は小学校の廃材を使っているんです。パンを置いているテーブルは、理科室テーブルの天板を張り替えたものです。(入り口入って左手の)棚は、ロッカーの板を使っているんですよ。

北村さんお気に入りの場所「めん台」

ーーーいよいよオープンし、お客様は初めからいらっしゃいましたか?
北村:ありがたいことに来てくださいました。以前の店舗からのお客様にも来ていただきました。ただ、今よりもパンの種類も販売数も少なく、クオリティーにも欠けていましたね。運営的にもオープン当初はひっちゃかめっちゃかでした。メニューや作業手順なども試行錯誤しながら、現在はパンの種類も2倍近くに。前の店から変わらないレシピもありますし、アレンジしたレシピ、もちろん新しいものもあります。現在は、色々作った中から絞り込んだものを置いています。

ーーー地元の方もかなりいらっしゃるイメージですが、お客様は地元の方の割合が多いですか?
北村:幼稚園や小学校、中学校が近いため、お迎えのお母さんや、子連れのお客様が多いですね。あとは、定年後移住してきた年配のご夫婦や若いご夫婦など幅広い方に利用していただいております。

万人受けはしなくとも、ここでしか手に入らないパン

ーーー初めてチクテさんのパンを食べた時、衝撃が走りました。私は元々ハード系のパンが好きでしたが、それを確固たるものとしたのがチクテさんのパンを食べた時からです。
北村:ありがとうございます。パン作りを始めた時から国産小麦・自家製酵母でつくるという信念がありました。そのため、作られるものがハード系が多くなってしまうというのもありますが、チクテベーカリーに来てくださるお客様はわざわざ買いに来てくださっていると思います。万人受けではないけれど、ここでしか手に入らないパンを作りたいというのはずっと思っています。

ーーーチクテさんのパンは本当に小麦の匂いが香ばしく、食欲をそそりますよね。
北村:時間が経っても香るパンを作りたいと思っています。発送の時、箱を開けたらふんわりと小麦の匂いが香るようなパンを作っています。

ーーー4種類の酵母を使っているんですよね?
北村:はい。ライ麦、レーズンの液種、ルヴァンリキッド、全粒粉の4種類の酵母を使っています。全粒粉の酵母は、パンを作り始めたときからずっと使っています。

ーーー 一日の流れを教えてください
北村:前日に仕込んだ生地を分割、成形、焼き、当日焼く生地の仕込みをして分割、成形、焼きです。一番早く出勤する人は午前1時半からスタートします。私は3時半に出勤し成形と仕込み、焼きを行っています。途中一時帰宅し、朝のSNSを更新などを行っています。昼寝に午後お店を抜けさせてもらって、午後5時に退勤後、家でもお店の仕込みや家の仕事をしています。

実際に生地をこねる様子

ーーー北村さんは販売はしないんですか?
北村:自分で作ったものをお勧めするのが恥ずかしいので接客はしません。説明にも熱が入りすぎるのでもう少し客観的な方がいいかなと。販売はプロに任せます(笑)。販売スタッフに安心してお願いしています。

パンフェス出店から、もみじ市出店へ

ーーー初めてもみじ市にご出店したのはいつですか?
北村:2013年です。最初に出店したイベントはパンフェスでした。

ーーーそれ以前からもみじ市は知っていましたか?
北村:はい。イベントをやっているのも知っていました。つつじケ丘本店もお客さんとして伺ったこともあります。

ーーー初めて出展してみてどうでしたか?
北村:2013年のもみじ市は大雨で……。2便で持って行くはずだったパンが遅れ、パンは濡れるしお客さまもお待たせしてしまうしで後悔ばかりでした。

ーーーそんな初回を経験し、翌年は出ようかと迷いませんでしたか?
北村:2014年は雨が降ったら京王閣の室内という保証があったんです。なのでもう一度挑戦してみようと思いました。もみじ市は、後悔もあるけどそれ以上に得るものが多いんです。それは、私だけでなくスタッフもみんなそうです。チームの結束力も強くなりますし、達成感も大きい。その年は乗り越えられなくても翌年また挑戦できる。続けて出ることに意味のあるイベントだと思います。

ーーー今年のテーマに合わせ何を作ってくださいますか?
北村:今年のテーマは作りやすいです。丸いパンだけじゃ寂しいので今から考えています。

ーーー意気込みを教えてください
北村:今年も無事に終わるようにとドキドキしながらも密かに意気込んでいます。製造数の問題ではなく、気持ちとして、一人でもたくさんの人に一つでもパンを手渡せるように。

ーーー北村さん、どうもありがとうございました。

〜取材を終えて〜
私は友人から「オススメのパン屋さんはどこ?」と聞かれたときは、必ずと言って良いほど、「CICOUTE BAKERY!!」と答えるくらいチクテさんが大好きです。今回、念願叶って担当になり、お店ができた経緯や密かに気になっていたお店の内装のことも伺えて、担当としてはもちろん、一ファンとして有意義な時間を過ごすことができました。北村さん、ありがとうございました。(手紙社 鈴木麻葉)

【もみじ市当日の、CICOUTE BAKERYさんのブースイメージはこちら!】

チクテのCバゲットをラウンドにして吊るしてみようか(笑)と思ってます。なんのパンが吊るされるかお楽しみに!