【鈴木農園 カラフル野菜プロフィール】
立川市西砂町で鈴木さん一家が営む鈴木農園。化学肥料や農薬を使わず、誰もが安心して食べられる有機野菜を育てています。毎週、火曜日と土曜日に開かれる鈴木農園の直売所には、「野菜にはこんなにも色が溢れているのか」と驚くほどの、色とりどりに輝くような野菜がずらり。そして、その野菜を求める人たちで大賑わい。週末はここに野菜を買いに来ることに決めている、という常連さんの笑顔を見れば、鈴木農園が作る野菜の特別さは言わずもがなです。
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【商品カタログ予習帳】
『月刊 鈴木農園』記事一覧
7月号「鈴木農園の土づくり」
8月号「鈴木農園の種まき」
9月号「鈴木農園の苗植え」
9月号「鈴木農園の収穫」
有機栽培への転換
かつて鈴木農園は化学肥料や農薬を使い、たくさんの、そして大きさの揃った野菜を作る農家でした。転機が訪れたのは約20年前。鈴木農園のお母さん、美智子さんが一念発起し、天然酵母の身体にも心にもやさしいパン屋を始めたことがきっかけです。そのパン屋が多くの人に愛される店に成長した頃、お父さんである英次郎さんは、食べる人の身体を思いやるパンを作っているすぐ裏の畑で、当たり前のように薬品を使い、野菜作りをすることに違和感を感じるようになります。「大量でなくとも、思うようにコントロールができなくとも、環境(地球)にも作る側にも食べる側にも本当に喜ばれるもの、安心して口にしてもらえるものを作りたい」という想いが、鈴木農園の一大転機となりました。
栄養価が高く、安全な野菜を作る源は畑の土の質。しかし、化学肥料を使っていた土を、切り替えるのは一朝一夕にはゆきません。周囲の農家からも「そんなの無茶だ」、「できるわけがない」と言われたそう。その度に英次郎さんは、ぐっと言葉を飲み込み、「結果を出せば伝わるはず」と、ひたむきに畑と向き合いました。
良い土に欠かせない要素は、元気な微生物が豊富にいるかどうか。微生物が活発に活動する土で育つ野菜は、しっかりと根を張り養分を自力で取り込むので、栄養価が高く味のしっかりしたものになるそうです。農薬漬けの、微生物がほとんど活動していない畑の土を生まれ変わらせるべく取り入れたのは、“ぼかし肥料”。これは、油かすや米ぬかなどに、土やもみがらを混ぜて発酵させて作る肥料のこと。微生物の栄養となるぼかし肥料の力で土が変わり、徐々に野菜にも、それに応えるように変化が生まれました。例えば、外側の葉が虫に食われても、新たな葉をしっかりと出すようになったこと。地中の水分をしっかり吸い上げようと根を伸ばすため、強い風が来ても倒れないようになったこと。
少しずつ、でも着実に土作りは進み、10年経った頃、思い描いていた土壌ができたそう。その畑で取れた野菜が並ぶ直売所に、お客さんが毎週足を運んでくれる様子を目の当たりにしたお父さんは、当初抱いていた「環境(地球)にも作る側にも食べる側にも本当に喜ばれるものを作る」という決意に対し、胸を張れたそうです。
この看板に描かれている地下足袋は、お父さんの畑仕事のスタイル。土の感触を足裏で感じるには、地下足袋が一番! とおっしゃいます。実際に畑の土に触れると、しっとりと温かく、そして柔らかい手触り。雨の降り始めのときに漂うような、深呼吸したくなる香りがしました。
鈴木農園のカラフルな旬をお届け
今が旬のミニトマト。「ぷちぷよ」という銘柄。その名のとおり、皮の薄さから“ぷよ”っとした歯ごたえ、つややかな表面、高い糖度。まるでサクランボの親戚かと思えるようなミニトマトです。皮が薄く非常にデリケートな野菜のため、なかなか一般の流通には乗りにくいのだそう。
色も形も違いますが、どれもズッキーニ。鈴木農園の直売所では、おすすめの調理法も教えてくれます。
赤にピンクに黄色にと、まさにカラフル野菜のスイスチャード。直売所併設のジューススタンドでは、旬の葉もの野菜のフレッシュジュースを楽しむこともできます。
(編集・柴田真帆)
《次号予告》
鈴木農園の種まき
夏野菜の収穫がピークを迎える頃、鈴木農園では種まきが始まります。今回取材に伺ったときは、キャベツ、ケール、カリフラワーの種まきの最盛期。4代目の富善さんの奥さん、弓恵さんと一緒に種まきを体験させて頂きました。種まきと聞くと、畑に畝を作ってそこに種を蒔いていくイメージ。ですが、今回の野菜たちは、苗に育つまでは専用のプランターで成長させます。小さな四角がずらりと並んだ容器に、土を2/3ほど入れ、そこに指でそっと窪みを作った上に数粒ずつ種を置きます。キャベツもカリフラワーも馴染みのある野菜ですが、それはスーパーに並んだ姿に馴染みがあるだけ。こうして小さな小さな種を手にすると、「これが本当にキャベツに?」と不思議な気持ちになってきます。
種を置いたあとは、ふわりと土をかぶせ全体を均します。弓恵さんはさらさらと手早く土をかぶせていきますが、実はこのときの土の量が重要。かぶせすぎると種の発芽を妨げてしまい、少なすぎると水やりの勢いで種が露出してしまうそうです。
左側:慣れない柴田が土をかぶせたもの。右側:表面がきれいに揃っている弓恵さんのもの
「普段お父さん(3代目)と2人で作業することが多いのですが、一緒に種まきをすると、私のだけ発芽率が悪かったらどうしよう、と少しドキドキするんです。なので、しっかり芽が出るとほっとします。種の持つエネルギーを感じられる種まきは、元気が出る作業の一つですね」と弓恵さんは語ってくれました。わたし(柴田)が蒔いた種は無事に発芽したのか不安でしたが、後日弓恵さんから「柴田さん担当分もきちんと芽が出ましたよ!」と聞いて、ほっと一安心。
やがて芽を出し、根を張り、葉を茂らせ、花を咲かし、そして実を付ける。全てのはじまりとなる種に触れていると、なんだか一粒の種にもぬくもりが感じられました。
鈴木農園のカラフルな旬をお届け
今年の酷暑にも負けなかったアマランサス。元々は南米の由来野菜だけに暑さには強く、カルシウムはほうれん草の3倍、ビタミンは春菊の5倍と、とても栄養価の高い葉物野菜です。
とても糖度が高く、ジューシーなスイカ。夏のおやつにぴったり! 鈴木農園のスイカは、やさしげな楕円形です。
色とりどりのパプリカ。甘みが強い品種です。
緑のハラペーニョと、赤いオクラ。夏を乗り切るスパイシーな料理にお薦め。
(編集・柴田真帆)
《次号予告》
鈴木農園の苗植え
季節が夏から秋へ移り変わる9月。名残の夏野菜の収穫も終盤となり、収穫の秋にはまだ早いこの時期、鈴木農園では苗植えのシーズンです。4代目の富善さんは「実りの秋の手前の今は言わば、仕込みの季節。一年で一番、収穫する野菜がないので、実はマルシェとしては踏ん張りどきでもあるんです。実りを得る前のコツコツした下準備の日々です」と語ります。先月号の種まきから発芽し、成長した苗を、9月は畑に植えていきます。今月号では、そんな鈴木農園の畑の様子をお伝えします。
ある日は、ケールとレタスの植え付けを。
ケールの若い芽。植え付け後、気温が高くない日が続くとしっかりと根を張りやすい。
植える苗によって、地面に張ったビニールの穴の間隔を変える。この黒いビニールは、雑草の成長を防げるだけでなく、太陽熱を受けやすくして温度を上げ、野菜の育ちを良くする効果があるのだそう。
こちらは赤い大根の苗。カラフル成長するのが待ち遠しい。
この日は、カーボロネロの苗の植え付け。苗がよく根付くためには植え付け後に、雨が降ってほしいところ。
(編集・柴田真帆)
《次号予告》
鈴木農園の収穫
【月刊 鈴木農園10月号】
特集「鈴木農園の収穫」
先月苗の植え付けを行った鈴木農園の畑。10月号では収穫の秋に向けての成長をお伝えする予定でしたが、そんな鈴木農園を大型で強力な台風24号が襲いました。一晩中、強風が吹き荒れ、大粒の雨が屋根をたたきつけるように降り続けた夜。。夜が明けて、富善さんが不安を胸に畑に向かうと……。
せっかく成長していた野菜たちが、暴風でなぎ倒されてしまっています。畑を覆っていた黒いマルチシートも飛ばされ、この光景を前に言葉を失ってしまいます。人の力では抗えない自然を相手にした農業と言えど、この台風の影響には呆然としてしまった富善さん。なんとか耐えた野菜はどこまで復活してくれるか。もう一度作り直す野菜は、成長が追いつくのか。予定していた畑のスケジュールをほぼ全て見直すことになってしまいました。
ですが失望の中にも、小さな希望の光が。これからのマルシェやイベントに向けて、収穫が見込める野菜たちの姿です。
どんなに強い雨にも風にも負けないように、野菜がしっかりと根を張って育っていたおかげです。これも無農薬用法で野菜自身の力があったからこそ。この夏は酷暑と向き合い、そして秋の台風の猛威も乗り越えた、鈴木農園が作る野菜たち。手に取るだけで、力がみなぎるような逞しさを、そして口にすれば、野菜自体の味わいに、きっとあなたも驚くはずです。富善さんに「この台風の被害には、負けてたまるか」と決心させてくれた、希望の夕焼けが西立川の空に現れました。
鈴木農園のカラフルな旬をお届け
台風の風で葉は折れてしまいましたが、地中でたくましく育っている大根。
こちらも無残に葉がもげてしまった赤大根。味は一級品と富善さんお墨付きの出来栄えです。
(編集・柴田真帆)