ジャンル:CRAFT

KIYATA

【PROFILE】
KIYATA(キヤタ)はスリランカの言葉、シンハラ語でノコギリの意。
スリランカに所縁のあった若野忍、由佳夫妻が2008年に立ち上げた木工ユニット・KIYATAは、

<森の奥深く 人間以外の者達が
来る者をもてなしてくれている場所
そこにあるものは……>

そんな物語を背景に、生活にちょっとしたファンタジーをプラスする、生き物をモチーフとしたインテリアを制作しています。

冬の風物詩のごとく毎年年末に開催される「手紙舎 2nd STORY」での個展は、毎回入場制限を行うほどの大盛況。そのひと足先に行われる今回のもみじ市では、河川敷という屋外を舞台に、木から生まれた動物たちがのびのびと呼吸する姿も必見です。
http://www.kiyata.net

【商品カタログ予習帳】ムササビランプ オオカミバスケット野ウサギ置き時計トリ手鏡・ウサギ手鏡  ラッコ時計木彫ブローチ 刺繍ブローチ クマの親子ブローチ・双子のムササビブローチ 月に吠えるオオカミイヤリング

【スペシャルインタビュー「KIYATAの国の物語」】

もみじ市開催まで残り1ヶ月と迫った2017年9月11日。KIYATAの若野忍・由佳夫妻にその意気込みを伺うべく、埼玉県飯能市、緑の山々に囲まれた自宅兼アトリエを訪れました

神話のような物語をインテリアに持ち込めたら

ーーー緑が気持ち良い場所ですね。

由佳:以前のアトリエは武蔵村山にあって、忍はそこへ通っていたのですが、仕事のオンオフがない人なので、自宅に帰ってくるタイミングを逃し続け、やせ細ったり、熱中症になったり……大変だったんです。これはそばで見ていないとダメだな、と思って5年前から自宅ごとここへ移ってきたんです。

ーーー忍さんはいつから作家活動をされていたのですか?

忍:もともとは現代美術をやっていたんです。パブリックアートの会社でアーティストだけでなく、多くのクラフトマンやデザイナー、建築家とチームになって町にモニュメントを作ったり、壁画を企画したり。アーティストに時計を作ってもらったりと、割とジャンルレスな感覚はその頃からありました。職人的な技法が好きだったので、そういう作家さんのものを見ているとやりたくなって、自分の作品に取り入れたりして。

ーーー その傍らで自身の個展もされていたんですよね。

忍:そのころの作品テーマは、自分の中の神話のような物語を、オブジェや絵を配置して表現するというもので。その物語を区切られたアート作品じゃなくて、インテリアなどにも持ち込めたら面白いなと思って。

ーーーそれが今に繋がっているのですね。

忍:素材もそれまではいろいろ使っていたのですが、しっかり一つ地盤になるような素材を決めようと、木を使ったインテリアの展開を考え始めました。

ーーー何か一つの作品を作ってこれで完成というよりは、物語なのでエンドレスなわけですね。

忍:そうそう。動物が好きというよりは、物語が好きなんですよね。ずっとKIYATAの物語を広げていくという感覚です。

最初は作品の売り方もわからなかった

ーーーユニット名としての「KIYATA」はいつ生まれたのですか?

忍:会社を辞めて独立した時に、インテリア作品をしっかり制作したいと思って、KIYATAという屋号をつけたんです。とはいっても最初は二人で何をしていたわけでもないんですけどね。

由佳:私のいとこのスリランカ人に「木にまつわる言葉を教えて」と聞いたら、ノコギリのことをシンハラ語で「キヤタ」と言うと知って。どこの国の言葉にも聞こえる言葉がいいと思っていたから、これだ!と。ただ最初は作品の売り方もわからないので、まずはクラフト市に行ってみたんですよね。お客さんたちは「なんかよくわからない」みたいな感じでしたが、ただ出店者さんはいいと言ってくれました。

忍:クラフト市の、500円でハエたたきを作って売っている人のおじさんの横で、売れなかったよね。

由佳:クラフト市は、通りすがりに買えるようなものが良いですからね。その後、デザイン系のイベントに場所を変えたら、買っていただけるようになって。「バーデンバーデン」(*古い一軒家を改装した目黒のライフスタイルショップ。2014年まで営業)で扱ってもらえるようになってからは忙しくなりましたね。それまで個展は売る場所じゃなくて、発表の場だと思っていたのですが、バーデンバーデンのオーナーさんに「由佳さん、私これ完売させるつもりでいるからね」と言われて。そうしたら本当に大きいものから売れていって、ほぼ完売で驚きました。そこからですね、実際KIYATAとしてスタートしたのは。

忍:現代美術をやっていたときは、メインストリームに入れなかったんですよ。もっと尖ったものじゃないと。人の中にナイフをズバズバ投げ込むようなものじゃないと、メインにはなれなかったんです。

由佳:現代美術の世界はパフォーマンス的なものも多いから、髪を辮髪(べんぱつ)とかにして自分が作品にならないと。俺、変わってるぜオーラみたいな。

忍:僕の作品は少し穏やかすぎたのか、でもクラフトの世界ではピタッとはまったんですよね。

由佳:アートの分野で個展を開いていたときは、いろんな人が芸術論を戦わせに来て、禅問答を繰り広げていたんですが(笑)、クラフトの世界にきたら、優しい人ばかりで「すごいです」とか言ってくれて。それは嬉しかったよね。

忍:作品を工夫するより、見せる場所を変えるのが一番だよね。

「こんな国があるなら住みたい」

ーーー昨年はもみじ市に初参加だったわけですが、いかがでしたか?

由佳:開場と同時に、お客さんが遠くから持久走のように走ってくるのが見えたんですよね。「どこ行くんだろう?」なんて言ってたら、入り口から一番遠いKIYATAのブースまで来てくれて。

忍:なかなか見られない光景だったね。

由佳:搬入・搬出のときは、出店者の皆さんも車で譲り合って。1日中みんなが優しくて「こんな国があるなら住みたい!」と思いましたね。この国に争いごとはないな、と。心が洗われました。それに一人一人が個展のようで、今年はもう少し回って見たいなと思っています。

ーーー今年のテーマは「ROUND」ですが、もう何か決めていますか?

忍:(……しばし考え)ラッコが流されないように、手をつないで輪になっているとか。

由佳:それいいね!

忍:ワカメもからまったりして。

ーーーいいですね! またすぐに売り切れてしまいそう。

由佳:今年は先着順ではなく、欲しいといってくれる方で楽しく「じゃんけん大会」をしようかなと思っているんです。お祭りなんで。

忍:いつもと違う色の子達も特別に作ろうかなと思っています。

ーーーそれは楽しみです! 今年は倉敷、東京、札幌、大分、と全国で展示をされてきたからお忙しいんじゃないですか。

由佳:今はアシスタントさんという仲間ができたので。もちろん仕上げは忍ですが、途中の工程を手伝ってもらってだいぶ変わりました。

忍:うちの由佳さんは、あまり物作りには向いていないんで(笑)。

由佳:私が何か手を出そうとすると、アシスタントの子も「由佳さんはいいですから、そこにいてください、いいですいいです」って。じゃあご飯でも作ろうかな〜みたいな感じになって。

忍:僕はアシスタントの面倒を見るなんてできないんですよ。だから今まで入れられなかったけれど、そこを由佳さんが相撲部屋の女将さんのように世話してくれて。

由佳:食べさせたり、持たせたり。「お預かりしてます!」みたいな。

忍:こうやって繋がって回っていくんだなと感動しますよね。

由佳:楽しく長く続けてもらえたら、忍にもいいし、私も人がいるのは好きなので。「皆でもみじ市行こうー!」とか、楽しいですね。

忍:このチームができて、全速力で走らなくても、多少休みながら続けていける感じができたよね。それはすごく安心で。

由佳:それを感じたのが、去年のもみじ市だったんです。皆で設営して、二人だけじゃ対応しきれない人数のお客さんに並んでいただいたときに、レジ係、整列係とフォーメーションを組めて。やっと落ち着いて皆でご飯を食べたときに「ああ、もう二人じゃないんだな」と。その日のfacebookに忍が《早く行きたければ一人でいくのがいい、遠くに行きたければ大勢でいくのがいい》と書いていて、私が思ったのと同じことを、忍も思っていたんだと感動して。

忍:アフリカのどこかの部族の言葉なんですが、あのときは本当にそれを感じましたね。

由佳:今年も一人、縫製の得意な子が仲間に入ったんですが、彼女も今からもみじ市を楽しみにしています。

ーーーKIAYATA国の住人が増え続けていますね。

由佳:「あれ、おかしいなぁ。4人分だったご飯が8人分になっているな」みたいな感じです(笑)。

忍:出会うべくして出会っている感じですね。

ーーー作品から出会いまで。素敵なお話が聞けました。ありがとうございます。

由佳:面白いよね、生きていくって。
じゃあ、ご飯食べよう!

(そしてお昼には、由佳さん特製の美味しい手まり寿司をいただいたのでした)

【スペシャルインタビュー番外編 〜忍さんのアトリエ訪問〜】

広い敷地には、自宅とアトリエが隣接。忍さんは早い時は朝の6時からこちらで作業を始めるのだそう。窓側にずらり並ぶのは、約70本の小刀・ノミ・彫刻刀。制作はまず、刃を研ぐことから始まります。右が3年経ち、そろそろ交換時期の彫刻刀。下の刃と比べるとだいぶ短く。近くに住んでいた画家の方から譲り受けた古いラジカセ。流れているのはJ-WAVE。アトリエの中には、2年前に手紙社で開催された個展のポスターも貼られていました。完成を待つKIYATA国の動物達。 熱中しアトリエに籠る忍さん。近隣の方は皆、由佳さんが自宅からアトリエに向かって叫ぶ「しのぶ〜! ご飯できたよ!」の声を日々聞いているのだとか。

〜取材を終えて〜
取材の日、お昼ご飯の片付け中に食器を割ってしまった由佳さん。「割っちゃったー」と言っている間にも、ささっと忍さんがホウキと掃除機で後始末。インタビューの中で何度も垣間見たように、お互いを思い補い合うお二人の関係性がKIYATA作品の動物達のやさしい表情にも表れているのだと確信。とにかくこのお二人、名コンビです。(手紙社 城田波穂)


【KIYATAブース当日情報】
10/14-15 12:00〜 じゃんけん大会
*ムササビランプほか、希望者多数の場合はじゃんけん大会を行います。

10/14-15 13:00〜 KIYATAワークショップ「木彫動物時計を作ろう」
*受付は9/29(金)正午から。ワークショップの詳細はこちら