【ハナイグチ プロフィール】
京王井の頭線の久我山駅から歩いてすぐに現れる“赤いきのこを抱えたクマ”のイラストに導かれ、2階へあがるとそこにはゆったりと心地の良い空間が広がります。イラストに使われている“赤いきのこ”は、お店のなまえにもなっている「ハナイグチ」。きのこ狩りが好きなご夫婦が、きのこや旬の野菜をたっぷり使ったお料理と、それにぴったりなお酒でもてなしてくれます。食べた瞬間、一つひとつの素材のおいしさがぱっと広がる感覚に、何度でも訪れたくなるお店です。
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【商品カタログ予習帳】
【ハナイグチさんインタビュー】
扉の先に待っているのは心地よい空間と、季節を感じさせる彩り豊かなお料理。店内に並ぶセンスのよい椅子に腰をおろせば、ゆったりとした空気とお料理のいい香りに包まれます。ただの飲食店とはちがい、お腹も心もすべてを満たしてくれるハナイグチ。そのちがいはどこから生まれたものなのか、その答えを見つけるべく、担当・永井がハナイグチの今村崇司さん綾さんご夫婦にお話をうかがいました。
元家具屋の料理人
ーーーハナイグチを始めるまで、おふたりはそれぞれどんな人生を歩んできたのですか?
崇司:僕は元は家具屋で働いていました。トラックに乗って家具の配達の仕事から始まり、販売も経験しましたね。でもなかなかきついノルマなうえ、取り扱う家具もおしゃれなものというよりは、婚礼箪笥とか家庭的なものばかりで、これは自分のやりたいことではないと壁にぶち当たりました(笑)。
ーーー意外にも元は家具屋さんだったんですね。壁にぶち当たった後は?
崇司:心機一転丸坊主です(笑)。
ーーー丸坊主!?どういうことでしょう……。
崇司:社内に新しくインテリアショップができて、そこのオープニングスタッフになったんです。新たな気持ちで頑張ろうと、心機一転丸坊主に(笑)。おしゃれなトップデザイナーの家具に、カフェも併設されていて、心地よい音楽が流れる空間……もうそこが楽しくて楽しくて。
ーーー楽しそう! インテリアショップでずっと働いていたのですか?
崇司:はい。そのショップから元の家具屋にまた戻らなければならなくなったりしたこともありましたが、その素敵なショップを立ち上げた先輩が独立することになり、再びそこに誘われて働いていました。元家具屋の経験もあったので、家具の仕入れから販売、配達、Web管理、ギャラリー運営、全ての工程を一人で行えるようになっていましたね。そのときギャラリーで企画した「ダカフェ日記の小さな写真展」は全国からファンがくるほど大盛況で、本当にやりがいのある仕事でした。
ーーーでも今はこうしてハナイグチの厨房にたっていますよね。やりがいのあった仕事をやめてまで、ハナイグチを始めようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか? 元々、独立したいとか、そういう想いはあったのですか?
崇司:そうですね、会社員として勤め続けるにはいろいろと限界があり、独立するとすれば(当時知り合って結婚した綾さんと)ふたりの得意分野で力を発揮できる今の業態がベターではないかと考えました。良い空間と良い食事、良い音楽。ホスピタリティを高めることは、ふたりがこれまでそれぞれの人生経験から学んだことです。
ーーー前職が家具屋さんだったことを想像できないほどの手際で、厨房に立ち料理をふるまう崇司さんですが、それまでは飲食業を経験されたことはないんですよね。相当努力されたのではないでしょうか?
崇司:飲食店経験者ならば常識なことが、自分には常識ではないことがあって、やっぱり大変でした。不慣れなのにオーダー表が溜まった時などは「ついこの間まで家具屋だったよな……」と自問自答したものです。休みの日も仕込み仕込みで、空いた時間はとにかく料理のことを考え続けました。妻と出会っていなければ、こうして今厨房に立っていることもないですし、妻と出会ったことが僕にとって人生の転機になりましたね。
ーーー綾さんと出会ってからの数年で、歩んできた道ががらっと変わったなんて、本当に出会いは大切なんだなって改めて感じます。
飲食との出会い、両親の反対を押し切っての上京
ーーー綾さんは、ハナイグチを始めるまでどんな人生を歩んできたのですか? 飲食業との出会いは?
綾:私は、生まれが秋田県なのですが、地元で過ごした学生時代にお蕎麦やさんでアルバイトをしていて、そのとき飲食の面白さに目覚めました。偶然にも、そのお蕎麦屋さんの名前は“今村”(笑)。
ーーーえ! すごい偶然。なんだか飲食に興味をもったきっかけと今の名字が同じだなんて運命を感じますね。飲食業のどんなところに惹かれたのですか?
綾:元々人間観察が好きだったのですが、夜の繁華街にあるお店でしたので、お店に来られる多種多様なお客さまと出会ってお話をしたりするのが楽しかったのです。かなりの社会勉強になりました。それから、小さなお店でしたので、店主の方達が調理をするのを間近で見ることも純粋に好きで。「こうやって効率良く作っていくんだなぁ……」とか、「飲食業ってかなり頭も使う仕事だなぁ、なんか楽しそう!」という思いが芽生え始めたんですよね。メンマをいかに早くちぎるか、とか、そういうことも楽しかったです(笑)。
ーーーなんだか話をきいているだけで本当に楽しさが伝わってきます。上京したのは、東京で飲食の仕事をやってみたかったからですか?
綾:はい、でも飲食店を開いてみたいとは考えてもいませんでした。上京した時点では、単に東京のお店でも働いてみたいという思いからで。一度東北から出たかったっていうのも正直なところかも。当時はバンドのライブを観に、年に何度も東京へ遊びに行っていたのもあったので、なんなら住んでしまえ! というのもややありました(笑)。「3年で帰るから!」と出てきたものの、あれよあれよと10年以上経ち……。あの頃は自分でお店を持つなんて思ってもなかったので、今思えば上京した2004年が自分にとっての転機でした。
ーーー両親に反対されたにも関わらず、自分の意志を曲げずに決断したことが、自分の人生を変える転機になったんですね。
「ハナイグチ」のはじまり
ーーー今こうして、崇司さんも綾さんもそのときの自分には想像もできなかった人生を歩んでいるのは、お互いに出会えたことがすごく大きな出来事だったのかなと思います。
崇司:そうですね。飲食をしている妻とインテリアに携わっていた自分でなにができるかを考えて、「ふたりなら何かできるんじゃないか。」って考えました。いつまでにオープンしようとかそういうのはなくて、できたらいいね程度ですが。でも思いのほか、すんなりと進んで、僕はインテリアショップで働きながら、物件探しの日々でした。
ーーーすごいですね、やろうと思ってすんなり形にすることができるなんて!
綾:店舗改装や家具の調達などは、安心して崇司さんに任せることができたし、私は厨房周りの設備や配置などで少し役立てたかなと思います。あとは、お互いの知り合いの各分野のプロフェッショナルに色々と助けてもらえました。
ーーーお店をはじめるのに、各分野からプロフェッショナルが集結できるのも、今まで別々の道を歩んできたからこそですね。ここのテナントはオープンする前、どんな状況だったんですか?
崇司:実は僕たちが入る前にいたお店が夜逃げしちゃって、片付いてない店内からの始まりでした。片付けるのは本当に大変で……。毎日仕事終わりに片付けにきていましたよ。でも、そこからは早かった! 知り合いのインテリアデザイナーに内装をやってもらい、自分たちで壁の塗装をやったり、天井の発砲スチロールを剥がしたり。このときHUGSY DOUGHNUTのまつかわさんも、一緒に剥がすの手伝ってくれたりしたんです。
ーーーそのときから、そんなつながりが……! みなさんでつくりあげた空間は本当に素敵です。
家族が一人増えて
ーーー5周年を迎えたハナイグチ。今後目標としたいことなどはありますか?
綾:一昨年娘が生まれたことで、生活パターンが大きく変わりました。仕事も家もバタバタの毎日なので、今の目標はとにかくお店を続けることです!
ーーー出産を機に生活も大きく変化したんですね。
綾:以前は深夜まで働いていたのが、今では夕方には帰らないといけなくなりました。なので本当はやりたいことの半分しかできていない感じがありますが、それでも産後2ヶ月から娘を抱っこして出勤もしていたんですよ!
ーーー産後2ヶ月とは驚きです!
綾:わたしが家で黙ってられない性格なもので……。お店にでれば、お客さまにもたくさん声をかけてもらえて嬉しかったです。それとやっぱり、お子さま連れのお客さまの気持ちがより分かるようになったのは、良い変化かなと思います!
ーーーハナイグチを訪れると、お子さま連れのお客さまもよくいらっしゃる気がします。家族みんなが居心地のよい空間、素晴らしいですよね。
ーーーそういえば、お子さんが生まれる前はよくきのこ採りに行っていたんですよね?
崇司:はい、毎年行っていました。ここ最近は行けなかったんですけど、実は今年の秋、娘も2歳になったので久しぶりに行こうと思っているんです。久しぶりなので今から楽しみにしています。この写真は、前行ったときの写真。
ーーーすごい肉厚ですね! そして大量!
崇司:ちょうど10月に行く予定をしているんですが……安心してください。もちろんもみじ市の準備も気合をいれてしていますよ! 今回は昨年とメニューをがらっと変えて、「ソーセージとギドニービーンズと香味野菜のトマト煮込み」を用意する予定です。
ーーーわ~おいしそう! ……いい匂い。河川敷で食べるトマト煮込み、今からとっても楽しみです。ぜひそのときはキノコ採りのお話も一緒にきかせてくださいね!
《インタビューを終えて》
今まで全く別々の道を歩んできたふたりがひとつの方向を見て一緒に歩いていくこと、それは誰しもがそう簡単にできることではありません。それぞれ積んできた経験をお互いに認め合い、尊重しあっている崇司さんと綾さんの姿勢を見て分かりました。これが、どこのお店にも真似できないハナイグチの魅力を作り出す最大の決め手なんだと。ディナーが始まる前、エプロンを変える崇司さんに「エプロン変えるんですね」と言うと、「昼と夜じゃ出すメニューも違うし、お酒も出すような雰囲気になるからね。気分を変えるために靴も変えているんですよ。」と一言。些細なアイテムですら空間を作り上げていく大切な要素だと知っている崇司さん。「きのうもそこで2歳の娘が大声で歌っていて」と大変なところを何ひとつ見せず、いつも楽しそうに笑顔でお話してくれる綾さん。いつ訪れても変わらぬ空間に、美味しい食事とお酒があるのは、このおふたりがいるからなんだと分かりました。きっともみじ市でも、ハナイグチのまわりにはそんなふたりが作り出す心地よい風が吹いていることでしょう。
(手紙社 永井里実)
【もみじ市当日の、ハナイグチさんのブースイメージはこちら!】