ジャンル:TEXTILE

kata kata

【kata kataプロフィール】
伝統的な型染め、注染など技法を用い、生き物や植物、日常に溢れる“ものがたり”を描きだす、テキスタイルユニット・kata kata。布のなかを元気よく踊る、個性たっぷりの生き物たちからは、描く人の生命力を感じることができます。私(担当:鈴木)がおすすめするのは“てぬぐい”です。種類豊富な“てぬぐい”は、ターバンとして使うも良し、お弁当を包むのも良し、様々なシーンで大活躍します。作品ももちろんですが、「今回はどんなワクワクを持ってきてくれるのだろうか?」と毎回期待させてくれる、バイタリティー溢れるkata kataのお二人にも注目してほしい!
http://kata-kata04.com/

【商品カタログ予習帳】

注染手ぬぐい


プリントクロス、ハンカチ


ハンカチ、注染手ぬぐい(畳むと仕掛けがある手ぬぐいも!)


トートバック、パソコンケース、プチバック


風呂敷、ふわふわタオル


ポストカード


印判手皿


オオカミ柄のスカート


ザリガニ柄のスカート

【スペシャルインタビュー「もみじ市と共に歩んできたkata kataの11年」】

松永武さん、高井知絵さんによるテキスタイルユニット・kata kataのアトリエにお邪魔し、お話を伺いました。

もみじ市出店は一通のDMから

ーーー初回からもみじ市に参加しているkata kataさんですが、もみじ市にお声がかかった経緯を教えてください
知絵:個展のDMを北島さん(手紙社代表)に送ったのがきっかけでした。当時、好きな雑誌の編集長宛に個展のDMを送りまくっていたんです。その一人が北島さんでした。DMを見て、連絡をくれて……。たくさん送った中で、唯一連絡をくれたのが北島さん。

ーーー当時何歳くらいでしたか?
知絵:大学を卒業して1、2年で、まだ20代前半でした。個展には、北島さんはいらっしゃらなかったのですが、送ったDMが目について、ずっと持っていてくれたみたいで、終わって少し経ってから連絡がきて、北島さんと洋子さんとお会いしました。

ーーーお声がかかった時、どんな気持ちでしたか?
知絵:私たちにとっては“夢のような機会”でした。当時、雑誌で見るような料理研究家さんやパン屋さんがたくさん出店していて、「雑誌の中の世界だ!」と。

ーーー実際、出店してみていかがでしたか?
武:当時は、森のテラスという場所での開催で。持って行ったのは、型染めで作った手ぬぐいを10柄各12枚ずつだけ。開場して一瞬で売り切れちゃって、流木に穴を開けた花瓶みたいな、型染めと全く関係ないものを売ってたよね(笑)。
知絵:そうそう。机も亜衣ちゃん(Charan 山田亜衣さん)と半分ずつだったよね。その時、会場の床が抜けるんじゃないかってくらいお客さんがきて。今まで大学の学祭などで物販はしてきたけれど、ここまで一瞬で売れることは初めてで。貴重な経験でした。当時は、どうやって接客していいのかも分からず、とにかく自信がなかったので、商品説明も本当に下手くそで……。今でこそワーワーしてるけど、打ち上げの時とか部屋の隅で二人で座ってて、年上の作家さんに「kata kata楽しんでる?」とか声かけてもらったり(笑)。

ーーー想像つきません(笑)。
知絵:私たちは口下手だから、なかなか上手にできなくて……。もみじ市の出店がきっかけで、お客さんとコミュニケーションを取りながら、作品を手に取ってもらうには? と考えるようになりました。そこで、今のような手ぬぐいの仕掛けが生まれました。「たくさんのザリガニの中にザリガニの赤ちゃんが隠れている」「魚群のなかにイカが一杯紛れている」など、隠れキャラや物語などを生地に落とし込むことで、お客さんとの会話のきっかけになり、コミュニケーションを取れるように。

ーーーもみじ市で得るものが大きかったのですね。
武:そうですね。あとは、他のジャンルの作家さんと話すのも楽しかった。
知絵:当時は同世代のものづくりの友達がいなかったので、仲間ができたのもすごく嬉しかったです。大学を卒業してすぐの出店で社会経験もなかったため、礼儀も何も知らなくて……。常識や礼儀も、一流の人たちから教えてもらい、勉強させてもらったよね。

自らエンターテイメントを作り出すのが「もみじ市」

ーーー現在、デモンストレーションや顔ハメ布などのエンターテインメントを用意してくれますが、いつから始めたんですか?
知絵:デモンストレーションについては、北島さんに提案してもらいました。販売の時に、型染めの技法を説明するけど、実際どんな風に染めているのか想像できないな、と。河川敷で型染めをできないか? と思い、口で説明するのが難しいところを補うためにデモンストレーションを始めました。

ーーー今年もデモンストレーションを開催するんですよね!
知絵:はい。15日(日)の13:45からステージ横のkata kataのブースで開催します!

ーーー今年で11回目を迎えるもみじ市。他のイベントの違いを教えてください。
武:ずっと言い続けているけれど、もみじ市は「大人の文化祭」。学生時代、文化祭や準備にワイワイ参加するタイプではなかったので、こういうのは初めての経験で。事務局スタッフと作家さんが力を合わせて、みんなで会場を作り上げる、その感覚が楽しいです。お客さんを楽しませるためにはどうすれば良いかを全員が真剣に考えているイベントですね。今でこそ、スタンプラリーなどの会場企画がありますが、昔は作家同士で企画してました。

ーーーその時は、どんなことをやっていたんですか?
武:“宝探し”がテーマの回でkata kata単独企画したのが“宝くじ”でした。もみじ市終了後に数字を発表して、型染めの原画や風呂敷が当たるというもの。かなり豪華だったよね。作家同士で作ることで、お互い良い刺激になるんです。他のイベントにはない感覚ですね。あと、やはり大きいのはテーマがあることですね。きっとどのイベントも大きなテーマはあるのだろうけれど、もみじ市ほど具体的なテーマがあるイベントはないんじゃないかな? みんながテーマに対して、どんな答えを出すのか毎回楽しみだよね。
知絵:うん! 紅白の年は、赤い作品を作る人もいれば、「考えたな!」というトンチが効いたものを作ってくる人もいて。そのテーマから、どうやって作品に持っていくのか……みんなのアイディアの持っていき方が面白い! ちなみに、kata kataはその年は“Red list(絶滅危惧種)”をテーマに作品を作りました。

2010年もみじ市のテーマに合わせて作った「circus テント」

ーーーkata kataさんにとって、軒を連ねる出店者はどんな存在ですか?
知絵:色々話せる勉強仲間ですね。友達でもあり、ライバルでもあり。

kata kataと“型染め”の出会い

ーーー今でこそ、カラフルな手ぬぐいがありますが、最初にkata kataさんの手ぬぐいを見た時、その色の多さと表現に驚きました。学生時代から、今のような作品作りをしていたのですか?
知絵:そうですね。テーマや作風は学生時代から変わっていないですね。
武:元々、手ぬぐいを作りたかったわけじゃなかったんだよね、たしか。伝統的な型染めをみんなに知ってもらいたいと思ったときに、安くてみんなが気軽に使うものを考えたら、手ぬぐいになった。

ーーーそうだったんですね。
知絵:手ぬぐいは、一色でもずっと使っていて飽きないものが良いのかもしれないけど。でも、私はカラフルな方が持っていて絶対楽しいと思うし、一色よりも色数が多い方が立体感も出やすいんですよ。
武:あとは、長方形のキャンバスに絵を描く感覚で作っているため、カラフルなのかもしれません。

ーーー知絵さんはご実家が型染め工房ですが、武さんもそうなのですか?
武:いいえ、全然(笑)。元々ファッションに興味があって、洋服を作りたいと思っていたんです。学校を調べていた時にテキスタイルというものを知りました。どんなものかよく知らなかったのですが、洋服も作るのかなと思い、入学しました。洋服は作りませんでした(笑)。

ーーーでは、型染めは大学で習ったんですか?
武:はい。一番の影響は高井(知絵さん)の実家に遊びに行ったとき、型染めを教えてもらって。それが、すごく面白かった!

ーーーそうなのですね! 知絵さんは元々ご両親のお仕事に興味があって型染めを始めたんですか?
知絵:興味を持ったのは、大学の授業で型染めを習ってからですね。それまでは両親がどんな仕事をやっているのか詳しく知りませんでした。

ーーーでは、いつから作品の制作を始めたんですか?
知絵:kata kataの活動を始めたのは、大学3年の時です。私たちは同じ大学の友達で、武くんがシルクプリントのTシャツを作って販売してて。
武:確か、学祭か何かですごく売れたという噂を聞きつけて、(知絵さんが)便乗してきたんだよね(笑)。
知絵:その時に、kata kataのロゴも作って、活動を始めました。当時は、Tシャツや手ぬぐいを作って、販売したり。色んな学校の学祭に忍び込んで販売して、見つかって怒られてました(笑)。

ーーーそうだったんですね。そんな若い時からユニットを組んでいるなんて。
知絵:自分が学校で勉強していることが、社会にどう受け入れられるのかが気になっていたんです。大学生特有のもやもやというか。

ーーーなんとなく気持ちはわかります。活動は最初から順風満帆でしたか?
知絵:そんな苦労した記憶はないけれど、周りに話すと結構悲惨だねって言われることあるよね(笑)。アトリエ兼住居として、在学中から二人で4万5千円のボロボロの家を借りていて、その時からkata kataとしてやっていこうと決めていました。親に、「私これで生きていくから!」とか言って。就活もしていなかったしね(笑)。ただ、卒業後3ヶ月間くらいはアルバイトをしてました。でも、アルバイトのお給料で生活できちゃうんですよね。そんな時、親に「本当にテキスタイルデザイナーとして生きていくなら、アルバイトをやめろ。」と言われ、アルバイトを辞めて。そこから真剣にものづくりを始めました。今思い返すと、卒業したあとも学祭で販売したりしてたよね。

ーーーアルバイトを辞めた時に、kata kataとしてやっていく覚悟を決めたのですね。
武:そうですね。アルバイトを辞めてからは、イベントや個展のたびに、3週間ほど浜松の実家(知絵さんの実家)に篭って生地を染めていました。イベントや個展は、作ったものをすぐ売るので、苦労して売った感覚はないです。あとは、kata kataの活動を珍しがってくれる人がいて、作品を卸してました。取引先も3件くらいあったので、なんだかんだ仕事はちょこちょこありましたね。
知絵:当時、親に「私たちお金もちになっちゃうかも!」とか言ってたよね(笑)。3年目に現実が見えました。
武:言ってたね。1回の学祭でお互い3万ずつぐらい売れてて、月に何回もでたら、お金もちになれるんじゃないかって。

天気を味方に作り上げる作品たち

ーーーひとつの作品ができるまでの工程を教えてください
知絵:まずは、下絵を描きます。出来上がった下絵を渋紙という耐水性のある紙に貼って、イラストに合わせ切り抜きます。渋紙だけだと細かく抜いた部分がせり上がってきてしまうので、紗という薄いガーゼを貼って補強し、型紙完成です。

渋紙についたカーゼのようなものを「紗」と呼びます

ここから布を染める作業に入ります。まずは、布に型紙を置き、餅粉と糠を混ぜた防染糊というものを塗ります。この作業を糊置きと言います。

ーーー糊置きはどれくらい時間がかかるのですか?
武:だいたい1日かけて乾かします。ただ、お天気に左右されるので、一概には言えませんね。天気がいい日は半日で乾く時もあるし、雨の日だと乾かないし……。

ーーーそれはかなりお天気が大事ですね。ちなみに糊置きにはどんな意味があるのですか?
知絵:先ほど、手ぬぐいの中に何色か使う話をしましたが、そのためには染める部分と染めない部分を作る必要があります。糊置きした部分は染まらないんです。紗から糊が落ちた部分には色がつかず、“紙”の部分だけが染めることができるんですよ。

ーーー初めて知りました! 面白いですね。では、糊置き後、本格的な染めの工程に入るのですか?
知絵:そうです。まずは、1色塗って乾かして、ぼかしを入れていきます。ぼかしというのは2色目のこと。たとえば、動物の目に色を入れたり……。全ての色を入れ染料を乾かしたあと、布を蒸します。この段階まで、布には糊がついてまだパリパリの状態です。その後、水につけて乾いた糊をふやかし、振り洗いします。糊が取れた布を干したら完成です!

ーーー糊を乗せては乾かし、染めては乾かし、とかなり時間がかかる作業ですね。1枚完成するのに、どれくらいかかるのですか?
武:一気にまとめて作っちゃうので、どれくらいかかるのだろう? 3日で何十本分つくる、など決めて、今日は“糊置きの日”、今日は“今日は染めの日”など決めて、1日中同じ作業を繰り返して作っています。

ーーーそれは、すごく効率的ですね! お二人の役割分担はあるのですか?
知絵:特にこの作業を誰がやるというのは決まっていないです。ただ、デザインは二人でやるので、デザインした人が糊置きの工程までやりますね。染めの段階で二人体制になります。なので、共同作業が多いですね。たとえば、私が目担当、武くんが足担当だったり……。延々とその作業だけ続けます。

ーーーデザインはお二人ともやっていると言っていましたが、作品を作る上でインスピレーションを受けているものは?
知絵:インスピレーション……なんだろう。難しいな。私は、美術館にいってヒントを得たりするんですが、武くんはなにもないところから考えるよね。
武:普段からスケッチブックに描きためていて、連想ゲームのようにスケッチを描いています。テーマが「海」だとしたら、海から昆布を連想し、描いているうちに昆布の外側が岩に見えてきて……。形から発想していることが多いかも。

武さんのアイディアを書き留めるスケッチブックを見返しながらお話ししてくれました

ーーー特にお気に入りのモチーフはなんですか?
武:「アリジゴク」が個人的には一番好き。あとは「へび」とか。型染めやっている人には褒められるんだけど、お客さんには人気がないね。
知絵:基本、武くんの好きな柄は人気ないよね。私は初期に作った「つばめ」が好き。最初に作ったので思い入れもあるし、今のkata kataらしさもあって好きです。

武さんお気に入りの「へび」の手ぬぐい

気合の入る11年目のもみじ市

ーーー今回のテーマ“ROUND”に向けて、どんなROUNDを用意してくださいますか?
知絵:干支だったり、季節だったり、“巡る”という解釈で新作をつくろうと思います。あとは、今年こそはカレンダーを間に合わせたいよね!

ーーー11周年を迎えるもみじ市、どのように楽しみたいですか?
武:課題に対してどう答えるかを考えるのが楽しいから、すでに楽しい。大変なことなんだけど、あと1ヶ月でどう楽しんでもらえるものを作れるか、考えたい。
知絵:やっぱり私も当日よりも準備している今が楽しいです。もちろん当日も楽しいんだけど、バタバタしちゃうから。あとは今回も開催するデモンストレーションをやるのも楽しみ! 11周年だけど、慣れずに新鮮な気持ちで挑みたいです。私たちが初めて出店した時は20代前半で、作り手として憧れる人ばかりが出ていて……今の若い子たちにもそう思ってもらえるような、刺激のあるイベントにしたい。そのためにはある一定のクオリティーを保たなくてはいけないという緊張感はあるけど、その意識こそが私たちのもみじ市への気合をいれる源となっています。

ーーー最後に意気込みをお願いします。
知絵:たくさんの方に楽しんでもらえるよう頑張ります! お客さんにも、それぞれの作家が作り出す“ROUND”を意識して見て欲しいです。私たちも楽しめるような“ROUND”をやります!
武:“ROUND”のフォトスポットをお楽しみに!
知絵:色々(インタビューで)言っちゃったから、しっかり作らなきゃ。
武:あと1ヶ月死ぬ気で頑張ります!

〜取材を終えて〜
kata kataといえば、第1回もみじ市から皆勤で参加する作家さんであり、私が入社してから、本当にお世話になっている作家さんの一人です。担当になることへの喜びが大きい反面、プレッシャーもあり、インタビューに伺うのは、なんともいえない緊張感がありました。いざアトリエに着くといつもと変わらぬ明るい笑顔で迎えてくださり、いい意味で緊張感が和らぎました。実際に現物を見せてもらいながらのインタビューは、とても面白く、私自身とても勉強になりました。当日、いったいどんな面白い仕掛けを披露してくれるのか、私も今からとっても楽しみです!(手紙社 鈴木麻葉)

【もみじ市当日の、kata kataのブースイメージはこちら!】

毎年恒例となった顔出し布はもちろん、ROUNDにちなんだ新作がずらっと並びます。