ジャンル:CRAFT

Ren

【Renプロフィール】
凜とそびえ立つ一頭の鹿。その出で立ちを目の当たりにした時、震えるような感動が体中を駆け巡った。作り手を調べてみると、自分とさして変わらない年齢ということを知り、またもや衝撃が。その作家とは、今回もみじ市に初めて出店する、そしておそらく全出店者の中でも最年少の作家・中根嶺さん。硬さと軟らかさを併せ持つ金属を、一つひとつ金鎚で叩き上げ形作られていく作品は、手の動きに呼応したあとがかすかな証しとなり、そこから生き生きとした臨場感が溢れ出てくる。彼の残した“手あと”に、あなたもきっと感嘆の声をあげるのだ。
http://ren-craftwork.com/

【商品カタログ予習帳】
葉型ブローチ (Silver)

四角のリング (Silver)

オーバルのペンダント (Silver)

大きな五角のピアス  (Silver+gold foil)

アカシカ(銅+枝)

おたま スープスプーン(真鍮+洋白)

フォーク(真鍮+洋白)

白鳥(真鍮)

クジラとカモメのモビール (真鍮)

ランプシェード (真鍮)

ランプシェード (真鍮)

クジラのランプ (真鍮)

【スペシャルインタビュー「金属に刻まれる確かなあと」】
金閣寺にほど近い京町家の一軒で、工房兼ギャラリーを構えるRenの中根嶺さん。担当の藤枝梢(手紙社)が、お話を伺ってきました。

モノ作りを生業とする一家に生まれて

中根さんの作品を初めて見たのは、何のサイトだったか……。パソコンの画面を眺めながら、ぼんやりとあれこれ考えていた頭に、雷のような衝撃が走りました。「絶対にもみじ市に出てほしい!」と心底惚れ込み、お声がけさせていただいたことを覚えています。精悍な姿のオブジェから、物静かな熟練の職人という印象を抱きましたが、若干28歳という若さ。ここに至るまでの経緯を聞きました。

「親父が焼き物、母親が結城紬の織工をやっていて、小さい頃からクラフトフェアの出展にもついて行ったりしていました。中学生の時は、よく釣りをしていたのですが、釣りそのものよりもルアーづくりの方が楽しくて。テスト期間中によくテストそっちのけでルアーを作っていましたね。そんなふうに勉強が嫌いだったこともあり、深く考えず美術系の高校に進学することを決意。高校生の時は、1年次で一通りの分野を学び、2年生から自分の好きなコースを選択するのですが、当時は彫刻を選びました」

そのまま彫刻の道に進むのかと思いきや、高校生ながらに彫刻で食べていくことが厳しいと悟ったという中根さん。好きなことを追求しつつも、現実をしっかりと見据える鋭さを感じます。この時にはすでに、ものづくりの世界で生きていくことを意識していたそう。

「両親には『跡を継がないのか?』とずっと聞かれていたけど、1から自分で見つけたことをやりたいと思っていて。反抗期の延長かもしれないですけどね(笑)。木工とかガラスにも興味を持っていたんですが、親は周りにその世界で活躍している人がいることもあり、リアルなことを知っているから反対ばかりで。『大きい木工作品は一人じゃ作れない』『ガラスは窯の維持が大変だ』とか」

その後は、自分の力で食べていくことの大変さを知るため、まず自活をしてみようと思い立ったのだそう。地元の関西を離れ、どうせなら大きい街でという想いから、東京へ。何かしら吸収できるものがあると信じて、たった一人で上京するとは……。

「完全に若気の至りですね(笑)。東京に行ってからも、しばらくの間はアルバイトをしながらふらふらと。その頃は大きなものづくりに興味があったので、バイトで舞台美術の仕事もしていました。舞台は出来上がるものが大きく、仕事の規模も大きい分、自分がただの末端の存在だなと感じてしまい。もちろん完成したものを見たときは感動するんですが、性には合っていないと。一人で完結するぐらいの規模のものづくりが好きだなと思いました」

新たな道の始まり

若さゆえの勢いと行動力を生かし、様々な経験を積みつつ東京での日々を過ごしていた中根さん。まだ金工の「き」の字も知らなかった彼が、この世界に足を踏み入れることになったきっかけは、偶然の出来事でした。

「その当時、舞台美術のバイトの他にテレアポの仕事も掛け持ちしていたのですが、その会社が潰れることになり、別の仕事を探さなければと。たまたま見ていた求人誌で、金工部門のある会社がアルバイトを募集していたんです。ごく一般的な求人誌だったから、工場の流れ作業かと思っていたんですが、蓋を開けてみたらまったくそんなことはなく。昔ながらの技法を大事にしたお店でした」

未知の世界にも物怖じせず飛び込んでいけたのは、ジャンルを問わず作ることが好きという気持ちと、昔からものづくりの世界に関わりが深かったことも影響しているのでしょうか。このお店では、主に指輪の製作を行なっていたそうですが、自分の思い通りにならないことが多く、それが悔しく感じ金工の魅力にのめり込むようになったと言います。始めて4年ほど経った中根さんの元に、ある知らせが届いたそうで……。

「京都の町家に空きが出たと聞いて、そこに先輩とギャラリーを作ろうという話になりました。築90年の朽ちた建物だったので、結果的に2年ほどかかりましたが最初の一年は毎月のように夜行バスで東京から京都に通い、京都に引っ越してからの一年は朝から晩まで毎日大工仕事をして、自分たちの手で少しずつ改装を進めました。それが、ここ『PolarSta』です。入り口すぐの右手側がRenの工房で、普段はここで作業しています」

外観。築90年の織屋建て町家
内観。一階が工房と物販スペース、二階は展示や宿泊などの多目的スペース

ギャラリー、工房以外にも、クラフト作品を販売するショップ、さらにはゲストハウスとしての顔も持つPolarSta。店内には、丁寧にセレクトされた様々な作品が所狭しと並んでいました。町屋ならではの奥行きが長く伸びた空間は、そのものがまるで一つの作品のようで、眺めているだけで不思議と心が落ち着きます。広々としたショップスペースに対して、Renの魅力的な作品が誕生する工房は、意外にもかなり狭いスペースでした。

「陶芸やガラスなどに比べると必要な道具や材料もそこまで多くないので、これぐらいの広さで十分なんです。熱を冷ましたりする待ち時間もないので、やろうと思えばどこでも大丈夫です。イベントの会場で、その場で作るなんてこともできるんじゃないかな」

工房

自らの手が生み出すあとを生かす

息づかいさえも聞こえてきそうなほど、躍動感あふれる動物のオブジェ。繊細で精巧な細工が美しく輝くアクセサリー。暮らしに自然と寄り添うカトラリーやランプシェードなど、とてもバリエーションが豊富なRenの作品。幅広いアイテムを手がけています。

「自分の作品はアートではなく、クラフトなので。アートは自己表現だけれど、クラフトは受け取る人がいて初めて成立するもの。なので、様々な作品を製作して、より多くの人に届けたいです」

私は最初、オブジェに興味を持ちましたが、知れば知るほど、見れば見るほど、全てが素敵に見えてきます。アクセサリーも、カトラリーも。そして、どの作品にも一本の芯のようなものが通っている気がします。これらの作品はどのように作られるのでしょうか?

「金属の製作技法には、大きく分けると彫金・鋳金・鍛金という3つがあります。鋳金は、あらかじめ作っておいた鋳型の中に、高温で溶かした金属を流し込んで、かたちを作る技法。彫金は、鏨(たがね)やヤスリを使って、金属の表面に模様や図柄の装飾を施す技法。最後の鍛金は、金鎚を使い金属を叩いて加工する技法で、この昔ながらの鍛造で製作を行なっています。硬さと柔らかさを併せ持つ金属は自分自身の手の動きが一打一打かたちとなって残ります。この残った手あとから生まれるいくつもの表情を大切にしています」

今回初めてもみじ市に参加する若き作り手。この短い取材時間の間でも、そのひたむきな姿勢を随所で感じることができました。

「ものづくりに終わりは存在しないし、デザインにも正解はない。悔しく思うことを大事にしながら、決して妥協することなく、向上心を持って技術を追い求めていければと思います」

〜取材を終えて〜
京都特有の修学旅行生や観光客の賑やかな群れから離れ、閑静な住宅街に進んでいく。ひょっこりとあらわれたPolarStaは、ちょっとタイムスリップしたようで、異世界への入り口にも感じました。迎え入れてくれた中根さんの雰囲気も、またこの空間に絶妙にマッチしていて。本当に至福の時間となりました。中根さん、どうもありがとうございました!

【もみじ市当日の、Renさんのブースイメージはこちら!】

オブジェやカトラリー、ランプなど、たくさんのアイテムが並びます!