ジャンル:ILLUST&DESIGN

イシイリョウコ

【PROFILE】
可愛らしいけれどどこか奇妙でミステリアスな世界。イラストレーターであり人形作家でもあるイシイリョウコさんの生み出すキャラクターは独創的で一度見たら忘れられなくなる魅力があります。繊細で細やかな線で描かれた絵や一点一点手縫いの人形には、イシイさんがいつも思い浮かべている世界が形となり、色となり表れています。人形に使われているのは時代と国を越えた古い布。キャラクターのイメージに合うように選びながら色をつけて作り上げているそう。作品からはイメージの出来ない、いつも朗らかな笑顔のイシイさん。彼女の作品にも、人柄にも引き込まれてしまうのです。
http://hibi-no-rakugaki.blogspot.jp

【商品カタログ予習帳】

模様のペガサス

山ガール
猫耳ダンスさん
豆人形ブローチ
水玉豆きのこ (石粉粘土)
わたしの林檎 (石粉粘土作品)
冬待ち猫さん(石粉粘土作品)
鳥とこけしちゃん
活版印刷六角 シール(イシイリョウコ&緑青社)
活版印刷紙ケース「太陽」「月」(イシイリョウコ&緑青社)
活版印刷紙ケース「月」(イシイリョウコ&緑青社)
大判ポストカード
活版印刷ポストカード「月と庭」「スノードーム」 (イシイリョウコ&緑青社)

【スペシャルインタビュー「好きなものを作って一人に気に入ってもらえれば、それで十分」】

ある時はイラストレーター、ある時は人形作家のイシイリョウコさん。一体どんな素顔を見せてくださるのか、担当:上野樹がお話を伺いました。

思いのまま作り続けています

ーーーイシイさんの絵は、どうやって描き進めているのでしょうか。
実は私、ラフスケッチは描かないんです。そのまま描き始めます。

ーーー一発勝負なんですか?
頭の中で考えていてバーっと描き進めます。描き始めたら早いです。手が早いなので、一気に完成までもっていきます。一度描いてしまったら消せないので「可愛すぎる」とか「怖すぎる」という極端にならないようにしています。どこかを描いたら、他の場所を見てバランスを取りながら進めていきます。

ーーー人形も同じように進めるのですか?
人形の時は、まずなにか作ろうと白い布を広げて、鉛筆でざっくりラインだけ描いていきます。そのまま縫いはじめて、ひっくり返して綿をつめて、立体になった段階で初めて絵を描きます。絵付けでは顔から描き始めることが多いです。

人形を作る時に使っている道具。細かい作業もこれで進めます。

ーーー顔からなんですか。
あまり可愛くなりすぎないように、バランスを取るようにはしています。例えばピンクを使うと可愛くなりすぎてしまうので、あえて反対色とかで模様を描いたりしています。どちらかに偏らないようバランスを取っています。

ーーー下書きの話に戻ってしまうのですが、間違えた! という時はありませんか?
ありますよ! 下書き無しでいきなり描き進めていくと「うわっ、変なとこに線描いちゃったなあ」となる時があるんですが、修正なんて出来ないからどうにかしなくちゃいけなくて、どんどん思ってたのと違うほうに行っちゃうこともあります。かといって下書きをすると同じことをなぞていく内に飽きてしまうことがあります。

ーーー間違ったところもうまく活かしていくのですね。
その偶然みたいなものが、良い方向に繋がったりするから面白いですよね。線画の面白さってそういうところにあるのかなって思っています。良く言っていますが、計画性が無いからそういうことになるんです(笑)

ーーーいつ頃からこういうタッチの絵を描かれていたのですか?
大学の時は油絵を描いていました。でも途中から素材をアクリルに変えたんです。版画も少しやりましたが、1点に時間をかけて制作していくものなので、自分にはやはり合わないなと思って。それなら版画で表現できる線を全部手描きにすれば同じことだ!と思って線画をよく描くようになりました。

よく使う0号の筆

ーーーすぐ出来るものが良い?
そうです。やっぱり考えたらすぐにやらないと、結局作らなかったりして。メモもしないから忘れちゃったり。あとから思い出して作るものもあるんですが、そういうのが溜まりすぎるとモヤモヤしちゃうので、ズバババっと制作しちゃいます。

ーーーそうなんですね。イラストの時も顔から描き始めますか?
いやそんなこともないです。全くバラバラです。足とか最初に描いてみたり。適当に丸とか描いてみて、そこから思いつくままどんどん世界を広げていきます。それが良いほうにいくこともあれば、どうしようもなくなるときもありますけど。そういった所が絵の楽しさでもあるんですよね。

ーーーそうして絵から人形を作ろうと考えたのはどうしてだったのでしょうか。
“手に持てる絵”が出来たら良いなと考えるようになって人形を作り始めました。ずっとアクリルを使っていたので、これで布に描けば人形が出来るんじゃないかと、単純な思い付きで始めました。でも縫物が大がつくほど嫌いで・・・

ーーーもともと人形作りが得意なのかと思っていました!
全然出来なかったんです。家庭科の成績もよくないですし。今だにミシンも使えません。だから手縫いでやってみようと独学で作り始めました。

ーーー独学でここまでやってきたのですね。諦めようと思った時はありませんでしたか?
落ち込んだりした時に急に作れなくなったりするようなこともある方もいると思うのですが、私の場合そういうのが全然なくて。絵に行き詰まったら人形を作って、人形をしばらく続けたら絵に戻って。そうやって良いバランスが取れているので、作れなくなるっていうのがないです。ずっとモチベーションはフラットです。肩書きはなんですかって言われるとイラストレーターの時もありますし、以前のもみじ市ではクラフトのカテゴリーにいたり(笑)。あっちこっち。

ーーーずっと好きなものを作り続けているわけですね。
今は何を作っても許されるし、先生に成績を付けられるわけではないので好きものばかり作っています。いつも何作ろうかなって考えていて、頭の中では四六時中作りたいものアイデアで溢れています。息つく暇もないけれど、不思議と楽しいです。

ーーーそうやって独特な人形たちが出来上がってくるんですね。ちなみにこれはイメージなどあるのでしょうか。
これは、ゆるキャラです。

山ガールと海ガールの原画

ーーーゆるキャラなんですか!?
そう、ゆるキャラなんです。目玉ちゃんとか、お目々ちゃんとかそうじゃなくて名前は「山ガール」。最初に絵があったんですよ、山の上にこういう女の子が立っている。人形だともう山の要素は無いんですが、山ガールとして作ってみました。

ーーー僕のゆるキャラのイメージがガラッと変わりました。
海ガールも描きました。そうやって好きなものが増えていくんです。

ーーー大学は女子美術大学とお聞きしたのですが、もともと絵がお好きだったのですか?
絵は好きだったんですが、中学高校と別に美術部とかではなかったんです。演劇部でした。デッサンとかもしたことがなくて、最初美大に行こうとも考えていなかったんです。イラストの専門学校に行きたくて、そこに行くために通ったところが美術予備校だったんです。それで周りの美大に行く流れに乗せられまして・・・

ーーー描くという行為が好きだったんですね。
これが表現したいから美大行きましたという感じではなかったので、それが良い結果に繋がったのかもしれないです。好きなことを続けられる環境だったから、途中で諦めずにここまで来られたんですよね。

ーーーイシイさんの作品には物語性を感じていて、学生時代の演劇部の経験も生かされているのでしょうか。
特に舞台とかたくさん見に行ったりしてたわけではないんですが、舞台のセットなどは好きで興味を持っていました。今は映画が好きですね。

ーーーそういえばお勧めされていた映画「水玉の幻想」を見させていただきました。ガラスを使った映画でとても綺麗でした。
綺麗ですよね。ガラスそのものを使った映像って中々ないじゃないですか。どうやって作っているのかわからない不思議な映像。10分くらいのものなのに、密度が高い。

ーーー勝手な願望ですが、イシイさんの人形を使った劇とか見てみたいですね。
実は前から作りたいなと思っていて、夢なんです。

ーーーその夢叶えたいですね。
でも人形劇用の作り方というのもあり、今作っているやり方とは全然違うんですよ。腕を動かしたり、目も動きますし、そういう動き方を考えるとどう作ればいいのか勉強したいなと思います。いつかもみじ市で実現させたいですね。

もみじ市は楽しませたい、という気持ちが一番にあります

ーーーもみじ市で毎年考えていることを教えてください。
作ったものを見ていただくだけでなく、遊べるような写真に撮っていただいてOKな面白いものを毎年作ろうと思っています。作品としては、身に付けるもの、指輪とかブローチをいつも作っているのですが、特にもみじ市ではたくさん作って持って行っています。

模様のきのこ傘

ーーーお客さんは女性が多く来られますか?
個展の時はやはり女性が多いんですが、もみじ市は男性も多くいらっしゃいます。男性のご年配の方が手に取ってくれたりするとすごく嬉しいんです。以前ご夫婦でいらっしゃったお客さまで旦那さんのほうが興味を持って下さって、何度も立ち寄ってくださって、迷った末にプレゼントのためと言ってひとつ選んでくださった時は特に嬉しかったです。

ーーー男性の方にも喜んでいただけたのですね。
もみじ市には色んな方がいらっしゃって、初めての出会いがあるからいつも楽しいです。布博にも参加させてもらった時、印象的だったのが「真面目なブローチを先にたくさん買ってきちゃって、こんなのもあったのね!」って言って、ブローチと選んで下さったお客さまがいて。私のブローチは真面目じゃないんだな・・・って心の中で突っ込んだんですが、布博のような綺麗なものが集まる場で、面白がって選んでくださる方もいるんだなと嬉しくなりました。

ーーー思ってもいなかったところから、良いと言ってくださるのは嬉しいですよね。
不真面目な作品でも良いと思っているんです。“真面目に不真面目”って楽しいですよね。誰か一人でも自分の作品を良いと言ってくれればそれで十分なんです。楽しい気持ちが作るものに出ていることが大事だと思っています。

ーーーたしかにそうですね。思いが伝わると嬉しいです。
売れる売れないは確かに重要ですが、“作り手の遊び”って大切だなって思うんです。もみじ市ではそういう面白い素敵な作品が多いなと思います。

新作のブローチも製作途中!「森ボーイ」もみられるかも…

ーーー今年のもみじ市“ROUND”から何かイメージするものはなんでしょうか。
そうですね、日頃から思っているものからROUNDに繋がる楽しいものを作ってみたいです。ずっと好きなものばかり作り続けていきたいから、連想ゲームみたいにアイデアを繋げて当日に臨みたいと思います。

ーーーイシイさんの描くものの中には楽しさがたっぷり詰まっているわけですね。
単純な楽しさじゃなくて、ちょっと変なところもあるというのが好きなので、今回もそういう作品を持っていきます。作品だけじゃなくてプラスアルファ、来てくださったお客さまを楽しませたいという雰囲気がもみじ市にはあると思っているので、お祭り気分で遊びに来ていただけたら嬉しいです。

ーーーイシイさん、楽しいお話ありがとうございました!

〜取材を終えて〜
個展にお邪魔させて頂いたのが、イシイリョウコさんとの初めての出会いで、お会いするまでこんなにも明るく楽しい方だとは思ってもいませんでした。作風から勝手に想像していた気難しい感じとは全く違い、お互いの共通の趣味であるホラー映画の話で盛り上がりすぎて時間を忘れてしまうほど、気さくな作家さんでした。とても長い時間お話を伺ったのですが、終始笑っていた記憶しかないです。この方が作っているのだから、作品も面白いに違いありません! もみじ市では、エンターテイナーでもあるイシイリョウコさんに会いに来て頂きたいです。(手紙社 上野樹)