【大森木綿子プロフィール】
紙もの雑貨の制作や書籍の挿絵などを手がけるイラストレーター。絵の具に色鉛筆、クレヨンなど、様々な画材を用い、淡い色彩で心に浮かんだことや身のまわりのものを描いています。みずみずしい光と色に満ちた大森さんのイラストは、記憶の中に埋もれていた心象風景をそっと甦らせてくれる力を持っています。『よだかの星』をモチーフにしたイラストを見たとき、物語を読み終えたときのやりきれない想いが、なんだか少し救われたような気持ちになりました。
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【商品カタログ予習帳】
『月刊 大森木綿子』記事一覧
7月号「再発見〜愛用の品〜」
8月号「再発見〜定番アイテムの横長カード〜」
9月号「再発見〜コラボ企画を通じて〜」
10月号「再発見〜横長カードのカレンダー〜」
【月刊 大森木綿子 7月号】
特集「再発見〜愛用の品〜」
「DISCOVERY」つまり“発見”がテーマの今回のもみじ市。大森さんとお話するうちに、これまでの創作活動を共にしてきたものごとに再び目を向け、そこから“再”発見をしてみよう、ということになりました。今月号では、「大森さんの愛用の品」から再発見してみたいと思います。
その愛用品とは、「テーブル」。姿かたちは様々あれど、どの家にもだいたい存在するテーブルですが、大森さんの場合にはどんなエピソードが秘められているのでしょうか。大森さんは、次のようにお話してくださいました。
大森さんとテーブルと
今の家に越してくるとき、絵の仕事も食事もできる大きなテーブルを部屋の真ん中に置こうと決めました。「長く大切に使いたくなるものを」とあちこち探し、思い切ってお気に入りのアンティークのお店にオーダーすることを決心。テーブルがやって来た日は、夢に出てきたほど嬉しかったです。
使い始めて今年でちょうど10年が経ちました。椅子に座るとすぐ、テーブルと同い年の愛犬がやって来て足元にごろんと寝転がります。頭の上が屋根のようで落ち着くのでしょうか。ホカホカあったかい犬のお腹を感じながら絵を描いていました。
改めてテーブルを見るとたくさん傷ができていますが、どれも自分には味わいに思えます。ずっと寄り添うようにいてくれるこのテーブルは制作のとき、とても心強い存在です。思うように筆が進まないときも、少し疲れたときも、そっと私を支えてくれていることに、今回改めて気づきました。まさに“再発見”ですね。家族や友人とたくさんの話をした団らんの場であり、キッチンの続きでもあり、創作活動の場であり……家の中で一番長い時間をテーブルと共に過ごしています。
楽しく心温まる思い出のつまった場所。これからも、どっしりしたこのテーブルの上から、生活も作品づくりも続いていきます。
あたたかな光を感じさせる大森さんのイラスト。さんさんと光を浴びるテーブルを見ると、ここから多くの人に親しまれるイラストたちが生まれたことが、とてもしっくりくると感じられました。
今月の1枚
愛犬のポン太郎くん。気づくとそっとテーブルの下にいることが多いそう。
(編集・柴田真帆)
《次号予告》
再発見〜定番アイテムの横長カード〜
【月刊 大森木綿子 8月号】
特集「再発見〜定番アイテムの横長カード〜」
「DISCOVERY」つまり“発見”がテーマの今回のもみじ市。大森さんとお話するうちに、「これまでの創作活動を共にしてきたものごとに改めて目を向け、そこから“再”発見をしてみよう」ということになりました。今月号では、大森さんの代表的なアイテムにスポットを当てます。そのアイテムとは、全面に大森さんのイラストがプリントされた横長カード。ちょっと変わった形状のこちらのカードはどのように誕生し、作られているのでしょうか。
大森さんと横長カードと
手紙舎 2nd STORYの一角にずらりと並ぶこのカード。サイズは、縦7.8センチ、横18センチ。「角丸(かどまる)」と呼ばれる、なめらかなカーブの四隅。熨斗のようにくるりと巻かれた、透け感のある帯。そして一面に描かれた美しいイラスト。大森さんの横長カードには、人の心を捉える要素がぎゅっと詰まっています。丸く切り落とされた角はやわらかな雰囲気を演出し、イラストの一部を隠した帯は表情に変化をつける役割を果たしています。どちらも些細なことですが、この“ひと手間”が見る人を魅了する理由かもしれません。
イラストを描くところから、印刷、角丸加工、帯をカードに巻きつけ袋に詰める作業まで、全て大森さんの手で作られていることが判明。いや、これぞ発見です!
今回、その制作現場をご紹介します。前回登場した大きなテーブルの上で、一工程ずつ手で作業を経てこのカードは生まれています。
大森さん愛用の、角丸を生み出す専用カッター。試行錯誤の上、角丸の角度、丸みが今の形に決定したそうです。1枚につき、四つ角を丁寧に丸くしていきます。
角丸を施した後は、帯をつける工程。帯の右上には、さりげなく大森さんのお名前が入っています。こちらの帯を巻いて糊付けするのも、もちろん1枚ずつ手作業です。横長カードが最初に誕生したときに、デザイナーであるご主人と一緒に作った思い入れのある帯だそう。このあとカードを収めるOPPの袋も、この横長カードに合わせて注文したオーダー品です。
「ときには、こつこつと作業することに大変さを感じることもあるのですが、筆を動かして絵を描く創作活動と、こういった細かい作業と、めりはりを付けるきっかけにもなっています。選んでくれた方の元へこのカードが届く場面を想像すると、『よし!頑張ろう』と、力も沸いてきます。イラストの種類だけではなく自分で手間をかけていたところが、たくさんの方に手にとてもらえる要因になっていたことを取材を通して知り、とても嬉しくなりました」と大森さん。
この横長カードのイラストは、これまでになんと100種類以上も生まれているそうです。その1枚1枚が全て大森さんの手を経て生み出されていることを知ると、このカードから感じられる、目には見えないぬくもりの理由がわかったような気がしました。そしてそのぬくもりこそが、人の心を惹き付ける理由のひとつなのでしょう。
(編集・柴田真帆)
《次号予告》
「再発見〜コラボ企画を通じて〜」
【月刊 大森木綿子 9月号】
特集「再発見〜コラボ企画を通じて〜」
大森さんとcharan 山田亜衣さんと
今回のもみじ市の特別企画、出店者同士のコラボレーション。大森さんは、真鍮で雑貨とアクセサリーを作るcharan 山田亜衣さんとペアを組むこととなりました。紙と金属、平面と立体。異なる要素ばかりのそれぞれがどのようにコラボレーションするのか……。お互いの作品からインスピレーションを受けて誕生した作品を目の当たりにすると、まるでこの2人がペアとなるのが、とても自然な流れだったかのように思えました。
8月、2人が初めて打ち合わせをしました。共にお互いの作品を知っていたことから、すんなりと「ブローチとカードのセットを作ろう!」と決まったそうです。大森さんは、打ち合わせの日に目にしたブローチや花のオブジェからどんなイラストを描こうかむくむくと想像を膨らませました。
そして9月。ブローチは「月」と「花」がモチーフになっており、「月」は夜空を切り取ったような、不思議でかわいいかたちでした。そして生まれた作品がこちら。
月のイラストから描き進めていくうちに、このブローチが水面に映る月のように思えてきて物語を描くようにイラストが出来上がっていきました。もう一つの花のイラストはテーマが「DISCOVERY」ということもあり、その湖のほとりでお花を見つけるという一場面を描きました。「カードの絵の中にある、湖やお花を実際にブローチとしてつけることができたら素敵だなぁ」と大森さんは思って筆を走らせたそうです。1枚目(上)のタイトルは「5つの湖と月」。山の麓にある、不思議な湖のほとり。夜空に浮かぶ月が映る丸い湖を、そっと切り取ったようなブローチとカードのセットです。2枚目(下)のタイトルは、「DISCOVERY」。凛とした雰囲気をまとう花のブローチからインスピレーションを受け、湖の畔にキラキラと光る、小さな花を見つけた様子が描かれた横長カードになりました。
帯とブローチのそれぞれの裏面も、コラボ仕様になっています。もみじ市だから生まれた、そして、もみじ市でのみ出会えるこの作品、大森さんのブースで是非、お手に取ってくださいね。
今回のコラボを通して大森さんは、「山田さんの真鍮のブローチから、物語を想像し膨らませるのはとても面白い体験でした。イラストを描くとき、これまでの旅の思い出や日常の景色、懐かしい記憶をもとにすることがあります。そういった意味では、私の作品は自分の中から“再発見”から誕生したものも沢山あるかもしれません。このブローチと横長カードも、目にした誰かが自身の記憶の風景が甦ってくるきっかけになったら嬉しいです」と、話してくださいました。
見る人の心を包みこむような大森さんのイラストが、もみじ市で多くの方の心をノックし、記憶の中の再発見につながりますように。
(編集・柴田真帆)
【月刊 大森木綿子 10月号】
特集「再発見〜横長カードのカレンダー〜」
いよいよ迫ったもみじ市。大森さんのブースに並ぶ商品から、カレンダーにスポットを当ててご紹介します。大森さんの作るカレンダーは、8月号で取り上げた定番アイテムの横長カード100種類以上の中から、お好きなものを12枚選び組み合わせて作るもの。
横長カードのほんの一部をご紹介します。
大森さん曰く、カーを選ぶ過程で「◯月にはこんなことがあったな……」「◯月にはこんなことをしたよな……」と思い出が甦り、その思い出から連想したイラストの横長カードを選ぶ方が多いそうです。そう思うとカレンダーを作る方々は、大森さんのイラストを通じて自身の各月のイメージを再発見しているのかもしれません。秋の深まりと共に、少しだけ来年の足音を感じる今日この頃。ずらりと並ぶ様々な色合いのカードから、あなただけの12ヶ月を完成させてみませんか? 来年、そのカレンダーをめくる度に、きっと2018年のもみじ市の思い出も浮かんでくることでしょう。
(編集・柴田真帆)