【華華世界商店プロフィール】
日本と台湾、2つの国のイラストレーターによって生まれた「華華世界商店(ふぁふぁせかいしょうてん)」は、「華華世界」が中国語で「ファンタジーな世界」を意味するように、愉快で素敵なアイテムに溢れています。東京在住のオガワナホさんはスタイリッシュなイラストを描いた紙もの雑貨をはじめ、アロマブローチなども手がけています。台湾在住のグ・シャオインさんはイラストを一針一針丁寧に刺繍に落とし込んだ、靴やブローチなどの可愛らしいファッションアイテムを制作。おふたりのアイテムを取り入れたファッションができたら楽しいだろうなと想像するとワクワクがとまりません。
Instagram:@naho_siaoyin
Facebook:https://www.facebook.com/huahuaworldstore/
【商品カタログ予習帳】
【華華世界商店の年表・YEARS】
【華華世界商店インタビュー】
ポストカードなどの紙ものやスタンプ、旅の本を手がけるオガワナホさんと、刺繍靴や蝶ネクタイ、ボタンフックといったファッションアイテムを手がけるグ・シャオインさん。同じイラストレーターでも、表現するアイテムは全くちがう2人。異なる作風の背景にはそれぞれどんな道のりがあったのでしょうか? また、2人で活動をすることになったきっかけとは? 担当・永井がお話を伺います。
イラストレーターとしてのはじまり
ーーーいつからイラストレーターとしての活動を始めたのですか?
ナホ:ずっとイラストを描くのが好きで、ニューヨークの美術大学へ行ったのですが、在学中からポートフォリオサイトを作ってイラストレーターとしての活動をしていました。そのサイトからのお声がけのほか、イラストにサインとして「naho.com」を入れていたので多くの人に知ってもらい、仕事をいただいくことに繋がりました。イラストレーション科ではフリーランスでも食べていけるようになるのがゴールだったので、売り込みの仕方などを学べたことが大きかったですね。
ーーーニューヨークで学ぼうと思ったのは何かきっかけがあったんですか?
ナホ:年表より随分と前なのですが、16歳の頃初めて単身で渡米したんです。冬休みに父の友人を訪ねてニューヨークの隣町にホームステイに行きました。初めての飛行機、初めての海外、日本語以外の国、ひとり旅だったのですべてが刺激的で。ちょうど今後何をしたらいいか悩んでいたところだったので、美術館につれていってもらったり、街歩きをしたりするうちに、「ニューヨークで美術の勉強がしたい!」と思うようになりました。
ーーーニューヨークでの生活はどうでしたか?
ナホ:大変だけど楽しかったです。大学では講評会のとき、いまいちな作品を出すとその場で先生にもクラスメイトにもぼろくそ言われるんです(笑)。そのおかげでメンタルは強くなったかも。逆にいいものを作れば褒めてくれるから、しっかりやろうってなりましたね。ぼろくそに言われるときは、「あなたも同じようなもの作ってるけど?」と思ったりもしたけど、そうやって意見を言い合える刺激的な場でした。
ーーー日本の環境とは全然ちがいますね。素直な意見がたくさん聞けて成長できそう! ニューヨークで活動中、印象的だった出来事はありますか?
ナホ:ニューヨークのアナスイとコラボして、Tシャツやセーターを作ったことです。アナスイがイラストレーターとのコラボTシャツを作っているのを知って、自分の作品を何枚か送ったら、なんと「コラボしよう」となって!
ーーーすごい! どんなものを作ったんですか?
ナホ:小さな女の子の刺繍が入ったセーターです。アナスイでは春夏、秋冬だけのテーマで好きなものを描けるときもあればメインのファッションショーのテーマに合わせて描くこともあり、比較的自由に描かせてもらっていました。アナスイファミリーの一員になれた気がして、本当に嬉しかったです。
ーーー有名ブランドとのコラボしてグッズができるなんて、本当にすごいことだと思います。
ーーーシャオインさんはいつからイラストレーターに?
シャオイン:2003年からイラストレーターのお仕事を始めました。その前は演劇やギャラリー、アパレル関係の仕事をしていました。37歳の時に本当にやりたかったのはイラストレーションと、ものづくりなのだと気がつき、仕事をやめて、イラストの勉強を独学ではじめました。すぐにフリーランスになり、今に至るといった感じです。
ーーーいろいろなことをやっていたんですね!
シャオイン:そうですね、舞台装飾も洋服も興味があって、そういった経験も今につながっている気がします。今の自分にとってのスタイルは、平面なモノに限らず、立体的なモノにも刺繍を施すことです。
ーーー平面に描いたものを刺繍として表現するのって難しいのでは?
シャオイン:絵を描くときはモノとの関係性を考えます。原画からどのように刺繍する図案に表現していくかがポイントです。もみじ市でも出している刺繍靴は、半年かけて台湾の工場を数軒探して、納得のいく仕上がりになりました。ボタンフックは甘橙東京とのコラボ商品で、日本の刺繍工場の優れた技術を使って、描いた動物と植物を繊細なタッチで忠実に再現しています。様々なものを通して、自分のイラストで多くの人々に喜びを与えることができたら嬉しいなと思います!
華華世界商店のはじまり
ーーーナホさんとシャオインさんの出会いは?
ナホ:2016年に、旅行好きな私の長年の夢だったイラストでつづる旅の本『わくわく台北さんぽ』を出版したのですが、その取材旅行で台北へ行ったときに出会いました。“Very Very Good”をコンセプトに始めた、ライフスタイルを提案するブランド・VVGを手がけるグレースさんを取材したときに、会わせたい人がいると言われ、シャオインを紹介してもらいました。
ーーーお互いの第一印象は?
ナホ:第一印象は「おしゃれな人!」でした。描く線が細くてやわらかで、そして本人の描く人物に似ているなぁとも思いました。今まで台湾で見たことがないタイプのイラストだったので、こんなおしゃれなイラストレーターがいるのだと驚きました。
シャオイン:私は2003年にイラストレーターとして活動を始めた頃、ナホさんのホームページを見たことがあったんです。ナホさんのイラストは、洗練された生き生きとしたラインで、かわいくておしゃれ。そして、上品なイメージがあります。時には抜群なユーモアのセンスで思わず笑ってしまう時もあります。
ーーー2人にとって、この出会いは大きな出来事でしたね。
ナホ:そうですね。2015年にシャオインと出会い、2016年には2人展を開催、『わくわく台北さんぽ』の取材も通して台湾との繋がりが深くなりました。また、同じ年にもみじ市へも初めて参加することになり、華華世界商店がはじまり、記念すべき年になったと思います。
シャオイン:私も2016年は、華華世界商店のはじまりのほか、「布博 in 東京 vol.7」のメインビジュアルを担当したり、人生の転機となりました。
ーーーお互い、出会えたことが転機になったんですね。2人で初めて開催した、VVGでの2人展「BOOKS of WONDER」は、どういう展示だったんですか?
ナホ:VVGはおしゃれなカフェやセレクトショップなどを展開していたのですが、新事業として美味しいケーキとコーヒー、本を無料で楽しめるライブラリールームを始めたところでした。台湾の若い人の本離れを憂いて、本に親しめる場所を提供することにしたと聞き、私たちもこの展示で本の楽しさを表現できたらと思いました。
シャオイン:私は展示をやることになって、前から持っていた古い洋書を何かに使えないかと思ったのですが、どの本もディスプレイ用に使われていたので、表紙から裏側に貫通した丸い穴が空いていたんですよね。ナホさんに伝えたら、すぐに「本の穴から人が飛び出すようなイメージで作ってみよう!」って提案してくれて。そのひと言で、本の中のワンダーランドを表現することになりました。
ーーーすごいワクワクするテーマですね! 2人展をやってみてどうでしたか?
ナホ:完成度が高く、作り出す世界観もしっかりしていて、「わたしも恥ずかしくないものをつくらなくちゃ!」とシャオインから刺激をもらいました。次から次へとアイデアが出てきて、搬入中もとてもたのしい作業でしたよ。
シャオイン:2人展の展示準備の日にそれぞれ描いてきたイラストを持ち寄って、洋書に飾ったのですが、全体的にうまく調和していました! お互い作風とラインは違うけれど、それぞれの作品を展示してみたとき、生き生きとした雰囲気が溢れていて、この展示を経て、「一緒にやってみたらおもしろそう!」って思いました。
2人の“YEARS”が集結
ーーー2016年から毎年華華世界商店としてご出店いただいているもみじ市。2人にとってどんなものですか?
ナホ:参加回数を重ねて、毎年遊びにきてくれるお客さんがいたり、私たちのことを覚えていてもらえるようになったりしてうれしいですし、シャオインとの合同参加も楽しみのひとつ。入り時間を間違えて、すでにお客さんが並んでいるところに車を乗り付けて搬入したり、こっそりと妊娠中だったりと毎年何かしらハプニングも起きています(笑)。今年は穏やかにいきたいです!
シャオイン:海外出展に不安もありましたが、ナホさんのおかげで和らぎました。もみじ市では、台湾から出展しに来た友人や初対面の出会いもあり、ブースに寄って私に声かけてくれたみなさんには本当に感謝しています。もみじ市での出店がきっかけで、ナホさん、そして日本との繋がりが深まりました。私にとってもみじ市は素晴らしい出会いの始まりです。
ーーー2人が揃うブースはたくさんの出会いで溢れているんですね。
ーーーちょうど年表に写真もありますが、シャオインさんの刺繍靴はもみじ市でも人気ですよね。もみじ市2回目での登場でしたか?
シャオイン:はい。刺繍靴はもみじ市への2回目の参加で初めて出しました。2017年の別のイベントで、私たち2人の衣装として、台湾から2足の伝統的な刺繍靴を持って行ったのですが、その2日間で「自分のイラストで刺繍靴を作ったらどうか?」と閃いて! その後、個性を表現できて、カジュアルな装いの時も違和感なくコーディネートできる刺繍靴を作り出したいと思い、やっとの思いで見つけた工場で、オリジナルの靴型を開発しました。
ーーー舞台装飾やファッションにも関わってきたシャオインさんだからこそ作れるアイテムですよね。毎年ちょっとずつイラストもアップデートされていると聞いたので今年も楽しみにしています!
シャオイン:春に3つの新デザインが加わっています! それから今回はトートバッグも初お披露目いたしますので、楽しみにしていてくださいね。
ーーーちいさな草花がとても可愛らしいですね!
ーーー昨年のもみじ市から登場した、ナホさんと台湾のステーショナリーショップ「TOOLS to LIVEBY 」のコラボスタンプも楽しみです。
ナホ:このスタンプは「professionals and their tools」つまりプロフェッショナルと道具をテーマに、お花屋さん、ペットグルーマー、冒険家、ファッションデザイナー、ライターなどの職業とその道具を、身近な人を思い浮かべて描いたんです。ちなみに私も今年のもみじ市に合わせて、新作を考えていますよ。
ーーーぜひ教えてください!
ナホ:今回のもみじ市のテーマ“YEARS”を元に考えて、毎年同じ人へ送るハガキセットを制作中です。毎年届くハガキを揃えていくと楽しい発見があるような、“YEARS”が繋がっていくようなものを考えています。どんなハガキができるかお楽しみに!
ーーー毎年同じ人へ決まったハガキで送るって、物語が繋がっていくようで素敵ですね。ナホさんとシャオインさんのこれまでの“YEARS”を表す作品たち、楽しみにしています!
《インタビューを終えて》
お話するなかで、「私が描くものはクライアントありき。受けた要望をどう調理するかが楽しい」と語ってくれたオガワナホさんと、自分の頭の中に思い浮かぶ描きたいものや作りたいものを真っ直ぐ見つめて作品を手がけるグ・シャオインさん。イラストレーターという共通点を持ちながらも、デザインの原点や手がける過程、表現方法はまったくちがっていて、それぞれに個性がありました。2人が別々に歩んできた“YEARS”は、集まれば見事に調和し、そこにはもっとパワーアップした世界が広がります。お互いに刺激をもらい、高め合える貴重な存在。グレースさんの紹介なしでは出会わなかったかもしれない2人の奇跡を知ると、華華世界商店との出会いがもっとかけがえのないものに感じられました。普段別々の国でご活躍される2人が再会を果たすこの貴重な2日間にぜひ足をお運びください。
(手紙社 永井里実)