【白水麻耶子プロフィール】
画家・美術作家。大阪出身。広島県尾道市在住。生活の中から生まれる想いや信条を、人や動物など具象的なモチーフを用いて表現している。白水作品は青が基調となっており、夜の空気のような、深い海のような、森の奥深くにいるような、そんな美しく幻想的なブルーは、見る者を異世界に誘う。独創的な作品たちは、一目で心が揺さぶられ、その世界に溶け込んでしまう。作品は、絵画ばかりでなくブローチなども。イベントでは、似顔絵仮面(ポートレートマスク)を制作したり、音楽と共にライプペイントも行ったりする。このほど「ちいさいあなた」という、小さな張り子に、お客さまから言葉やイメージをもらって絵を描く新しい試みもスタート。自身のTwitterでは、モノクロのイラストを日記のように公開している。最近、青の世界に広がりや深みがさらに増しており、翼が生えたような印象を受ける。そんな白水さんがもみじ市でどんな世界を繰り広げるのか楽しみでならない。
Instagram:@mayakohakusui
【白水麻耶子の年表・YEARS】
【白水麻耶子さんインタビュー】
白水麻耶子さんが描く世界は、ひとたび足を踏み入れるとその魅力の虜になってしまう。ご自身の年表なのだから、現実的なことが書かれているはずなのに、なんだか物語の世界の話のよう。「この年表に書かれているのは、全部転機です」と話す白水さんが、ゆらゆらと歩み、たどり着いた現在。またふらりと動き出すときに出会えたのかもしれない。
旅を重ねて、尾道に行き着くまで
ーーーいろいろな国に行かれていて、まるで旅人のようですね。
白水:知らない国へ行くと、知らないことがたくさんあって、それが楽しくてしょうがなかった頃ですね。
ーーー山小屋でアルバイトされてたんですね
白水:車の免許をとるための貯金しようと思ったことと、次の展示までがちょうど空いていたこと、あと富士山行ったことなかったので、雲の上に憧れて……。
ーーー尾道へはどうして行くことになったんですか?
白水:壁画を依頼されたんです。ハライソ珈琲というところでした。
ーーーそこから尾道に住むことになったんですよね?
白水:住むところを探していたら、紹介してくれる人が現れて、運良く住めることになりました。
白水:尾道に引っ越してからは、アルバイトをしつつ、ゆっくりなスタンスで展示などをしていました。でも、だんだん違う景色が見たくなって、アルバイトを辞めて、関西でポートフォリオを見てもらったりするようになりました。みてもらいに行っているうちに、初めての関西での展示が実現しました。その時、出会った人の縁からいろいろと広がって、今も波紋のように続いています。あの時、すこし踏み出してよかったなと思っています。今思えば、あの一歩が大きかったのかもしれません。
「似顔絵仮面」の誕生! そしてイベント出店へ
ーーー似顔絵仮面をはじめたきっかけはなんだったんですか?
白水: 普段ライブをするお店(ヲルガン座)のステージ上で、絵の展示即売会をしてるときに、何か対面でできることはないかなと考えていて、ひらめきました。その前まで、動物を立体でつくったりしていたんです。その同じパーツを使って、ダンボールで、人の顔をつくったらおもしろいんじゃないかなと思ってやってみました。そしたら、すごくおもしろかったんです。
ーーー今回は、似顔絵仮面はされないんですよね?
白水:そうなんです。いろんな人の顔を描いたことが経験となって、手が慣れてしまった感じがして、ちょっとお休みしようと。新しい方がいらしても、輪郭とかを拾いやすくなったんですけど、それがいいことに感じられなくて、ちょっと違うものを描きたくなってしまったんです。楽しみにしてくれた方には申し訳ないんですけど。
ーーー「ちいさいあなた」もユニークな試みですよね。
白水:似顔絵仮面じゃなくて、他にできることを考えたときに、思いつきました。小さいものに描いて、ひょいっと手で渡せて、その人のそばに置きやすいものがいいなと思って。手渡しできるくらいの大きさというのもポイントです。おこがましいですが、さりげないお守りのようなものになれるといいな思っています。
ーーーヒントを3つ聞くことにしたわけは?
白水:最初は、ハガキサイズで別の形態でやったことがあって……。すきなもの、言葉、色などを人から聞くと、「それを描くんですか?」と思うようなことを選ぶんですよ。それが、おもしろくて。思ってもみないものが描けるのが楽しいですね。
ーーー描くときに心がけていることはありますか?
白水:さらさらさらって描けるように心がけています。あとは、この人は、「これが大事なんだな」、「これが好きなのか」と思いながら、描いていますね。
フィンランドでの新しい時間
ーーー昨年もフィンランドに行かれましたが、違いはありましたか?
白水:今回は、展示と壁画を描きに行きました。壁画は、ふたりで共同で描いたのですが、6m×8mと大きくて楽しかったです。
白水:あとは、人との出会いが多かったです。大きい壁画なので、なにせ出来上がるのも時間が必要でしたから、毎日、訪れるおじさんとかいて。あとは、現地のお世話してくれる方にいろんなところに連れて行ってもらって、楽しく過ごしました。
ーーー昨年から、モノクロの日記のような絵を描かれていますよね。青い絵ではないですが、その世界観が白水さんらしくて、すごく好きなのですが、きっかけはなんだったんですか?
白水:『パターソン』という映画があって、主人公は、詩を書くのが趣味バスの運転手さんなんですけど、ある事件が起きて、自分がずっと書いていていた詩のノートがビリビリになってしまうんですね。そのクライマックスで、ある詩人から主人公が白紙のノートをもらうんです。それを観てから、白紙のノートが欲しいと言い続けていたら、ある日いただいたんです。そこから、しばらく白紙のノートを持ち歩いていたんですが、ついに描き始めました。最初は、私の愛犬がいなくなってしまって、散歩の時間とか、ぽっかり空いた時間に少しずつ思い出しながら描いたりしていました。絵となにげない言葉を入れて。だんだん日記のようになってきて、毎日のように上げていましたけど、最近は、ゆっくりペースですね。SNS上のものは一部で、いつか何かのかたちでまとめられたらよいなと思っています。あとは、SNSに上げると、自分の意図してない解釈もあったりするので、楽しみながら、マイペースにやってます。
ーーー新しい白水さんの世界でワクワクします
白水:今は、反抗期なのか、いろんなことがやりたくないと思ってしまって。ブローチだったり、在廊だったり、似顔絵仮面も入るかな(笑)。なんか違和感を感じてしまって、進めなくなっているものもあります。最近は、小さくても絵が売れることがうれしいですね。あとブローチもあまりつくらなくなっていますが、また素材を変えたり、かたちを変えて、つくれたらいいなと思っています。もみじ市には、カレンダーや、小さい絵や変な人形を持って行きますよ。楽しみにしていてもらえると嬉しいです。
ーーー反抗期! 今が、ちょうど変化の時の真っ只中なのかもしれませんね。そんなときにお話伺えて、幸せです。もみじ市でお会いできること楽しみにしています。
《インタビューを終えて》
白水麻耶子さんは、本当は物語の世界に住んでいて、ひょっこりこちらの世界に顔を出しているんじゃないかと思える瞬間があって、それが楽しみのひとつでもあります。しゃべり方もおだやかで、ふんわりとした印象だし、選ぶ言葉一つとっても、本当に現実に起こっていることなんだろうかと思わせてくれるのです。このお話を聞いた日も、ご自宅にタヌキが出たとおっしゃっていました。本当は、青い世界に見たこともない生き物と住んでいるのではないかと疑っています。
(手紙社 樫尾有羽子)