【wato kitchen プロフィール】
岩手県出身のフードコーティネーター・watoさんが作るのは、素材のそのままの美味しさが詰まったスープ。一口飲めば、魔法のように心も体も元気になります! これまで、総合病院での栄養指導や、スープ専門店でのメニュー開発などに携わり、現在はイベントやパーティーなどのケータリングを中心に活動中。 2014年には、「何かあったときには、ここに来ていいよ」と言える場所を作りたいと、キッチンアトリエを完成させました。その姿を見るだけでほっと心がやわらぐwatoさん。私[担当:富永]は、スープから伝わってくる優しさに、胸がいっぱいになりました。
http://blog.watokitchen.com
【商品カタログ予習帳】
ジンジャーミネストローネ
wato kitchenの看板メニュー。鶏肉と8種の野菜の美味しさが溶け合っています。
人参いりのコーンポタージュ
お豆のカレーマリネを添えます。お子様にもいつも大人気。(10/15のみ)
かぼちゃとさつまいものポタージュ
ほっとする甘さ。お好みでシナモンをふりかけてどうぞ。
3種のきのこのクラムチャウダー
手作りのホワイトソースに大根や白菜などを入れた、ちょっと和風のチャウダーです。
ガスパチョ 大麦のマリネいり
スペインの冷たいトマトスープ。歩き回って暑くなったらドリンク代わりにぜひどうぞ。
メキシコ風 ライムのスープ
ライムの酸味があとをひく、さっぱりとしたスープですよ。
このスープは1杯につき100円をメキシコ地震の被災地に寄付させていただきます。(10/14のみ)
チーズ&ペッパースコーン
パルメザンチーズと黒胡椒とオリーブオイルの、塩気のあるスコーン。
くるみパン
くるみとオートミールいりの、もちっとしたソーダブレッド。スープに浸すと相性◎
【スペシャルインタビュー「ごはんは、愛情を伝えるツール」】
お手製のスープで人々を笑顔に変える“魔法使い”watoさんに、担当の富永琴美(手紙社)がお話を伺いました。
母に教えてもらった、食の魅力
ーーーいつも美味しいスープを提供してくれるwatoさんですが、料理は昔から好きだったんですか?
wato:はい。料理に興味を持ったのは、薬剤師の母の存在が大きいです。母は料理好きで、とても上手だったんですよね。栄養学にも詳しいので、食卓に出る料理を栄養素の名前で出してきたりして。かぼちゃの煮物を「カロテンの煮物ですよ~」と言ったり、「カルシウム追加~」と言いながらシラスをかけたり。そうやって、食べ物には身体の役に立つ栄養素が入っているんだという事を教えてもらいました。
ーーー楽しく食事をしながら学べる。素晴らしいですね〜!
wato:食べ物って美味しくて、しかも身体の役に立つんだ! というのが衝撃的で面白いなって思いました。その後、「医食同源(いしょくどうげん)」、病気を治療することと食事をすることの根源は同じ、という意味の言葉に感銘を受けたことをきっかけに、管理栄養士を目指しました。
ーーーwatoさんはイラストレーターとしての顔もお持ちなんですよね。
wato:芸術全般に造詣が深かった父の影響で、小さいころから絵を描くのが好きでした。絵も好きで料理も好きで、両方やろうと思っていました。
ーーー今に至るまでに、どのような道のりを辿ってきたのでしょうか。
wato:社会に出て、はじめは食事療法に力を入れている病院で、栄養指導などをしていました。4年ぐらい経った時にイラストをやりたいという気持ちが強くなってきて、病院を辞めてイラストの学校に通い始めました。夜の学校だったので昼間に働けるバイトを探して街を歩いていたら、とあるスープ屋さんに出会ったんです。私はもともとスープが大好きだったので、バイトを募集していないか聞いたら、ちょうど栄養士さんみたいな人が一人欲しかったと言われて、その日のうちに採用!その後、昼はスープ屋さんで働いて、夜は学校という生活を6年くらい続けました。
ケータリングのはじまり
ーーー現在のようなケータリングはいつから始めたんですか?
wato:スープ屋さんで働き出してから2年くらい経ったときに、初めてイラストの個展を開いたんです。そのクロージングに自分の料理を出したらどうだろうと思い、外でピクニックのような形で開催しました。そしたら、1日に100〜120人くらいがやって来てすごい騒ぎに…(笑)。自分の絵が飾ってある空間で、みんながごはんを食べて楽しそうにしていて、知らない人同士があっちこっちでいろんなつながりを作っていて、「面白い、こんなケータリングをやっていきたい!」と強く思ったんです。そこから、スープ屋さんのお休みの日にケータリングをやるようになりました。
ーーーそれが今に繋がっているんですね〜!
wato:はい。フードコーディネーターとしての撮影などのお仕事も、私のケータリングを食べた広告代理店の方が誘ってくださったことがきっかけでした。その仕事を見た方がまた別な仕事をくださって、という芋づる式で、今に繋がっています。ご縁とラッキーの連続で今がある感じですね。
ーーーwatoさんには、運を引き寄せる力があるんですね。
wato:運も実力のうちという言葉がありますが、それが本当だったらだいぶ実力者だな、なんて(笑)。一つ自負があるとすれば、筆まめだったんです。始めの頃は、知り合った方に自分のケータリングや展示のお知らせをたくさん送っていました。いただいた名刺をファイリングして、どんな人だったかメモして。それを続けていたら、出会って5年後くらいに急にお仕事くださる方もいたりして。細々だったし貧乏だったけど、種まきしてきたものに芽が出たという感じで、続けていてよかったなと思う瞬間でした。
人の助けを借りて実現できたこと
ーーーはじめてwatoさんのアトリエにお邪魔しましたが、物語に出てきそうな素敵な空間ですね。
wato:いつでもここに来ていいよって言える場所、みんなの広場みたいな場所を作りたいという気持ちがずっとあったのですが、特に震災後に強くなり、3年前に部屋を借りて、アトリエにしました。初めの頃、ちまちま改装作業をしていたら手紙社のみなさんが壁を塗ってくれたり、日光珈琲の風間さんが、栃木の廃校になった中学校から大きな机を持って来てくれたり、他にもたくさんの方々にお世話になって……。アトリエにいると、1日1回は、どうしてこんなに素敵な場所を持つことができたんだろうって、感謝の気持ちが湧いてくるんです。今はここで仕込みをしたり撮影をしたりお仕事をしたり、ごはん会を開いたりしています。天気がいいと窓から富士山が見えるんですよ。
ーーー温かな空気感を纏うwatoさんだからこそ、自然と周りに人が集まってくるのだろうなという気がします。
wato:昔は、人にお願いするのがすごく苦手だったんです。迷惑じゃないかなって考えてしまって。一人でなんとかすればいいと思っていました。でも大きなイベントに参加するうちに、どうやったって一人では無理な状況が増えて来て、自分の中で練習して、少しずつ手伝いをお願いするようになったんです。そしたら、一人では6割ぐらいしか実現できなかったアイディアも、誰かにお願いすれば8割9割実現できたりするんだってわかって。今はすっかりみなさんの力に甘えています(笑)。
常に“食べてくれる相手”を思う
ーーーwatoさんのスープはどのようにして生まれるのですか?
wato:まず一つは、世界中にある既存のスープについて文献やネットで調べたり、そのスープを出しているお店に行って食べたりして再現、もしくはアレンジするパターン。一方オリジナルのものだと、冷蔵庫の残り物から予定していなかった組み合わせのスープが生まれたり。素材そのものを食べてみて、合いそうだなと思うものを組み合わせて作ることもあります。最初にテーマがある場合には、国や地方、食材の色や形、食感、季節感、ネーミングなどなどいろんな要素を組み合わせ、テーマに合うスープはどんなだろう?!と妄想して作り出します。それと、かならず「おいしくなーれ」という気持ちをじっくり丁寧に加えます。非科学的ですが、これがけっこうな隠し味になるんですよ。ふふふ。
ーーーもしも、「watoさんのようなお仕事をしたい!」という人が現れたらどんなアドバイスをしますか?
wato:「やろう!」って言います。必要なものは好奇心と、コミュニケーション力。好奇心がないと試行錯誤できないし、何をするにも原動力になるので。食べ物に携わるということは、 “食べてもらう相手”がいることなので、コミュニケーションは大切。常に相手の気持ちに寄り添いたいと思っています。
ーーー“食べてもらう相手”がいることを常に意識すること。当たり前ですが、とても重要なことのように思います。
wato:ちょっと困っている友達にごはんを作ってあげて、それで和んでくれたりしたら、あぁ、料理ができてよかったって思うんです。その人に合わせたごはんを作ってあげられた時に喜びを感じます。
ーーー心のこもったごはんを食べると、不思議と元気が出たり……なんだか魔法みたいですね。
wato:ごはんは愛情を伝えるツールだと思うんです。例えば、「愛してる」とか「あなたのことを大事に思っている」とか言わなくても、その人のためにごはんを作るという行為がもう愛情表現なんじゃないかなと。そういう意味でも、料理が好きでよかった。「元気出してね」「楽しく過ごそうね」。ごはんを通して、いろんな気持ちを届けられたらいいなと思います。
作家の一人として参加する、もみじ市
ーーーはじめてもみじ市に参加したときのお気持ちはいかがでしたか?
wato:出店のお誘いは2011年に初めていただいて、「きたーーーーっ!!」って思いました。「大変!もみじ市きた!」って(笑)。大好きなイベントだったからすごく嬉しかったです。
ーーー思い出に残っていることはありますか?
wato:初めて出店したときに、「芋の子会」というのをやったんです。私の故郷の岩手県では、みんなで「芋の子汁(芋煮汁)」という鍋を作って食べるのが秋の河川敷の風物詩なので、東北の風習を体験してもらいたいなという気持ちもあってトライしてみました。メニューは芋の子汁オンリー。今考えると、すごい強気だったなと思います(笑)。お店の周りに敷物を敷いて、そこで食べられるようにしたんですが、知らないお客さん同士がワイワイ話して盛り上がっていて、やって良かった! と思いました。
ーーーもみじ市はwatoさんにとってどんなものですか?
wato:もみじ市は作り手が集う市。だから、フードも作家の一人として声をかけていただいているという受け取り方をしています。出“店”というけれど、展示という意味の出“展”じゃないかなと。自分がやってみたいことや、食べ物を通して感じてもらいたいことを表現する場所で、一年の集大成だと思っています。できる限りのことはやりたいです。とても人気のイベントだけど、それは手紙社さんが大事に育てて来ているというのが伝わるからそうなるんだと思うんです。各出店者に担当スタッフを一人つけるとか、メールで頻繁にやりとりをするとか、準備段階から手紙社さんと出店者が密に関わっていますよね、だから出店者にも情熱が伝わって、同じ気持ちでもの作りができる。そしてそれがお客さんにも伝わって、もみじ市って素敵だな! って感じてくれるのではないでしょうか。
ーーー私はお客さんとしてもみじ市に行ったとき、物語の主人公になったような不思議な感覚になりました。
wato:出店者も主役だけど、お客さんにも主人公になってほしいですよね。テーマパークのように。お客さんがいないとあの空間は成り立たないから、そう思うとお客さん一人一人も、もみじ市のピースの一つという感じがすごくします。
ーーー今回のテーマ “ROUND”に合わせてやりたいことはありますか?
wato:これまでに出して来たスープで定番のもの、人気だったものを出そうと思っています。思い出をひとまわりして、原点回帰というか「wato kitchen」の歴史を一周していただくような意味合いで。そして、(芋の子汁は無いのですが)やっぱり今年も、芋の子会スタイルをやりたいです! 敷物スペースを作り、そこでお客さんにROUND(輪)になってスープを食べていただこうと思っています。天気によってはできなくなってしまうんですけどね。晴れるといいなあ〜!
出店仲間は、私の道しるべです
ーーーwatoさんにとって、もみじ市の他の出店者はどんな存在ですか?
wato:一緒に山登りをする人。ジャンルが違ういろいろな山を登っているけど、同じ高さにいれば同じ目線で話せると思っていて、「自分もみんなとおんなじところにいたい!」とやる気を与えてもらっています。一人だったらもっといろんな迷いがあったかもしれない。今やっていることは、誰かに言われてやっているわけじゃないから、自分がやめたらそれで終わっちゃうんです。それでも続けるんだっていう、そういう純粋な気持ちも思い出させてくれるというか。他の出店仲間は、私の道しるべです。ちょっとかっこ良すぎるかな(笑)。
ーーーwatoさんの活動の中で、欠かせないものはありますか?
wato:手紙社さんのイベント出店の時にいつも連れて行っているクマのぬいぐるみ「ハグ店長」。レジのところにいるんですが、あの子がなかなかいい働きをしてくれていて!
ハグ店長:ふぁ、ふぁ〜!(バンザイをする)
ーーーわあっ! 喋った!
wato:そうなんです、急に喋ります(笑)。ハグ店長がいると、お客さんとの会話のきっかけになったり、子供が喜ぶんですよね! 怖がって泣いた子も結構いるけど(笑)。意外と接客上手なんです。もみじ市でも、ハグ店長がみなさんをお出迎えします!
ーーーありがとうございました! もみじ市当日、watoさんのブースで 楽しい“芋の子会”が開かれるのを心待ちにしています!
〜取材を終えて〜
wato kitchenのスープを飲むと、なんとも言えない安心感に包まれます。インタビューを通して、それはwatoさんがスープに込めた温かな思いが、心をじんわりとほぐしてくれるからなのだと確信しました。お母さまの料理がベースにあるというwatoさん。一人暮らしの私[担当:富永]は、そんなwatoさんの作るスープを、こっそり“東京の母の味”と思っています。ブースを訪れた一人一人に「行ってらっしゃい!」「楽しんできてくださいね」と声をかけるwatoさんの笑顔は、もみじ市に欠かせない大切なピースの一つです。(手紙社 富永琴美)