【結城琴乃プロフィール】
木を焦がして描く“焦がし絵”という手法や細い針金を巧みに操り、独自の世界観をつくりあげるクラフト作家・結城琴乃さん。焦がし絵でつくる建物や船といった作品は、ノスタルジックなモノクロの世界へと誘ってくれます。蝶々や葉脈といった針金でつくるアクセサリーやオブジェは、繊細で儚く、機微を感じられる類い稀なものばかり。その粛々とした美しさは、心の奥底にそっと閉じ込めている部分を刺激してきます。結城さんのつくられた作品には、すべて物語が秘められているといいます。作品に触れ、その物語に一歩足を踏み入れたとき、新たな物語が始まることとなるでしょう。
http://kotono1218.exblog.jp
結城琴乃さんの作品には、必ず物語があるといいます。その物語を作品と琴乃さんの詩とともにお送りしていきます。物語の一員として、いっしょに旅をしてみませんか? 行ったことがあるようなないような……、知っているような知らないような……、そんなお話の世界へ。気持ちは高まってきましたか? ほら、なにかやってきたようですよ。
はじまり
とある街に一隻の帆船がつきました
帆に風を受けながら長い長い旅をしているのです
日が沈みデッキに明かりが灯ると
旅人達はそれぞれお気に入りのテーブルにつき
夕暮れを楽しみます
波の上に月が浮かび
夜風に当たりながら
流れ星を見つけたり
イルカが追いかけるのを眺めながら
舟はゆっくりと進みます
大きな時計台のある石畳の街
色とりどりの魚がぐるっと囲む白い島
丘の上に立つ教会が美しかった坂の多い町など
風に任せ出逢う景色を思い出にしながら旅を続けます
そうして、今夜は
この小さな街に辿り着きました
(編集・樫尾有羽子)