【イイダ傘店プロフィール】
東京・吉祥寺にアトリエを構え、オーダー販売のみで傘作りを行うクリエイティブ集団。デザイナー・イイダヨシヒサが描いた模様が、生地に落とし込まれ、一本の傘になっていく工程には、多くの人が携わっており、その繊細で緻密で誠実な仕事ぶりからは、作り手の傘にかける熱い想いを感じることができる。活動の幅は、傘だけに留まらず、ポーチやリュックサック、紙雑貨など、多方面で圧倒的な存在感を放つ。
http://iida-kasaten.jp/
【商品カタログ予習帳】
今回の青空受注では、「山野辺彩」とコラボした手元からもお選び頂けます。新作の日傘、前回の雨傘から生地をお選びください。
空の鳥(日傘)
春の花(日傘)
ぶどうぱん(日傘)
ふきのとう(日傘)
二重(日傘)
雨傘もオーダーして頂けます
カレンダー、ミニタオル、一筆箋、ぶどうぱんカード、新作のグッズも並びます。
レジャーシート
サコッシュ
『月刊 イイダ傘店』記事一覧
7月号 特集「一本の傘が出来るまで」
8月号 特集「一本の傘が出来るまで」
9月号 特集「一本の傘が出来るまで」
10月号 特集「一本の傘が出来るまで」
♪Naomi & Goro『Em e Countant Pluie』
イイダ傘店の朝はまずミーティングから始まる。今日1日のそれぞれの仕事を把握するためだ。傘を作るといっても工程はさまざま。どの作業に着手するかも進行次第である。そのため、共有は逐一行う。決しておろそかにできない時間である。ミーティングが終わったら忘れてはいけないのは、アトリエ前の植物への水やり。お天気のなか、生き生きと天を仰ぐ花々は、毎朝の水浴びを楽しみにしているようだ。今日は新しい柄を制作するというデザイナー・イイダヨシヒサさんに同行。一体どのように模様を描き、生地に落とし込むのか。
イイダ傘店のショップ兼アトリエから徒歩2分ほどにあるマンションの一室には、もう一つのアトリエがある。イイダさんが筆を構える机の前には、イイダ傘店の歴史を物語る作品の数々が壁を彩る。さっそく筆をとったイイダさんの手元には、みるみるうちに鳥たちが生み出される。軽い運びで描かれた下絵に、2本の筆を使い息を吹き込まれた鳥たちは、青い青いキャンバスへと飛び立っていった。時には筆を3本使って着彩するという絵は、水彩画だからこそ表現できる色の揺らぎがただただ美しい。
描いた絵がいったいどんなテキスタイルになるのか。生地や糸選びも妥協が許されない工程のひとつである。そしてそのテキスタイルが傘になったときどんな表情を見せるのか、楽しみである。
♪Naomi & Goro『Ran into a Bookstore』
イイダ傘店の傘は、全ての工程が手作業だ。アトリエに響くのはミシンの音と布を広げる音のみ。静かな空間で、スタッフは黙々と作業を進める。1本の傘が完成するまでには様々な工程があるが、どのスタッフも全ての工程に携わる。なぜ役割を分担をしないのか? それは、お客さまから相談を受けた際に、ひとつでもわからない工程があると答えられないことがあるから。全工程を理解していれば、全員が相談に乗れるからだという。オーダー会の際は、お客さま一人ひとりと相談しながらパーツを決めていく。お客さまの要望通りの傘を作るためには、まずは傘のことを理解することが大事なのだ。
注文の傘の大きさに合わせて布をコース状(帯状)に断裁することも、ダボやロクロというパーツを骨に縫い付けることも、全て人の手で成される。作業は実に細かく、正確性が求められる。しかし、その手元は驚くほど速い。スタッフは入社するまで傘を作ったことのない未経験者ばかり。毎日作業をこなすことで、今の速さで縫えるようになったという。思わず“職人”と呼びたくなるほどの手さばきだ。次回は新作の布が登場。いったいどんな傘が完成するのかお楽しみに!
♪Naomi & Goro『Into The Sun』
デザイナー・イイダヨシヒサさんの手元には、鳥をモチーフにした刺繍生地が。これは、もみじ市当日にイイダ傘店のブースにて開かれる「青空受注会」で登場する新柄の生地だ。反物の状態の生地がイイダ傘店スタッフの手にかかり、これからみるみるうちに日傘へと変化を遂げていく。
布の断裁作業は、一寸の狂いも許されない。竹尺で長さを測り、刃を入れる。その手つきに迷いはない。綺麗に折りたたまれた断裁後の布は、ミシンへと運ばれ、端を三つ折りに縫い付けられる。この工程を三つ巻と呼ぶのだが、ミシンに布をセットしてから縫い上がるまで、そのあまりの早さに驚かされる。その後、傘の寸法に合わせ、木型と包丁で1コマづつ三角形にコマ断ちしていく。まだこの段階では日傘の姿は想像できないが、次の工程で一気に傘の形へと近づいていく。
三角形に断裁したコマを傘用のミシンで縫い合わせる。するとどうだろう。まあるい傘地が出来上がるのだ。次回は、この傘地を骨へと縫い合わせていく。3ヶ月に渡ってお届けしてきた「月刊 イイダ傘店」もいよいよクライマックス。「一本の傘が出来るまで」来月号もお楽しみに!
♪Naomi & Goro『Afternoon In Thailand』
いよいよ仕上げの作業に入る。縫い合わせた傘地を骨にかぶせていく。ここでようやく傘らしい形になる。弛みなく張られた状態の生地を再度検品し、ボタンやリングなど必要なパーツをつけていく。最後に蒸気を当て傘のシワを伸ばし、手元をつけたらついに1本の傘が完成する。
この傘はイイダ傘店のスタッフの人たち、骨屋や生地屋、手元屋に名入れ屋などたくさんの職人の力があってこそできた1本だ。「傘」という漢字は、カサの下に、「人」の字が4つある。諸説では、1本の傘を作るのに、多くの人が携わっている、ということからこの漢字が生まれたという。そんな「傘」の意を体現するイイダ傘店の仕事。河川敷でどこよりも目を引く鮮やかな傘の花を咲かせることだろう。
(編集・鈴木麻葉)