【杉見朝香プロフィール】
たくさんの絵本と紙芝居を鞄に詰め込んで颯爽と河川敷に現れる、ものがたりの魅力の伝道師・杉見朝香さん。ありったけのわくわくやはらはら、どきどきで子どもたちの瞳を輝かせつつも、誰よりもそのストーリーを楽しんでいるのは、他ならぬ彼女自身なのだろう。「読み聞かせではなく、読み語りでありたい」と願う彼女の眼差しは、いつだって“教える”ではなく“学ぶ”歓びに満ちているからだ。そして身分やステータス、経験さえも脱ぎ捨てた、上も下もないフラットな地平にこそ豊かな生の意味があることを、この語り部の声は知っている。
『月刊 杉見朝香』記事一覧
7月号 彼女が絵本を読み旅に出る理由
8月号 彼女が絵本を読み旅に出る理由
9月号 彼女が絵本を読み旅に出る理由
10月号 彼女が絵本を読み旅に出る理由
特集「彼女が絵本を読み旅に出る理由」
ものがたりの魅力の伝道師・杉見朝香さんが発見しようとしているのは、自身も読み語る絵本の中で豊かに躍動するまだ見ぬ世界、そして実際にその足で旅して踏みしめた大地から得られる、イマジネイティヴでリアリティのある物語。空想か現実か、が重要なのではない。そこに横たわるのは、ただただ絶対的な知への探究心、なのだ。ここではもみじ市まで全4回に渡り、絵本、そして旅を通じてそんな「彼女が絵本を読み旅に出る理由」を読み解いてゆく。「遠くから宇宙の光が届く街中で暮らしがつづいてくように」、彼女の知をめぐる冒険は今日も続く。
◯『よあけ』『あおのじかん』
二冊とも、とても美しい絵本です。
『よあけ』は、たくさんある絵本の中でも、私が大好きな絵本の一冊。とてもシンプルな文字と絵の中に、絵本の素晴らしさがギュッと詰まっています。夜明けの美しさを新発見できるはず。
『あおのじかん』は、夕方から夜中にかけての青が変化していく色合いが、とても美しい絵本。青い空、青い光、青い動物や虫たち。青の奥深さ、新しい色の名前を新発見できます。そして表紙の裏のページには、たくさんの青色が載っていて、そのことばたちがステキ! こんなにもたくさんの青色があるのか、と驚きます。「自分ならこの色になんという名前をつけようかな」と思わず考えたくなってしまうような。
◯沖縄
旅は好きです。若いころはよく一人旅もしていましたが、家族ができてからは、夫と娘との旅行がほとんどになりました。
沖縄が好きで何度も訪れていますが、ほぼ必ず行くのが沖縄本島にある本部町備瀬のフクギ並木。<沖縄美ら海水族館>からすぐそばなのに、人通りも少なく、のんびりお散歩。そしてフクギ並木を抜けると、海。ホッとできる場所です。
(編集・藤井道郎)
特集「彼女が絵本を読み旅に出る理由」
ありったけのわくわくやはらはら、どきどきで子どもたちの瞳を輝かせつつも、誰よりもそのストーリーを楽しんでいる、ものがたりの伝道師・杉見朝香さんが絵本、そして旅に魅了され続ける理由を読み解いてゆく特集、その名も「彼女が絵本を読み旅に出る理由」。今回は、“探すこと”を発見する、そんなお話。
◯『もりのかくれんぼう』『シモンのおとしもの』
discoveryとは日本語で発見、という意味だけれど、findとの違いは何だろう?と思って調べてみた。知らなかったもの、ことを発見するのがdiscoverで、findは探しものを見つけたときなどに使うみたい。そして子どもたちは、絵本の中で探したり見つけたりするのが大好き。有名なところでは、『ミッケ!』や、『ウォーリーをさがせ!』など。今回紹介する二冊も、そんな見つける絵本。
『もりのかくれんぼう』は、私が子どものころに大好きだった絵本で、何度も読んでは、隠れている動物たちを見つけていた。林明子さんの絵も好きで、何度読んでも楽しかった。
『シモンのおとしもの』は、最近知った絵本。シモンは、身につけているものをどこかに落としたり、忘れたりする。何がなくなったのか、どこに置いてあるのか、それを探すのがおもしろい。子どもはほんとうにいろいろなものをなくしたり落としたりするので、大人は思わずくすっ、と笑ってしまうかも。
◯台湾
この3月に、女友だち三人で台湾に行ってきました。台湾にしたのは、今習っている中国語を使ってみたかったから。朝の公園で太極拳に混ぜてもらったり、夜市で、糸(!)での顔剃りに挑戦したり。やりたいことをやりきった三日間。念願のマンゴーかき氷も美味しかった! 気を遣わなくていい友だちとの旅行は、気楽でとにかく楽しい! それを発見できた旅、のような気がします。
(編集・藤井道郎)
特集「彼女が絵本を読み旅に出る理由」
「読み聞かせではなく、読み語りでありたい」、そんなものがたりの魅力の伝道師・杉見朝香さん。自身の世界を広げるための翼は、空想の国の中にだって河原の岩場の上にだってあることこそ、「彼女が絵本を読み旅に出る理由」だと教えてくれる、今回はそんな二つの絵本と小さな旅の物語。
◯『ウエズレーの国』『ふしぎなガーデン』
この二冊は、まさにdiscoveryと思える絵本です。どちらの絵本も、夢が広がるステキな物語。
『ウエズレーの国』は、仲間はずれにされていたウエズレーが生き生きと自分の世界を広げていく、まさに新発見の物語。夏休みの自由研究で、自分で作物を育て、自分で服を作り、文字まで考えて、なんと自分の国を作っていきます。
『ふしぎなガーデン』は、少年が使われていない鉄道のそばにいまにも枯れてしまいそうな草木を発見。ひとりでせっせと世話をはじめて、緑のなかった街に少しずつ緑が戻っていくというお話。なんと、実話だというのに驚きです。
◯長崎
兄家族が住んでいる、長崎の大村市に遊びに行きました。車で少し走ると、キレイな川があり、娘や甥っ子たちといっしょに私も飛び込み。自分ではかなりのジャンプのつもりなのに、写真で見ると、低っ!!!(笑)。沢蟹もたくさん獲れたので、油であげてカニのピザに。自然豊かな暮らしはいいなぁ。
(編集・藤井道郎)
特集「彼女が絵本を読み旅に出る理由」
全4回に渡って絵本、そして旅を通じて読み解いてきた「彼女が絵本を読み旅に出る理由」。ものがたりの魅力の伝道師・杉見朝香さんが連載最終回でたどりついたのは、絵本も旅も同じくモンゴル。「生の意味を知るような時」とは、心揺さぶられる魂の物語と出逢ったときであり、生命をその手でいただく瞬間に立ち会ったときであり、それは等しく本質的な知、人間としての矜持であるということ。あるいは彼女はいくつもの物語を通して、一貫してそれを伝えんとしているのかもしれない。
◯『スーホの白い馬』
最後は、旅と合わせて、モンゴルの絵本にしました。
『スーホの白い馬』は、教科書にも載っていたお話なので、知っている人も多いでしょう。馬頭琴がどのように生まれたのかが描かれている、モンゴルの民話です。実はモンゴルの人たちは、このお話をあまり知りません。内モンゴルの民話だから、のようです。2年生の子どもたちとこのお話を読むと、絵からたくさんの発見をします。悲しいけれども、考えること、感じることがたくさんあるお話で、赤羽末吉さんの絵もまたステキだな、と思わされる一冊です。
◯モンゴル
今年の夏、モンゴルに行ってきました。モンゴル語を話せる友人に連れていってもらい、遊牧民のゲル(移動式住居)に泊めてもらっていっしょに生活してきました。モンゴルは広い!!! どこまでも続く草原の中にいると、細かいことを気にする自分がバカらしく思えてきます。お風呂もトイレもありません。水はとても貴重。ことばは通じなくても、子どもたちとは遊べます! おにごっこしたり、トランプしたり、おままごとしたり。どこの国の子も、とってもかわいい。馬に乗ったり、牛の乳搾りの手伝いをしたり、ヤギの解体をしたり。貴重な体験がたくさんできました。
かつてもみじ市で、馬頭琴の演奏とコラボレーションし『スーホの白い馬』を読んだこともあった彼女。そう、彼女の知をめぐる冒険は過去も現在も未来も、一つの生命がつなぐストーリーでつながっているのだ。つまりまもなく今年も数多くのすばらしい発見が待ち受ける、あの河川敷にも。
(編集・藤井道郎)