ジャンル:ILLUST&DESIGN

COCHAEとドンタク玩具社

【PROFILE】
“あそびのデザイン”をテーマに活動する軸原ヨウスケ・武田美貴さんによるデザインユニット「COCHAE」。“工人さんと共に考え、共に作る”をテーマに伝統こけしや郷土玩具などの「新しいかたち」を提案する創生玩具プロジェクト「ドンタク玩具社」。日本に古くからある折り紙やこけしといったモチーフを新しい視点で作り手たちと一緒に作り上げていく2大ブランドです。ブランド名であるCOCHAEは軸原さんの出身地である岡山県の伝承民謡の中にある「こちゃえー、こちゃえー」という「こちらへどうぞ」「こっちはいいぞ~」という意味の節回しから。ポップな色合いのこけしやクスッと笑ってしまう絵柄の折り紙に、大人も夢中になって遊んでしまいます。
http://www.cochae.com/system/
http://donduc.com

【商品カタログ予習帳】

「カワイイ・ヲリガミ」

「山東京伝千代紙A」
「山東京伝千代紙B」
「お母さんこけし」
わたし、お母さんになりました。
「ゆらゆら赤ちゃん」
起き上がり小法師のように揺れるえじこに入った赤ちゃん。
「ドンタクコウノトリ」
ドンタク玩具社オリジナルの幸せを運ぶコウノトリ。
「吹屋の紅てんぐ」
唐辛子と柚子を組み合わせた辛柚子酢という調味料を岡山県の佐藤紅商店と開発。地域に残る天狗伝説からデザインしました。

【スペシャルインタビュー「古き良きものを復刻させたい」】

岡山を拠点に活動するCOCHAE(コチャエ)とドンタク玩具社。その2つのプロジェクトに携わる軸原ヨウスケさんに担当:上野樹がお話を伺いました。

古くからある玩具の面白さ

ーーーコチャエさんとドンタク玩具社さんの主な成り立ち、活動内容を教えてください
コチャエはぼくともう一人、武田美貴と2人でやっています。簡単に言うと遊びのデザインをテーマにグッズを作っていますね。ドンタク玩具社は、妻とやっていまして、主にこけしを制作をしています。 先に立ち上げたのが、2003年のコチャエで、一昨年ドンタク玩具社を立ち上げました。コチャエからはもう10年以上になりますね。

ーーーはじめからおもちゃ関係のお仕事をしていたのですか?
そういう訳ではないんですよ。僕は映画の学校へ行っていたんです。立体アニメーションとかの映像を作っていました。

ーーー映像からおもちゃを作るようになった、きっかけとはなんでしょうか。
折り紙が得意な友人(元COCHAEメンバー)がいて、これは面白いぞってなりまして、彼と武田とともに写真がコラージュされたオリジナルの折り紙を作ったんです。たまたまフリーペーパーに載せたら反響があって、雑誌『装苑』のアートニューカマー特集にいきなり掲載されて。それが2004年くらいのことだと思います。

COCHAEさんのアトリエ風景

ーーーすごいですね! まだその時には名前を決めていなかったとお聞きしました。
そうなんです。いきなり本に載るということで付けた名前が「コチャエ」なんです。フリーペーパーに載せた時は名前を決めていなくて、 装苑に載るということになって急遽考えました。

ーーーそうだったんですね (笑)。コチャエさんの名前の由来は?
岡山の伝承民謡にコチャエ節というのがあるんですよ。 メンバーは全員岡山出身だったということもあり、岡山ではよくお祭りとかで流れるなじみ深いものだったんです。それを70年代の終わりにデイスコアレンジしたレコードがあって、当時面白くてよく聴いていたんですね。

ーーーそれを名前にしたのですね。お祭りのような楽しげな様子を出したかったのですね。
はい、そうですね。こちゃえ、には「こっちはいいぞ」とか「一見さんいらっしゃい」みたいな意味もあって。そこから流れるように大阪のギャラリーから展示に誘われたり、いろいろ数年間やっていくなかで、折り紙をはじめとした紙の玩具を復刻したいと思うようになりました。紙相撲や指人形など、昔からあったものを新しく考えて形にするという現在の形になりました。

ーーーそういう流れだったんですね。では2004年から今までどんな歩みをたどったのですか?
初めは難解なオブジェのような折り紙を作っていたんです。折り工程が鶴の3倍とかあるものなど。でも、やっぱりこれは難しすぎるねということになり、簡単な折り方のものに方向性を変えたんです。誰でも折れる楽しい作品にしようと思いました。そこで、ふと思ったのがそこから逆に、“折り紙が苦手だったり、折れないこと”で何かできないかなと。そう思って結果的にできたのが「ファニーフェイスカード」でした。

ーーー折れないことに注目したものなんですか。
初めは「オレオレナイ」という商品名で3回折って顔が出来るというものを作りました。これが2007年位ですかね。そこから、1枚の紙から何通りも折り方が出来るという折り紙の自由さや多様性を証明したいと思うようになり、決まった折り方を決めないで出来るものとしてファニーフェイスカードをデザインしました。

ーーーそういう経緯があったのですね。ちなみにファニーフェイスカードを使ってどれだけの顔ができるんですか?
百種類以上できますよ。今だに子供達とワークショップをすると、こんな顔ができるのか、と驚きます。

ーーー確かに出来上がった顔を見ると楽しいですよね、折り紙特有の顔とか口とか、
そうですね。ワークショップをするごとに新しい発見がありますよ。

ーーー折り紙以外には何をやられているのですか?
折り紙の他にも平面が立体になって遊べるものはなんでもやってます。最近では風呂敷が人気ですね。初めは折り紙風呂敷だったんですけど、実は正直いうと、最初から包んで形になるものを作りたかったんで、今の形になりました。

ーーーそうなんですね。ではコチャエさんの商品を作る上で根底に流れているものはなんでしょうか?
当たり前なんですけど、面白いものを作るというのが第一にあります。面白さを妨げるような難しさはなるべく残したくなくて、遊ぶ工程の途中に折ったり切ったりする作業を入れたくない。すぐにのめり込んでくれる商品を作りたかったんですよね。基本、日本に昔からあるものにスポットを当てています。ちょっとだけ導入部分をアップデートする感じですかね。今は浮世絵のおもちゃ絵、わかりやすくいうと江戸時代くらいの遊べる紙にすごく興味があります。

ーーー昔のおもちゃを現代の子供が楽しむって、なんだか面白いですね。
そうですね。でもいつの時代もおもちゃって楽しいものだからその楽しさを感じてもらいたいです。

ーーーでは、去年始めたドンタク玩具社さんのほうですが、こちらの経緯は?
はじめは東北の伝統こけし工人さんと作品を作る目的で、モダンにアレンジしたり、デザイン性のあるものを作ったりしていたのですけど、子供が生まれてからは玩具本来の形に戻って、彼らに遊んでもらいたいものを新たにデザインして作るようになりました。こちらは妻の美智子がメインでやっています。

ーーーそのなかでもこけしがメインなのですね。
そうですね。僕がただ単に伝統こけしが好きだったので「こけしブック」という本も2010年に作ったんですよ。 今もこけし祭りのポスターとかも作っているんですけど。とにかくこけしが好きで、古臭いものではなく、そのデザインのモダンさや面白さに特化した紹介をしたかったんです。その当時はどこへ行っても、こけしの工人さんの話を聞くと客が全然いないとか、もうだめだとか、今はこけしブームになったんですけど、当時の若い人は、こけしにほとんど興味がなくて。

ーーーたしかに少し前までは民芸品のイメージが強かったですよね。調べていくと東北の地域によって形や模様、顔つきが違ったりと様々な特徴があって面白いですよね。
そうなんです。こけしにも色々あってそれぞれの良さがるんです。だからこそ無くしちゃダメだと思って、自分たちも何か作ろうと思ったんですよね。そういう感じで展覧会もやったり、本も作ったり。 一生懸命やっていたんです。そこからちょっと色々な方向に広がって、当初は暗いイメージへのカウンターとして「ポップで可愛い」と訴える感じだったんですけれど。震災後は本当にただ可愛いというほうを目指すようなものも出てきてしまって、もっと本質的なものを地元の人と作れないかなと思って始めたことなんです。

ドンタク玩具社さんのこけしアトリエ

ーーーそうなんですね。でも工人さんといってもどのくらいの年齢なんですか?
50~60代の方がほとんどですね。でも実は一番工人として脂が乗っている時で、発想も豊かな方が多くて、それでいてただ新しいものを作るのではなく、伝統のものと合わせたものを作ろうって言って下さって。工人さん自身も面白みを感じてもらって、お互いに楽しいですね。

ーーーなんだかお互いに求めているものが合致するって最高ですね。
はい。それと「立ち止まった工業デザイナー」とも言われている秋岡芳夫さんが戦後すぐに描いた轆轤玩具のデッサンがあって、それを平面デッサンから立体に復刻するというプロジェクトにも取り組んでいます。ちょうど秋岡さんの大ファンという工人さん(鳴子温泉・早坂利成さん)もいたりして。

もみじ市はおしゃれなお祭り

ーーーすごいですね。その作品、もみじ市には登場するのでしょうか?
持っていきますよ。でも商品は少ない数しかなくて、それにかなり制作時間もかかるので多分、展示品として持っていくことになると思いますが。

ーーー実際に見れるのは楽しみですね。もみじ市に初めてお声がけした時、どういう心境でしたか?
そうですね、なんで僕たちの所に、と実感が湧きませんでした。もみじ市のことは知り合いが何人か参加していたこともあり知っていて、おしゃれな人が並ぶ近寄りがたいお祭りのようなものだと思っていました(笑)

ーーー初めてのもみじ市、いかがでしたか?
あの河川敷から駅にかけて人が並んでいてびっくりしました。こんなに人が集まるんだって。改めて大きなイベントに呼ばれたんだなって嬉しくなりました。

ーーーそう行っていただけると光栄です。当日はどういったものを持って来ていただけるのでしょうか。
昔懐かしい玩具の中から、ROUNDにちなんで丸っこいものを集めてお持ちしたいと思います。

ーーー楽しみにしています。軸原さん、ありがとうございました!

〜取材を終えて〜
遠い岡山で活動している軸原さんの作品を改めて手に取った時、懐かしいのに新鮮な気持ちになりました。それは軸原さんの玩具に対する深い知識とそれを長年作ってきた作り手さんの技術が合わさってこそなんだと、感じることが出来ました。折って完成するパッケージの箱というのもデザインされており、ついつい時間を忘れて楽しく組み立てることが出来て、自然に楽しさに直結するデザインのものばかりです。今ではあまり触れなくなった玩具も、COCHAEとドンタク玩具社さんのブースで新たな発見が出来るはずです。(手紙社 上野樹)