ジャンル:CRAFT

寺島綾子(14日)

【寺島綾子プロフィール】
1本の絹糸を幾重にもかがって作られるのは、日本の伝統工芸の“ゆびぬき”と“てまり”。寺島綾子さんは、伝統工芸という堅いイメージを覆すかのように、アポロチョコレートやどら焼き、麦わら帽子など私たちの身近にあるものをモチーフに、どこか現代的で、思わずクスッと笑ってしまうゆびぬきやてまりを生み出します。初めて見たときから、私(担当:鈴木)の心を掴んで離さない、ハンバーガーとポテトのジャンキーなゆびぬきに、きっとあなたも目を奪われます。
http://inuinunuinui.cocolog-nifty.com/

【商品カタログ予習帳】


半分てまりのスカーフ留め


半分てまりのスカーフ留め


小さなてまりのスマホピアス


小さなてまりのかんざし


小さなてまりのかんざし


小さなてまりのハットピン


加賀ゆびぬき・ぞうさん


加賀ゆびぬき・夜のフラミンゴ


加賀ゆびぬき・もうひとつのアリスのトランプ

 

【スペシャルインタビュー「現代モチーフを落とし込む新しい『加賀ゆびぬき』と、初めてのもみじ市」】

色彩豊かな美しい絹糸をかがり、伝統的な加賀ゆびぬきやてまりをつくる寺島綾子さんに、鈴木麻葉(手紙社)がお話を伺いました。

ゆびぬきとの出会いは、夫の転勤から

ーーー加賀ゆびぬきとの出会いを教えてください
寺島:夫の転勤で富山県高岡市に引っ越したのがきっかけです。高岡から、加賀ゆびぬき発祥の地・金沢へは、バスで1時間ほどで行けるんです。大きな買い物なども金沢でしていたため、当時は金沢が身近な場所でした。そこで、伝統工芸「加賀ゆびぬき」と出会いました。

ーーーもともと、ものづくりをしていたのですか?
寺島:はい。以前から手を動かすのが好きで、趣味でテディベアや犬のぬいぐるみなどを作っていました。昔から、小さいものが好きで。そのうち、モールベアという、モールを使ってつくる3cmほどの小さいテディベアをつくるようになりました。初めて加賀ゆびぬきを見た時、「つくってみたい!」とビビッときました。

ーーーどのようにつくり方を学んだんですか?
寺島:金沢で開かれているお教室に通いました。月2回を加賀ゆびぬき、また別で月2回てまりのお教室に通っていました。なので、毎週金沢にいっていましたね。

ーーー近いとはいえ、通うのは大変では?
寺島:転勤先で周りに友達もいなく一人寂しかったので、週1で通うのがとても楽しみでした。

ーーー教室にはどれくらい通ったんですか?
寺島:8カ月くらいです。その後、不定期に3〜4ヶ月に1回通っています。今も通っていますよ!

ーーー現在は作家活動のみで生計を立てていますか?
寺島:そうですね。作品の販売と、あとは茨城県古河市でお教室を開いています。加賀ゆびぬき、てまりの作り方を教える教室です。

すべての始まりは、加賀ゆびぬき教室

ーーー教室ではどのように教えているのですか?
寺島:教室というと時間が決まっていて堅苦しいイメージですが、かなり自由に教えています。時間は午前10時から午後4時の間で途中参加退出自由なので、朝から来て午後4時までやっていく方から、お昼過ぎに参加される方など様々です。熱心な方が多いので、追いつかれないように私も必死です(笑)。

ーーー教室の参加者はご近所の方が多いですか?
寺島:遠方からいらっしゃる方が多いです。伊香保や横浜など関東圏から来る人が多いです。

ーーー参加者はどのような世代の方が?
寺島:30〜40代くらいの女性が多いですね。年齢層は、イメージより若いと思います。稀に男性もいます。

ーーーそもそも教室を始めたきっかけは?
寺島:東日本大震災の際に、高岡から故郷の茨城県古河市に戻ってきました。「加賀ゆびぬきのことをもっと多くの人に知ってもらいたい!」と思い、着物屋さんに売り込みにいったんです。その時、置いてはもらえませんでしたが、「ぜひ教室をやってほしい」と頼まれ、お教室を開くことになりました。作品の販売や、著書の出版よりも先に。

古典柄を生かし、現代的な色を落とし込んだ加賀ゆびぬき

ーーー参加者は最初から集まりましたか?
寺島:はじめは2、3人でした。その当時、加賀ゆびぬきを広めようと必死で、私のアピールがしつこすぎたのかもしれません(笑)。そのうち、自分が楽しんで作っている姿を出すようにしたら、人が集まるようになりました。今は、常時20人ほど集まるようになりました。

ユニークなモチーフが生まれるまで

ーーー寺島さんの加賀ゆびぬきといえば、ハンバーガーやかき氷など現代的な面白いモチーフが魅力ですよね。どのように思いつくのですか?
寺島:伝統モチーフをつくっていると「これなら作れそう!」とインスピレーションが湧いてくるんです。

ーーー凄い! モチーフはどんなものでも作れるんですか?
寺島:作れるものと作れないものがありますが、思い浮かんだものはだいたい形にしています。ただ、「富士山」だけ、未だ作れていないです。どんなに考えても、できないんです。

ーーーどんな時、新柄を思いつきますか?
寺島:フラットな状態の時、急に思い浮かびます。考えようと思うと出てこないんですよね。

ーーー寺島さんのお気に入りのモチーフはなんですか?
寺島:最近できたばかりのものだと、麦わら帽子です。思ったよりも可愛く仕上がりました。今時の柄も好きですが、やはり伝統柄も好きですね。

ーーー作品が出来上がる工程を教えてください
寺島:まずは、土台を作ります。厚紙を布でくるみ、その上から真綿を巻きます。かがりやすいように真綿の上に和紙を巻き、土台が完成です。そのあと、絹糸で模様を作っていきます。今までの内容は、お教室で教える内容です。その前に私自身が最初に行うのは、製図ですね。パソコンを使ってアイディアを図面に起こします。その図面を元に、生徒さんは土台を作ります。

加賀ゆびぬきやてまりのグラデーションを作り出す色とりどりの絹糸

初めての野外イベント、もみじ市。挑戦ばかりです。

ーーー今回初出展となりますが、もみじ市はもともとご存知でしたか?
寺島:知りませんでした。ただ、手紙社さんのことは知っていましたし、布博には遊びに行ったこともあります。もみじ市はお声がかかってから調べて知りました。

ーーーお声ががかかった時、どんな気持ちでしたか?
寺島:憧れの手紙社さんからお声がかかるなんて……。ただただ嬉しかったです。

ーーーご出店は迷われましたか?
寺島:気持ち的には出る気満々でした。ただ、野外のイベントが初めてということ、周りがハイレベルなため自分が出店しても大丈夫なものか不安でした。でも、そうそうない機会なので挑戦してみようと思いました。

ーーー今回、ROUNDのテーマに沿ってどのようなものを作ってくださいますか?
寺島:加賀ゆびぬきやてまり自体がROUNDなので、そのままいきたいと思います。もみじ市で挑戦したいことは、普段使っているものとは違う太さの絹糸がたくさんあるので、それを使った新作や、今まで販売したことのない、てまりのキットを用意しようと思っています。

てまりの土台。当日キットとしてブースに並びます

ーーー初めて出店するにあたり楽しみなところを教えてください
寺島:お客さんの顔をみて販売できる機会がなかなかないため、今までとは違うお客さん、加賀ゆびぬきを知らない人に見てもらえることが楽しみです。また他の出店者さんのレベルの高い作品やブースを見るのも楽しみです。

ーーー今回の意気込みを教えてください
寺島:なるべくたくさんの作品を見ていただけるように、準備を頑張ります!

ーーー寺島さん、どうもありがとうございました。

〜取材を終えて〜
今回の取材でお会いするのは2回目。インタビューは、寺島さんが普段お教室を開いている古河で行いました。私自身、加賀ゆびぬきに馴染みがなく、今まで使ったことがありませんでした。しかし、実際に寺島さんの作品を目にすると、絶妙な配色や緻密に計算された構図に目を奪われ、ただただ感嘆するばかり。そこには、一作品としての美しさ、そして独特の世界観がありました。私はとても不器用で、細かい作業が苦手なのですが、寺島さんのお話しを聞いているうちに、私もゆびぬき作りに挑戦してみたくなるほど。ぜひ、今度挑戦してみたいと思います! 寺島さんありがとうございました。(手紙社 鈴木麻葉)