【夜長堂プロフィール】
夜長堂は関西を拠点として活動する井上タツ子の屋号。かわいくてレトロな雰囲気の紙もの「モダンJAPAN復刻ペーパー」などの商品展開を自身で行うほか、さまざまなアーティストや企業とのコラボレーション商品の開発・イベントの企画など、幅広く活動中。また、ビルの魅力を紹介するBMC(ビルマニアカフェ)のメンバーとして、“いいビル”を使ったイベントの開催やリトルプレス『月刊ビル』の発行にも精力的に携わっています。夜長堂の由来は坂口安吾の短編小説「夜長姫と耳男」から。姿は見えねど何時でもどこかで開店中。
http://www.yonagadou.com
『月刊 夜長堂』記事一覧
7月号 特集「夜長堂が紹介する、手紙の魅力」
8月号 特集「夜長堂が紹介する、大阪散歩」
9月号 特集「夜長堂が紹介する、ビルの魅力」
10月号 特集「夜長堂の発見」
夜長堂こと井上タツ子さんの周りには人が集い、楽しい笑い声が絶えません。大阪の情緒を色濃く持つ天満橋にある夜長堂の店舗には、色とりどりのペーパーやレターセットが所狭しと並ぶ。だるまやこけしといった懐かしい郷土玩具や、店主が骨董市で集めた古道具など。はたまた歌川国芳、葛飾北斎の浮世絵ものや、妖怪ものなど、居並ぶ商品には美しくも怪しい一面が。そんな賑やかでどこか覗きたくなる夜長堂を、担当・丸本が綴っていきます。
夜長堂が語る手紙の魅力
夜長堂というと、かつて着物などで親しまれていた図柄を印刷した「モダンJAPAN復刻ペーパー」がすぐに思い浮かぶ。タツ子さんが紙ものに興味を持ったきっかけはグラフィックデザイナーの立花文穂さんからもらった名刺だったという。「選んでいいよ」と差し出された名刺には、1枚として同じものがなく、当時大学生だったタツ子さんが紙の魅力にとりつかれた瞬間だった。
手紙用品を作りたいという思いがずっとあった。実際、20代前半にはよく手紙を書いていたタツ子さん。橋の上で出会ったおじいさんと、亡くなるまでの3年間ずっと文通を続けたというドラマチックな話がある。その方との文通を通して多くのことを学んだといい、その中のひとつ「千里如面(せんりじょめん)」という封印がとても粋なのだ。古から伝わる、手紙の封をする際に書かれる封字(封印)のひとつで、遠く離れていても文通によって面と向き合っているような親しい関係が生まれることを意味する「千里如面」の4文字。タツ子さんがもっとも好きな言葉の一つだ。他に女性におすすめしたい封字が「蕾(つぼみ)」。これから開く(開封する)ことを表す風情ある表現だ。見えない相手を思いながら封を閉じる所作を想像するだけで、健気で美しく、感動的だ。
「私にとって文通は、相手に気持ちを伝えるものというより、日々の独り言を綴っているようだった」とタツ子さんは言う。人には言えない、言葉にならない気持ちを手紙に書いたことも数知れない。若かりしタツ子さんは、このように人生のターニングポイントで未来を左右するキーパーソン達と出会い、そして手紙を介して自分と向き合い、今の「夜長堂」となる基盤を築いてきたのだった。
取材を終えて
人が好きなんですね、という問いに「どちらかというと、人恋しいのかも(笑)。でもね、人に興味を持つって面白いですよ。それがものづくりの肥やしにもなっています。」とタツ子さんはおっしゃいました。今も昔も変わらず、時間を作って興味のある方へ向かうフットワークの軽いタツ子さん。今日もどこかで誰かと新たな活動に向けて始動中なのかと思うと、次号取材で近況をお伺いするのが楽しみでなりません。そして、手紙の魅力を教えてもらった私は、久しぶりに旧友に手紙を送りました。封には蕾を添えて。
(編集・丸本菜穂)
《次号予告》
夜長堂が案内する 大阪散歩
【月刊 夜長堂 8月号】
特集「夜長堂が案内する 大阪散歩」
生まれ育った地、「大阪」をこよなく愛する夜長堂こと井上タツ子さん。ミナミなどの有名な観光地もいいけれど、ぜひ紹介したい散歩道が夜長堂のお店の近くにあるとのことで、案内してもらいました。待ち合わせはAM9:00、御堂筋線の淀屋橋駅。まずは腹ごしらえをしに行きつけのモーニングへ向かいます。
▼タツ子さんの目線カメラ
夜長堂のお店は、中之島バラ園から10分ほど歩いた天満橋にあります。タツ子さんはこの道に限らず、ご近所を朝に晩に散歩しているのだそう。取材でお邪魔した日は丁度、天神祭の前日でした。一緒に散歩をしていると、町中にぶら下がる紙垂(しで)を指差して、「一反木綿が飛んでるみたいやなあ」と一言。“夜長堂”ことタツ子さんを象徴する発言に笑ってしまった瞬間でした。次号では、タツ子さんがこよなく愛するもののひとつ「建物」の紹介をしますよ。次号をお楽しみに!
(編集・丸本菜穂)
《次号予告》
夜長堂が紹介する、ビルの魅力
【月刊 夜長堂 9月号】
特集「夜長堂が紹介する、ビルの魅力」
今ではすっかり夜長堂のライフワークになったBMC(ビルマニアカフェ)の活動。1950~70年代のビルをこよなく愛する職業も異なる5人のメンバーが集まり、自分たちのお気に入りのビルの見学ツアーなど、ビルを体感できるイベントを企画しています。春にはおビル見ツアー、夏には川沿いの心地よいビルを会場にしたビル・ビール・バー、元キャバレー・ユニバースの大空間で盆踊りをするトロピカルビルパラダイスなど、その内容は実に様々。また、自分たちが注目するビルを取材した「月刊ビル」という小冊子を発行し、パイインターナショナルより、著書『いいビルの写真集 WEST』『いい階段の写真集』、大福書林より『喫茶とインテリア WEST』を出版しています。よく「一番好きなビルはどこですか?」と聞かれますが、BMCが好きなビルは個性豊かで、ひとつに絞り込むということは到底不可能。そこで今回は、お気に入りのビルや階段、喫茶店を5箇所ご紹介します。
●味園ビル
大阪・ミナミでひときわ目を引く「味園ビル」は、総合レジャービルとして1955年に誕生。500人収容の宴会場、元キャバレー、ダンスホールの内装そのままの貸しホール『ユニバース』や、雰囲気抜群の店が立ち並ぶスナック街、そのほかホテルまで併せ持つ施設です。BMCは夏の終わりに、ファンタスティックショーとして人気を博した『トロピカルビルパラダイス』を開催。大人から子供まで、国籍も性別も越えた人々が来場しました。このように、建築見学ツアーやライブ、パフォーマンスに盆踊りを通して「いいビル」の魅力を伝えています。
偶然解体前のタイミングで夜長堂が発見。唯一無二のダイナミックな螺旋階段のラインをもう見ることができないのがとても残念です。
●ビルリバーセンター
1968年にテナントビルとして建てられたビルリバーセンター。シンプルなデザインの外観からは予想ができない、まるで彫刻作品のように美しい階段が特徴です。
●ぱるふぁん
神戸高速長田駅からすぐの場所にある喫茶店「ぱるふぁん」。異空間につながるトンネルのような入り口が目を引く。店内にある美しい木目の一枚板のカウンターと、大きくて月のような球体の照明がなんともモダンで印象的。
●喫茶むらかみ
大阪の下町の情緒を残す商店街の中に「喫茶むらかみ」と染め抜かれた紺色の暖簾が見えてくる。戦後、テレビ喫茶と呼ばれていた頃から変わらないノスタルジックな内装。近所の人のサロンとしての役割も果たすお店は、唯一無二の存在感を放ちます。
紙ものから、ビル、盆踊り。タツ子さんが興味を持つ対象は際限なく増えていきます。これらの分野をさらに突き詰めていくのか、はたまた全く新しいジャンルを切り開いていくのか、いちタツ子さんファンとして気になるところです。次号では、もみじ市のテーマ「DISCOVERY」にちなんで、夜長堂の発見を取り上げます。
(編集・丸本菜穂)
《次号予告》夜長堂の発見
夜長堂も驚き。ペーパーの魅力を再発見
夜長堂の代表的な商品としてお馴染みの『モダンJAPAN復刻ペーパー』。数年前、いつものように印刷会社から納品された商品のペーパーの束の中に、通常3色使用されているはずが一色が抜けてしまった2色バージョンのペーパーが混ざっていました。ミスプリントのはずのその1色がとても新鮮で悪くないと感じたタツ子さんは、それからその2色バージョンも今では定番の人気商品になりました。今回もみじ市では、ご来場くださるお客さま方にもタツ子さんがあの時感じた新鮮な気持ちを感じてもらえるよう、通常の配色と違うバージョンのペーパーもいくつか販売いたします! 夜長堂のペーパーの魅力を再確認、発見してください。
夜長堂の日本みやげから発見
特に今回は、ちいさなサイズの雑貨や、透かし絵のカップなど、油断していると見逃してしまいそうな「秘めた魅力」を発見してもらえる商品ラインナップをご紹介します。手にとって初めて気付く発見を、どうぞお楽しみください!
今年のもみじ市でも、ご来場のみなさんをワクワクさせる楽しい商品をてんこ盛りに紹介してくれます。夜長堂初心者の方も、すでにファンの方も、賑やかで摩訶不思議な夜長堂のブースにお立ち寄りください。是非夜長堂ブースで、お待ちしております!
(編集・丸本菜穂)