もみじ市 in 神代団地,出店者紹介,ジャンル:ILLUST&DESIGN

高旗将雄

【高旗将雄プロフィール】
愛知県生まれ、神奈川県在住のイラストレーター。もみじ市をはじめ、蚤の市や紙博など、手紙社イベントには欠かせない存在の高旗さん。高旗さんの描く暮らしの道具や動物たちは、ゆるりとした空気感と思わずクスッと笑ってしまうようなユーモアを持ち合わせています。また、なんといってもそのフォルムや表情に至るまで、どれもがのびのびと表現され、愛くるしさがたまりません。そんなイラストを描く高旗さん、頭の中のアイディアの泉はいつも溢れんばかりに満ちています。紙ものにとどまらず、布ものやブローチ、食器類など、暮らしに寄り添う作品が盛りだくさん。そんな高旗さんの作品を手にすると、ホッと癒され、気負わず素直な気持ちになれるのです。ぜひ、高旗将雄ワールドをお楽しみに。
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【高旗将雄の年表・YEARS】

【高旗将雄さんインタビュー】
手紙社イベントには欠かせない存在の高旗将雄さん。イラストを描き始めたのは、なんと大学生になってからなのだとか! 高旗さんの学生時代から手紙社との出会いなど、担当・高橋美穂がお話を伺ってきました。

ヴィレヴァンで育ったようなものなんです

ーーー大学ではグラフィックデザインを学ばれていたんですね。美術の世界に興味を持ったのはなぜですか?
高旗:美術というより、子どもの頃から映画とかCMが好きだったんですよね。「広告批評」という月刊誌があって、休刊になるまでずっと買い続けていました。そこにCMだけじゃなく広告も載っていて、だんだんグラフィックの方に興味が湧いていったというかんじです。ちゃんと進路を考えたのは高校生の時ですけどね。

ーーー「広告批評」はいつ頃から読んでいたのですか?
高旗:中学生くらいですかね。名古屋港にヴィレッジヴァンガードがあって、行くたびにそこで買っていました。東京の本屋だと、こういった本やデザイン系の本とかも普通に置いているけど、僕の地元はそうではなかったので、ヴィレヴァンが文化的なものの全てでしたね。ヴィレヴァンで育ったようなものなんです。昔は今よりもっと本屋寄りでしたし、海外小説とかもヴィレヴァンで覚えました。

生活=スマブラorシルクスクリーンの大学時代

ーーー大学時代は漫画研究部だったのですね。ちなみに、絵は昔から描いていたのですか?
高旗:昔は全然描いていなかったです。絵を描き始めたのは大学に入学してからでした。

ーーーえっ! そうなんですね。とても意外です。
高旗:普通は大学受験の前に美術系の予備校に行ったりするんですが、僕が入学したグラフィックデザイン科は当時、学力テストと小論文で入れたんですよ。なので、予備校にも行かなかったんですよね。

ーーー漫画研究部はどんな経緯で入部したのですか?
高旗:それが、通りすがりでうっかり、なんですよね。もともとは自転車部に入ろうと思っていたんです。自転車部の説明会に向かっていたらその途中で漫研の説明会をやっていて、そのまま入部してしまいました。漫研ではゲームばっかりやっていましたね。

ーーー通りすがり(笑)! 自転車部は入らなかったんですか?
高旗:入りませんでした(笑)。今でも自転車には乗りますし整備もしますけどね。昔は好きで自転車1台作りましたもん。自転車のフレームがあったので、買ってきたパーツを組み合わせる感じです。

ーーー自転車を作る(笑)!?
高旗:正直、性能は完成形で売っているものの方が良いと思いますけど、それだと高いですからね。良い自転車を買おうと思うと高いけど、自分で作れば多少安いというか。初めてのパソコンも自分で作りましたね。こういうのって、プラモデルを作る感覚とあんまり変わらないんですよ。とにかくお金がないので、「自分で作ってしまえ」と色々作っていましたね。

ーーー「自分で作ってしまえ」という発想に至る点が、もう根っからの作家気質ですね。シルクスクリーンを始められたのは、何か理由があるのでしょうか?
高旗:大学では印刷機は使わせてもらえなかったんですが、シルクスクリーンの部屋はタダで使えたんです。それで、写真とかよりはイラストの方がシルクスクリーンとの相性が良いので、イラストを描くようになりました。

ーーー当時はどのような作品を作っていましたか?
高旗:紙ベースのものが多かったです。学祭の時にはバッグを作って売ったりもしていましたね。

ーーー大学院を卒業してからはずっと作家業一本ですか?
高旗:そうですね。特に企業に就職もしていないですし。自分の周りの漫研の人たちが全然就職しなかったので、就職しなくても頑張ればなんとかなるかなと思ったんです。グラフィック科の人は就職していましたし、僕も変わらず広告は好きだし、そちらが嫌になったわけでもないんですけどね。かと言って当時「絶対作家になる!」という強い気持ちがあったわけでもなかったのですが。

ーーーそうだったのですね。一般的には就職した方が楽だと思ったりはしなかったのですか? 作家一本でやっていこうと思えるのは、本当にすごいなぁと思います。
高旗:就職した方が安定しますからね。僕は基本的に“人に流されてやる”ということが多いんですよ。はじめはグラフィック科の中でも広告をちゃんとやっていたので、自分で言うのもなんですが、そこそこ成績はいい方だったと思うんです。漫研がよくなかったですね、みんなハナから働く気がない奴らばかりだったんで(笑)。あとはコミティアなどのイベントにも出て、普段から学校の課題以外にも自分で何かを作るという環境下に置かれていたので、作って売るということがあたり前になっていました。

ーーー学生の頃から作っていて、今も販売している作品はありますか?
高旗:生産が追いつかなくなったので今はもう手紙社さんにお願いしていますけど、「塩」と「しょうゆ」のトートバッグは学生のころ1つ1つ手刷りで作っていたのが始まりなので、販売してから長いこと経っていますね。

「塩」と「しょうゆ」のトートバッグ

ーーーあのトートバッグ、かなりのロングセラー商品なのですね。他にも、ずっと出している商品はありますか?
高旗:そんなにはないですね。いちど作って、売り切ったら終わりということが多いです。いちどに結構な数を作るので、それを売り切ってしまえば欲しい人には行き渡ったかなと思いますし、同じものを作るより、新しいものを作れるなら、そっちの方がいいかなと思っています。

「土星」が引き寄せた出会い

ーーー高旗さんと手紙社の出会いは1冊の本がきっかけだったのですね。「土星」とはどんな本だったのでしょうか?
高旗:僕ともうひとり、漫画を書いていた人とで企画をしました。pixivで描き手を募集して、はじめはグループ展をしていました。「土星」はそうやって集まったメンバーで毎回テーマを決めて、各々がイラストと文章を作る、というリトルプレスです。2010年に初めて作って、年2回のペースで発刊していました。結局2年くらいしかやらなかったんですけど、手紙社の代表の北島さんが本の対談の中で「土星」を紹介してくれたんですよね。

「土星」1号

ーーーその後、当時の手紙舎調布パルコ店で展示をされていますが、どういった経緯で展示をすることになったのでしょうか?
高旗:僕が北島さんに挨拶をしに行ったんです。本の編集をしていた方から「対談の中で『土星』のことを載せていいですか?」という連絡が来たので、それなら挨拶しに行こうかなと。その時に作っていたものを一緒に持って行って見てもらって、展示が決まって、という流れでした。

ーーー手紙舎調布パルコ店での展示はどういったものでしたか?
高旗:学生のころからずっとマッチ箱をシルクスクリーンで作っていたので、それをメインに展示していました。今作っているものとは少し違うんですが、ブローチもこの展示に合わせて初めて作りましたね。この展示の翌年にはもみじ市にも出店するようになって、今に至ります。

シルクスクリーンで作ったマッチ箱

もみじ市はあっという間の2日間

ーーーもみじ市には2013年の「カラフル」から出店いただいておりますね。特に印象的だったもみじ市はありますか?
高旗:もみじ市って実はあんまり覚えてないんですよね。それくらいバタバタしているというか、あっという間というか。開催2日間とも晴れた年が1回だけあったと思うんですけど、あれはいつのもみじ市だったかな、とかちょっと思い出せないんですよね。記憶も色々混じってしまって。

ーーー高旗さんといえば、楽しいワークショップも印象的ですよね。今までのワークショップのお話を聞かせていただけますか?
高旗:確か初めて東京蚤の市に出た年は、手紙社の方から「買ったものを持って帰るためのカバンが欲しいから、トートバッグをシルクスクリーンで刷る、というのはどうでしょう」と提案されてやりました。その後は、もみじ市以外でのワークショップも含めると、シルクスクリーンでTシャツや手ぬぐいを作ったり、似顔絵を書いたり、モビールや驚き盤を作ったこともありました。2017年の「ROUND」のもみじ市では、缶詰を作れる機械を買ったので、好きなものを入れて自分でオリジナルの缶詰を作る、というワークショップもやったんですが、これはちょっと不発でしたね。cafeゴリョウさんとのコラボで作った「momiji缶」は上手くいったので、缶詰は最初から中身が入っていてこそなんだなと思いました。

ーーー本当にたくさんのワークショップをしてくださっていますね! 聞いているだけでもワクワクしてしまいます。イベントで時々どーんと登場するドローイングガチャも、目を引きますよね。
高旗:ドローイングガチャは去年のもみじ市で初めてやりました。もうちょっと、仕組みをどうにかしたいなとは思っているんですけど、難しくて。

ドローイングガチャ

ーーー日々進化しているのですね。今年はどんなワークショップを予定していますか?
高旗:どうしましょうね(笑)。ちょっとまだ未定なんですが、今年もドローイングガチャをやりたいかな、と思っています。

ーーー詳細情報、お待ちしてますね。今年のテーマが「YEARS」ということで、高旗さんの今までのお話を伺ってきましたが、これからやりたいことはありますか?
高旗:やりたいことはあると言えばあるんですが、きっとあまり人に言うもんじゃないですよね。イラストの仕事って、資格をとるものでもないし、年に仕事が1本あるだけでも「イラストレーターです」と名乗れますが、年1本じゃ生活はできない。コンスタントに毎月毎月仕事がないとやっていけないんですけど、何かものすごい大ヒットがあって、急に仕事がガッと増えるというものでもないですから。やっぱり少しずつの積み重ねで仕事をする機会が増えていくものだと思うので、これからも“続けていくこと”が大事だなと思います。

《インタビューを終えて》
高旗さんの生み出す作品を手に取ったり、ワークショップに参加されているお客さんは、皆さん笑顔が輝いているのが印象的です。それはきっと、高旗さんの作品が「素敵!」、「可愛い!」というのはもちろんのこと、高旗さんご自身が“ワクワクする仕組みを生み出す天才”だからなのではないかと、インタビューを通して感じました。インタビュー中、「僕は基本的に流されやすいタイプなので」と度々口にしていた高旗さん。もみじ市当日、「こんなの楽しそう!」「こんなのあったらいいな」など、ぜひ高旗さんとお話ししてみてください。もしかしたら、次に高旗さんの頭の中から飛び出す“ワクワク”の、小さな種となるかもしれません。

(手紙社 高橋美穂)