もみじ市 in 神代団地,出店者紹介,ジャンル:ILLUST&DESIGN

水縞

【水縞プロフィール】
紙や布を用いた文具&雑貨のデザインを手がけるデザイナー・植木明日子さんと、吉祥寺の文具店「Sublo」の店主・村上幸さんが2006年に立ち上げた文房具ブランド。ブランド名の由来は、植木さんが好きな水玉と、村上さんが愛する縞々模様からきています。素材感を重視して作られた紙モノや、1アイテムで幾通りもの楽しみ方ができるハンコなど、文具好きによる文具好きのためのアイテムが盛りだくさん。水縞のアイテムには、定番模様をベースとした「普遍的な安心感」と、それらを自由自在に組み合わせ生み出される「新しさ」、手にした時に、自分ならどうやって使おうかな? と考えずにはいられない「わくわく」がぎゅぎゅっと詰まっています。遊び心と実用性の絶妙なバランス感に、きっとあなたも心を掴まれることでしょう。
https://mzsm.jp


【水縞の年表・YEARS】

【水縞・植木明日子さんインタビュー】
新作が出るたびに、「そうきたか、やられた!」と言いたくなるほど、的確に文具好きの心を撃ち抜いてくる水縞の商品たち。そんな水縞を立ち上げた植木明日子さんと村上幸さんの出会いから、ブランド立ち上げのきっかけ、そしてこれまでの歩みを一緒に辿ってみましょう。

水玉好きと縞々好きの出会い

ーーー植木さんと村上さん、出会った時は店主とお客さんという関係だったのですね。
植木:当時私は吉祥寺で働いていたのですが、「Sublo」ができて半年くらい経ったころ、お店を発見しました。品揃えが可愛い雑貨店というよりは、男性が好きそうな文房具や古いものもあってすごく素敵で、よく通っていました。

ーーー村上さんは店頭にいらっしゃったのですか?
植木:はい。でも実は当初村上さんが店主だとは思っていなくて(笑)。きっと店主さんはまた別にいるのかなーなんて思っていたんですけど、何回か通っているうちに自分でお店をやっているということがわかったので、よくお話をするようになりました。

きっかけは、タイのお土産

ーーー文具店の店主とお客さんとして出会ってブランドを始める、なんて夢がありますね! 一緒に水縞をやろう、となった経緯を教えていただけますか?
植木:私はそのころphrungnii(プルンニー)という名前で鞄やペンケースといったプロダクトのブランドをやっていて、サブロでも置いてもらうという、卸しの取引がまず始まりました。そういう関係だった時に私は仕事でタイによく行っていて、現地の文房具をお土産に買ってきて村上さんにあげる、ということを何回かしていたんです。そしてある時、タイで“ペーパーテープ”というものを売っているのを見つけたんですよ。

ーーーペーパーテープ? マスキングテープのようなものなのでしょうか。
植木:マスキングテープとはまたちょっと違ってて、もっと厚みがあって透け感がない、少しシワシワっとしたクレープ紙みたいなものなんです。

ーーーそんな素敵な文具があるんですね! 恥ずかしながら初めて知りました。
植木:そうなんです、素敵だなぁと思ってお土産で村上さんに渡したところ、「日本にはこういうものがないから、これはぜひ日本のお客さんに紹介したらいいんじゃないか」と彼女が言い出して。そこからタイのものを仕入れて日本で売るということを一緒にやってみようか、という話になったんです。

ーーーそこで水縞がスタートするのですか?
植木:実はまだその時は水縞というブランドを作ろう、というほどではなかったんです。とにかく村上さんも一緒にタイの文具マーケットを見たほうが発見もあるだろうと、まずは遊び半分で一緒にタイへ行きました。それが2006年の10月ですね。

ーーー聞いているだけでとてもワクワクします! どんな旅でしたか?
植木:マーケットを色々見ました。一番の目的は、ペーパーテープがタイで本当にちゃんと流通しているのかを確認することだったんです。物自体は私が買っていたのをよく見て知っていたのですが。でも市場やスーパーとかを回りながら探したものの全然見つからなくて。日も暮れて最後にもう1軒だけ行くか、と入ったスーパーでようやく売っているのを発見し、制作している会社がわかったので、本格的にやってみようかという話になり、制作会社にもアプローチしていくことになりました。

タイでの買い付けの様子
カラフルなペーパーテープ

ーーーなるほど。そして、いよいよ水縞が誕生するのですね。
植木:そうですね。サブロでもなく私のブランドでもなく、ということで水縞ができました。

水縞の商品の作り方

ーーー2006年12月の水縞スタート当初は、タイの紙雑貨を仕入れて売ることがメインだったのでしょうか?
植木:メインがそのタイのペーパーテープや紙雑貨だったんですけど、少ない数ではありましたが、スタート時からイラストレーターさんのイラストを使用したオリジナルのポストカードや包装紙、ハンコなども国内で作り、商品にしていました。

ーーー水縞設立当時からのロングセラー商品にはどんなものがありますか?
植木:本当のデビュー当時のアイテムはもうないのですが、木軸の機能的なハンコ類は、もうずっと初期のころから作っていて、コツコツ数を増やしながら今に至っていますね。

ーーー素材が面白い紙雑貨も多いですよね。思わず触りたくなってしまうというか。“素材感”も水縞の商品の魅力の1つのように感じます。
植木:そうですね。日本にはない素材のものがあるというのが、やっぱりタイの大きな魅力でした。初期の頃から、この面白い素材を使って、それを「デザインで複雑にする」より「製品としてシンプルに仕上げる」という作り方をしていたので、その影響もあるかもしれません。

ーーーブランド初期の頃を振り返り、今と作る商品の傾向が変わってきたりもしているのでしょうか?
植木:見直してみると、やっぱり変わってきたかなとは思います。スタートがタイの紙雑貨だったというのもあり、買い付けにもよく行っていましたし、当初は全体的にタイ色が強かったですね。初期のころはタイで作っているものも多かったですし。タイで見つけた材料を使って現地で商品を作るということをしていたので、例えばカラフルなグラシン紙のメモ帳なんかを作っていました。日本にはないようなオレンジ色っぽいクラフト紙や、タイならではの梱包資材を使って、封筒を作ったりもしていました。あちらで作ると、よくも悪くも味わい深い、B品との境目のようなものもよくできていましたが、それもあいまって、ラフな感じのものが初期は多かったかなと思います。

ーーー現在は国内制作がメインとのことですが、方向転換のきっかけなどはありましたか?
植木:きっかけというよりは、だんだんそのスタイルになってきたという感じですかね。やっぱり「日本で作りたい」という気持ちを強く持つようになりました。日本の技術は海外などで展開していく上で強みになりますし、なにより、自分たちが会いに行ける場所で作っているということが、やりやすさも面白さもあるので、そういう意識を昔よりも強く持つようになったと思います。

ーーー年表に「KOTOWAZA」展という文字があるように、水縞の商品には「ことわざ」「ゲーム」など、テーマに則したシリーズがあるのが印象的なのですが、商品開発はどのように進められているのでしょうか?
植木:メーカーって「クライアントがいてそのオーダーに答える」という仕事ではないので、自分たちで自分たちにお題(テーマ)を出して「そのお題に頑張って答える」という状況を作ってみたんです。その作り方がすごく水縞にはまっていました。「何をお題にしようか」ということ自体に楽しさがありますし、そのお題に対してなんとかアイディアを出してクリアしようというやりがいもあって。ちょっと無理矢理にでも答えるからこそ、ひねり出される変なアイディアもあるというか(笑)。

ーーー「自在ハンコ」など、テーマ縛りではない商品はどのように生まれているのでしょうか?
植木:テーマありきでアイディアを出して商品開発をしている合間にも、単発のアイディアというのはたまに出てくるんです。ある日思い浮かんだ時点から開発を始めて、長い時間をかけて商品化を進め、できた時にリリースするという感じです。

ーーー単発のアイディアとは、たとえばどういった類のものでしょうか?
植木:文房具としての新しい仕組みというか、「機能としてこんな使い方のプロダクトができるのでは?」という気づきのようなものでしょうか。「自在ハンコ」だけでなく、「ハンコ 万年カレンダー」などもそうなのですが、ふとした時に「こんな風に新しい仕組みが作れるのでは?」というアイディアが浮かんだら、どうやったら作れるかを調べたり、製造元に相談したり、サンプルをもらったりします。そうした中で、機能的に成立できそうかどうか、たくさんの蓄積を反映させて作られる商品があるんです。水縞の中でもロングセラーの商品は、そういうアイディアベースで作られるものも多いですね。

アトリエ・ショールームのオープン

ーーー年表に戻りますね。2011年に西荻窪に引っ越しされてアトリエ・ショールームをオープンされていますね。引っ越しをされた理由はなんでしたか?
植木:水縞のスタート当初は、村上さんを外部ディレクターとして引き入れる形で、当時の私の所属会社の一事業として、ブランドを展開していたんですけど、だんだん手狭になってきたので、引越しをすることになりました。その時、どうせなら新しい展開をしようということで、お店を併設できる物件を探しました。

ーーー「お店」ということは、商談の場であるのはもちろん、一般の方も入ることができる場だったのでしょうか?
植木:はい、今はまた引っ越してなくなってしまいましたが、一般のお客様にも見ていただける場を作りました。

ショールーム外観
ショールーム内観

ーーーショールームができたことで、どんな変化がありましたか?
植木:それまで商品は倉庫に入れていて、客観視できないような環境で仕事をしていたんです。「お客様に見てもらう」という形で商品を日常的に並べることが出来たので、商品について自分たちが考える時も、ショールームに行って客観的に見たり、お客様の生の反応に触れたりして、新しいアイディアのきっかけになる場となりました。

ーーーそこでお客さんとお話ししたことが新商品に繋がったこともありましたか?
植木:ありましたねー。でも直接話したというより、お客様同士の何気ない会話を聞いて、「あぁ、お客さんはこう思ってるんだ!」とリサーチができたことなどが大きかったです。自分たちが思っているのと、また違う印象なんだなとわかったり。

海外への展開

ーーー2016年に「メゾン・エ・オブジェ・パリ」に出店されておりますが、どういった経緯での出展だったのでしょうか?
植木:私自身は実はそんなに海外展開を考えていたわけではないのですが、積極的に進めてくれるスタッフがいて、やりたいと言ってくれるスタッフがいるのならばやってみようかなと。海外からの直接の取引依頼は以前からもあって、お取引の実績はあったのですが、お声がかかったものに応えるばかりではなく、自分たちからも発表する場に行ってみよう! ということでエントリーして出展しました。

メゾン・エ・オブジェ・パリ出展の様子

ーーー反響はいかがでしたか?
植木:海外からお取引依頼が来ると、外国の人にも私たちの作っているものが伝わるんだ、とすごく嬉しかったですね。この展示会に出たことで、より海外からの反応がわかるようになり、日本とは違う感想をいただいたりもしたので、日本での水縞とはまた違う展開をしていける可能性があるかなとも思っています。

ーーーお取引はどの国・地域が多いのでしょうか。今、紙雑貨がアツいなぁと感じる場所は植木さんからみてどこですか?
植木:取引が多いのはやっぱりアジアですね。台湾、韓国、マレーシアなど。なかでも台湾が一番アツいですかね。あとお取引先としては、ヨーロッパやアメリカにも点在しています。

ーーー日本とはまた違った海外での展開、ますます楽しみです!

もみじ市は短期決戦!

ーーーさて、もみじ市には2010年の「パレード」からご出店いただいていますね。印象的だった年や出来事などありますか?
植木:すごい天気になったな、というのはやはり記憶に残りますね(笑)。ものすごく土砂降り編とめちゃめちゃ晴れた編と、どちらも思い出深く記憶に残っている日は何日かありますよ。でも本当にいつも楽しいです。早い時間に始まって早い時間に終わる、その爽やかさも「短期決戦!」という感じでとても楽しいですね。

ーーーもみじ市に合わせて新しい商品を作っていることもあると、以前お話しいただいていましたね。もみじ市をそういった発表の場にもしてくださっているとのこと、とても光栄で嬉しいです。
植木:そうですね。やっぱり秋はもみじ市があるなと思って、出ているアイディアはぜひそこで発表したいと思っております。ただ、今年は新作がギリギリ……間に合わないかも……といった状況です(笑)。

「いていいんだ」という紙博のホーム感

ーーーギリギリ間に合わないのは残念ですが、新作情報楽しみにしております! 手紙社のイベントで水縞といえば、「紙博」では2017年の1回目の開催からお世話になっております。紙博って文具好きはもちろん、紙の素材感などがお好きなマニアックなお客さんも多く、まさに水縞さんにぴったりですよね。
植木:おかげさまで紙博も大変楽しいです。居心地がいいというか、「いていいんだなぁ」という気持ちがします。あとは紙メーカーどうしの連帯感もあり、ホームだなぁという楽しさもありますね。

ーーーよい刺激を感じる場にもなっているのでしょうか。
植木:とても刺激的です。昔から知っている文房具のメーカーさんもそうですが、新しいブランドさんもたくさんいらしゃるからドキドキします。「新しいライバルがどんどん出てるぞ! 負けないように頑張ろう!」と(笑)。「自分たちらしさ」というものをちゃんと持って、しっかりお客さんに伝えようという気持ちになりますし、堂々と商品を出して、「これが水縞だよ!」と言えるものを作りたいなと常々思っております。

《インタビューを終えて》
植木さんとお話しして感じたのは、「文房具が大好き!」というあふれんばかりのまっすぐな気持ちでした。「Sublo」での村上さんとの出会い、ブランド立ち上げのきっかけとなったタイのお土産、そしてずっと愛され続けてきた商品たち。辿るとどれもがシンプルにこの「好き!」に繋がっているように思います。文房具が心から好きで、可能性を信じ、楽しんでいるからこそ、もともと文房具好きな方だけでなく、そうでない人も水縞ワールドに惹きこまれてしまうようです。もみじ市当日は、ぜひ水縞のみなさんと「どうやって使おうか?」という会話もしてみてください。きっと、気づけばあなたも水縞の世界、文房具の世界に魅了されてしまうはず。

(手紙社 高橋美穂)