ジャンル:BREAD

koha(14日)

【kohaプロフィール】
今回もみじ市に初参加の自家製酵母パンのお店。愛知県豊田市にある自宅の一角で、一人切り盛りする店主・安田有里さんが深夜から仕込むパンの数々は、お昼過ぎには完売状態。自家製酵母はレーズンを基本に、いろいろな季節の果物や穀物、地元産のものを使って日々育てています。強力粉北海道産、薄力粉は地元豊田市産、砂糖は粗糖、塩は沖縄産など、できる限り国産、地元のものを材料にした極上のパン。素朴なテーブルパンも少しトーストして口に入れると、はっきり味わいの深さが感じられました。名古屋芸大出身という安田さんによるブース構成も楽しみです。
http://koha-omise.tumblr.com/

【商品カタログ予習帳】
テーブルパン

レーズンパン

イングリッシュマフィン

イングリッシュマフィン

フォカッチャ(ローズマリー)

スコーン

グラノーラ

グリーンティー(チャイブレンド)

パンケーキミックス

【スペシャルインタビュー「パン屋さんは自己表現方法のひとつ」】
もみじ市に愛知県豊田市から初出店。たくさんの思いが込められた小さなパン屋さんを一人で営む安田有里さんにお話を聞きました。

もみじ市との出会い

ーーー今回もみじ市にはじめての出店。遠方からの出店は大変だと思いますが、決断いただけて嬉しいです。
安田:もう9年くらい前になるかな、雑誌でもみじ市が紹介されているのを見て「こんなイベントに出られたらいいな」と思っていたんです。最近ではお店のことでいっぱいで、そんな思いも忘れかけていたんですが、今回声をかけていただいて感慨深かったです。あの場所に立てる時がきたんだ、と。

ーーーもみじ市を初期からご存知だったんですね。お知り合いなんかも?
安田:同じ愛知のmado cafeさんはカフェを始めたころからの知り合いで、もみじ市でも先輩なので色々と相談したりしています。今年のテーマ「ROUND」と聞いて、丸い図? というか繋がりのようなイメージが浮かびました。思えば、これまでmado cafeさんに声かけていただいたり、偶然会った高校時代の友人に声かけていただいたり、そういうご縁があってイベントに出店して、kohaのパンを求めてくれる人たちに出会って、ここまで続けてこられた気がします。

ーーー土曜日だけの出店ですけど、日曜日の夜までいてくださるとか。
安田:どうしても愛知からパンを用意するとなると1日だけの出店しかできません。でも、もう二度と無いかもしれない素敵な機会なので、最後までみんなともみじ市を分かち合いたいと思っています。

清潔感のある店内。一人ですべてを賄っています。

自分ですべてやるから自分のお店

ーーー一普段の営業日は週2日で、開店後2、3時間で売り切れてしまうんですよね?
安田:現状、そのくらいのペースでなんとかやっています。酵母は毎日育てなければいけません。営業日の前日にはパンの仕込み、それ以外の日はお菓子やグラノーラの製作。作業は夜から午前中にかけて。子ども達も見ないといけないので、睡眠時間はほとんど1時間くらい。

ーーー1時間! 誰かに手伝ってもらったりとか考えないですか?
安田:一からすべて自分でやるから自分のお店なんですよね。いくら手間がかかっても。数年前までは他の作家活動もしていましたが、今はパン屋の活動に全力という状態です。やる気がありますし、やりたい。パン屋がひとつの表現の場になっている。

お昼過ぎには什器がからっぽに

ーーー元々は芸大で日本画専攻でしたね。
安田:その話は、中学2年生の頃まで遡ります。当時もう美大か調理師学校か、どちらに進むか迷っていたんです。私にとってはどちらも根は一緒。イメージしたものをかたちにして出す。イメージ先行型の私にはぴったりの世界。料理の方は自分でもある程度できると思ったので、当時は美術の道を選びました。

ーーー表現することが今のkohaにつながっている?
安田:創作したいということと、「こういう美味しいのがあるから食べて欲しい」という思いが出てきたからですかね。家族にご飯をつくるのと同じような感覚でパン屋さんをやってます。パン屋になりたかったわけではなく、食べものを通した表現をしてきた中で、酵母とパンづくりに出会って、その魅力に惹かれていきました。基本的には自分の感情、パッションに突き動かされます。感覚重視なので、製作時にもこだわりの道具とかも特になく、自分の手を信じています。水分量だったり、触感だったり、温度だったり。

ーーー多くの人に知られたパン屋さんになっているわけですが。
安田:パンは手をかけただけ良いものができて喜ばれます。ウソがつけないんですね。後ろめたさが残らないように、常にベストを尽くしたい。インスタに記事を上げたら色んな反応が来るようになっていますし、良くも悪くも知らない人に影響を与えているという実感があるので、発信する責任感も出てきました。それでも季節の素材を仕入れては「これ、こういう風に使うと美味しいかも。食べて欲しい」という気持ちがベースにあります。求められているし、それに応えたいから続いているのだと思っています。

小さな看板が目印

ーーーはじめてのもみじ市、イメージしていることはありますか?
安田:ようやく実感も湧いてきて「どうしたらいいの?」という不安もあります。でも、「あ、いたんだ?」くらいその場に溶け込めたらな、と思います。一時期千葉に住んでいたこともあるので、その頃の友人や、いつもSNSでコメントくれている人や、新しく知ってくれた人、いろいろな人との出会いを楽しみにしています。

ーーーどうもありがとうございました。人柄を表すような安田さんのパンを東京で紹介できるのが嬉しいです。

〜取材を終えて〜
住宅が並ぶ中に、突如目を引く小屋がありました。お話を聞くと、ほとんど身を削るようにしてつくっているパン。それを全く感じさせないセンスの光る店内は、安田さんのおもてなし精神に溢れているようでした。もみじ市がkoha・安田有里さんにとって新しいインスピレーションの場となりますように。そして新しい繋がりのできる場でありますように。(手紙社 小池伊欧里)