ジャンル:FOOD

成城・城田工房

【成城・城田工房プロフィール】
もみじ市当日、初秋の河川敷に咲き乱れる花と見紛うばかりにそこかしこにあふれる渦巻き状のソーセージ、その名も“うずまきちゃん”。狛江が誇る自家製パストラミの名店「成城・城田工房」が確かな技術と最高の素材でていねいに創り上げたそれは、見た目の華やかさとは裏腹に、じつに寡黙で誠実で、だからこそギミックなしにおいしくて。「おいしいは正義」とは誰が嘯いたか、だがこの圧倒的なまでのおいしさへの勤勉さの前に、どこか真を射抜いているようにすら思える。そしてそれは決してどこにでもあるおいしさ、ではない。あたりまえに咲く花などないように。
http://seijohamu.com


『月刊 成城・城田工房』記事一覧

7月号 成城・城田工房の天気読み
8月号 成城・城田工房の天気読み
9月号 成城・城田工房の天気読み
10月号 成城・城田工房の天気読み


【成城・城田工房 7月号】

特集「成城・城田工房の天気読み」

「かっこいい理念みたいなものは別になくて。ただ作るものに関してだけは、手を抜かずにお客さんを裏切らないようにきちんと作っていれば、味もまたぜったいに裏切らないから」

食をめぐる言説において、これほどまでに説得力に溢れた信頼のおけることばがほかにあるだろうか。「就職難だったし、文化祭でハムを作ったノリでそのまま今に至るだけだから(笑)」なんてうそぶくシャイな努力家が自身の屋号を掲げて早10年、彼の手がける真心の塊のごときソーセージは今や河川敷はおろか、関東圏の百貨店における催事でも欠かせない圧倒的存在感を放つように。なにより、「成城・城田工房」の代名詞ともいえる渦巻き状のソーセージ“うずまきちゃん”をじつにおいしそうに頬張るたくさんの笑顔に、われもわれもと心奪われた同志はけっして少なくないはずだ。

かくいう彼も、日々それを支えてくれる家族には威厳を保ちつつもなかなかどうして頭が上がらないようで。

「なにかあったら首吊るしかないかも、ってところまで追い詰められるくらい、いい大人がもみじ市の二日間にすべてを注ぎ込むわけ。ほんとうに命がけよ(笑)。だからどうしてもピリピリもするし、家族に悪いなあとは思うけれど。ハム屋がハム屋である理由を、背中だけじゃなく、行動で語るのも大切かな、と。自分の青春の追体験や旅行をともにすることで、なにかが伝わってくれれば」

河川敷の天気を読みつつ、家族の風向きを読みつつ、ソーセージをこしらえつつ生きること。終わることのないそんな「成城・城田工房の天気読み」は、そのすべての大黒柱でありエースである彼にとっての生きがいであり、生きざまそのもの、なのである。

(編集・藤井道郎)


【成城・城田工房 8月号】

特集「成城・城田工房の天気読み」

河川敷の天気を読みつつ、家族の風向きを読みつつ、ソーセージをこしらえつつ生きる彼の生きがい、生きざまをたどる特集、「成城・城田工房の天気読み」。今年(2018年)の夏に家族全員で訪れたという沖縄の地には、とりわけ強い想いを込めているようで。

◯沖縄・宮古島

「シンプルに息子の夏休みの絵日記のネタに(笑)、と思って、今年は一家で沖縄・宮古島へ。東洋一、ともいわれている砂山ビーチに行ったんだけれど、とにかく美しい、の一言で。当たり前のようにすごく感動して(笑)。でも、それってコツコツ一生懸命“うずまきちゃん”を作って、それを食べてくれるお客さんがいてはじめて望むことができる景色であって。それを決して忘れてはいけないし、また来年も見られるよう、家族みんながおのおの自分がやるべきことを精一杯がんばりましょう、ってことが伝わればいいな、と。ま、『おのおのの道をハムばるんだよ』、っていう(笑)」

(編集・藤井道郎)


【成城・城田工房 9月号】

特集「成城・城田工房の天気読み」

東洋一のビーチを望みながら、かの風景が見せてくれるおのおのの今とこれからをこそ家族とともに見つめんとする「成城・城田工房」店主・城田豊仁さん。そんな彼が河川敷の天気を読みつつ、家族の風向きを読みつつ、ソーセージをこしらえつつ生きる彼の生きがい、生きざまをたどる特集、「成城・城田工房の天気読み」。聞けば青春を思い起こさせるアクティビティとは意外や意外、スキーなのだとか。

◯新潟/スキー

「自分同様、将来しっかり女の子にモテてもらわないと困るんで(笑)、父親の威厳を保つためにもスキーの一つでも手ほどきしてやろうかと。ま、『勉強しなさい』ばっかりで逆に勉強嫌いになられても困るし(笑)。自分のなかではまだまだ子どもなんだけれど、さすがにもう中学生なだけあって、ほんとうに体力がついてきていて。で、こっちも負けず嫌いだから(笑)、ついつい張り合っちゃう。さすがに負けはしないけれど、帰りのパーキングエリアで必殺の『すこし寝かせて』を使わせてもらったり(笑)。仕事を続けさせてもらえているからこそ叶う青春カムバックを謳歌しながらも、いっしょについてきてくれるのが面倒なお年頃になる前のコミュニケーションを、ね」

(編集・藤井道郎)


【成城・城田工房 10月号】

特集「成城・城田工房の天気読み」

自らの青春の追体験を通して、家族の絆を深めるのはもちろんのこと、好きな仕事に従事できることへの歓びをあらためて今日の原動力へと変えてゆく「成城・城田工房」店主・城田さん。そんな彼が河川敷の天気を読みつつ、家族の風向きを読みつつ、ソーセージをこしらえつつ生きる彼の生きがい、生きざまをたどる特集、「成城・城田工房の天気読み」。いつものざっくばらんな口調で痛快に笑い飛ばしながら語ってくれたそれは、本気で人生と向き合い、サヴァイヴしてきた者だけが手にすることができる揺るぎなきタフネスに満ちている。

「振り返ればこの10年、ずっとギリギリのところで戦い続けているような気がするけれど(笑)。とはいえ、なんだかんだいってもやりたかったことで家族を食わしていけているわけで。だから、毎日すごく楽しいんだよね。で、もみじ市の出店者さんってみんなそういうところで戦っている、いわば戦友みたいなものでさ。そんな人達と同じ舞台に立てて、エネルギーをもらえることってほんとうに幸せなことで。だからこそ、今年もいつもどおりじっくり作って、食べてもらいたいだけで。ほんとうにただひたすら、それだけよ」

不遜を承知でいうならば。ぼくたちは表現の向こう側にある生命の確かな輝きを信じることでしか生きられない、かくも気高く美しき魂たちを誰よりも早く発見して、対峙して、そして紹介したくてあの河川敷に立っている。そう、もちろんこの秋も。

(編集・藤井道郎)