ジャンル:FOOD

日光珈琲

【日光珈琲プロフィール】
日光を、栃木を、いや日本を代表するカフェといったら、この店の存在を欠かすことはできません。その店とは、風間教司さんがオーナーを務める「日光珈琲」。豊かな自然に囲まれた日光という地の利をいかし、香り高い自家焙煎の珈琲を届けています。手紙社イベントの定番・かき氷はもちろん、昨年登場した大ヒット商品の石焼き芋「テングイモ」など、甘〜い風味でお腹も心もいっぱに満たしてくれます。キンキンに冷えたかき氷か、熱々ホクホクの石焼き芋か、はたまた新しい商品がお目見えするのか……。10月のもみじ市を乞うご期待!
http://nikko-coffee.com/

【商品カタログ予習帳】
自家焙煎した豆を使った、香り豊かな珈琲

とちおとめシロップがかかった、天然かき氷

【スペシャルインタビュー「日光珈琲が生み出す繋がりの輪」】
栃木県内に4つの店舗を持つ日光珈琲。名物オーナー・風間教司さんに会いに、本店の饗茶庵を藤枝梢(手紙社)が訪ねました。

つくりたかったのは、コミュニケーションの場

ーーーそもそも、風間さんはなぜカフェを始めようと思ったのでしょうか?
風間:東京の大学を卒業後、地元に戻ってきて就職したんだけど、つまらなくてサボってばかりで。喫茶店に行って、暇を潰したりしていました。結局半年ぐらいですぐに仕事も辞めてしまい、バーテンダーのバイトをしながら過ごす日々が続き……。でも、いつまでもこんな生活をしているわけにはいかず、つまらないと感じる場所で暮らすくらいなら、何か楽しいものを自分で作ってしまえばと。

なぜカフェかというと、様々な人が来やすいから。学生時代にぷらぷらと海外を放浪していたんだけど、世界中どこに行ってもお茶を飲むスペースがあるんですよね。それも、ただ単にお茶を飲むだけではなく、コミュニケーションの場として存在していて。そんな風に新たなコミュニケーションが生まれる場を、自分の地元につくりたいと思いました。

ーーーカフェそのものというよりも、空間を提供したかったと……!
風間:その当時は、田舎なんて特に、まだカフェという文化が浸透していなかった頃で、地元の喫茶店とは違うものをつくりたかったんです。バーテンダーをやっていた経験もあり、珈琲やお茶だけじゃなくお酒も飲めて食事もできる場所がいいなと思いました。

根古屋路地にある饗茶庵本店

ーーー当時のお客さんはどのような方たちだったのでしょうか?
風間:カフェ自体が県内に少なかったため、宇都宮とか市外の人が圧倒的に多かった。宣伝は行なっていなかったので、完全に口コミで広まっていった感じですね。初めてのお客さんが来たら「なんで知ったんですか?」って聞くようにしていたけど、知り合いに勧められてという答えがほとんど。そこから評判を聞き、地元の人も集まるように。でも、近所の人だけが集まるお店だったら、あまりここでやる意味がないので、いい形でしたね。隣町の人が来て、そこに地元の人が集まってミックスしていくようで。

表現の形としての珈琲

ーーー日光珈琲と言えば、珈琲だけでなくお食事も有名ですが、初期のメニューはどんな感じだったのでしょうか?
風間:最初は日替わりランチをやっていたり、パンやベーグルも作ったりしていました。やったことがなかったので、どんなものがウケるのかが分からなかったんですよね。だけど自分は料理人じゃないし、お客さんの要望すべてに応えていったらキリがなくなってきて。「どこに力を入れるのか?」と考え、料理についてはカレーやオムライスなどの定番だけに絞ることにしました。アンリロが隣にできるから、食べ物はそっちに任せようと(笑)。

ーーー充実のメニューだと思っていましたが意外や意外、これでも限定されていたんですね! 珈琲をメインにしたのには、何か理由があったのですか?
風間:古くからやっているような人気店っていうのは、実際めちゃくちゃ感動するほど美味しいわけではないんですよね。だけど、月に1回とかふとした瞬間に思い出して、食べたり飲んだりしたくなるような印象に残る味で。「ラーメンと言えばここ!」みたいな。そう考えたときに、自分がつくれるものといったら珈琲だなと思いました。自分のキャラクターを面白がって来てくれるお客さんもいて、でも店頭に立てる日はどうしても限られるから、そういった人たちに向けて自分の代わりに感じ取ってもらえるようなものを残したかった。1つの作品として、焙煎という自分自身の手で表現できるものを。

風間さんが使用している焙煎機

もみじ市は発見の場

ーーー今でこそ日光珈琲は手紙社イベントに欠かせない存在ですが、手紙社のイベントに出るようになったきっかけを教えてください。
風間:饗茶庵がある根古屋(ねこや)路地で、お店を開きたい人を集めて「ネコヤド大市」というイベントをやってたんです。このイベントを北島さん(手紙社代表)が見にきて、そこからもみじ市に声をかけられたのが初出店ですね。

ーーー風間さんにとって、もみじ市はどんな存在ですか?
風間:いつも、開場する前にざぁっと全部のお店を見るようにしているんですが、まったく自分と関わりのないジャンルについて知ることができるいい機会です。若いときはお店にもよく立っていたから、意図せずとも色々な情報が集まってきたけど、最近はめっきり少なくなってしまって。日光珈琲らしいものとか、自分の興味範囲内なら分かるけれど、新たな分野を開拓するのが難しいんです。それと、お店で雑貨も扱いたいと思っているので、知らない作家さんを探したりもしています。ちゃんと仕事してるんですよ(笑)。

ーーーイベント中も、様々なことにアンテナを貼っているんですね! 今回のテーマ“ROUND”にも苦戦しているようでしたが、テーマについてはどう思いますか?
風間:いや〜、難しいですよ!(笑)。でも、日光珈琲としてどんなものができるかを考えられるので、いい刺激になっています。提供する商品が、結果的には定番のものになることもあるけれど、アイディアを出すきっかけになりますね。

経営者・風間教司として

ーーー昨年は、新商品「テングイモ」が大ヒットしましたね!
風間:焼き芋って、今そんなに食べないじゃないですか? でも、焼き芋と珈琲ってめっちゃ合うんですよ。夏はかき氷が主力になっていたけれど、秋冬の一押しが欲しいなとずっと思っていて。

日光珈琲の新名物・テングイモ!

ーーーなぜ「テングイモ」という名前にしたのでしょうか?
風間:日光珈琲として焼き芋を売るなら、単純にそのまま売るだけではダメで、そこに何か意味づけをしないといけない。日光は、元々修験によって山が開かれた場所で、そこから天狗を連想しました。お芋自体も赤いし、天狗の鼻のようにも見えるし(笑)。洗練されすぎた名前でも愛着がわかないので、土着感があるけどちょっとおしゃれ、そしてベタな「テング」に落ち着きました。カタカナにしたのは、ロゴのデザインを考えたときに一番しっくりくるかなと。

ーーーデザイン関係もすべて風間さんがやっているんですか?
風間:そうですね、色々なことをやってますね。草刈りだったり、ペンキ塗りだったり。もうね、用務員のおじさんですよ(笑)。

ーーーお忙しいのに、大変なんじゃないでしょうか?
風間:0から1を考えて、生み出すのは嫌いじゃないんですよね。だけど、生み出した後、それを形にするのが面倒くさくて。1を10、100にしていくのが経営者の仕事なので、経営者としては良くないんだけど(笑)。色々な趣味があるから、「ないならつくればいいじゃん」で満足しています。

ーーー数多くのお仕事を抱えている中で、風間さんが絶対に譲れないものはありますか?
風間:珈琲は負けない。誰もが作れるものじゃ意味がないので、常に磨いていかなければならないなと思っています。積み重ねの中で、その時最高のものを出せるように心がけています。

ーーー最後に、風間さんのように将来開業をしたいと思っている方に、メッセージをお願いします!
風間:リスクはあって当然。やってやり続けるしかないですね。継続することで磨かれていくはずだから、トライ&エラーを繰り返して人に受け入れられるようになっていけばいいと思います。

ーーー風間さん、本日はありがとうございました! 定番だからこそ深く記憶に残る日光珈琲のかき氷、今回も楽しみにしております!

〜取材を終えて〜
次々と爆発的人気の商品を生み出している風間さん。イベント中の様子とは少し違い、経営者としての真剣な表情も垣間見ることができました。かと思えば、少年のような表情を見せながら「旅人のように、1人でリヤカーをひきながらお店をやりたい!」なんて言い出したり(笑)。これからも私たちの度肝を抜くような“何か”が生まれるんだろうなと、ワクワクドキドキしています!(手紙社 藤枝梢)