【kata kataプロフィール】
松永武、高井知絵によるプロダクトユニット。伝統的な型染め、注染などの技法を用い、生き物や植物、日常に溢れる“ものがたり”を描きだす。その表現は布や紙に止まらず、さまざまな方面に活躍の場を広げている。作品のなかで元気よく踊る、個性たっぷりの生き物たちからは、描く人の溢れるバイタリティーを感じずにはいられない。
【商品カタログ予習帳】
フェアリーローズをテーマにしたSAVON de SIESTAさんとのコラボで製作したハンカチ「ばら」
新作の手ぬぐい「トラ」
『月刊 kata kata』記事一覧
7月号『もみじ市のテーマをDiscovery!?』
8月号『焦りは禁物!! カバのように優雅にゆったりと』
9月号『“カバ”は“トラ”に姿を変える!? もみじ市に登場する動物はいかに……』
10月号『動物が大集合! kata kataのブースをご覧あれ』
【月刊 kata kata 7月号】
特集「Discoveryへの軌跡」
第1回からもみじ市に参加する型染めユニット・kata kata。毎年変わるテーマに合わせ、試行錯誤し新作をご用意くださるお二人が、今回のテーマ「Discovery」を“発見”すべく奔走する姿を4回に分けてお届けいたします。
もみじ市のテーマをDiscovery!?
奇想天外でユーモアに溢れたモチーフの作品を制作するkata kataさんですが、そのアイディアの源は一冊のスケッチブックです。いったいどうすれば、こんなイラストが生まれるのか!? と思うほどの異才を放つスケッチの数々は、ノートのなかに秘めておくのはもったいないほど輝くものばかり。今回のテーマ「Discovery」にぴったりなモチーフを探すため奔走するお二人が開いた一冊には素晴らしいお宝が隠れていました。その一部始終をご覧ください。
普段から松永武さんはスケッチブックにたくさんの絵を描きます。いつか良いアイデアに繋がるのではと思いつつ描き溜めているのです。ご本人でさえ過去に描いたものの存在を忘れ、世の目に触れられることのないアイデアの原石(?)が詰まったスケッチブックです。今回、「Discovery」というテーマを聞いて、松永さんは過去の自分のアイデアをもう一度精査することにしました。まさに“開けてびっくり玉手箱”!! 「Discovery」でした。コツコツと描き溜めておいたものに嘘はありません。貯金はしておくものです。
スケッチブックの中の奇天烈なアイデアと奇妙な言葉遊びの中から今回モチーフが選ばれました。
「Disカバry」
カバを「Discovery」したのです! 松永さんは情熱を持って制作に励んでいます。テキスタイル「バカ」が「カバ」を「Disカバー」する様子、とくとご覧あれ!
先月号でカバを発見したkata kataのお2人。この1か月間でいったいどんなカバが出来上がったのか覗いてみましょう。
焦りは禁物!! カバのように優雅にゆったりと
さて、モチーフが「Disカバry」に決まったところで実際に絵柄を制作し型を彫っていくわけですが……“その前に”まずは溜まっている染め作業に片をつけるため、浜松にある工房へ。黙々と手を動かし汗をかいてインスピレーションを高めます。
これは、糊置きの工程。糊がついた部分(タコの輪郭)は染料をのせた時に染まらないのです! 糊は乾くまで約1日ほどかかります。お天気を味方につけて今日も作業を進めます。
(決して作業が遅れているわけではございません。けっして。)
糊が乾いた生地を1色ずつ染めていきます。この模様ならば下地の赤と目の黒、2回染めの工程を行います。乾いてからでないと色を重ねられないので、「1枚完成させて次の1枚」というよりは、「今日は目を染める日」と決めて同じ工程を延々と行います。
染め上げたら、水につけて乾いた糊をふやかし、振り洗いします。糊が取れた布を干したら完成です! お日様に当たって実に気持ち良さそうな表情ですね。
……と、それっぽいことを言ってきましたが、実際には目に見えて作業が遅れています。松永さんは嘘がつけません。作業は遅れています。嘘がつけない純粋な人間が作っているのがkata kataなのです。焦らず当日のお披露目をお待ちください。松永さんはこれから本気を出します。そう言いながら今携帯を見て顔に半笑いを浮かべております。
もみじ市まで1ヶ月を切り、カバが登場しないと焦り始めたこの頃。なんとkata kataの工房ではこんなことが起こっていました!
“カバ”は“トラ”に姿を変える!? もみじ市に登場する動物はいかに……
自由制作の時間(仕事の合間の自由に制作を楽しむ時間)にトラをモチーフに風呂敷を作ったところ、すっかりトラに魅了され、勢いに乗った松永さんは新作手ぬぐいも「トラ」モチーフで製作することにしました。モチーフをカバにして、「Disカバry」と、嬉々として笑ったあの日は既に過去……今はもみじ市で“トラ”モチーフの新作をお披露目できるよう、日々染め作業を進めております。
下絵を渋紙という耐水性のある紙に貼って、イラストに合わせ切り抜いている様子。
切り抜いた型紙に紗という薄いガーゼを貼って補強。紗を貼らないと、細かく抜いた部分がせり上がってきてしまうのです。型紙がここまで完成したら、次は糊置きの作業に移ります。
布に型紙を置き、餅粉と糠を混ぜた防染糊というものを塗ります。この作業を糊置きといいます。紗から糊が落ちた部分には色がつかず、“紙”の部分だけを染めることができるんです。
その後、1色塗って乾かして、2色目を塗っては乾かし……この工程が続きます。アクセントに色を入れることを“ぼかし”といいます。すべての染料をのせ、布乾いたら、水につけて乾いた糊をふやかし、振り洗いします。
そして、糊の取れた布を天日干ししたら完成! トラと鳥のアンバランスさが良いスパイスとなった1枚です。
もみじ市は本当に生き物、川の流れのよう。作家のさじ加減でモチーフは変幻自在ですね。と、いうことでkata kataは「トラ」をディスカバー(追求)してまいりますのでよろしくお願いいたします。これ以上モチーフは変わらないと思いますのでご安心を。
カバからトラに変化した、kata kataの新作テキスタイルが、出来上がったようですよ!
『動物が大集合! kata kataのブースをご覧あれ』
「トラ」の手ぬぐいが、ついに完成しました! 仕上がりの色を決め、サンプルを染めたところで注染工場に型紙と色のサンプルを送ります。そして待つ事1ヶ月、手ぬぐいが染め上がって私たちの元に戻ってきました。さすが、長い間お世話になっている注染工場。思い通りに仕上げてくれました。新作の手ぬぐい「トラ」、是非お手に取ってご覧ください。
そして、来年のカレンダーも急ピッチで製作。毎年余裕のある時期から製作を始めるのですが、完成はギリギリ。特に今年は本当にギリギリまで頭の中で構図を固めて、型を彫るのに2日、染めるのに1日! と自分たちでも驚くほどスピーディーな展開に。瓜坊たちの様にkata kataもこの一週間止まる事なく駆け抜けておりました。
そのほかにもkata kataのブースには表情豊かな動物たちが沢山登場! 何か言いたげにみなさんのことをお待ちしております。ぜひ彼らに会いに来てください。
(編集・鈴木麻葉)