出店者紹介,ジャンル:FOOD

たに農園

【たに農園プロフィール】
千葉県佐倉市郊外の大佐倉にて、夫婦で営む農園。四季折々、元気に育つ野菜を60種類以上作り、日々土のこと天候のことを考え奮闘中。麦作りから発展し、今では“うどん”に“ビール”まで作ってしまう、クリエイティブな農家です。さらには、キッチンカーまでもをDIYで手作りし、穫れたての野菜とお米を使った料理を各地でふるまっています。飲食店や個人宅向けに、美味しい野菜を届ける宅配もしています。遠方でも栄養たっぷりの新鮮な野菜が手に入れることができるので、ぜひ一度は試していただきたいです。

どんな料理をしようか考えるのが楽しくなるほど、瑞々しい野菜をどうぞ召し上がれ!
http://taninoen.com/index.html


【たに農園の年表・YEARS】

【たに農園インタビュー】
ステーキのように口の中にジュワッと旨味が広がる茄子に、苦味と甘味のバランスが最高の味わいを引き出すピーマン。皮まで甘みが残る鮮やかな人参。

どんな料理も、たに農園の野菜を使えば劇的に味が変わります。こんなにしっかりした味のする野菜を一代で作り上げたのは谷洋一郎さん。農家の家庭に生まれたわけではない谷さんが農家になるまでの“YEARS”をお聞きしました。

農家・食への興味

ーーー谷さんは農業系の学校などに通っていたのですか?
:いえ、大学は文学部で農業とは全く無縁の生活をしていました。それがたまたま友人に連れられ、夏休みに農家の手伝いに行ったのが農業に触れたきっかけです。自分で何かを作ることに憧れがあって、その体験を通して自分が生きていく上で必要な食べ物を一から作れる素晴らしさを体感したことで、農家って良いな、と思うようになったんです。

ーーー農家に興味を持ってからは、どんなことをしていたのでしょうか。
:そもそも日本を出てみたくて学校の休みなどを利用して東南アジアに旅に行ったりしてました。あの完成しきってない、これから発展していく様子や活気がなんとも言えず好きでした。今の日本みたいに何でもあるわけではないし、自分でなんとかするしかなかったんで、現地で材料を買って料理をしたりしていました。そこで食の世界にもっと踏み込んできいきたいと強く思うようになっていきましたね。なので在学中に卒業したら農家になろうと決意していました。

ーーー東南アジアで食べていたものって何だったのですか?
:タイ、フィリピン、マレーシア、インドなどを巡っていて、よくカレーを食べていました。野菜とか色々な旨味がスープに溶け出していてスパイスが効いているカレーがとにかく美味しくて、日本に帰ってきてからは見よう見まねで作ってネパールカレーを学祭で振舞ったりしていました。まだインターネットが普及していない時代だったので、書店でカレーの本を読んで家に帰ったら作って、そんなことをしてました。スパイスの組み合わせはその時にある程度覚えて、今年のもみじ市には新作メニューとしてスパイスカレーを出そうと計画しています。

ーーー谷さんの野菜を使ったカレー! 楽しみです。
:スパイスは本場の組み合わせを再現して、採れたての野菜がたくさん入ったものにする予定です。これ(下掲の写真参照)なんて実は茄子がいっぱい入っているんだけどスープ状になっているのでわからないでしょう? 茄子に玉ねぎ、冬瓜、人参、見た目からは想像がつかないほど野菜のエキスが凝縮されています。

ーーー(カレーを食べて)さらっとしているのですが、しっかり野菜の味とスパイスのピリッとした辛さを感じます! これは今年のもみじ市楽しみですね。

農家としてのスタート

ーーー大学卒業後はすぐに農家になったのですか?
:農家になりたいとは思っていたけれど、それだけで食べていけるイメージが湧かなくて、資金集めのためにも就職することにしました。農業に関わりのあるところで仕事がしたいと思っていたので、勤めたのは農業組合で、サラリーマンをしていました。デスクワークばかりだったので、やっぱり自分が手を動かしたいという気持ちが強くなり、ある程度資金が貯まって4年後には退職し、農家での研修をはじめました。

ーーー研修先の農家さんはどんなところだったのですか?
:そこは最初にお話しした、大学時代にはじめてお手伝いさせてもらった埼玉の農家で、丸1年住み込みで研修させてもらいました。

ーーー最初の転機となった農家で研修をしたのですね。馴染みのある方の元で教えていただけたのは安心ですよね。
:そこで農家に必要なものを教えてもらい、1年後に独立し農家として活動をはじめました。静岡県の南伊豆で就農して、まだ右も左もわからなくてがむしゃらでした。この時は農業以外にも仕事をしていて、そっちが生活資金で、野菜が売れれば新しい農具を買う資金になって、となかなか厳しい生活でした。

ーーー二足のわらじを履く生活を送っていたのですね……はじめての農業で苦労したことはありますか?
:単純に農業自体体力のいる仕事で大変でしたが、天候に左右されることもあればイノシシにせっかく作った作物を荒らされたりと、自分でコントロールできない出来事が多くて、本当に参りました。兼業をやめて農家一本でやっていくと決めて千葉に移り住むこととなり、今に至ります。

農業から料理へ

ーーー千葉で再度農家をはじめようと思ったポイントは何だったのでしょうか?
:今いる千葉県佐倉市は新しく農業をはじめたいという人にも寛容な地域で、積極的に使われてない土地を紹介してくれたりと、これ以上ない場所でした。なのでこの平屋と土地を元に農家として再出発をはじめました。ここからですね、もみじ市にも参加できるようになってきたのは。

ーーーはじめてのもみじ市は参加してどんな印象でしたか?
:はじめて自分のところで採れた野菜でご飯を作って販売して、それを食べてくれるお客さんの顔が見れてとても嬉しかったです。農家をやってるだけでは、自分たちの野菜を食べてくれる人の反応を直接知ることなんて滅多にできないから、貴重な体験をさせてもらいました。それから野菜だけでなく料理も作りたいと思うようになり、DIYでキッチンカーを作っていろんな所に行けるようになりました。

ーーー谷さんの料理はどれも野菜の味がしっかり感じられてどれも美味しいですよね。
:味付けはいつもシンプルですよ。というのも、うちで作っている野菜たちは自然本来の育ち方で作っている分、味がとても濃いんです。無理をさせてないというか、元気いっぱいに育ってくれるので栄養もそれだけたっぷり入ってます。もみじ市で出すメニューはタコライスにピクルス、人参ジュースやしそジュースなどメニューも増え、今ではビールも作れるようになって、もみじ市を機に色々挑戦する幅が増えました。

ーーー自家製ビールも今年で3年目になりますね。今年はどんな仕上がりになったのでしょうか?
:最初の年はガツンと苦味を感じるパンチの効いたもので、去年はそこに酸味が加わり、色んな料理に合うようになりました。そして今年は、とてもスッキリとした味わいになり女性でもゴクゴク飲めるビールが誕生しました。僕としては物足りないんですけど(笑)。

ーーー滅多に飲むことができない、たに農園ビール! ぜひ色んな方に飲んでいただきたいですね。今日はありがとうございました。

《インタビューを終えて》
幼い頃から農業に触れていたわけでもなかった一人の青年が、“作る”ことの喜びを知って農家になるということは、とても険しい道のりだったのではないでしょうか。しかし、次はどんな方法で野菜を育てようか、何を作ろうかと、楽しそうに話すその姿からは、一切そんな部分は見えません。むしろ、無邪気な少年のようです。そんな谷さんが、食べてくれる方への思いも馳せつつ、挑戦を繰り返しながら育てた元気いっぱいの野菜たち。多くの方に口にしていただきたいです。

(手紙社 上野 樹)