【coupéプロフィール】
中丸貴幸さん・美砂さんご夫婦が、お互いの得意分野を活かしながら靴作りを行うcoupé。つま先のゆるやかな丸みと、どんな服装にもそっと馴染む風合いの靴は、その屋号の通りまるでコッペパンのような親しみやすさです。「長年愛用したい」と思わせる魅力いっぱいの靴は、手紙社内にも多数のファンがいるほど。かく言う私(担当:藤枝)もその一人で、1月の「オーダーメイドの日」では、一目惚れした「コッペシューズ」をオーダーしました。まだ完成していないのですが、出来上がりを楽しみに待つこのワクワクを、みなさんにも味わってほしい!
http://coupe-shoes.com/
【商品カタログ予習帳】
C02-02 NY/ダークブラウン オパンケ製法
C02-01 NY/ブラック マッケイ製法
C01-09 PU/ブラック マッケイ製法
C01-05 PU/キャメル マッケイ製法
C01-08 TU/ブラック マッケイ製法
C01-03 TU/グレー グッドイヤーウエルト製法
C01-03 PU/キャメル マッケイ製法
C01-02 ST/ダークグリーン マッケイ製法
C01-01 ST/レッドブラウン グッドイヤーウエルト製法
C01-02 ST/ブラック グッドイヤーウエルト製法
【スペシャルインタビュー「coupéの原点と、その行く末」】
5組の作り手が集い、東小金井にオープンした「atelier tempo-アトリエテンポ-」。担当の藤枝梢(手紙社)が、その中の一区画にあるcoupéのお店を訪ねました。
ゼロの状態から足を踏み入れた靴の世界
ーーー同じ職業訓練校に通っていたという、貴幸さんと美砂さん。作り手を志したきっかけは何だったのでしょうか?
貴幸:靴作りを始める前はSEとして働いていて、最初から靴を作ろうと決めていたわけではありませんでした。昔からスニーカーが好きだったことと、「自分の手の届く範囲で完結する仕事がしたい」という思いが募り、靴作りに辿り着きました。
美砂:私も同じく、作るものについては特に限定していたわけではなく、好きなものづくりの世界で生きていくことができないかと模索していたんです。家具屋に勤めている中で経年変化がある革という素材に興味を持ち、色々と調べていたら職業訓練校に製くつ科があることを知り、受験したことが始まりです。
ーーーお二人とも、元は全く別の道を歩んでいたのですね。職業訓練校を卒業した後は、どのような進路を取られたのでしょうか?
貴幸:将来は独立することを見据えていたため、まずはメーカーに入社しました。靴作りの業界に足を踏み入れて初めて知ることもたくさんあり、迷いも生じましたが、「試しに一度やってみよう」と独立することを決意。気合を入れて始めたというよりは、なんとなく始めてみたら続いちゃったという感じです。
ーーー独立されてから6年経つそうですが、プロとして生きていくうえで、必要なものは何だと思いますか?
貴幸:「物事に対して素直であること」と、「作ることに対して真摯であること」。これまでの先人たちが培ってきたノウハウや手順が、少しずつ積み重なり今に至っているため、最初はそれらをありのまま受け入れ学ぶことが大事だと思います。茶道や武道などの師弟関係のあり方として、「守破離」というものがあるんです。まずは師匠から教わった型を“守り”、研究を重ねていく中で既存の型を“破り”、最終的には型から“離れ”自己の流派を確立するという、修行の過程のようなもの。靴作りにおいても、この「守破離」を大切にしたいという思いがあります。
coupéならではの、分業制の靴作り
ーーーひとつの靴ができるまでの工程を教えていただけますか?
美砂:靴作りには主に、型入れ→裁断→製甲→釣り込み→底付け→仕上げの6つの工程があります。牛の革を切り出して、ミシンで貼り合わせて縫う「型入れ~製甲」の作業は私が行なっています。
貴幸:その後の「釣り込み~仕上げ」は僕が担当しています。木型に革を沿わせ釘を使って立体にしていき、底を付けて完成させる作業ですね。靴の保形のために寝かせる時間を含めて、1足を完成させるのにかかる時間は約半月ほどです。
ーーーご夫婦だからこその、絶妙な分担の仕方ですね。靴製作には専門的な道具が必要そうですが、どのような道具を使っているのですか?
美砂:私が使っているミシンは、主人が以前働いていたメーカーの社長から、独立する時に譲っていただいたもの。革を薄くするための漉き機も、お世話になっている靴の先生からいただいたものなんです。どちらもメンテナンスをしながら、大事に使っています。
貴幸:底付けの工程の方は、「ワニ」という名前の工具など、手で使う道具が多いです。最近は、完全にハンドメイドで靴を作ることが減り、機械で作ることが増えたため、昔の職人の道具は数が少なくてとても貴重なんです。壊れたらもう手に入らないものもあるので、壊さないよう緊張感を持ちながら使っています。僕が使っている道具も、8割ぐらいは先輩から譲り受けたものですね。
二人を取り巻く環境の変化と新たな作品
ーーー受注生産で活動しているcoupéですが、靴を作る際の発想の源はどこにあるのでしょうか?
貴幸:以前は「自分が履きたい」「妻に履いてほしい」という、見た目から入ることが多かったのですが、昨年子供が生まれてから着眼点が変わりました。最近は、「こんな場面で履いてほしい」「こんな人たちに履いてほしい」と、用途や使う人をイメージしながら製作するようにしています。
美砂:デザインも、そういった使用シーンを想定して考えています。靴は人が履いて完成するものだと思うのですが、人の足に合わせることと、靴としての美しさ、そのバランスをうまく両立させるのが難しいところですね。
ーーー履きやすさと美しさ。細部まで神経を注いでいるからこそ、coupéの靴はその二つを兼ね備えているのですね。お二人にとって、もみじ市は今年で3回目の参加になりますが、“ROUND”というテーマを聞いて、どのように感じましたか?
貴幸:靴のつま先の種類に「ラウンド」と呼ばれる形があるので、それがパッと思い浮かびましたね。coupéの靴は丸いつま先が特徴なので、「まさにROUNDだね」と二人で話していました。
ーーー確かにテーマにぴったりですね! もみじ市では新たなアイテムをお披露目いただけるという噂ですが……?
貴幸:今年の春にノンレースの靴を発表したのですが、もみじ市ではその最新作の、全サイズ・全色を一番最初に披露する予定です。coupé定番の「コッペシューズ」と形はほとんど一緒なのですが、紐靴をノンレースにアレンジしたもの。紐の部分をゴムにして、履く手間を極力少なくしました。小さい子供がいると、着るものや履くものに制約がかかってしまうという状況がよく分かるので、お子様連れの方に特におすすめしたい一足です。革靴の脱ぎ履きを面倒に感じている方にこそ、履いていただけると嬉しいです。
ーーー貴幸さん、美砂さん、どうもありがとうございました! もみじ市で、これからの日々を共に歩む靴と出会えることを楽しみにしています!
〜取材を終えて〜
昨年に引き続き、もみじ市の担当をさせていただくことになったcoupéさん。約1年ぶりに訪れたお店には、変わらずたくさんの靴が並んでいて、眺めているだけで心が弾みました。家族が増え手がける靴にも変化が現れてきたお二人ですが、「履き込むほどに味わいが増し、自分だけの特別な一足になる」という、coupéの靴の根幹は決してぶれることはありません。この先お二人がどのような靴を製作されていくのか、期待大です!(手紙社 藤枝梢)
【もみじ市当日の、coupéさんのブースイメージはこちら!】
たくさん並んだ靴を目印に、いらしてくださいね。