【ナカキョウ工房プロフィール】
2010年のクラフトマーケットへの参加をきっかけに、本格的に作家活動をスタートした中澤京子さんによるブランド。ぎゅっとつまった刺繍たっぷりのパンジーや、柿渋染めの布に刺繍を施した、愉快な動物たちのブローチ。ぱっちりとしたまつげ、ちょっぴりおめかししたキャラクターたちの、そのユーモアたっぷりの表情は、目が合った瞬間思わず頬が緩んでしまうお茶目さが魅力。いわゆる“甘い可愛らしさ”とは一味違う、大人のチャーミングさが、なんとも魅力的なのです。
https://www.nakazawakyoko.com/
【商品カタログ予習帳】
柿渋ブローチ
柿渋ブローチ
柿渋ブローチ
柿渋&non渋ブローチ
柿渋&non渋ブローチ
玉乗り動物オーナメント
玉乗り動物オーナメント
刺繍ブローチ
【スペシャルインタビュー「憧れだった、もみじ市」】
生き物をモチーフに刺繍を施したブローチが人気のナカキョウ工房・中澤京子さんに、本間火詩(手紙社)がお話を伺いました。
きっかけは、もみじ市
ーーー作り手として、活動を始めたきっかけはなんだったのですか?
中澤:子供の頃から工作や手芸が好きで、大人になってもただ続けてきました。その流れで作ったものを友人知人にプレゼントしたりして、趣味として「つくること」を楽しんでいました。そして「いつかは外に出して販売してみたい」。そう思ったきっかけが、まさにもみじ市だったんです。その頃はまだもみじ市が始まったばかりで、お寺で開催していた頃だったと思います。ただ、そう思ってすぐに販売をはじめた訳ではなくて、それから数年後が活動のスタートでした。手仕事が集まるクラフトイベントの存在を知った頃、作家の友人が半ば強制的に応募をして(笑)。2010年の話です。その時初めて出店をし、自分の作品にお金をいただきました。それと前後して別の友人が企画したイベントに声をかけてくれて。そこで販売したブローチが全部売れたことも大きな後押しとなり、それからは毎月いろんなクラフトイベントに出るようになりました。
ーーーもみじ市がきっかけだったんですね! 始めの頃は、どんな作品を作っていたんですか?
中澤:始めの頃は、パンジーの刺繍ブローチを作っていました。この子は今も現役で、アイコン的な存在として活躍してくれている大事な存在です。あとは、消しゴムハンコを使ったポストカードなどの紙ものも作っていました。
ーーー紙ものも作られていたんですね。
中澤:そうなんです。ただ、ブローチの種類を増やしていくうちに、このまま両方を続けていく事は難しいんじゃないか、と思い、それからは布ものに専念しています。今、その時の経験がブローチの台紙に活かされていますね(笑)。
ーーー今に繋がっているのですね。ブローチを作ろう、と思った理由は何だったのでしょうか?
中澤:多分、ブローチじゃなくても良かったんだと思います。ただ、ちっちゃい物が好きなので。ちっちゃくて、人にあげた時に身につけてもらえる物がいいなって思ったら自然とブローチを作っていました。
隣り合わせが生んだ運命の出会い
ーーー今はすっかりナカキョウさんの代表作となった“柿渋ブローチ”。作り始めたきっかけはどんなことだったんでしょう?
中澤:実は、本当にたまたま、偶然の出会いなんです。ある時のクラフイベントで、隣で出店していた方が柿渋染の作家さんで、カットした染め生地を置いていたんです。それでその布を使って鳥のブローチを作ってみたら、自分が思い描いていた通りの理想の物ができたんです。「すっごくいいものを見つけた!」って思って感動して、それがきっかけです。まさに理想の仕上がりでした。私、世界の民芸品がすごく好きなんですけど、民芸品のカラーもちょっと出せて、色が少しずつ変化していく感じとかもぴったりでした。それからずっと生地はその方にお願いしています。
ーーーすごい! なんだか運命的な出会いですね。
中澤:そうですね。実は後から聞いたんですが、その方も私が最初に行ったもみじ市に遊びに来ていたのだとか。なんだか縁を感じますよね。そういえば、クラフトイベントに出るきっかけを作ってくれた友人との最初の出会いもまたもみじ市でした。
ーーーそうだったんですね! もみじ市のご縁、嬉しいです。柿渋のブローチは、始めの頃から動物をモチーフに作られていたんですか?
中澤:はい。子供の頃から植物も含めて生き物が好きなので、最初から動物をモチーフにしています。柿渋を使う前もスエードとか、革の生地を使って鳥のブローチを作っていました。その頃は今みたいにニワトリとか実在の鳥ではなくて、架空の鳥。種類を増やしていく中で、他の動物もたくさん作るようになっていったんです。
人の心をくすぐるものをつくりたい
ーーーナカキョウさんの動物のモチーフは、思わずニヤリとしてしまうような表情が素敵ですよね。
中澤:動物の表情に直接つながるのか意識はしていないんですけど、作家になる前、趣味でブローチを人にあげたりしていた時に、「相手をニヤリとさせてやろう」みたいなことをよく思っていました。クラフトイベントに出てお金をもらうようになっても、お客さんが手にとってニヤリとしてくれたらいいなって。そういう思いは、作るもの全部に共通してあるように感じています。自分で作っていて楽しい、というのはもちろんですが、それを手にした人を想像することにも、面白さを感じているのかもしれません。
ーーー動物たちはどこか物語をも感じさせますよね。
中澤:ブローチを作っている時はあまり強くは意識していないんですが、台紙を作る時、例えばシロクマのブローチができたら、なんとなくその背景を想像するんです。動物園にいるのか、北極にいるのか……とか。作っている間は無意識下にあるものが、台紙を作る時に、だんだんクリアになっていく気がします。
ーーー台紙はどういった風にデザインされているんですか?
中澤:まず、ブローチを先にまとめて作っています。工程が決まっているのでいくつものモチーフを同時に作っていくんです。そしてブローチが出来上がってから、それに合わせてどんな台紙にしようかと考えます。すぐ思いつく時もあるんですけど、なかなか浮かばない時もあって……。ものすごく時間がかかってしまうこともあります。台紙を作りはじめた最初の頃は、「ブローチが主役だから」と、シンプルなボーダーとか水玉とかだったんですけど(笑)。いまは、ひとつひとつ変えています。お客さんが楽しんでくれるのではないかと思うと、やめられなくなってしまいました。例えば「身につけるのではなくて飾って楽しみたい」とか、そういう方にも楽しんでもらえたらと思っています。
ーーー台紙を含めて1つの作品なんですね。ブローチの完成するまでの工程を教えていただけますか?
中澤:日常的に作りたいものが浮かぶこともあるし、イベントに出店する時に、そのイベントに合わせて考えることもあります。夏のイベントだから夏らしいモチーフを出そう、って考えてみたり。作りたいモチーフが浮かんだ後は、それに関する資料を集めます。リアルな動物の図鑑や写真を集めて、そこからスケッチをしてブローチのデザインを決めます。形が決まったらいよいよ制作。型紙をとって裁断をしたら、メインとなる目などの細かい刺繍のステッチを入れます。そして最後に縁をまつり縫いして、ブローチピンをつけたらブローチは完成。そこから台紙を考えます。
ーーー作品を作るにあたって、インスピレーションを受けているものはなんでしょうか?
中澤:民族衣装とか民芸品とかそういったものかもしれません。いろんな国の美しい民族衣装や織りや布、面白い民芸品などそういうものが好きです。もちろんモチーフに選んでいる植物や動物などからもひらめきをもらうことも多いです。
憧れのもみじ市
ーーーもみじ市に憧れて、作家活動を始められたというナカキョウさん。今年で5回目の出店となりますが、初めての出店が決まった時は、どんなお気持ちでしたか?
中澤:すっごく緊張しました(笑)。本当に憧れで、そこに手が届くなんて思ってもいなかったので、「憧れの場所に自分がいる」という嬉しさと、信じられない気持ちでいっぱいでした。ものすごくドキドキして、終わってからも全然実感がなかったです。他のイベントとは全然違う、作家としての活動を始めるきっかけのイベントなので、頑張ろうって思うし、苦しくなることもあります。今でも毎年ドキドキしているし、昨年は10周年だったので、尚更緊張しました(笑)。
ーーーそんな風に思っていただけて、とてもありがたいです。作家活動を始められてから7年になりますが、プロとしてものづくりに携わる時、大切なことは何だと思われますか?
中澤:諦めないことと、続けるっていうことだと思います。続けることに関しては先輩方からもすごくアドバイスをもらいました。「最低でも10年はやってみる」って。あとは手を抜かないこと。私の場合「ここまでやらないと気が済まない!」っていう性格もあるかもしれません。だからついついやりすぎたりもしますが、満足してるから、いいんです(笑)。
ーーー丁寧に、細やかなところまで作り込まれたナカキョウさんの作品、大好きです。ナカキョウさんにとって、もみじ市の他の作家さんはどんな存在でしょうか?
中澤:やっぱり憧れの人たち、という気持ちが強いです。一緒に参加できていることに未だドキドキしますし、私は大丈夫かな?ちゃんと肩を並べられているかな?と毎回思います。と同時に、もみじ市にむけて全力でともにがんばる『仲間たち』だとも思っています。素敵な作品や面白い試みにはハッとさせられ、落ち込むこともありますが、とても刺激を受けます。回を重ねても全く慣れることがなく緊張するのは、特別な想い入れがあることに加え、「私も絶対に頑張らなくちゃ!」と思わずにはいられないたくさんの刺激を毎回もらうからかもしれません。
ーーーもみじ市のことを、本当に大切に思ってくださってありがとうございます。最後に、今年のもみじ市に向けて意気込みをお願いします!
中澤:緊張しながら、頑張ります。私にとって1年間で一番大事なイベントだし、思い入れもあるので、ドキドキしながら……自分も楽しむ余裕があるといいなと。楽しんで、盛り上げる一員となれるように頑張ります!
ーーーありがとうございました! お気持ちに応えるべく、事務局スタッフも頑張りたいと思います!
〜取材を終えて〜
もみじ市のことを本当に本当に大事に思ってくださっているナカキョウさん。お話の端々からその気持ちが伝わってきて、運営チームの一員として背筋か伸びる思いでした。インタビューの後ももみじ市について沢山のお話をしてくださって、気がつけば私もすっかりお客さんの頃の気分に戻ってお話をしてしまいました。ユーモアたっぷりなナカキョウさんのブローチですが、手にとってじっと見つめてみると、お顔の刺繍や縁のまつり縫いなど、ひとつひとつがとても繊細に丁寧に作りこまれていることに気づきます。賑やかなキャラクターに隠れたものづくりに真摯に向き合う気持ちが、ナカキョウさんの作品の魅力を形作っているのだと感じました。
(手紙社 本間火詩)
【もみじ市当日の、ナカキョウ工房さんのブースイメージはこちら!】