ジャンル:CRAFT

八重樫茂子

【八重樫茂子プロフィール】
埼玉県出身、神奈川県小田原市在住。「織ることが好き!」。そんな気持ちがお話の端々から溢れる八重樫さん。「ノルウェーで織りに触れて、日本とスウェーデンで学んで、気がついたら毎日織り機に向かうことが仕事になっていた」と言います。ごく自然なことのように、織り機と向き合う八重樫さん。彼女の手から生まれる作品は、陽光を浴びてきらきらと輝く植物たちのように生き生きとした魅力を放っています。
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【商品カタログ予習帳】

おしりの下に隠します。のかくしマット
椅子に近づきたくする、かくしマット。
これを持っていたら百人力。と思わせるハンカチーフ。
雪がやんだら青空がきれいでした。ユキノソラ
緑色がカッコよく感じたら、止まらなくなって。大好きなショール
あなたはどんな花畑を秘めているのでしょう。がま口バッグ

【スペシャルインタビュー「織り機に向き合いながら、自分と向き合う」】
「織りは生活の一部」。そう笑顔で語るのは、織物作家・八重樫茂子さん。大きな織り機が佇むご自宅で、本間火詩(手紙社)がお話を伺いました。

きっかけは、2度の留学

ーーー織りを始めたきっかけはなんですか?
八重樫:妹に教わって楽しかったから! 2000年に、妹は半年、私は1年、それぞれデンマークとノルウェーに留学をしていました。そのときに妹が織りを学んで、私も興味を持ったんです。私が通っていたノルウェーの学校にも織り機があって、こっそり使っていました(笑)。

ーーー日本に帰ってからはどうやって織りを続けていたんですか?
八重樫:2001年に帰国をしてからも、もう少しやってみたいなと思ったので、実家の近くで教室を見つけて、デスクワーカーをしながら週に1日、2~3時間学んでいました。ただ、それまで経験がなかったので、週に1日では教わったことがなかなか身につかず、もう少し学びたいと思っていたんですが、日本の教室は高くて……。そんな時に母と妹がスウェーデンの学校で織りを学べるという話を見つけてきて、「同じ額なら北欧に行ってみよう」と思い2度目の留学を決めました。

ーーー留学中から織りを仕事にしよう、と考えていらっしゃったんですか?
八重樫:全然考えてなかったです! 織りはおばあちゃんになってからの楽しみでいいかなって思ってたくらいだったんです。ものづくりで食べていくことをそれまで考えたことはなかったし、あまり興味もなかったと思います。美術を苦手としてきた私には、想像ができない事でした。

ーーーそうなんですね。それでは、お仕事にされるきっかけはどんなことだったんですか?
八重樫:スウェーデンでの1年の留学から日本に帰った後、妹が、留学中の友人のガラス作家さんを紹介してくれたんです。その人に「スウェーデンで織りの勉強をしたのなら、作家になるわよね」と言われて思わず「うん」って返してしまったことがきっかけといえばきっかけですね(笑)。その人がお店を紹介してくれたので、そこの方とやりとりしていく中で、お店の人の欲しいものを聞きながら、少しずつ、仕事にするためにどうしていこうかを考えていました。知人から織り機を安く譲ってもらって、デスクワークの傍、少しずつ織っていました。仕事をしながら、片手間だったからこそ、必死すぎずに気負いなく続けられた気がします。

ご自宅に佇む、大きな織り機

続けるには、好きなものを作るしかない

ーーー今、こうして作り手として織りを仕事にされている八重樫さんですが、ものづくりを仕事にするためには何が必要だと思いますか?
八重樫:好きなことを続けるしかないな、と思います。周りの人の希望通りに作っていると、自分らしさが薄れてしまうような気がします。売れるか売れないかは私にはまだわからないから、作ってみて、反応を見て、少しずつ。でもあくまでも自分の感覚で作っていくことが大事。あとはお店の人が自分の作品のファンになってくれる、そういうお店に出会えることもすごく大事だなって思います。

ーーー自分の感性と、それを大事に思ってくれる人との出会いが大切なんですね。それでは好きなことを続けていくために、八重樫さんが意識していることはありますか?
八重樫:常に自分がいかに楽しくしていられるか、自分を盛り上げる方法を探しながら織ってます。例えば、たまにしか織らないものとか、初めてのものだと新鮮だから、「楽しい!」ってワクワクしたまま続けられますね。定番のものを長期間織っていたり、忙しい時期は、どうしたら飽きずに作業を続けられるか、楽しくいられる方法を探します。例えば、織りながらラジオを聴いてみるなど。暇な時にモチベーションを上げる方法をいつも考えてます。

ひと織りひと織り、積み重なった手数が美しい作品を生みます。

頭の中に、自分の好きを貯めていく

ーーー作品が出来上がるまでの工程を教えてください。
八重樫:何を作ろうかなって、まずひたすら頭の中で考えています。定番のものを織りながら、次は何を織ろうかなってずっと考えているんですね。織りって視覚なので、毎日いろんなものを見ながら、頭の中に貯めていって、新しいものを作る時にその引き出しを開けて作品にしていきます。「この絵、好きだな」とか、自分が何が好きか、心地よいものが何かを日々見つけるようにしてて、頭の中に自分の好きを貯めていくんです。昨日見ても何も感じなくても、今日は綺麗だなって思うかもしれない。だから毎日、身の回りにある全部がアイディアの源。そうして頭の中にできたなんとなくを、織りながら形にしていきます。

ーーー八重樫さんの作る織物は、毎日の好きが貯まって生まれてくる形なんですね。具体的な形にする際には、どんな風に素材を選んでいるんですか?
八重樫:糸を選んでも、織ってみないと仕上がりの色合いってわからないから、織りながらイメージに合うものを探していきます。ただ、最初にイメージしていた物と少し違うけど意外といいじゃん、っていう発見も好きなので、自分の好きにとらわれないようにしてます(笑)。でもあくまで自分の感覚を頼りに。

ーーー“頭の中のなんとなく”を織りながら形にしていく中で、完成はどの時点になるのでしょう?
八重樫:完成だなとは思ってないんです。いつも、「いかがですか?」って思ってるんですよね。「今の私はこんな感じですが、いかがですか?」って。織りながら、こんな感じは(お客さんは)好きかなーって考えながら織っています。

ーーー今年のもみじ市にはどんな新作を持ってきてくださいますか?
八重樫:新作はチェアシート! スウェーデンの留学中の記憶を呼び起こしながら、二重織り(特殊な経糸のかけ方をすることによって、同時に2枚の織物を織り上げたり、2枚を綴じ合わせて厚い織物を作ることができる織り方)ってどんなだったかなって思いながら、鏡を使って、裏側の模様を確認しつつ織っている、今年の新しい1枚です。

ーーー八重樫さん、どうもありがとうございました! 今年はどんな“好き”が形となって生まれてくるのか、楽しみにしています。

〜取材を終えて〜
私にとって、初めて事務局として参加するもみじ市、初めてのインタビュー。緊張の面持ちで伺ったご自宅で、迎えてくれたのは笑顔の八重樫さんでした。「織り機って、趣味で置いておくには大きいし、商売じゃ無くなっちゃったらやめてしまうと思うんだよね。だからね、やめなくていいように頑張るの」と笑う様子は、まるでいたずら好きな子が秘密を打ち明けているかのよう。夢中になってお話を聞いていたら、小田原の美しい家並みはすっかりと夕日に照らされていました。織ることが楽しい、織ることが好き、そんな気持ちがいっぱいに溢れて出来上がる八重樫さんの織物。インタビューの後は、織りあがった目のひとつひとつがきらめいて、さらに魅力的に思えました。みなさんも、もみじ市の河川敷で、ぜひ八重樫さんの織りなす模様に触れてみてくださいね。八重樫さん、ありがとうございました。(手紙社 本間火詩)

【もみじ市当日の、八重樫茂子さんのブースイメージはこちら!】

お馴染みのショールやマフラーから、新作のマットまで並びます。当日をどうぞお楽しみに!