【竹村聡子 プロフィール】
長野県出身の陶芸家・竹村聡子さん。画家・藤田嗣治の “素晴らしき乳白色”の美しさに感銘を受けたことをきっかけに、白磁土を使った作品作りをはじめました。竹村さんが手がける淡い色合いの磁器は、どれも洗練された美しさと、丁寧で細やかな手仕事が光ります。銀彩を用いたマリオネットや、動植物を描いた「animate series」、お花のブローチは、見ているだけでおとぎ話がはじまるよう。初参加のもみじ市ではどんなストーリーが紡がれるのか、ぜひ目の当たりにしてください。
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【商品カタログ予習帳】
色花5寸皿
銀獣豆皿
銀獣ブローチ
白花ブローチ
銀草花箸置き
銀獣香合
銀獣湯呑
ミニポット 白花小杯
銀鳥カップ 3個
乳白磁獣マリオネット ヤギ
銀獣玩具 リス
【スペシャルインタビュー「人生の大切な瞬間に寄り添う、白の世界」】
長野県飯田市の緑豊かな土地で、陶芸家・竹村聡子さんに、担当の富永(手紙社)がお話を伺いました。
人形劇の世界に魅せられて
ーーー陶芸はいつから始められたんですか?
竹村:大学のサークルです。卒業後に、“せともの町”といわれる愛知県瀬戸市で勉強をして、地元の長野県に帰ってからは、しばらく働きながら作陶を続けていました。陶芸一本で活動を始めたのは、4年前からになります。
ーーー陶芸一本でスタートするには勇気がいりましたか?
竹村:仕事をしつつ陶芸をしていたときに、身体を壊してしまって、仕事に通えなくなり辞めることになりました。周りに仕事を辞めたんだよねっていう話をしたら、「じゃあもう陶芸だけできるね」って言われて、やめた途端に何件か器の注文をして頂きそのまま自然に流れができていきました。続けて行く中で応援して下さる方が周囲にたくさん増えてきているので、これからも不安はない気がします。
ーーー地元の雰囲気が、作品に影響を与えることはありますか?
竹村:谷あいならではの文化だったり、地形が生み出す人格形成だったりとかそういうものも、長くこの土地に住む人と関わると非常に感じるところがあったりして、結構面白い場所だなと思っています。飯田市には、江戸の時代に淡路島から人形浄瑠璃、人形の文化が来たのですが、ご存知ですか?
ーーー大きな人形劇フェスティバルをやっているのは知っていましたが、江戸時代からの流れだったのですね!
竹村:辺鄙な土地なので、外の文化を大事に取り入れるというか、外から来た人を受け入れる感じがあったり、逆に新しく入って来たものが外に出にくい地形でもあるので、そういった部分がおもしろいなと思いました。地元に帰ってから働いていたのが人形劇の美術館だったんですが、それで余計この土地ならではの人形劇の文化に興味を持ったのかもしれません。その文化のすごさに感銘を受けて、自分でも人形劇の街ならではのものを作れないかなと思い、最近は磁器のマリオネットを作ったりしています。この土地で大人になってから感じられたものを土で作って、外の人に知ってもらえるといいなと思っています。
ーーー竹村さんの作品は眺めているだけで物語が始まりそうだなと、個人的に思っていました。
竹村:ありがとうございます。作品に具体的な物語を込めたりはしていないのですが、作って終わりではなくて、自分が作ったものが、手にとってくださる方の元で育つ器であるといいなと思っていて。
ーーー育つ、というと?
竹村:私は銀で動植物を描く“銀彩”という手法を使っているのですが、銀は酸化してだんだん色が変化していくんです。それが、私の中では育つという感覚で……。また人形劇の話になってしまうんですけど、人形劇の美術館に勤めていたとき、人形アニメーションというものに初めて出会ったんです。アニメっていう言葉の意味をご存知ですか?
ーーー考えたこともありませんでした。どんな意味なんですか?
竹村:“命を吹き込む”っていう意味があるそうです。私はそれを聞いて、「人の手で、人形に命を注げるんだ!」ってびっくりしたんですよね。それで自分でも何か表現できないかなって思っていて。銀で描いた動植物が、手にした方々の扱い方によって異なる酸化の仕方をして育っていく。それが自分なりのアニメートになるといいなと思いながら作品を作っています。
目指したのは、画家・藤田嗣治の白
ーーー竹村さんの作品は白を基調としたものが多いな、という印象を受けましたが、何か理由があるのですか?
竹村:二十代の頃に出会った藤田嗣治という画家の絵画が非常に好きで……。特に彼の描く白の世界が素晴らしいんです。それで、自分も白をベースにした作品になっていきました。二十代はいろんな感動を受けやすい体質だったので、感動したものを土で表現しようと夢中になっていて、その時代があって、今がある気がします。
ーーー白には、どんな魅力があると思いますか?
竹村:白という字は、人間の頭蓋骨の象形文字から来ているっていう説があるそうなんです。そこから、白を人間の始まりと終わりの色だって認識されている方の本を読んだ時に、なるほどなって思って。あと、自分の作品に装飾するときに、白でもちゃんと影があるなというか、白の中にもいろんな白があるなって感じたんです。白には内在しているものが多い気がして、魅力的だなと思っています。陶器を焼くときに表面にかけるガラス質の薬があるんですが、初めて藤田嗣治の絵をみて感動したときの白のイメージに近づけようと思って、自分で研究して作りました。その薬を使うことで、キメが出るというか……光の加減によって乳白したり乳濁したり、いろんな見え方のできる白を目指しいます。
ーーー竹村さんの器は、手に馴染むというか、柔らかい感じがして素敵だなと感じていました。
竹村:ありがとうございます。藤田嗣治は裸婦の絵が多くて、女性の肌っぽい感じにしたいというか、しっとりしたものにしたいなと思っていたので、その言葉が聞けて「やった!」と思いました(笑)。
作品作りは微調整の連続
ーーー作品が出来るまでの流れを教えてください。
竹村:まず、ろくろで成形をして、削って、装飾をして、素焼き。薬をかけて、もう一回窯にかけて焼き上がったら、銀を塗ってカッターを使って銀の絵柄を描いていきます。最後に、もう一回窯にかけて終わり。通常の磁器は2回焼くだけで完成なんですけど、銀の装飾が入るともうひと工程増える感じです。
ーーー手間暇をかけて作っているんですね!
竹村:ある程度の形を作ってから、時間を置いて冷静になってから修正を加えるっていう工程もすごく多くて、微調整の連続でやっと完成するという感じです。
ーーーカッターで絵柄を描くのも、非常に細かくて神経を使いそう。
竹村:カッターで絵柄を描く作業を“搔き落とし”というのですが、例えば動物の絵柄だったら、まずアウトラインを出してから体に装飾をしていきます。以前、銅版画の作家さんと一緒に展示をする機会があったんですが、その方の作品を見たときに、版画みたいな要素を取り入れても面白そうだなと思って、このスタイルにたどり着きました。
出来上がったものに宿る思い
ーーー作品を作るときに、大事にしていることを教えてください。
竹村:出来るだけ長く使ってもらえるように、丁寧な仕事を心がけています。自分自身より長く生きて欲しいなって思いながら作ってます。自分で作ったものを見ると、自分の核の部分が痛いほど出ている感じがするんですよね。完成したものを見て、こういうものが作りたかったなって納得するときもあります。昔から変わらない部分を追求できている感じがします。本当に細々したものとか小さいものが好きとか、ちまちました作業、同じことを繰り返すこととかそういうことですかね。
ーーーそんな作品がお客さんと出会う瞬間は、いかがですか?
竹村:私が作っているもののなかで、「用途はなんですか」とよく聞かれる蓋物の作品があるんですが、何も聞かずに手にとってくださる方が何人かいたんです。逆にこちらから何に使うか聞いてみたら、「子供のへその緒を入れる」という方や、「結婚指輪を入れて彼女にプレゼントする」っていう方、「家族の遺灰を分けてもらう時の入れ物にする」と答えた方がいて、生と死というか、始まりと終わりいうか……人生の大切な瞬間に自分の器を使っていただけるっていうのが「もう私やめてもいいな」って思うくらい嬉しいことで。誰かの人生に究極的な寄り添い方ができるっていうのが、作り手冥利に尽きすぎて……。マリオネットもそうですけど、普段使いのものではない、なくてもいいものっていうのを作るのがすごく楽しくて、自分でも考えたことのない予想外の部分に共感して使ってくださる方に出会えると嬉しいし、非常にやりがいを感じます。
ーーー竹村さんが作品に込めた思いが伝わるからこそ、特別な機会に使いたいと感じるのかもしれないですね。
竹村:私は、もともと自分の言葉で思っていることを伝えるのが非常に苦手で……。自分の一番伝えたいことは作品を見て感じてもらうのが一番わかりやすいなって思っています。
はじめてのもみじ市
ーーーもみじ市には今回が初参加ということですが、出店の依頼を受けたときのお気持ちはいかがでしたか?
竹村:なんで知ってくださったんだろうってびっくりしました。何を見て声をかけてくださったのかなって。手紙社さん自体が有名で、いろんな話を聞いていたので、期待よりも不安の方が大きかったです。私で大丈夫かしらって……。お客さんとして行きたいなって思っていたぐらいだったので、本当に驚いています。
ーーーもみじ市には、どんな印象を持っていますか?
竹村:本当にすごい方ばかり出店されているなって思って。クラフト以外にも飲食とかデザインとか色々ありますよね。全力でやりたいとは思うんですが、それでも何かが足りない気がして怖くて、心配です。今年の出店者の方達のお名前を見たら、すごく人気の方達もいたので大丈夫かなって。今日、富永さんにお会いできてほっとしているんですが、いよいよ感がすごいですよね(笑)。いつ誰に見ていただいても恥ずかしくないような展示をしたなとは思ってますが、やってもやっても100%というには遠いです。
ーーー今回は“ROUND”というテーマですが、何かイメージするものはありますか?
竹村: “輪”だなとは思ったんですが……。いつも山奥に一人で制作していると、なかなか作家同士の繋がりっていうのがないので、今回一緒に出店させていただける作家の方達と、何かしら今後も繋がっていけたらいいなっていう気持ちにはなりました。二日間、忙しくてそれどころじゃないかもしれないんですけどね。
ーーーもみじ市を訪れた方に、作品のどんなところを見てもらいたいですか?
竹村:私の作品は、動物たちにも細かい模様が一体一体入っていたりとか、全体的に細かい装飾が多いんです。昔から本当に細かいことをするのが好きで、そういったところを自分でも大事にしてやっていきたい部分だったりするので、可能な限りその模様を一つ一つ見ていただけたら嬉しいなって思います。
ーーーそれでは最後に、もみじ市への意気込みをお聞かせください!
竹村:たくさんの方に見ていただける機会でありがたく嬉しいことだなと思っています。個展に臨むような気持ちで頑張ります! 季節もいい時期なので、楽しみたいと思います。
ーーーありがとうございました。竹村さんがもみじ市にどんな新しい風を吹かせるのか、再会を楽しみにしています!
〜取材を終えて〜
インタビューを終えたあと、竹村さんのご好意で、私[担当:富永]も陶芸を体験。これが想像以上に力仕事で、土を練るにも、ろくろで成形するにも、思い切りの良さと繊細な力加減を必要とするのだと身をもって感じました。細かい作業が好きだという竹村さんの作品には、一切妥協のない、繊細で丁寧な手仕事が輝いています。 “命”を吹き込まれた銀の動植物たちが、河川敷でどんな運命の出会いを果たすのか、想像するだけでも夢が広がります。竹村さんの美しい白の世界を、ぜひ、直接その目で感じてみてください。(手紙社 富永琴美)
【もみじ市当日の、竹村聡子さんのブースイメージはこちら!】
小さなシアターから顔を出す竹村さんのマリオネット。竹村さんのブースでその世界に出会えば、夢中になること間違いなしです!