【Mellow Glassプロフィール】
瑞々しくも柔らかな光をまとう、月や家のガラスオブジェたち。Mellow Glass タナカユミさんは、長野県の工房で自然に囲まれながら日々制作されています。粘土を原型に“パート・ド・ヴェール”と呼ばれる伝統的な技法でガラスと向き合っています。一つの型からただ一つだけ産み落とされる作品は、幻想的でありながらそのひとつひとつに愛おしさを感じます。いつか夢の中で出会ったようなガラスの街は、朝も夜も美しく光を通し、私たちの日常を見守るようです。
http://mellowglass.tumblr.com
Instagram:@mellowglas
【もみじ市 in 神代団地での⠀Mellow Glass作品販売方法について】
・来て頂いた順に並んでお待ちください。(整列場所はスタッフまでお尋ねください)
・作家さんの会場入りの後、状況を見て整理券を配布する場合がございます。
・大きな作品は、お一人さま一作品になる予定です。
・購入できる合計数は、当日作家さんからご案内があります。
・クレジットカードは使えませんが、Paypayが使用可能です。(上限あり)⠀
・エコバック持参大歓迎! 重いガラスを入れても大丈夫なバックをお持ちくださると嬉しいです。
※河川敷に比べて狭い会場での開催となります。ご近所にお住まいの方や、他の出展者さんのご迷惑にならないよう、ご協力のほどよろしくお願いします。
【Mellow Glass・タナカユミさんインタビュー】
長野の山々に囲まれた場所にて日々ガラスのオブジェを制作されているMellow Glass・タナカユミさん。見た者を思わず惹きつけるガラスの月や街並み、教会はどのように生まれているのでしょうか。残暑が続くある日、担当・梶みのりがお話を伺いました。
アートの世界と初めての挫折
ーーーさまざまな学校や研究機関を経て、Mellow Glassとしての活動は2003年から。初期はどのような作品を作られていましたか?
タナカ:学校に通っている間からも、国内外のコンペティションに出品していました。当時作っていたのはガラスでできた大きなアートピース。インスタレーションのように見せるものもありました。順調に評価をいただいていたのですが、2011年に出展したアートの展示会で、大きな挫折を味わって……。
ーーー東京でのアートイベントですね。
タナカ:周りはみんな、新進気鋭のアーティストやデザイナーという感じで、私は毛色が違ったみたい。プレゼンをしながら講評をしていただくのですが……「なんてところに来てしまったんだろう!」と。トイレに駆け込んで3回も4回も泣きました。ですが、そこでmakomoさんと出会って、「あなたはきっと売れるよ」って言ってくれました。覚えていないかもしれないですが(笑)。
ーーーそれ以前にもアートコンペなど出品されていましたが、特に雰囲気が違ったということでしょうか?
タナカ:そうなんです。その当時からお風呂とか湯気とか人がホッとするシーン、懐かしい記憶をテーマにした家などを制作していました。それに対してもっと攻撃的なアートの世界を見せられてしまって、私の作品はアートでもクラフトでもないんじゃないかとすごく悩んでしまいました。
ーーー翌年にクラフト系のイベントに出展されていますね。この頃は、今のようなガラスのお家オブジェも作られていましたか?
タナカ:はい、この頃はもうお家のオブジェも作っていました。それまで、自分がクラフトイベントに出るというイメージがなく、そもそも私の作品は工芸品じゃないから……と思っていたのですが、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで出展してみました。とても評判が良かったんです。嬉しかったけど、それでもすごく葛藤がありました。クラフトってなんだろう、雑貨ってなんだろうと悩んでしまって。最初に手紙社さんにお声がけいただいたのもこの頃なのですが、自分の立ち位置について悩んでいたので2年間くらい保留にしてしまいました。
ーーー転機の中で、悩みの時期だったのでしょうか……。
タナカ:そうですね、今思うと。「私が作るのはアートだ」と自分で当てはめて、苦しかったんだと思います。
自信につながった2ヶ月間
ーーー年表の旗の色が違う、2014年が最大の転機となったのですね
タナカ:代官山蔦屋のアート&建築棟で2ヶ月間の個展を開催しました。建築とアートをテーマに、ガラスの家とたくさんの素敵な本。「会場を好きに使っていいよ」と言っていただけて、本の上に世界を作ったり。私の作品だからと来てくれるお客さんじゃなくて、通りかかる不特定多数の方に見ていただけました。本屋さんに来る人や、お茶をしに来る人が、静かな場所でじっくり作品を見てくれて、評判も良かったんです。自分が、本当に好きで作っているものだけでいいんだな、と思って、自信につながりました。
ーーーその後はもみじ市や手紙舎 2nd STORYでの企画展に参加いただいたり、全国各地での展示・イベントに参加されていますね。
タナカ:はい、もうアートコンペにはずっと出品していなくて、アートとかクラフトだとか、そういう言葉にも全くしばられなくなり、個展やイベントを中心に活動しています。
学生時代からデザインのお仕事も
ーーーガラス作家としての軸を持ちつつ、過去にはデザイナーとしても活動されていたのですね。
タナカ:学生のときに父がMacを買ってくれたんです。それでコンピューターに親しんでいって、パラパラ動画を作ったり、プログラミングをしてCGを作ったりしているうちに仕事をいただくようになりました。学校に行きながら一人スタッフを雇って、ピッチを持ち歩いて仕事を受けてました。
ーーー学生のうちからお仕事を!
タナカ:はい。当時はまだ誰でもプログラミングができるわけではなくCGの世界もはじまったばかりで。私のところにもたくさん仕事の依頼が来て。ガラスの作品制作の傍ら、デザインの仕事も忙しくなってきました。
ーーーそこから現在に至るまでに、デザインの仕事をやめる転換点はあったのでしょうか?
タナカ:2011年の震災の時ですね。サーバーのハッキングが頻発して、業界もすごく混乱して。それを機に仕事の責任にも変化がありました。昼夜が逆転してしまう生活がだんだんいっぱいいっぱいになり、すっぱりとやめてしまいました。以降、二足のわらじはやめて、ガラス制作に専念しています。
自然に寄り添う生活
ーーーMellow Glassさんは、冬に制作をお休みされていますね。ガラスの作家さんのなかでは珍しいような気がします。
タナカ:私が住んでいる長野の山は寒い時期が長くて、時にはマイナス15度にもなります。真冬には石膏が固まる前に凍ってしまうんです。それがガラスの仕上がりに良くない影響があって、冬の間はお休みしています。12月の中旬くらいまでは大丈夫ですが、1月になったらお休み。毎年旅行に行って、インスピレーションを受けてきます。
ーーー旅行はどんなところへ行かれるのですか?
タナカ:今年の1月はスウェーデンへ行きました。寒いところが好きみたいです。コートを羽織るってことが好きなのかも……。旅先でもスケッチしたり、作品のイメージを膨らませます。自分が旅をしたところだけじゃなくて、友達から見せてもらった旅の写真とかから着想を得ることもありますね。
ーーー外国の町並みや景色からも着想を得つつ、Instagramを拝見すると日々の庭先の変化も敏感に感じて、楽しまれているように思います。
タナカ:早朝から車庫のアトリエで作業をしていますが、母屋との行き来の間にある庭での誘惑が多くて……。雑草を取ったり毛虫を退治したり、植物の様子を眺めたり……気づくと時間が経ってしまうんです。制作は15時半になったら必ず切り上げて家に帰るようにしているので、庭の誘惑に勝てずに全然ガラスの作業ができなかった日もあります。
ーーー庭の誘惑と戦いつつでも、自由に時間を決められる作家というのは、働き方としていかがですか?
タナカ:自分にとても合っていますね。いつでも手と脳を休めることができて、自分の想像の世界に脳をつかうことができて。ずっと仕事の電話とパソコンを気にしながら持ち歩く生活もやめて、自分が本当に好きだと思う作品をただただ作って、各地の展示会にお届けして。これからも私の好きなガラスの世界を作っていきたいですね。
ーーー本日はありがとうございました!
《インタビューを終えて》
「こんにちは!」と手を振りながらお会いしたMellow Glass・タナカさんは、明るくてお話もとても楽しい方。今回初めて、作家としてのこれまでの経緯や二足のわらじでのお仕事時代の話を伺い、さらにその人柄や作品が愛おしくなりました。自信をなくした経験がありながらも、本当に作りたいものを日々コツコツと制作し、その集大成として作品を発表する展示会やイベントはいつも大賑わい。もみじ市でも素敵なガラスの世界を見られること、楽しみにしています。
(手紙社 梶みのり)