ジャンル:CRAFT

左藤吹きガラス工房

【左藤吹きガラス工房プロフィール】
1964年大分県玖珠郡出身。那覇市与儀(当時)奥原硝子製造所見習いからガラス工芸を始め、現在は千葉県九十九里にてアトリエを構え制作の日々を送っています。私(担当:梶)は『はじまりのコップ』(著・木村衣有子)という書籍で左藤さんの作品を知りました。実際に手にした時、その確かな重み、瑞々しい透明感に一瞬で心を奪われました。
http://www2.odn.ne.jp/tebuki/

【商品カタログ予習帳】
モールのカトラリー立て

居酒屋コップ

ウェイト

カンパニュラ(クリア)

ガーリー

バターケース(クリア・真鍮蓋)

バターケース(青緑・ステンレス蓋)

モールの深皿

デザート皿(青緑)

【スペシャルインタビュー「日夜、ガラス職人。」】
千葉・九十九里のアトリエで、左藤吹きガラス工房の左藤玲朗さんにお話を伺いました。

今年は「時計」を

——今年のテーマ「ROUND」に沿った作品は構想されていますか?

左藤 「ROUND」のイメージに合わせて「左藤時計」を持っていけたらと思っています。枠の素材を鉄からステンレス製にしたり、試作を重ねています。

——6月のイベントで拝見しました。ガラスの曲面が美しいですね。

左藤 大きな球面から一部を切り出すので、時計に使うガラス加工はそこまで難しくないです。逆に大変なのが、バターケースですね。四角いので、球と違って一定の力で切ることができず、工具を使って一辺ずつ根気強く切ります。

今年の目玉「左藤時計」

——時計の枠やバターケースの蓋も、手作業で作られているのですか?

左藤 はい。ガラスを切ったり金属を加工したり、なかなか慣れないですが……。

——ガラスと金属を組み合わせた作品は、いつ頃から制作されているのでしょうか?

左藤 10年前ほどに、花器を作ったのがきっかけで作り始めました。ガラスは一度作ってしまうと形を変えづらいのですが、金属は曲げやすいのでガラスとの相性はいいですね。バターケースは、木工作家の松本寛司さんに熱望されて作り始めました。

——松本さんとのコラボレーションで、ウォルナットの蓋のバターケースも作られていましたね。

左藤 数年前のもみじ市でブースが隣だったことがきっかけで、松本さんとは他にもコーヒー豆入れなどのコラボレーション作品を作りました。もみじ市はそういった作家同士の出会いも楽しみですね。


買い手の反応を感じながら

——ホームページ上で「制作状況」を毎日アップされていることに驚きました。最近はどこへ向けた制作が多いのでしょうか?

左藤 お客さんからの受注と、イベントに向けた制作に日々追われています。ですが最近は、店舗へ卸すよりも直販に舵を切ったので、お客さんとの連絡などの事務作業も多いですね。

——通販や、工房での直売に重きを置かれるようになったのですね。

左藤 今まで、お店からの注文にばかり追われて新しい作品に取り組む余裕がなかったのですが、徐々に試作の時間を取れるようになってきました。また、お客さんから直の反応が受け取れるので良いですね。特に新作は、自分で売った方が手応えを感じられます。

——そういったお客さんからの反応も作品に反映されていますか?

左藤 はい。例えばバターケースは、ステンレスと真鍮の2種類の蓋を制作していましたが、お客さんが真鍮ばかり選ぶので今はそのひとつに絞って、ケースのガラスの色も真鍮に合うものに統一しました。そういう、第一印象もすごく大事だと思っていて、作っていると自分ではどちらが良いのかわからなくなってしまうんです。

——悩んだ時は、どなたかに相談されたりするのでしょうか。

左藤 いえ、とりあえず置いておきますね。それか写真に撮って、画像で見てみたり。作りながら「だめだなぁ」と思った時は、徐冷炉(ガラスは急冷すると割れてしまうため、完成した作品を一晩かけて温度を下げる。そのための温度調節ができる炉)に入れず割ってしまいます。良くできたものだけを炉に入れて、朝起きて徐冷炉を開けてみるのが楽しみなんです。

左藤さんのガラス工房


灼熱の工房の中で

——炉や加工用の道具など、真近では初めて見るものばかりです。

左藤 吹きガラスの工程では、使う道具はそれほど多くはないです。「型吹き」という手法では、吹き竿につけたガラス玉を鉄型に吹き当てて形を作ります。完成したガラスの表面に見える模様は、鉄の型に押し当てられたときにできるものです。

——縦に模様が入ったモールガラスも、専用の型に吹き当てて作られるのですね。

左藤 道具を見ると、どうやって作られているのかなんとなくわかるかと思います。

——40℃を超える工房での作業は、過酷かと思いますが……。

左藤 夏場は厳しくて、毎年熱中症になります。それでも作り続けなければならないので、なんとか工夫をしながらの制作ですね。もみじ市の頃には、少し涼しくなっているはずです。

——最後に、もみじ市を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いいたします!

左藤 初回は買わなくても、ぜひブースを見にきてください。2年、3年と重ねていって、気に入るものを選んでいただけたらと思います。初めて見にきてくださる方の印象に残ってもらえるよう頑張ります。

——良い出会いがあることを願っています。左藤さん、ありがとうございました!

〜取材を終えて〜
九十九里のアトリエに伺ったのは、8月の中でも特に猛暑を記録した日のことでした。灼熱の工房と、それに負けない左藤さんの熱いガラスへの想い。金属の加工や道具の工夫など、「ガラス以外」の部分にも決して妥協せず、悩みながらやることもあるとおっしゃる中、どこか楽しげな姿が印象的でした。ぜひもみじ市の会場で、器ひとつひとつの名前を左藤さんに訊いてみてください。一番「その器に似合うもの」の答えが、返ってくるはずです。

【もみじ市当日の、左藤吹きガラス工房さんのブースイメージはこちら!】

制作を終え、今まさにもみじ市の会場に向かおうとしている作品たち。ぜひ会場でご覧ください!